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【FUJI ROCK FESTIVAL '18】総力レポート~ライブ・フォト&レポ、インスタグラムでフジロックを振り返る
新潟県・苗場スキー場にて2018年7月27日~29日にかけて開催された国内最大級の野外音楽フェスティヴァル【FUJI ROCK FESTIVAL】。今年は、まずケンドリック・ラマーとN.E.R.Dがヘッドライナーとして発表され、さらには最終日のトリ、ボブ・ディランが初フジ出演、101目の来日ライブを迎えるという、台風12号もうらやむ豪華なラインアップだった。幸運にも台風直撃は免れ(強風のためキャンプサイトは散々だったようだが)、昨年同様に前夜祭を含め125,000人の音楽ファンが来場し、国内外のアーティストたちが繰り広げる色彩豊かなパフォーマンスの数々に熱狂した。ここでは、編集部&FM802のDJによる当日の白熱のライブ&フォト・レポートに加え、出演者のインスタグラム投稿でフェスの模様を振り返りたい。
DAY 1 l 2018.07.27 FRIDAY
jizue / ミツメ / LET'S EAT GRANDMA / PARQUET COURTS / ストレイテナー / ALBERT HAMMOND JR. / YEARS AND YEARS / TUNE-YARDS / エレファントカシマシ / ODESZA / N.E.R.D / POST MALONE12:00~ @ FIELD OF HEAVEN
フジ2回目の出演となるjizue。今回はヘブンのトップバッターを務める。気持ち良すぎる晴天の下、メンバーがステージに上がると、詰め掛けた大勢の観客から歓声が上がる。その後、水を打ったように静かになった会場にドラム粉川の渇いたスティックカウントが響き渡ると疾走感ある爽やかな「grass」「atom」と続けて披露。出音1音目から完全にヘブンの空気、観客の心を掌握し躍らせる。「調子はどうですか⁉︎」と観客を煽ると「最高!!」と答えるオーディエンスに、前日にリリースしたアルバム『ROOM』から 初期のハードコアに傾倒していた気配を感じさせる重めの変拍子に、片木の美しくも速く、攻撃的なピアノが映える「elephant in the room」を披露、一番優しい曲という「green lake」で緩急をつけ、”スペシャルな1曲”と奄美の歌姫元ちとせをゲストヴォーカルとして呼び込み「Sing-la(森羅)」を披露し会場をゆったりとした空気に変化させた。終盤は「rosso」「dance」とダンサブルなナンバーで会場全体をjizueのグルーヴが支配し最高潮のままステージが終了した。
12:40~ @ RED MARQUEE
14:00~ @ RED MARQUEE
14:50~ @ WHITE STAGE
ギター/ヴォーカルのアンドリュー・サヴェージとオースティン・ブラウン、そしてベースのショーン・イーストンがユニゾンで奏でるイントロから一気に加速し、歯切れのいいギターのカッティングに心踊る、最新作『ワイド・アウェイク!』のオープニング・ナンバー「Total Football」でライブがスタート。「パーケイ・コーツです。NYから来ました」という日本語MCの掴みもOKだ。
彼らの楽曲の魅力の一つは、1曲の中で幾度と曲調が変わる、そのスリリングな展開なのだが、最新作の収録曲「Almost Had to Start a Fight / In and Out of Patience」の冒頭のアンドリューの熱のこもったシャウトから、後半の“In and Out of Patience”へブリッジする部分など、ライブではさらなる予想不能な要素がプラスされ、一段と刺激的だ。この曲を、ライブ後半で披露された、2ndアルバム『ライト・アップ・ゴールド』からオースティンがヴォーカルをとる「Master of My Craft」からなだれ込んだ「Borrowed Time」のフロウとコントラストすると、年々楽曲がソフィスティケイトされて、特に最新作でバンドとしていかに成長したかが伺える。
ノスタルジックなキーボードの音色が心地よい「Freebird II」、ダブ調のリズムに合わせ、アンドリューがオムニコードを弾きながら気だるく歌う「Before the Water Gets Too High」の緩急をつけた選曲が続き、スタッフのディエゴが軽快なパーカッションで盛り上げ、キラー・チューン「 Wide Awake」では、イントロとともに<WHITE STAGE>がダンスフロア化。オースティンはハチャメチャなダンスを披露しながらホイッスルを吹きまくり、アンドリューはピースサインをしながらバンド名が書かれたタオルを横に振る。ライブのハイライトとなった「One Man No City」では、リズム隊2人が織りなす、ゴリゴリの骨太グルーヴにノイジーなギターが絡み合った白熱のジャム・セッションで、一気に畳み掛けていき、ラストは直球なロックンロール・ナンバー「Light Up Gold II」で潔く締めくくった。
ストイックさ、荒削りさ、いい加減さがバランス良く入り混じった、これぞロック・バンドという確信犯的ライブを見せつけてくれたパーケイ・コーツ。もちろん野外の開放的な空間で観るのも味があっていいのだが、願わくばクアトロあたりの小さめのライブハウスで単独公演を希望したい。
15:50~ @ RED MARQUEE
16:30~ @ WHITE STAGE
16:50~ @ GREEN STAGE
ニュー・アルバムのタイトルからとられた、近未来のディストピア的な社会「“パロ・サント”にようこそ」という文字が巨大スクリーンに表示されるとともに「Sanctify」のイントロが流れ、グリーンのサングラス、首には極太チェーン、短めのレパード柄のタンクトップに赤のハーフパンツという「さすが!」な衣装のフロントマン、オリ―・アレキサンダーが登場すると悲鳴のような歓声が。得意のダンスと伸びやかなヴォーカルを武器に、ステージを縦横無尽しながら、即座に観客を“パロ・サント”ワールドへ引き込んでいく。
デビュー作収録の珠玉のバラード「Eyes Shut」では、 オリーがキーボードが弾きながら、天に上るようなファルセットを聴かせ、巨大な<GREEN STAGE>をインティメイトな空間へと変えていく。そのカリスマ性とキュートさゆえ、オリーにばかり注目が行きがちだが、カルチャー・クラブをやや彷彿させるサビとバウンシーなビートがアクセントとなった「Karma」では、マイキーが真っ赤なショルダー・キーボードがクールにプレイするなど、他のメンバーの見せ所も作りながら、鋭敏なトラックとエンジェリックなコーラスが絶妙なコントラストを見せる「All For You」など、天下一品のシンセ・ポップ・アンセムを次々と投下していく。
途中オリーが「マジカルな瞬間~日本でのマジカルな瞬間~」と日本についての即興ソングを披露する一幕もあり、彼らの日本に対する想いがヒシヒシと伝わってくる。そしてオリーが「フジロックは世界でも最高のフェスの一つだよ。来れて本当に良かった」言い放つと、「King」へ突入。オリーとバックアップ・シンガーのシンクロ率抜群のダンスに大歓声があがり、彼の「イチ、ニー、サン」の掛け声に合わせ、観客が一丸となってサビをシングアロングすると、「スゴイ!」と満面の笑みを浮かべる。初登場となった<RED MARQUEE>でのライブから、楽曲、パフォーマンス、演出、どの側面においても、一皮剥けた、最高にポップで、ユーフォリックなパフォーマンスは、多くの人々のハートに届いたのではないだろうか。
17:50~ @ RED MARQUEE
少し涼しくなった苗場に反して、パンパンの人と熱気の、<RED MARQUEE>。デュオ編成になり初来日となるチューン・ヤーズがステージに登場すると待ち侘びた観客から地鳴りのような歓声が上がる。銀髪にグレーのワンピースにドラムスティックをコンダクトの様に持ち「HANDS」からスタート。規則正しいドラムサウンドに、スモーキーなメリルの声、自らループマシン、サンプラーを操り、<RED MARQUEE>をダンスフロアへと変貌させる。続け様に「ABC 123」、「コンニチハー!」と既に盛り上がっている観客に挨拶をし、 前作のアルバムから「Water Fountain」の頭のフレーズを歌うとフロアは更にヒートアップ。80年代を彷彿させるサウンドに加え、次々と作り出される音に彼女が次に何をするのかステージから目が離せない。中盤は落ち着いた楽曲をセレクトするも終始ウクレレや、サンプラーを触り音を混じらせて音楽を組み立てている。バンドとしても演奏力がずば抜けて上手いのがわかる。終盤にかけて「GANGSTA」でシンガロングやクラップを煽り、「HEART ATTACK」で更にフロアをブチ上げ「FREE」で壮絶なステージを終えた。
18:20~ @ WHITE STAGE
夕暮れの<WHITE STAGE>に登場したフロントマン宮本から発せられた「緊張しています」と最初の一言。<エレファントカシマシのメンバーがフジロックに登場>苗場で開催されてから20回目を迎えた2018年のお話である。デビューから激動の30周年を乗り越え、昨年末に紅白歌合戦にも初出演を果たした彼らもフジロックのステージは緊張してしまうのか。
しかし、会場からの声援は彼らが想像していた以上に熱く、大きかったのではないだろうか。そう、フジロックと共に大人になった人たちも、ずーっとエレカシが見たかったのだ、この場所で。苗場で彼らが鳴らすロックを身体中で浴びて、共有したい。その思いがついに実現した瞬間だったのだ。
バンドは最新曲「Easy Go」からデビューアルバムの1stトラック「ファイティングマン」まで、2018年から1988年まで30年という時間を力強く一列に並べて聴かせる。決してヒット曲だらけではないセットリストも、どーんとエブリバディに突き刺さる。なぜか?
エレファントカシマシというバンドをひたすらに突き進める中で、楽曲や宮本の振り幅の大きさは時に絶賛され、批判もされた。それは、ブレブレに見えたが、少し離れて見れると、決して折れない濃く太い一本の線を作り上げていた。この力強さはヒット曲だけでは到底勝ち得ることはできないはずだ。
終盤「唯一のヒット曲です」とおどけて見せ、あの“名曲”を演るのかと思いきや、曲順を間違ってしまう宮本の愛らしさ。そこから「おはようこんにちは」をド迫力のパフォーマンスで歌い切り、最後は勝手にアンコールのテイで「今宵の月のように」を披露してフィナーレ。最後は計り知れない男の底力と魅力に会場中のオーディエンスが手を上げ、大喝采をおくった。進化を続けるバンドとフジロックが交差した50分となった。
20:20~ @ WHITE STAGE
ライブ・パフォーマンスに定評があり、 今年の【コーチェラ】ではヘッドライナーのエミネムの前で準トリを務めたODESZA。夜の幻想的なムードの<WHITE STAGE>にピタリとハマる、近未来的なヴィジュアルとナレーションが流れる中、ゆっくりとスモークがステージを包みこむ。そしてトロンボーンとトランペットからなるホーン隊によるイントロからメンバー2人、さらにはドラムラインが登場し、大地を揺るがすようなパワフルな演奏とともに「A Moment Apart」~「Bloom」へつないでいくという、オープニング演出から早くもテンションぶちあがり。
自身の楽曲はもちろんだが「Loco Motion」、ポーター・ロビンソンの「Divinity」など、リミックスを担当した楽曲も余すことなく披露され、「Line Of Sight」や「Falls」などのメロウな歌ものでは、シングアロングも沸き起こっていた。プリティ・ライツ「One Day They'll Know」のリミックスの、 マグマと炎の映像に合わせたドラムラインの熱を帯びたプレイから、まるで海底にいるようなヴィジュアルの「High Ground」で一気にクールダウンするあたりなど、作りこまれたヴィジュアルも抑揚のきいたライブのフロウに欠かせない。
ラストの「It's Only」では、メンバーとドラムラインによる白熱のパーカッション合戦が繰り広げられ、そのトライバルな人力グルーヴに観客は狂喜乱舞。ショーン・クサナギがボウでギターを弾くなど、生楽器の演奏パートを随所に散りばめ、エレクロニック系のアーティストにありがちな派手なヴィジュアル、ライトやプロダクションだけでは終わらない、最高にドラマチックでシネマティックな“生”の音楽体験を届けてくれた。
21:00~ @ GREEN STAGE
グリーンのトリを務めるのは、14年ぶりの来日となるN.E.R.D。脂の乗った3人のステージは圧巻の一言だった。大地が震えるくらいの「Anti Matter」の歪んだリフから熱狂のステージが始まると2曲目「Kill Joy」。イントロだけでドッと歓声が起きたがファレルが演奏を止めさせ、「まだまだ」と観客を煽り、カウントダウンから全員でジャンプ!!続け様に昨年リリースした新譜から「Deep Down Body Thurst」と新旧の楽曲を織り交ぜ盛り上げまくる。今年から始まったYouTube中継ではあまり盛り上がってないように映っていたみたい?で話題になっていたようだが現場の盛り上がりは本当に凄まじかった。中盤、次の日の出演を控えるケンドリック・ラマーの「Alright」をカバーしたり休む間もなくメドレーゾーンに突入!かと思えば新譜から「1000」ではメッセージ性の強いMV映像や「HAVE HOPE.」とモニターへ投影するなど、彼らなりの強い意志を感じさせる一面も見られた。ケンドリックが参加した「Kites」が披露された時にはまさかの本人降臨?とすこし期待したが流石に叶わず、ショーは終盤に差し掛かる。ファン垂涎もののダフト・パンク「Get Lucky」など含む2度目のメドレーゾーンへ突入。懐かしのワンワン!と始まる「SHE WANTS TO MOVE」から「Rock Star」「Lapdance」とたたみ掛けるように新旧のヒットチューン。ファレルもステージを駆けまわりジャンプしまくる。最後は「LEMON」で20曲オーバーの圧巻のステージを締めくくった。
22:30~ @ WHITE STAGE
今か今かと登場を待ち望む<WHITE STAGE>に集まった多くの観客による大声援の中、背中に“Japan”の文字と般若(?)、そして膝に日本の国旗のパッチワークという日本愛を全面に打ち出した衣装で登場したポスト・マローン。ライブは「若すぎるうちに死にたくない」と連呼する「Too Young」でキックオフ。3曲目の「Better Now」で、すでにヴォルテージがMAXに達したオーディエンスたちは、ヴァース以外も完璧にシングアロングし、この様子に今回が日本初ライブとなるポスティ本人もご満悦の様子だ。
基本、トラックに合わせてラップ/ 歌うという、いたってシンプルなステージングで、お世辞にも歌がうまいとは言えないが、楽曲の“今感”とクオリティは折り紙付きで、ステージを縦横無尽しながら、モニターに足をかけ、マイクを両手で握り締めながら一心不乱にパフォーマンスする姿にはロック・バンドのフロントマン的オーラがある。さらには、“shoey”(誰かの靴から酒を飲むこと)も「マジ臭えな!」と言いつつも、迷いなくやってのけてしまうのにはエンターテイナーとしての根性も見受けられる。
Fワードなどを使いながらも、丁重に1曲づつ演奏曲を紹介していくのだが、中盤ではその万能感溢れる才能と彼の前の世代のラッパーたちとは、ほぼ無縁だった“脆さ”も感じられる楽曲がプレイされた。「これは俺のハートを粉々にしたビッチたちへの曲だ」と説明し、「ビッチめ、糞食らえ」のコールを煽った「I Fall Apart」の、ゴスペル的なオートチューン・コーラスとピアノの調律、そしてヘヴィーなドロップの対比は、グサリと胸に突き刺さる。ギターを弾き語りしながら、ゆっくり諭すように歌う「Feeling Whitney」と「Stay」には普遍的な魅力があり、その幅広い音楽性を培った、ロックやカントリーのルーツも垣間見れる。
終盤は、ヒット曲のオンパレードという怒涛の展開で、「rockstar」でギターを破壊するというややベタな演出を挟みつつ、彼をスターダムへのし上げた「White Iverson」では再びシングアロングが沸き起こる。ラストは、「今の時代、自分らしくあることを恐れてしまう人が多いと思う。でもそんなの糞食らえだ、おまえは何でもできる。自分を信じて、自分らしく、ぶちかましてやれ。俺にだって、誰も信じてくれなくて、日本で何千人もの観客の前で演奏できるわけないなんて、言われてた時があった。でも今となってはそいつらが、毎日のように道端で俺に向かって“Congratu-fucking-lations”って言うんだ」という熱いメッセージから「Congratulations」へとなだれ込み、大盛り上がりとなった日本での初ステージを締めくくった。と思ったら、おもむろに客席まで降りてきて、ステージ上手から下手まで観客とハイタッチするというファン・サービスも。
2015年の「White Iverson」リリース後、目まぐるしいスピードで、ポップ・シーンを代表する存在になったテキサス出身のナードな青年が、どうしてここまで若者たちを惹きつけるのか。その答えがこの日のライブから、わかったような気がした。
公演情報
【FUJI ROCK FESTIVAL '18】2018年7月27日(金)、28日(土)、29日(日)
新潟県 湯沢町 苗場スキー場
開場9:00 開演11:00 終演予定23:00
INFO: http://www.fujirockfestival.com/
関連リンク
DAY 2 l 2018.07.28 SATURDAY
LEWIS CAPALDI / 小袋 成彬 / STARCRAWLER / SUPERORGANISM / SKRILLEX / CARLA THOMAS & HI RHYTHM W/VERY SPECIAL GUEST VANEESE THOMAS / MGMT / KENDRICK LAMAR / BRAHMAN / PRINCESS NOKIA11:30~ @ RED MARQUEE
<RED MARQUEE>に登場する初来日勢の中で度肝を抜くようなライブを見せてくれるアクトが、毎年少なくとも1組はいるが、今年その称号に相応しいのがこのルイス・キャパルディだろう。まだ、デビュー・アルバムをリリースしていないのに、サム・スミスやナイル・ホーランの前座を務めるなど、現在ヨーロッパを中心に注目を集めている21歳のSSWだ。
今回のバンド編成は、キーボード/ベース、そしてパッド担当の2人のサポート・メンバー、という風変わりなもので(本人曰く海外ではもっと大勢の編成で演奏しているそう)、曲によってルイスもエレキ/アコギ・ギターを弾くのだが最小限で、あくまで歌を引き立たせるための一つのツールという感じなのだろう。
初っ端の「Fade」からその唯一無二のハスキーな歌声にどよめきが起こり、一言一言を全身全霊で表現する姿は、まさに「歌うため」に生まれてきたという言葉につきる。ライブでは男臭いブルージーさが一段と増す「Tough」 や、ため息がでるような美しい余韻を生んだ「Bruises」など、ルイス自身も「悲しい曲ばかり」と話していた通り、決して内容はハッピーではないが、心に響く、優しさと儚さを持ち合わせた楽曲たちがジワジワと観客を引き込んでいった。
彼のもう一つの魅力はその人柄だろう。飄々とした立ち振る舞いとスコティッシュ・アクセントも手伝って、曲を紹介するチャーミングかつやや自虐的なMCからは、21歳の等身大の青年の姿が浮き彫りになり、その繊細で大人びいた歌声とのギャップが好印象だ。ラストでは自分の曲を「ストリーミングしてね」とさらりとプロモーションしていく抜け目のなさも。やや初々しさが残るステージングではあったが、デビュー・アルバムのリリースに向け、さらに音楽性を磨いて、再びに日本にやってきてくれる日を楽しみに待ちたい。
Billboard JAPANでは、彼の生い立ち、その驚異的なヴォーカルや気になるデビュー・アルバムに迫るインタビューを後日公開予定なので、こちらもチェックしてみてほしい。
14:00~ @ RED MARQUEE
14:50~ @ WHITE STAGE
今年3月の東名阪のツアーをソールド・アウトさせたアメリカはLA出身のスタークローラー。容赦無く太陽照りつける昼下がりの<WHITE STAGE>に、SEのカリブの海賊の「ヨーホー」を響き渡せて登場。祭と書かれたハッピを着たギターのヘンリーがノイジーなギターと共に「カンパーイ!」と叫んで歴史に残るロックの狂宴がスタートした。上下とも白のスリムな服に身を包むフロントウーマンのアロウはのっけから暴れまくる。腰が折れそうなブリッジをし、何度もステージに倒れこむ。金髪を振り乱し、血糊を口に含んで顔に塗りたくり狂気に満ちた笑顔で観客を見渡してはステージを駆け回る。ラストに披露したのは「Chicken Woman」。まるでMVの再現したような血だらけ(血糊だけど)のアロウとヘンリーはステージを飛び出し、最後も「カンパーイ!」と叫び、集まったロック・ファンを虜にしてステージを終えた。
15:50~ @ RED MARQUEE
18:50~ @ GREEN STAGE
Photo: Masanori Naruse(4枚目以外)
前日にYOSHIKIとの共演と言うビッグニュースが流れ、スクリレックスを待つグリーンステージは異様な盛り上がりになっていた。ステージセンターにはお馴染みの三本線の赤いロゴ、サイドモニターのカウントが減っていき、5カウントからグリーンステージ全員にてカウントダウン。0になりスクリレックスが登場するや否や、フジ最大級のフロアは沸き立った。 新旧問わず、ジャンルレス、時事ネタ満載のマッシュアップにのっけからモッシュの嵐。サビでカットアウトしてはシンガロングを求めDJブースに乗りプラグをいじったり、ステージからはレーザー、炎が飛びまくる。いつの間にか本降りとなっていた雨に気がつかないくらいとにかく皆笑顔で楽しんでいたのが印象的だった。中盤でジャック・ユーの「Where Are Ü Now」で全員ハンズアップさせ、そこにダフトパンク、システムオブアダウンの楽曲を絡ませるなど彼しかしないであろう繋ぎに終始ニヤけてしまう。途中お客さん?をステージに上げては振付し会場全体を踊らせたり、とにかくエンターテイメントに富んだショーが「Bangarang」で終了しステージを去る。アレ?と終わり?と会場全ての人が思ったその時、予告通りYOSHIKIを迎えて「Endless Rain」から伝説のステージが始まった。あの何万もの人が降りしきる雨の中スマホのライトを照らした光景は本当に感動的だった。
19:00~ @ FIELD OF HEAVEN
雨が降ったり止んだりの土曜日の夜。ヘブンにはメンフィスのソウル・クイーンを観ようと多くの観客が詰めかけていた。司会(?)が流暢な日本語を交え豪華なバンド・メンバーを紹介し、ファンキーでブルージーなステージがスタート。まずは妹のヴァニース・トーマスが挨拶がてらに力強く楽しげに「Saturday Night」を披露。バックバンドのホーンが土曜の夜のヘブンに気持ちよく響き渡りメンフィス色に染める。充分すぎるほどステージを温めると、いよいよクイーンことカーラ・トーマス降臨。まさに降臨という言葉に相応しくターバンと白い衣装を身に纏ったクイーンの風格。大歓声の中、「Lovey Dovey」を披露する。ヴァニースよりお姉さんということもあり渋く少ししゃがれた迫力のある歌声がコーラス・グループと重なり合い圧巻のグルーヴがヘブンを支配する。カーラは楽しげに観客とコール&レスポンスでフロアを盛り上げ、映画『ベイビー・ドライバー』でも有名な「B-A-B-Y」を披露する。ここ曲から熱気に包まれたステージは、再び妹を迎え最高潮に。最後は亡き父ルーファスのダンス・ナンバー「Walking The Dog」でステージを締めた。終始楽しげに歌うクイーン・オブ・メンフィスにいつのまにか強くなった雨すら心地よく感じた。
20:00~ @ RED MARQUEE
最新作のジャケットのイラストの巨大なバルーン。カラフルでポップなライティング。ステージにメンバーが揃うと、重めなアレンジの「Little Dark Age」でスタート。その後も人気曲から最新曲までライブならではのサウンドで聴かせていく。彼らが熟練の「生」バンドであることを再認識する。何と言ってもハイライトは代表曲「Kids」。イントロからフレーズに合わせ大合唱が巻き起こる。ロングアレンジの間奏中も歓声や拍手が止まず、会場は高揚感と一体感に包まれた。Vo.&Gt.アンドリューの「フジロックはワンダフルな場所。戻ってこられて嬉しい」の一言の後「Hand It Over」で幕を閉じた。外はひどい土砂降りの中、彼らのステージは甘美で眩しく光るオアシスのようだった。(Text: FM802 DJ深町絵里)
21:00~ @ GREEN STAGE
大雨にもかかわらず<GREEN STAGE>を満杯に埋め尽くす観客から大歓声が上がる中、“THE DAMN LEGEND OF KUNG FU KENNY”という文字が、スクリーンいっぱいに表示される。なんだかインチキくさい修行僧に諭され、ケンドリックことカンフー・ケニーこと“ブラック・タートル”が“GLOW”(光)を探す旅に出るというショート・フィルムがスタート。カンフー着姿のケンドリックが必殺技(?)のタートル・スタイル(亀形)を披露するモンタージュから彼のアップがスクリーンいっぱいに表示されると火花があがり、ついにオーバーオール姿のケンドリック本人がステージに降臨。1曲目は「DNA.」だ。この曲は、ケンドリックが自身の背景である黒人文化や伝統を深堀りし、問う内容ということもあり、その一つ一つの言葉、フレーズから重みが感じられる。曲が最高潮に達し、ケンドリックが「フジロック〜!」と叫んだ際に、スクリーンに“PULITZER KENNY”という文字が写し出される演出もインパクト大だ。
キング・コングの映像が使われた「King Kunta」では、バンドが刻む強靭なビートに合わせ、ステージ横から照らされる絶妙なライトがステージに命を与えてくれる。とはいえ、プロダクションはきわめてミニマルで、もしケンドリックのとてつもないオーラと気迫がなければ、物足りないと感じてしまうかもしれない。事実、彼は身長170cmに満たない小柄な青年だが(この日もやや厚底のスニーカーを履いていた)、パフォーマンスが始まると、不思議とその何倍にも見えるのだ。
続いてトラヴィス・スコットとのコラボ曲「Big Shot」や彼の「goosebumps」をプレイし、『Good Kid, M.A.A.D City』から「Swimming Pools (Drank)」と「Backseat Freestyle」へ。この2曲は5年前のフジロック出演時にも披露されたこともあり、特に前者の観客との掛け合いはバッチリだった。獰猛そうなドーベルマンの映像をバックに、コーラスに合わせ勢いよく火花が飛び散った「LOYALTY.」、セックス、ドラッグ、物欲との葛藤について赤裸々に歌うリリックと超絶ギターが絡み合う「Money Tree」が披露されると、ここでショートフィルムの2部に入り、ケンドリックが東洋風の女性と対決する姿が、チープなシンセ音に『ストリート・ファイター』風のヴィジュアルとともに展開。
白い衣装に身を包んだ女性ダンサーの激しいダンス、けたたましいサイレン音と激しく点滅するライトが緊張感を生み出す「XXX.」の勢いそのまま「m.A.A.d city」へなだれ込み、水滴の映像のバックに「LOVE.」でクールダウン。この曲は、ケンドリックがフィアンセについて歌っているとされるラヴ・バラードで、先日チャーチズもカヴァーするなど、その普遍的な魅力がジャンルを超えて支持されている1曲だ。リフレイン部分ではシングアロングも沸き起こっていて、続く「Bitch, Don't Kill My Vibe」、“Black Lives Matter”運動のアンセムともなった「Alright」でも随所で観客がケンドリックに煽られることなく、自然と一緒に歌うシーンがだんだん増えていったのが印象的だった。
そしてショートフィルムの“妖妓”と題されたセクションに突入し、黒人女性2人が妖艶なダンスを披露する途中「“GLOW”は黒が最も濃い場所で、最も明るく光輝く」という言葉通り、黒人女性1人の股から光が放たれ、それが“ブラック・タートル”に乗り移ると、ボリス・ガーディナーのオールドスクールな「Every Nigger is a Star」が流れる中、ケンドリックが満面の笑みを浮かべ観客にウィンクし、「カンフー・ケニーはマザーファッキン“GLOW”を見つけた」とショートフィルム3部作が締めくくられた。彼の楽曲は、そのテーマゆえに、重い、とっつきにくいと思われがちだが、異なるペルソナを巧みに使い分けることで、きちんとエンタメ性も持たせているのだ。
ライブもいよいよ佳境に入り、“Nobody Pray For Me”というイントロから「HUMBLE.」へ。“Sit Down, Be Humble”のコーラスに合わせ、多くの腕が力強く、空に向かって突き上げられる。ケンドリックも、バンドの強靭なプレイに合わせ、次々とリリックを紡ぎ出していき、「みんなのこと愛してる」と言い放つと、右腕を上げ、一旦ステージ脇へ。再び登場し、「みんなといい時間を過ごせたよ。みんながいいマザーファッキン音楽を聴くために、マザーファッキン雨の中で頑張ってるから俺ももう1曲やらなきゃな」と「All The Stars」に突入。ケンドリックが最初のヴァースとSZAのコーラスを歌うように観客を煽るとこの日最大のシングアロングが沸き起こった。さらに、スマホのライトをつけることを促すと<GREEN STAGE>がまるでたくさんの星に覆われた夜空のような幻想的な姿に。
そして「みんなに約束する。これは世界中で言ってるんだけど、よく聞いてくれ。君たちが今夜くれたエネルギーには感謝している。みんながくれた愛にきちんとお返ししたいと思ってるんだ。後方のみんなもこの言葉を覚えていてくれ、I WILL BE BACK!」と再び戻ってくるという力強い言葉とともに、バンドによるロックなアウトロが流れる中、ステージを後にした。初来日時に比べると、とてつもなく巨大で崇高な存在となったケンドリック。再び約束を果たすために、日本の地に降り立つのはいつになるだろうか。ただその日が来るまで、 「今日何か物凄いものを目撃した」という鮮烈な記憶は、彼のパフォーマンスに立ち会った全員の脳裏に刻まれ、消えることがないのは確かだ。
22:30~ @ WHITE STAGE
雨が降りみんなが拝むように手を合わせ、天高く掲げる神々しい<WHITE STAGE>、22時。登場と共に歓声が上がるも「The Only Way」で幕を切り一転、ハードコアの世界へと誘った。 <WHITE STAGE>にBRAHMANが登場するのは13年ぶり。TOSHI-LOWが放つ。『何もかも上手くいかなかったホワイトステージ。あれから13年。13年分強くなった。雨よ降れ、風よ吹け、嵐よ来い。何が来ても怖くない。締めるのは俺たち。』その言葉に感化されたように雨足が強くなる中、今の彼らを象徴する新旧織り交ぜたセットリストで展開されていく。「ナミノウタゲ」では、TOSHI-LOWの『フジロックを心から愛してるアーティストは俺らだけじゃない』という紹介と共にハナレグミが登場。山の上から海の”あの街”に向けて歌い上げた。優しさも強さも表現した圧巻のステージを見せつけて13年分の思いを見事に果たした。最後には『また来年もフジロックで会おう』と語りかけ「真善美」でホワイトステージを締めた。(Text: FM802 DJ樋口大喜)
24:15~ @ TRIBAL CIRCUS
その強烈なメッセージ性とパワフルなラップとダンスを通じて、期待を裏切らないライブを見せてくれたプリンセス・ノキア。「Brujas」〜「Kitana」と初っ端からハイエネルギーな曲でガンガン飛ばし、勢いの余りズボンのお尻の部分を破ってしまい、腰にジャケットを巻いたスタイルでパフォーマンスを余儀なくされるという、まさに彼女の曲「Tomboy」に通じるハプニングも(もちろんこの曲も披露してくれた)。
だが、そんなことを物ともせず、ステージを縦横無尽に駆け回り、数曲おきに客席まで降りていき、観客とハイタッチやダイヴをしたり、とにかく観客との距離が近い。その距離感は彼女をサポートするDJとの掛け合いからも感じられ、後半にかけて数ヴァースのみ披露し、次の曲へどんどん突入していくというスピーディーな展開は2人の信頼関係ゆえのことだろう。そして「ABCs Of New York」をフリースタイルのようにライムしたり、ブリンク182の「I Miss You」をキュートにしっとりとアカペラで歌い上げるなど、その表現の幅の広さにも圧倒される。
途中ステージ脇から通訳を連れ出し、「NYには日本のカルチャーに憧れているキッズがたくさんいる。ゴス、アニメ、日本の人々、日本文化にNYを代表して心から感謝したい。そして特に日本の女性たちをリスペクトしています」と女性の代弁者でもあり、 エンパワーメントの提唱者でもある彼女からの真摯なメッセージは、客席に集まった多くの女性たちの心に刺さったことだろう。後日、彼女がインスタグラムで公開したアジア人を含むあらゆるマイノリティを包括する必要性に関する投稿にもグッと来るものがあった。その音楽性はもちろんだが、一人の表現者として、今後の活躍が非常に楽しみな時代の寵児をいち早く日本でキャッチできたことを幸運に思う。
公演情報
【FUJI ROCK FESTIVAL '18】2018年7月27日(金)、28日(土)、29日(日)
新潟県 湯沢町 苗場スキー場
開場9:00 開演11:00 終演予定23:00
INFO: http://www.fujirockfestival.com/
関連リンク
DAY 3 l 2018.07.29 SUNDAY
KING GNU / Suchmos / HINDS / KACEY MUSGRAVES / ANDERSON .PAAK & THE FREE NATIONALS / Awesome City Club / JACK JOHNSON / serpentwithfeet / BOB DYLAN & HIS BAND / DIRTY PROJECTORS / GREENSKY BLUEGRASS / VAMPIRE WEEKEND / CHVRCHES11:30~ @ RED MARQUEE
滝のような雨が打ちつけるレッドーマーキーで、“Flash!!!”で幕開け。点滅を繰り返すライティングがフロアの興奮を煽る。叙情的なVo.&Key.井口理と攻撃的なVo.&Gt.常田大希の異質なボーカルが重なり合う。ヘヴィーな音の中に日本歌謡を思わせるライン。様々なカルチャーがミックスされ日々表情を変える街「東京」を象徴するようなバンドである。”Prayer X”では常田が鍵盤を操り魅せる。テクニカルな演奏はお手の物。まさに「鬼才」集団と呼ぶに相応しい。無駄なMCを一切排除したタイトな構成で全9曲。ラストの“サマーレイン・ダイバー”でオーディエンスは一様にハンズアップ。終幕後も会場は熱気と余韻に包まれたまま。気づけば外は小雨へと変わっていた。(Text: FM802 DJ深町絵里)
12:50~ @ GREEN STAGE
12:50~ @ RED MARQUEE
14:40~ @ WHITE STAGE
前日の台風の影響でお天気雨&強風に見舞われたため、およそ10分押しで、雨合羽にオレンジ系メタリックのツーピース、そして裸足というややケイティ・ペリーを彷彿させる出で立ちのケイシー、お揃いのオレンジとパープルの柄シャツで決めた総勢6名のバンドがオン・ステージ。
1曲目はゆったりとしたレトロ感満載のメロディに、ケイシーの甘美なヴォーカルが映える「Velvet Elvis」だ。カントリーを軸にしていることもあり、ペダルスティールやアップライト・ベースなどが取り入れられた本格派のバンド演奏に加え、曲によってアコースティック・ギターを弾いたり、ハンドマイクでステージを行き来するケイシーの立ち振る舞いは、まるで若き日のドリー・パートンのクラシカルさとコケティッシュさを持ち合わせている。そんなオールドスクールな魅力も兼ね備えていることもあって、集まった幅広い年代の観客に向かって「あなたはウィリー・ネルソンのTシャツを着てるの?そしてテキサスの旗!」とカントリー・ミュージックが日本でも受け入れられていることに嬉しそうな表情を見せていた。
トランペットのアクセントがピリリと効いた、ナールズ・バークレイ「クレイジー」の原曲のイメージを覆すマカロニ・ウェスタン調のカヴァーからは、彼女のアレンジャーとしての才能も伺えた。大好きだという「となりのトトロ」のサビを歌うキュートな一幕を挟み、ラストは、ケイシーが前回来日した際に知り合った4人の“着物ダンサーズ”が参加した「High Horse」。カントリー、エレクトロ・ポップと日本の踊りが織りなす斬新なコントラストに最初は観客もやや戸惑っていたようだが、ケイシーの軽やかな歌声、バンドのノリのいいアンサンブルに合わせ、自然と体を揺らしだし、手拍子で応戦。アウトロでバンドによるファンキーなジャム・セッションが繰り広げらる中、「ありがとう!またね!」と、後ろ髪を引かれる様子でステージを去っていったケイシーに拍手喝采が浴びせられた。
14:50~ @ GREEN STAGE
遅咲きの新人として、多彩な活躍を見せる注目の男がフジロックへ初登場とあって、多くのオーディエンスが集まった昼下がりの<GREEN STAGE>。カラフルなタイダイ染めセットアップを纏って登場した彼は爽やかな「夏」そのもの。大歓声を浴びながら、所狭しとステージ上を動き回り、ラップして、歌って、踊って、ドラムもバッキバキに叩いちゃいます。その姿は「あぁっ!オレがあと3人いたら!!」といった心の叫びが聞こえてきそうなほど。ステージ上で大忙しながら、安心してパフォーマンスに全力投球できるのは、凄腕のミュージシャンたちがグルーヴをしっかり支えているからこそでしょう。
ヒップ・ホップに、R&Bに、ソウルに、ジャズなどカラフルな彩りを見せるサウンドは、ひたすら観客を煽り、晴れ渡った苗場を揺らしてくれました。ステージに立つ本人が一番笑顔で楽しそうだったのが印象的なステージでした。アンダーソン・パークなのか、アンダーソン・パァクなのか。いや、お母様が韓国系ですので、アンダーソン・パックみたいです。
15:50~ @ RED MARQUEE
16:50~ @ GREEN STAGE
心配された台風が過ぎ去り、晴間も覗く夕方前のグリーンステージにジャック・ジョンソンがバンドメンバーと共に登場。日本語で「コンニチハ」と挨拶すると「Do You Remember」からやんわりとスタート。昨日のこの時間はマキシマムザホルモンが圧巻の狂宴を行なっていたとは思えないくらい、何とも幸せなサーフライクな空間と変貌する。途中4人編成のメンバーを日本語で紹介し、「ワタシハジャックジョンソンデス」と微笑ましい光景に会場の至る所から指笛がなる。中盤になると「Upside Down」をベースのメルロが歌ったり、「Wasting Time」ではキーボードのザックが主役ばりにソウルフルな歌声を響かせ会場から大きな拍手と歓声が上がる。さらにザックはピアニカを持ちだし素晴らしい演奏を披露し注目を集めていた。終盤にはスペシャル・ゲストとしグリーンスカイ・ブルーグラスからドブロギターのアンダース、マンドリンのポールを呼び込み、「Big Sur」を演奏し「Breakdown」ではジャックもウクレレを持ち参加。最後は「Banana Pancakes」で盛り上げ、「Better Together」でしっとりと締めくくった。
17:50~ @ RED MARQUEE
18:50~ @ GREEN STAGE
夏フェスに参加する方たちの恒例の悩みは、当日の観覧スケジュール管理ですよね。タイムテーブル発表までは、あのステージではあれ観て、それで、きっとこの後こっちのステージでこれ観て。。。なんて妄想を膨らませながら当日までの時間を楽しんでいるのではないかと思われます。そして、タイムテーブル発表後に膝から崩れ落ちる人も少なく無いでしょう。筆者もそのうちの1人だったりします。そう、万人にとって完璧なタイムテーブルなんて存在しないのです。
しかし、今年のフジロックは強気にでました。最終日のヘッドライナー、ボブ・ディランの公演中、主要ステージではライブが行われていませんでした。(苗場食堂では突撃隊が爆音でやってましたっけ・・・)そう、みんなでボブ・ディランを聴く時間だったのです。往年のファンたちから、名前くらいは知ってる勢、サブスクで予習はしてきた勢など、様々な世代の音楽ファンが、<GREEN STAGE>に集まりました。
開始予定より少し早めに登場したボブ・ディランは、ピアノと向き合い、たまに笑顔を見せながらパフォーマンス。フェス用のセットリストを用意してくれていたのでしょうか、彼のこれまでのキャリアを年代ごとに楽しめるような選曲でした。(筆者はまだまだ未熟な聴き手で、現地でわからない曲もありました。)名曲「風に吹かれて」の披露もありましたが、大規模フェスの定番とも言える<みんなが知っているあの曲を大合唱>なんてシーンは1秒足りともありませんでした。彼の歌う詩をしっかり聞いていないとほとんどの曲は原曲がわからないのですから。出演決定から散々議論され続けていた<アレンジのクセ!>がそこにありました。
熱心なファンはもちろんこれまでを追っていますから「これぞ!ディラン!やっほー!」と喜び、名前くらいは知ってる勢は「おー!ボブ・ディランって実在したんだー」と驚き、サブスクで予習はしてきた勢は「ぐふぅ、やっぱりか」と血を吐きだしたことでしょう。様々な思いが苗場で交差する中、ボブ・ディランは淡々と詩を紡ぎ、豪華なバンドメンバーと音を鳴らし続けました。夕焼けと風とボブ・ディラン。そこには映画のような光景が広がっていました。凄い音楽を聴いているという共通の感動持ちながら、ひとつになれない観客。
ぼんやりとしたリスペクトの塊と、個々の喜びや悲しみといった感情。この時間こそがフジロックの目指す場所だったのではないでしょうか。来場者のマナーだったり、ラインナップの変化だったり、万人にとって完璧でないが、あの時間、あの場所を求めて、目指す方角はざっくり同じ。進化を続けるお祭りが持つこの先の“答え”をチラリと見てしまった気がしました。
19:00~ @ RED MARQUEE
バンドの中心人物のデイヴ・ロングストレス、そしてベースのナット・ボールドウィン以外のメンバー(ドラムのマイクはバンド初期に2〜3年在籍)が一新した、新生ダーティ・プロジェクターズとしての初の日本でのライブということもあり、超満員の<RED MARQUEE>。まずエンジェル・デラドゥーリアン、そしてデイヴの元カノのアンバー・コフマンというバンドの強みでも合った、男女混合ヴォーカルのキーパーソン2人が脱退したこともあり、実は内心そこまで期待はしていなかったのだが、往年のひねくれたポップネスと珠玉のハーモニーが一段と磨かれたパフォーマンスを見せてくれた。
冒頭の「僕は初めて恋に落ちた」という詞の通り、明るいトーンのシンセと躍動感溢れるドラムスが、胸の高鳴りを彷彿させる最新作『ランプ・リット・プローズ』収録曲の「I Found It in U」でゆるりとライブがスタート。歪んだ、摩訶不思議なリズムが気持ちいい「Break-Thru」、メロウなR&B調サウンドにデイヴの高音ヴォーカルが光る「What Is The Time」と新作からの楽曲が立て続けに披露されていく。
続く「Cannibal Resource」ではギターのイントロから大歓声があがり、脱退したアンバーとエンジェルに変わり新たに加入した女性プレーヤー3人(フェリーシャ・ダグラス、マイア・フリードマン、クリスティン・スリップ)による、浮遊感のあるコーラスワークに観客も大盛り上がり。他にも『ビッテ・オルカ』からの「No Intension」、マイアがハニカミ気味に歌う「Swing Lo Magellan」やフェリーシャのビタースウィートなヴォーカルが印象的な「Cool Your Heart」など、ダープロ節というべき独特なリズムにのせ、彼女たちの美しい歌声が<RED MARQUEE>を包み込んだ。
この日、大注目となったのがデイヴの「コーヒー」と書かれたカタカナTシャツで、途中何度が「コーヒー」コールが客席から沸き上がり、笑いを誘うシーンも。デイヴが(カンペを見ながら?)積極的に日本語を話すシーンも多く、「フジロックは大好きなフェスだよ」という嬉しい言葉も。
終盤は、リリース時にその詞の内容が大きな話題となった、グリッチーな機械的ビートに乗せて、デイヴが途中ハンドマイクでラップ(?)する「Keep Your Name」から、温かみのあるギターラインにリズム隊の独創的なアレンジが絡み合う「Zombie Conqueror」、そしてラストはミラーボールの幻想的な光に、デイヴのファルセットが映える「Right Now」。「Now〜、Now〜」という清らかなリフレインが気持ちよく、デイヴの大失恋を経て、新たな一歩を踏み出したダープロの“今”が伺える燦爛たるライブだった。
20:40~ @ FIELD OF HEAVEN
最終日のヘブンのトリを飾るのは初登場となるグリーンスカイ・ブルーグラス。バンド編成はドラマーがいない、バンジョー、マンドリン、アップライトベース、ギター、ドブロギターの5人。最初の曲「Demons」の演奏が始まると全ての楽器がドンドンとスピードを上げ速弾きを披露。フロアからは自然とハンズクラップや歓声が発生する。夕方にジャック・ジョンソンのステージにスペシャル・ゲストとして参加していたマンドリンのポールが「フジロックサイコー!」と叫ぶといつの間にかヘブンいっぱいに増えていた観客がこれに応える。次から次へと5人から生み出される繊細で圧倒的なグルーヴにステージの照明が重なりフロアは幻想的な雰囲気となっていくと、ヘブン好きの観客は皆思い思いに身体を揺らし踊っている。「楽しんでる?」「ここに来てくれてありがとう」と感謝を述べつつ、最後はPHISHのカヴァー「Chalk Dust Torture」を披露し本編の幕を下ろした。鳴り止まないONE MOREコールに応え「またすぐに戻って来るよ」と心強い言葉残し1曲披露してステージは終了した。
21:20~ @ GREEN STAGE
22:30~ @ WHITE STAGE
最終日
公演情報
【FUJI ROCK FESTIVAL '18】2018年7月27日(金)、28日(土)、29日(日)
新潟県 湯沢町 苗場スキー場
開場9:00 開演11:00 終演予定23:00
INFO: http://www.fujirockfestival.com/
関連リンク
出演者のインスタグラムで振り返るフジロック
公演情報
【FUJI ROCK FESTIVAL '18】2018年7月27日(金)、28日(土)、29日(日)
新潟県 湯沢町 苗場スキー場
開場9:00 開演11:00 終演予定23:00
INFO: http://www.fujirockfestival.com/
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