Special
対談:トラヴィス・スコット&スクリレックス「SICKO MODE (Remix)」~映画のようなコラボレーションが実現した背景を語る
2018年12月8日付の米ビルボード・ソング・チャートで、アリアナ・グランデの「サンキュー、ネクスト」を破り、登場17週目で遂に首位を獲得したトラヴィス・スコットの「シッコ・モード」。トラヴィスにとって意外にも“Hot 100”でのNo. 1は今回が初。首位獲得の大きな要因となったのは、EDMアーティストのスクリレックスによる今楽曲のリミックスが公開されたことだ。3部構成とも言える展開が独特なこの楽曲のリミックスや2人のコラボレーションについて、2018年11月29日に米ビルボードで掲載された2人へのインタビュー記事を紹介しよう。
今年はトラヴィス・スコットにとっての当たり年だった。彼は自身の意欲作『アストロワールド』で他との競争に勝利しただけではなく、アルバム発売初週で537,000枚に同等する大きなユニット数を売り上げ、全米アルバム・チャート“Billboard 200”で2度目となる首位を確約させたのだ。彼の先行シングル「シッコ・モード」も、その後を追い、トラヴィス・スコットは全米シングル・チャート“Hot 100”でも2位に駆け上がっている。次週、首位のアリアナ・グランデ「サンキュー、ネクスト」の座を奪うのではと期待されている。(※実際に2018年12月8日付米ビルボード・ソング・チャートで首位を獲得。)
「シッコ・モード」は楽曲自体が型破りな構成となっているため、これを無秩序な曲だと考える人もいるが、トラヴィス・スコットにとってこの曲は、ワクワクさせられる頂点と予期できないカーブで埋め尽くされたスリリングなジェットコースターだ。3つのレイヤーからなる楽曲の始まりは、Rogét Chahayedとヒットボーイの脅迫的なビートの上に、豪華な共演者=ドレイクによる期待を煽るイントロがファンを興奮させていく。トラヴィスは、ドレイクとプロデューサーたちの間に挟まれつつ、ヒューストン出身のプライドを掲げながら彼らを繋ぐ役割となり、2つ目のトラックで輝きを放つ。そして、6 God(ドレイク)がテイ・キースとトラックに戻って来てフィニッシュラインへ向かって駆け抜けていく。
▲Travis Scott - SICKO MODE ft. Drake
8月のリリース以降、「シッコ・モード」は一年を通して話題となっていたが、火曜日の夜(11月27日)、EDMアーティストのスクリレックスによるリミックス版もリリースされた。「俺にとって、リミックスすること自体がレアなんだけど、それよりも曲の特定の部分に惚れ込むことの方がもっとレアなんだ。」と、スクリレックスは、彼の地球がガタガタと揺れるような表現について語った。「この曲をリミックスするのはタフだよ、わかるだろ?この曲には既に3つの異なった曲が入っていて、その上に俺がいくつかのレイヤーを追加していく。最終的には、自分自身の目で見た“正義”が全てなんだ。」
スタジオでのおふざけ程度のセッションから始まったリミックスだが、スクリレックスにとっては“耳をつんざくような曲”に形を変え、トラヴィス・スコットにとっては“『アストロワールド』のツアー中の追加レコード”が加わったことになった。「スクリレックスがスタジオでこの曲にノッてるちょっとしたビデオを見たんだ。“うわー、これ超いい”って感じで。スクリレックスがそれをリリースするかどうかは見当もつかなかったよ。」とトラヴィス・スコットは語った。
11月28日の水曜日、米ビルボードはトラヴィス・スコットとスクリレックスの2人をキャッチし、彼らの壮大なリミックスについて、何が「シッコ・モード」を“映画”にさせたのか、DJとしてスクリレックスが彼自身のバージョンを作るときに直面した最大の挑戦など、質問を投げかけた。
トラヴィス・スコット&スクリレックスが語る「SICKO MODE (Remix)」
−−トラヴィスがスクリレックスのファンになったのはいつ頃?曲を通して?それとも彼のセットを見てから?
トラヴィス・スコット:うーん、そうだな、たぶん2年前くらい。俺が売れる前で、スクリレックスにとって物事が上手くいっていた時期だったと思う。彼のショーがマジでダークでイケてると感じたんだ。彼の音楽はリアルで強烈。それが彼にハマっていったときだった。
−−スクリレックスの方はどう?トラヴィスの曲、アルバム、パフォーマンス、どれがファンになるきっかけになった?
スクリレックス:俺にとっての初めてのトラヴィスの思い出は、2014年の【Mad Decent Boat Party】のとき。来たこと覚えてる?
トラヴィス・スコット:ああ、覚えてるよ。(笑)
スクリレックス:君のどのアルバムが出たときだったか覚えてないし、そこにいた子たちも君のことを知らなったと思う。でも完全に観客を虜にしてた。基本的に俺たちは同じ船に乗っていて、君は全てのことにしがみついてるような感じだった。荒れ狂う船の中で、トラヴィスはリフ・ラフ以外で唯一のラッパーだったし、それを大いに楽しんでいた。あれは、その場にいた子たちにとって本当に初めての何かだったし、そのときに大ファンになったんだ。彼のパフォーマンスを見ただけでね。
−−「シッコ・モード」を初めて聞いたときのことは覚えている?そのときに感じたことは?
スクリレックス:ああ、もちろん覚えてるさ。ランニングしている時だったんだけど、リピートせずにはいられなかったよ。俺が走ることが好きなのは知ってるだろ?それに、トラヴィスもマイク・ディーンもマスター・プロデューサーで、俺は彼らの作品のファンなんだ。この曲は彼らのオリジナル作品の中でもお気に入りの一曲。テイ・キースに感謝だ。
−−トラヴィス、「SICKO MODE」が年間ベストソングに選ばれる可能性があるという話も出ているけど、この曲をリリースした後はどんな想いがあった?
トラヴィス・スコット:年間ソングがどの楽曲になるか予想することは出来ないけど、俺はいつもマジでドープな曲を作ろうと心掛けている。この曲はみんなにとって普通とは違ったサウンドのものになるとはわかっていたけど、みんなにちゃんとついてきてもらって、ノッてもらう。そして、この曲がどうやってできたのか分かってもらえたらと思っていた。
−−1つの曲の中に3つの異なるセクションを入れようというのは誰のアイデアだったの?
トラヴィス・スコット:そりゃ、俺だよ。だって俺のアルバムだろ?(笑)
−−まさしく。でも、この曲の仕上がりを聞くと、もしかしたらヒットボーイ、テイ・キース、それかみんなでコラボレーションして決めた事だったのかもと思ったんだ。
トラヴィス・スコット:いや、いつものようにアルバム制作していたけど、そうだな、この作品については、プロデューサーたちを俺の世界に連れ込んだという感じ。それに、こういった曲を作りたいというアイデアはずっとあったんだ。だから、俺が彼らにやりたいサウンドを伝えて、それから取り組んでもらった。ヒットボーイ、オズ、それからテイに感謝している。みんなそれぞれ別々のタイミングで来たから、みんなが同じバージョンを受け取るという感じではなかった。だから、俺は持っていたものを組み合わせてハメていった感じだね。
−−実際のリミックスはどんな感じで作られたの?
トラヴィス・スコット:スクリレックスがスタジオでこの曲にノッてるちょっとしたビデオを見たんだ。“うわー、これ超いい”って感じで。スクリレックスがそれをリリースするかどうかは見当もつかなかったよ。
スクリレックス:先月オーストラリアでツアーをやっていたときに、そのときは無許可だったけどライブでちょっとだけリミックスをかけてみたんだ。それで、トラヴィスも言ってたように、彼がその話を聞いて、しばらくの間、俺たちは繋がりを持とうと試みた。幸いなことに、それが実際に俺たちを繋げるための良い方法だったというわけさ。
▲Travis Scott - SICKO MODE (Skrillex Remix) [Official Audio]
−−スクリレックス、この曲をリミックスするときに、作品の主となる部分をそのまま残そうと決めたのはなぜ?
スクリレックス:俺にとって、リミックスすること自体がレアなんだけど、それよりも曲の特定の部分に惚れ込むことの方がもっとレアなんだ。だから、メインいくつかの部分についてはサウンドを録り直した、なぜならサウンドの旅をしてみたかったし、半分まで行った後で新しい場所に連れて行ってみたかったんだ。でもそうだね、この曲をリミックスするのはタフだよ、わかるだろ?この曲には既に3つの異なった曲が入っていて、その上に俺がいくつかのレイヤーを追加していく。最終的には、自分自身の目で見た“正義”が全てなんだ。
−−ケンドリック・ラマーの「ハンブル」のリミックスとは対照的だという点において、この曲をリミックスをするのはより難しかった?
スクリレックス:さっきも言ったようにトラヴィスのリミックスをライブでかけてテストしたことが俺にとって大きかった。俺はいつも自分のデモをライブでかけることが多いんだ。かけた曲が誰の曲かは言わない。そうすることで実際にどのくらい観客が反応するか、リアルにわかるからね。だからそうやって曲をかけたときの感覚をベースに置いているんだ。それでこの曲が良い感じだった。まるで映画やイベントみたいに。だって、この曲自体が既に一つの映画だってことはわかるだろ?『アストロワールド』のカーニバルが、全く別の時空にあるパラレルワールドで起こっているというか、そういう感じさ。
−−スクリレックスは「シッコ・モード」の楽曲そのものが映画だと言い切ったけど、トラヴィス、君の視点からは、この曲のオリジナル自体が良すぎるあまり、リミックスが出されることへのプレッシャーはなかった?
トラヴィス・スコット:そうだね、でも今回のケースに関しては俺にとって違った一押しだった。なぜならプロダクションのレベルが高かったし、ちょうど今ツアー中ということもあるからね。まあ、俺はオリジナルのレコードをかけてパフォーマンスすることが大好きなんだけどね。ショーの最後の方に持ってくるのがお気に入り。クレイジーなんだ、この曲をプレイすると、めちゃくちゃクレイジーになるんだ!
スクリレックス:トラヴィスに付け加えたいことがある。特に「シッコ・モード」や「ハンブル」といった楽曲をリミックスするとき、そのリミックスで全ての人を満足させることは出来ないんだ。オリジナルはずっとそこにあるわけで、でも、それにチャレンジすることが好きなんだよね。俺は本当に難しい挑戦を受けることが好きで、特にあまり時間が無い中での挑戦は、自分がどこまで出来るのかがわかる。そういう瞬間が記憶に残って、それを人々が後に思い出して、こう言うんだ。「なあ、あの時いったい何が起こったんだ?」って。
▲Kendrick Lamar - HUMBLE. (Skrillex Remix) [Official Audio]
−−今回が二人にとって初めてコラボレーションになったけど、二人でオリジナルの作品を作ろうという話はもう出てる?
トラヴィス・スコット:もちろん!スクリレックスがいくつかビートを聴かせてくれたんだけど、クレイジーだった。
スクリレックス:このリミックスを一緒に作ってたときに、スタジオで色々作業をしている流れで最終的にたくさんビートを聴いてもらったんだ。オーガニックに進めることが好きだし、自然に作ることが好きなんだ。近い将来、何かを一緒にやることは確実に視野に入っている。そんな感じのヴァイブスを感じるんだ。
−−トラヴィス、巷では「シッコ・モード」のドレイクの最初のパートに長めのバージョンがあると言われているよね。それは本当?もし本当なら、ファンのためにそれをリリースする予定はある?
トラヴィス・スコット:(笑)。俺はいつも何かに取り組んでいる。サプライズを公にするのは好きじゃないんだ、わかるだろ?でも何かをたくらんではいるよ。ファンはオリジナルの「シッコ・モード」を気に入ってくれていて、ドレイクも俺も盛り上がっているんだ。ここであまり多くの情報を出したくないけど、俺たちはいつもファンのことを考えているよ。何とも言えないね。言えないけど、でももしかしたら何かあるかもね。わからないけど(笑)。
Text by Carl Lamarre / 2018年11月29日 Billboard.com掲載
関連商品