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SWAY バレンタインシングル『チョコレート』インタビュー
LDH JAPAN所属のDOBERMAN INFINITYメンバーでありながら、役者やデザイナーとしても幅広く活躍し、Def Jam Recordings所属ソロアーティストでもあるSWAY。プロフィールを簡単に説明しただけでボーダーレスな表現者であることはよく分かるが、その在り方の根底には「人生はヒップホップでありたい」と語るほどの強烈な想いがあった。前代未聞のバレンタインシングル『チョコレート』でも体現されている、知ったら追いかけずにいられないSWAYのアーティスト像をぜひともこのインタビューから感じ取ってほしい。
「ラッパーを職業に出来るとしたら、どんな手段があるんだろう?」
--DOBERMAN INFINITY、役者、デザイナー、ソロアーティストと様々なクリエイティヴで活動しているSWAY。自身ではどんな表現者だと思われますか?
SWAY:札幌という街に生まれて、そこでヒップホップに出逢って「ラッパーを職業に出来るとしたら、どんな手段があるんだろう?」と考えて、まわりにトラックを作れる人がいなかったから自分で作るようになったりしたんですけど、でも音楽ではお金が稼げなかったんですよね。だから興味があったデザインをやるようになって、例えばフライヤーでギャラを小額ながら稼いだりして、自分が音楽に触れていられるようにしていた。それが始まりなんです。今は自分で自分にSWAYと名付けて、このブランドを「どこまでハイブランドに出来るか」と思って勝負しているんですけど、1度しかない人生なので、チャンスがあれば全部やる。そこはずっと変わらないです。--“ラッパーとして生きていく為の、音楽を続けていく為の”切実なる想いから始めていったことが今すべて生きていると。
SWAY:そうですね。SWAYとして音楽で大きいステージに立つ為にも、役者をやれば表現力が増していくだろうし、音楽だけでは掴まえられない層のお客さんを獲得できるかもしれないし、そうやってすべてが繋がり合えればと思っていて。だから自分の中ではいろいろやっていても「ブレている」という感覚はないですね。--そもそも「ラッパーになりたい」と思ったルーツは何だったんでしょう?
SWAY:中学時代のバスケ部は確実にヒップホップの道へ繋がってますね。当時、NBAからアレン・アイバーソンという凄いプレイヤーが出てきて、バスケ雑誌を読んでいたらアレン・アイバーソンがラップをやっていたり、会場に来るときの格好がめちゃめちゃB-BOYであることを知って「格好良い!」と思ったんです。自分がブラックカルチャーに惹かれたいちばんの原点ですね。それから自分も3XLぐらいの太いパンツを買って、完全に格好から入ったんですけど(笑)、でもそうすると自然とヒップホップを聴くようになったり、学校の廊下でブレイクダンスを見よう見まねでやるようになったりして、ダンススタジオにも通うようになるんですけど、先生が聴いたことのないヒップホップをガンガン流してるから「これ、誰なんですか?」と教えてもらうんです。そこですごくハマったのが当時リリースされたアッシャーの「Yeah!」。--アッシャーの隆盛期、00年代中盤ですね。
Usher - Yeah! (Official Music Video) ft. Lil Jon, Ludacris
--こそこそ書いていたリリックを披露する日がやってきた訳ですね。
SWAY:恥ずかしかったですね(笑)。小さなバー兼クラブみたいな場所だったんですけど、めちゃめちゃ怖かったし。でもそれ以上に楽しかったんですよ。全然デザイン的にイケてないフライヤーでしたけど、そこに「LIVE:SWAY」って書いてあったのもアガったし。ただただ名前が書いてあるだけなんですけどね。で、もっと有名なイベントだと、デザインのクオリティも高いフライヤーに名前と写真も載るようになるから「ここに行きたいな!」と思うようになったりして。それで街にどんどん出るようになって、いろんな人と繋がっていって、怖いこともあったりしたんですけど、自分の足で前に進んでいる感じが楽しかったんですよね。--憧れの世界に飛び込んでいって、フライヤーに写真も載るようになっていったり、一歩進むたびに得られる喜びがあったんでしょうね。
SWAY:そうですね。ま、チケット売るのツラかったですけど(笑)。めちゃめちゃ借金もしましたし。--そのストーリーが現在の全方位型アーティスト・SWAYを形成している訳ですが、まずDOBERMAN INFINITYのメンバー/MCとしての自分はどんな存在だと思いますか?
DOBERMAN INFINITY 「SAY YEAH!!」MV
--自分のそれまでの道程をすべて生かせる場になったんですね。
SWAY:あと、DOBERMAN INCは札幌時代から知っていたグループなんですけど、自分がひとりっ子だったこともあって、そこに入れたことによって「兄弟ができた」みたいな感覚があって。ずっとグループでは活動していなかったので、そういう仲間ができたことも単純に嬉しかったです。だから最初から夢中でいろいろ提案しまくっていたところもあります。- AK-69との出逢い「SWAYもDef Jamでやれたらいいのにね」
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AK-69との出逢い「SWAYもDef Jamでやれたらいいのにね」
--そんなDOBERMAN INFINITYにおいても重要な役割を担っているデザイナーとしての自分はどんな存在だと思いますか? リーボックや、G-Star RAW等とのコラボアイテムも手掛けていますよね。
SWAY:G-Star RAWに関しては、自分が21歳のときに初めて服屋さんで働いて、そのときに扱っていたのがG-Star RAWで、個人的にもめちゃめちゃ好きになっていくんですけど、当時はまだアーティストとコラボしたことがなかったんですよね。そんな中でスクリレックスとG-Star RAWが初めてコラボしたり、後々アフロジャックともコラボしたり……自分もコラボしたいと思ってはいたんですけど、まだまだそんなことを言えるようなレベルじゃなかった。そういった時期も経てきたので、今回自分が、日本人アーティストとして初めてのコラボになるんですけど、G-Star RAWとのコラボアイテムも手掛けられるようになって、服屋さんの時代から繋がっていたG-Star RAWのスタッフさんも「やったね!」と喜んでくれているので、ようやくゴールに辿り着いた感じがします。--長年の想いが結実した訳ですね。
SWAY:インディーズでアルバムをリリースしたときに、そのG-Star RAWのスタッフさんの優しさのおかげで、衣装として全身G-Star RAWを着させてもらったりしていたので、ようやく自分のオリジナルのデニムを作れたことは嬉しいですね。--続いて、役者としての自分について。ヒップホップの道をひたすら歩んできた中、2012年に俳優デビュー。劇団EXILEに加入することにもなった訳ですが、最初はどういう気持ちだったんですか?
SWAY:いや、もう全然訳わかんなかったですね(笑)。日常では普通に歩いているのに、舞台に立った瞬間どう歩いていいか分からなくなっちゃって。右足と右手が一緒に前に出ちゃうんじゃないかと思うぐらい、とにかく動きが不自然になってしまう。でも、初めて出た舞台でいまだにハッキリ記憶しているのが、3000人規模の会場だったんですよ。それで同じ公演を東京と大阪合わせて約10回ぐらい。初めてのツアーですよね。で、毎日同じ事をやるんですけど、毎日お客さんは満席で、ラッパーとしてはまだ見たことがない景色。それを先に役者として見てしまって、それだけの大人数に観られることの気持ち良さも知って、「これは音楽でも叶えたいな」と思ったんですけど、その時期にインディーズからアルバムをリリースして、札幌でワンマンライブをやったんです。そしたら300人規模の会場なのに全然埋まらず、100人ぐらいしか来なくて。3000人規模の舞台をやった後だったので、それが余計にショックで。「あ、これが今の自分のレベルか。地元ですらこれなのか」って。--ギャップが凄かった訳ですね。
SWAY:それまでずっと能天気だったんですけど、初めて大人しくなりましたね(笑)。「あれ? どうしよう?」みたいな。でも役者を続けること自体は抵抗がなかったんです。何でかと言うと、ウィル・スミスもDMXもLL・クール・Jもみんな役者やってるし、それを観てきていたので。あと、学べることが多い。それまで本も読まないぐらいだったので、台本読んでもそこに書いているセリフを言えばいいとしか思っていなかったら、脚本家の方に「なんでそのセリフを言ったの?」と聞かれて、でもその意味すら分からなくて。要するに演じることが出来ていなかったんですよね。その役のバックボーンを理解すれば「だからこの言葉を発したんだ」と思って演じられるんですけど、そういうことに気付いてからはいろんな人の感覚を想像するようになって、自分が今まで持っていなかった感覚を役に教えてもらったりもするし、それはリリックにも生きていくだろうなって。--ウィル・スミスも役者としてブレイクしてから、DJ・ジャジー・ジェフ&ザ・フレッシュ・プリンス時代とは比較にならないほどの大ヒット曲を生んでいきましたからね。
SWAY:そうなんですよ。だからウィル・スミスには背中を押してもらいましたね。会ったことないですけど(笑)。でもめちゃめちゃ影響は受けました。--Def Jam Recordings所属のソロアーティストとしても注目を集めていますが、ソロとしてのSWAYは自分の中でどんな位置付けになっているんでしょう?
SWAY:SWAYをひとつのブランドとして成長させていきたくて、その中でDef Jamと契約できたことはすごく大きいことですし、何の知識もなかった頃にUSのレコードを掘っていたら「あずき色のジャケがやたら目に付くな。Def Jamって書いてある。アーティスト名でもタイトルでもないし、何なんだろうな?」と思って、それがレコード会社の名前であることを知ったら今度はDef Jam Japanが出来て。そこからDABOさんやHI-Dさんがリリースしていて、その中で特に憧れたのがSPHEREさんなんですけど、英語と日本語のリリックを使う二刀流ラッパーと呼ばれていて、自分も影響受けて19歳のときにトロントへ行ったりもしていて。そういう流れを経ての今なので、すごく不思議でもあるし、ただ単に「やったー!」と云うよりは責任感のほうが大きいかもしれない。でもここでは「SWAYだから出来ること」を追求したいなと思っています。「Def Jamなんだからこうしろよ」みたいなことじゃなくて「こんな奴もいるんだ?」と思われるような唯一無二の存在になりたい。--そのDef Jamにソロアーティストとして所属することになったきっかけは、昨年アルバム『UNCHAINED』でも共演したAK-69ですよね。元々どんな関係性なんでしょう?
SWAY:一方的に知ったのは自分が18歳のときで、DJ PMXさんのコンピレーションにAK-69さんが参加されていて。聴いてみたら1番が歌で、サビも歌っぽい。でも2番になったらラップし出して……「この人、誰?」となったんです。その後、札幌であったNORTH COAST BAD BOYZのライブにAK-69さんが来たんですけど、もう当時から凄い行列を作っていて。だから雲の上の存在だったんですけど、自分が働いていた服屋さんの社長さんが海外に買い付けにいく際、名古屋の服屋さんの社長さんからいろいろ教えてもらっていて、その繋がりでAK-69さんも自分が働いている店に来ていたんです。だから最初は服屋の店員として会っていて。ラッパーもやってはいたんですけど、まだグイグイ挨拶に行けるようなレベルじゃなかったんで。--ラッパー同士で云々できる状況ではなかったんですね。
DOBERMAN INFINITY×AK-69「Shatter」MV -short ver.-
「おまえよりヒップホップやってるよ」と常に心の中では思っていたい
--歴史が動いた瞬間じゃないですか。
SWAY:AK-69さんがどれぐらい本気で仰っていたのかは分からないんですけど、でも俺はめちゃめちゃ本気にしちゃって。それで東京戻ったらすぐデモ作りして、企画書作って、LDHのHIROさんに「Def Jamからソロデビューしたいです」と伝えて。--行動力が半端ない(笑)。
SWAY:本気で動いちゃいました(笑)。そしたらいろんな方にサポートしてもらって契約に繋がったんです。だからAK-69さんは自分の中では絶対に超えられない漢ですね。ラッパーと云うより漢です。--あらゆる面でボーダーレスに活動している訳ですけど、ヒップホップシーンや音楽シーンの中でSWAYはどんな風に映っているなと感じますか?
SWAY:受け取り方は自由だし、自分としても「こう映りたい」みたいなモノもないんですけど、でも有り難いことに、自分で言うのもアレなんですけど……「ルックスが良い」と言われる。一同:(笑)
SWAY:でもそれがクラブ時代からの悩みでもあったんですよ。見られ方が……--ヒップホップシーンではナメられる要素にもなりがちですよね。
SWAY:そうなんですよ! クラブにいるとそっちの経験のほうが多くて。だから今もどういう風な見られ方をしているか、なんとなく予想が出来るし、たぶん偏見もあると思うし。でも、だからこそ今回『チョコレート』みたいなバレンタインシングルが作れたと思うし、その分誰よりもヒップホップでいたいし、そこに対する愛情は絶やさず持っていたい。だからどう見られてもいいんですけど……でも「おまえよりヒップホップやってるよ」と常に心の中では思っていたいですね。--そういうスピリットが自然と身につく人生になっている。
SWAY:そうですね。人生はヒップホップでありたい。--今回の『チョコレート』にもそんなSWAYの在り方が詰まっているし、あの攻めたトラックで「板チョコみたいな 6 pack」等のユーモラスなリリックを次々畳み掛けるアプローチは、それこそSWAYがやるから面白い。
SWAY:バレンタインに『チョコレート』という曲をリリースする。これはもう捻り過ぎてダイレクトになった感じなんですけど。--アイドルでもやってないかもしれない(笑)。
SWAY:もうちょっと何か加えたり捻ったりしますよね(笑)。ここまで超ド級のストレートは投げないと思うんですけど、でもすごく面白いモノになったと思います。さっきの話にも繋がるんですけど、「逆にDef Jamだから面白いことってなんだろう?」と常に考えていて。SWAYの曲はDOBERMAN INFINITYでも聴けるし、だったらここでは「日本の最前線で活躍しているラッパーとか作家さんやプロデューサーが俺の楽曲を書くとしたら?」みたいなことをやりたいなと思って、去年リリースしたアルバム『UNCHAINED』もAK-69さんやSALUくん、TEEくんといったいろんな人たちと作らせてもらったんです。だから今回もCREAMのStaxx Tくんに歌詞をお願いしたりとか、曲のコンセプトからふたりで考えていて。ただただ恋愛ソングという形はイヤだったので、ヒップホップ的観点で『チョコレート』を描こうと。だったら「SWAYがめっちゃホット過ぎて女の子が溶けちゃう。めっちゃ良くない?」「めっちゃ良いじゃん」といったコンセプトで生まれた世界観になってる。--完全に新しいバレンタインソングが生まれてますよね。
SWAY:Staxx Tくんのワードセンスがふんだんに散りばめられていて、Staxx TくんのフロウをディレクションしてもらいながらSWAYが表現する。DOBERMAN INFINITYでは聴けない、SWAYじゃないラッパーのリリックをSWAYが歌ってる。こういうスペシャル感を出せるのはソロならではだし、これをDef Jamから発信していくのは逆に面白いなって。USでもライターがドレイクの曲を書いたりして、シーン自体がそういう見えない人たちの力によって盛り上がっていたりするじゃないですか。そういうことを自分も出来たら良いなと思っているんですよね。--そんな『チョコレート』、リスナーにはどんな風に楽しんでもらいたいですか?
SWAY:今回はミュージックビデオも新しい試みをしていて、SWAYが出ていくというよりは、Staxx Tくんが書いてくれた「板チョコみたいな 6 pack」。これがDef Jamチーム内でめちゃめくちゃ盛り上がりまして「これをキャラクターにしよう!」となったので、その板チョコくんのキャラクターをメインに据えたアニメーションを作ったんです。これも楽しんでもらいたいし、ダンサーのRIEHATAにお願いしたサビの振り付けも、その板チョコくんと一緒に踊ってもらえたら嬉しいですね。--では、最後に、この先のSWAYのヴィジョンを聞かせて下さい。
SWAY:去年アルバムをリリースして、年末年始にソロワンマンも出来て、それまでちょっと決め切れなかった自分の世界観が固まってきたというか、パチッと見えた瞬間がたくさんあったので、また新しいソロアルバムも作っていきたいんですけど、良い意味で吹っ切れた自分を追及していこうと思っています。楽しみにしていて下さい。関連商品