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ホセ・ジェイムズ「celebrates Bill Withers」来日直前特集 ~現代ジャズのカリスマは、なぜいまビル・ウィザースをトリビュートするのか?
スモーキーかつメロウな歌声と、ジャズを拡張する独自のセンスで絶大な支持を誇るホセ・ジェイムズが、今年、生誕80周年を迎えたレジェンド、ビル・ウィザースへのトリビュートステージを10~11月、東阪ビルボードライブで披露する。ホセは9月末に、同じくビル・ウィザースへのトリビュート作『リーン・オン・ミー』をリリースしており、今回の来日はそのスペシャル・プレビューともなる。
しかし、音楽業界を長らく離れているとは言え、ビル・ウィザースはいまだ存命。しかも、厳密には他ジャンルの畑に属し、クラブ寄りのイメージも強いホセが、ビルのトリビュート作品をリリースし、そのライブまで披露するのか? 音楽ライターの内本順一氏に、その背景にある想いや、公演と作品の見どころを解説して貰った。
「心底誠実な気持ちにならないと彼の歌はうたえない」
マイケル・ジャクソンからメロディ・ガルドーまで実に多くのミュージシャンにカヴァーされた「エイント・ノーサンシャイン(消えゆく太陽)」。ジョージィ・フェイムからアル・グリーンまでやはり多くのミュージシャンにカヴァーされた「リーン・オン・ミー」。それに「ラヴリー・デイ」「ジャスト・ザ・トゥー・オブ・アス」など、ビル・ウィザースは珠玉の名曲をいくつも残したフォーキー・ソウルの偉大なシンガー・ソングライター。ダンスもののヒットを求めてくるレーベルや業界のノリに自分を合わせることができず1985年作品を最後に引退し、その後は音楽の世界と別の場所で静かに暮らしてきた現在80歳だ。
言うなれば生きる伝説だが、ホセ・ジェイムズは昨年秋、そんなビルとハリウッドの老舗レストラン“ムッソ&フランク”でディナーを共にしたという。同席してふたりを繋いだのは現ブルーノート社長で、ホセの新作のプロデュースも手掛けたドン・ウォズ。今年7月のインタビューで、ホセはそのときを思い出し、「夢を見てるようだったよ。憧れのビル・ウィザースと自分が食事するなんてね。彼はミュージシャンを続けていくことについての心構えを僕に話してくれたんだ」と話していた。また、ビルの残した9枚のアルバムから熟考を重ねて絞り込んだ選曲リストを本人に見せたところ、「ビルはそれをとても気に入ってくれた」と嬉しそうにも。新作『リーン・オン・ミー』は、そんな過程も経て完成したビルのトリビュート盤だ。
「ビルが今年80歳になると知り、今こそちゃんとトリビュートしようと思った。デヴィッド・ボウイやプリンスやレナード・コーエンが続けて亡くなってからいろんなトリビュートがあったけど、存命のうちにトリビュートすることに価値があるんじゃないかと思ったんだ。レコーディングしてみて実感したよ。ビルの曲がいかにポエトリーであると同時にオネスティ(誠実)であるかをね。心底誠実な気持ちにならないと彼の歌はうたえないんだ」
▲Bill Withers - Lean On Me (Live From a 1973 Concert)
ホセの資質と本質
ホセはもちろんオーセンティックなジャズを歌えるシンガーだし、ジャジーだったりヒップホップよりだったりのソウルも得意だ。が、例えばデビュー盤『ザ・ドリーマー』に「Winterwind」という世にも美しい曲を入れたことに始まり、ジャズやソウル味とは少し異なる“シンガー・ソングライター的楽曲”に最も個性が表れるシンガーであると自分は常々思っているし、そういう曲での彼のヴォーカルはとりわけ心に染み入ってくる。『リーン・オン・ミー』はビルの楽曲集だがしかし、そういう意味でホセの資質と本質がもっとも濃く出た作品だとも言えるだろう。
今回の来日公演は言うまでもなくそのビルの楽曲集『リーン・オン・ミー』の実演版で、同行ミュージシャンは大林武司(key)、ブラッド・アレン・ウィリアムズ(g)、ベン・ウィリアムス(b)、ネイト・スミス(ds)。ギターのベンを除けば今年2月の『ザ・ドリーマー』10周年ライブと同布陣だ。ヴォーカリストとしてのホセの個性と魅力がこれまで以上に味わえるライブになることは間違いない。
▲José James - Lean On Me (Album Trailer)
公演情報
ホセ・ジェイムズ
celebrates Bill Withers
Opening Act:ターリ
ビルボードライブ大阪
2018年10月31日(水)
1st Stage Open 17:30 Start 18:30
2nd Stage Open 20:30 Start 21:30
⇒詳細はこちら
ビルボードライブ東京
2018年11月1日(木)・11月2日(金)
1st Stage Open 17:30 Start 19:00
2nd Stage Open 20:45 Start 21:30
⇒詳細はこちら
〈Member〉
ホセ・ジェイムズ / José James(Vocals)
大林 武司 / Takeshi Ohbayashi(Keyboards)
ブラッド・アレン・ウィリアムズ / Brad Allen Williams(Guitar)
ベン・ウィリアムス / Ben Williams(Bass)
ネイト・スミス / Nate Smith(Drums)
Opening Act:ターリ / Taali
文:内本順一
リーン・オン・ミー
2018/09/21 RELEASE
UCCQ-1088 ¥ 2,860(税込)
Disc01
- 01.エイント・ノー・サンシャイン(消えゆく太陽)
- 02.グランドマザーズ・ハンズ
- 03.ラヴリー・デイ feat.レイラ・ハサウェイ
- 04.リーン・オン・ミー
- 05.キッシング・マイ・ラヴ
- 06.ユーズ・ミー
- 07.フー・イズ・ヒー
- 08.ハロー・ライク・ビフォー
- 09.ジャスト・ザ・トゥー・オブ・アス
- 10.ハートに夕立ちが
- 11.ザ・セイム・ラヴ・ザット・メイド・ミー・ラーフ
- 12.ベター・オフ・デッド
- 13.エイント・ノー・サンシャイン(消えゆく太陽) (弾き語りヴァージョン) (日本盤ボーナス・トラック)
- 14.グランドマザーズ・ハンズ (弾き語りヴァージョン) (日本盤ボーナス・トラック)
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