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Spotifyがネクスト・ブレイク・アーティストをバックアップ Spotify Early Noise
サービス開始以来、ここ日本でも着々とユーザー数を増やしている世界最大手の音楽ストリーミング・サービス、Spotify。そんなSpotifyが日本の音楽シーンをさらに活性化すべく、目下力を注いでいるプログラムが「Early Noise」だ。
「Early Noise」とは、Spotifyがその年にブレイクが期待される新人アーティストを選出し、年間を通してバックアップしていくプログラム。その長期的な見立てによる多角的な活動支援は、早くもこの一年で着実な成果をあげつつある。ここからは早速その具体的なサポート内容を取り上げていこう。
まずひとつは、オリジナル・プレイリスト「Early Noise Japan」によるアーティストの楽曲紹介。知名度は一切問わず、気鋭のアーティストのフレッシュな楽曲が随時更新されていくこのプレイリストには、早耳のユーザーは勿論、常に新しい才能を探しているレーベルA&Rやラジオ・ディレクターも注目しており、実際に業界内での評判はかなり高まってきている。
また、このプレイリストには国内アーティストだけでなく、アジア各国の注目すべき若手アーティストもたびたび収録。その一方で各国の新人プレイリストでも日本のアーティストが取り上げられたりと、プレイリスト上で海外のシーンと連動しているのも「Early Noise」の大きな特徴だ。これもまた世界各地に多数のユーザーを抱えるSpotifyならではといえるし、恐らくそう遠くないうちにこの連携をきっかけとして、アジアのマーケットに進出する国内アーティストも現れるだろう。
こうしてSpotifyでお気に入りのアーティストを発見したら、実際にそのライブを観たくなるのは当然の心理。そこで「Early Noise」が年間サポートの一環として行っているのが、ライブ・イベント「Early Noise Night」。つい先日に開催された第5回ではチケットが即完するなど、こちらもすでに早耳の音楽ファンから熱烈な支持を集めている。
「Early Noise Night」は毎回3~4組のアーティストが出演する、いわゆるショーケース・イベント。注目すべきはそのクロスオーヴァーなラインナップで、それこそ通常のブッキングではなかなか実現しないようなジャンルレスな組み合わせが非常に新鮮だ。過去5回の顔ぶれをおさらいしてみよう。
(1)RIRI / WONK / JABBA DA HUTT FOOTBALL CLUB
(2)向井太一 / 大比良瑞希 / chelmico / YonYon(DJ)
(3)CHAI / Tokyo Health Club / あいみょん
(4)STUTS / JJJ / CHICO CARLITO / MIYACHl
(5)羊文学 / カネコアヤノ(BAND SET) / SPiCYSOL / ドミコ
「vol.5 羊文学 / カネコアヤノ(BAND SET) / SPiCYSOL / ドミコ」
ロック・バンドからR&B系のシンガー、ラッパーにいたるまで、これだけバラエティに富んだアーティストが1000円プラス1ドリンクで一気に観られるというのは、熱心な音楽ファンからすればかなり嬉しいはず。会場となるのは、2016年にオープンしたスタイリッシュな多目的スペース「代官山SPACE ODD」。フロアの中心にステージを設置し、アーティストが囲まれる形で行われるパフォーマンスは視覚的にも面白いし、一般的なライブ会場と比べて、アーティストとオーディエンスの距離感が近いのも魅力的だ。
ライブ・イベントとプレイリストを組み合わせた「Early Noise」のプログラムは、すでに数字上でも結果を出し始めている。試しに各アーティストの月間リスナー数を集計してみたところ、「Early Noise Night」第1~3回の出演アーティストはその後リスナー数が平均で10倍に増加。なかでもその成長ぶりが著しいのが向井太一で、昨年の「Early Noise Night」出演時と比べ配信曲数自体も増えているものの、その後の月間リスナー数は65倍以上に増加した。
また、「Early Noise」を介した長期的なサポート体制は、アーティスト側とSpotifyの相互理解を深めることにもつながっているようだ。たとえばエクスペリメンタル・ソウル・バンドのWONKは、当然ジャズやヒップホップなどのジャンル系プレイリストでもよく聴かれているが、同時にヴォーカルの長塚健斗はフレンチのシェフでもあり、音楽と食文化を絡めることにも意欲的だという。このように「Early Noise」を通じた継続的なやりとりはアーティストの音楽性や個性をSpotify側が深く把握することにもつながり、実際にWONKの楽曲は夕食時のBGMに最適な「Dinner Music」などのシチュエーション別プレイリストにも収録され、人気を博している。要はこうしたアーティストとSpotifyの相互理解があらたな試みに発展し、それが新たなファン層の獲得にもつながっているのだ。
プレイリスト上での発見がライブへと足を運ぶことにつながり、そこからアーティストのディープなファンが増えてゆく。どうやらそんな好循環を生み出していくことが「Early Noise」というプログラムの本質と言えそうだ。そして、6月15日には大阪でも「Early Noise Night」の初開催が決定。出演は、向井太一とあっこゴリラ。そして福岡のロック・バンド=Attractionsに、大阪出身のヒップホップ/R&Bシンガー=SIRUP(シラップ)という、周辺地域を拠点とするアーティストも加わった計4組。様々なジャンルを跨ぎつつ、関西圏ならでは旬なラインナップがここに実現している。もしこれを皮切りに「Early Noise Night」が日本の各地域に派生していくようなことがあれば、それはローカルな音楽シーンの活性化にも結びつくはず。いずれにせよ「Early Noise」の長期的なサポート体制はストリーミング時代の新たな指標となっていきそうだ。
公演情報
【Spotify Early Noise Night #6】
2018年6月15日(金)開場 22:00 / 開演 22:30
場所:大阪・Music club JANUS
料金:前売券 1,000円(tax in.) / 当日券 2,000円(tax in.)
出演:あっこゴリラ、Attractions、SIRUP、向井太一
INFO: https://www.creativeman.co.jp/event/senn01/
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Text: 渡辺裕也
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