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カケハシ・レコード presents ソフト・マシーン来日記念特集~“ジャズ・ロック”を創出した偉大なるバンドの軌跡~
英国ジャズ・ロックの最高峰ソフト・マシーンが、2018年7月に来日公演を行う。「Farewell Japan Tour」と銘打たれた今回の公演が文字通り彼らにとって最後の来日となることが決定している。常にジャズ・ロック・シーンの先端を走ってきた彼らの足跡を追ってみたい。
(文:カケハシ・レコード 佐藤健太郎)
「ジャズ・ロック」を創出した偉大なるバンド、ソフト・マシーン
70年代前半に、いわゆる5大プログレ・バンドを中心として隆盛を極めたプログレッシヴ・ロック。その最大の特徴は、ジャンルの垣根を超えて様々な音楽とロックを融合させた、創造性溢れる音楽性にあると言っていいだろう。その中でもジャズの要素を大きく取り入れたスタイルはジャズ・ロックと呼ばれ、プログレにおいて特別な位置づけを持つサブジャンルとして人気を誇ってきた。名実ともにその代表格と言えるのがソフト・マシーンだ。
彼らは、サイケデリック・ロック全盛の60年代後期、サイケにジャズの要素を取り入れたサウンドでデビュー。次第にジャズの要素を強めながら、即興性を伴った硬派なジャズ・ロック・スタイルを確立し、その後はフュージョンやミニマル・ミュージックとも呼応した構築的かつ洗練されたサウンドを提示した。その歩みはまさにジャズ・ロック発展の歴史そのものと言っても過言ではない。
そんな彼らの代表作が、70年に発表されたサード・アルバム『Third』。20分弱の楽曲4つという重厚な構成を持つ本作は、ジャズ/フリージャズに由来する即興性や実験性と、ロックの骨太なダイナミズムの融合を完全なものとした歴史的傑作として、プログレッシヴ・ロックの歴史に深く名を刻む一枚となった。
ジャズ畑のミュージシャンがロックのフィールドへと乗り込んだ「フュージョン」の流れを、リターン・トゥ・フォーエヴァーやウェザー・リポートといったアメリカのグループが担ったとすれば、ロックサイドからジャズへのアプローチを図った「ジャズ・ロック」の象徴は、間違いなく英国のソフト・マシーンであり、この『Third』なのである。
ロックとジャズの融合を語る時、ソフト・マシーンはその中心に位置する最重要の存在であると言えるだろう。
公演情報
ソフト・マシーン
~Farewell JAPAN Tour~
ビルボードライブ東京:2018/7/28(土)-29(日)
1st Stage Open 15:30 Start 16:30 / 2nd Stage Open 18:30 Start 19:30
>> 公演詳細はこちら
ビルボードライブ大阪:2018/7/31(火)
1st Stage Open 17:30 Start 18:30 / 2nd Stage Open 20:30 Start 21:30
>> 公演詳細はこちら
【BAND MEMBERS】
ジョン・エサリッジ / John Etheridge(Guitar)
セオ・トラビス / Theo Travis(Saxophone, Flute, Fender Rhodes)
ロイ・バビントン / Roy Babbington(Bass)
ジョン・マーシャル / John Marshall(Drums)
【Special Guest】
ゲイリー・ハズバンド / Gary Husband(Keyboards)
Shop Info
カケハシ・レコード
INFO:http://kakereco.com/
ソフト・マシーン、その軌跡
先にも述べた通り、ソフト・マシーンはデビュー以来その音楽スタイルを様々に変化させながらジャズ・ロックを追求してきた。
60年代にリリースされた初期2作品は、時代らしい熱気あるサイケデリック・ロックをベースとしながらも、密度の高いジャジーなアンサンブルとポップなメロディが躍動する革新的なサウンドで、当時称賛をもって迎えられた。
68年のデビュー作『ソフト・マシーン』は、ロバート・ワイアット(D/Vo)、ケヴィン・エアーズ(B/Vo)、マイク・ラトリッジ(Key)の若き才能がぶつかり合い、火花を散らすような作品。知的にひねくれたポップ・センスとファズ・オルガンを主体とした緊張感ある演奏が心地よい混沌を生み出す、全く一筋縄ではいかないサウンドに痺れる一枚だ。
1stリリース後に脱退したエアーズに代わりヒュー・ホッパーが加入。前作を踏襲しつつも、ジャズ由来の即興性がより強まり、スピーディーでキレのあるインストゥルメンタルが全編で楽しめる69年の2nd『Volume Two』も聴き応えある作品だ。粗削りながら、次作で完成を見るジャズ・ロックの原型と言えるサウンドを聴くことができる点にも注目したい。
ソフト・マシーンの本領と言える硬派で知性的なジャズ・ロックを味わうなら、ここからの3作がうってつけだろう。
70年発表の『Third』は、サックス奏者エルトン・ディーンを新メンバーに迎えるとともにゲストにも複数の管楽器奏者が参加し、重層的な管楽器群とファズ・オルガンが描く、深遠かつ芳醇な音世界があまりに素晴らしい傑作となった。ジャズ・ロックというジャンルを今まさに切り拓いていくようなクリエイティブな演奏に興奮すら覚える一枚である。
71年発表の『Fourth』も前作と同一路線上にある作風だが、リズム・セクションに存在感が増し、よりロックのパワフルさを感じさせる躍動感あるサウンドを提示している。
前作を最後に脱退したロバート・ワイアットの後任ドラマーに元ニュークリアスのジョン・マーシャルを迎えた72年の『Fifth』は、前作とは対照的にジャズ・エッセンスが濃厚な落ち着きあるサウンドを聴かせる「いぶし銀」な作風が印象的な一枚だ。
ここで、エルトン・ディーンが脱退し、マーシャルに続き元ニュークリアス組のキーボード/管楽器奏者カール・ジェンキンスが参加。彼の加入をきっかけに、バンドはジャズ/フリージャズとロックの融合という従来の路線から、フュージョンやミニマル・ミュージックの要素を取り入れた新たなジャズ・ロックの創造へと移行していく。
73年発表のライヴ・テイクとスタジオ・テイクで構成された2枚組大作『Six』。特に注目したいのはスタジオ・テイクで、ミニマルなキーボード・フレーズに熱気あるジャズ・ロック・アンサンブルが被さっていく個性的なサウンドに驚かされる。加入直後ながらジェンキンスの才覚が早くも発揮された秀作だ。
前作をもってヒュー・ホッパーが脱退し、後任ベーシストとしてロイ・バビントンが新たに加入。前作と同年に発表された『Seven』では、前作のミニマル要素を押し進めた反復フレーズを軸にした曲構成と、フュージョン・タッチのなめらかなプレイ・スタイルを組み合わせた、緻密に練られた曲構成と洗練されたサウンドを聴かせている。
デビュー以降初となるギタリストを迎え、ギター特有のエッジの立ったハードな質感が加わったここからの2作も必聴の力作と言えるだろう。
数々のバンドを渡り歩いた名手アラン・ホールズワースをギタリストに迎えた75年作『Bundles』。テクニックを前面に押し出したテンションみなぎるフュージョン・スタイルが問答無用でカッコいい。リターン・トゥ・フォーエヴァーにも匹敵する熱量と英国らしいクールな佇まいが同居した本作は、『Third』に並ぶ人気作だ。本作をもってマイク・ラトリッジがバンドを去り、これをもってバンドは初期メンバーから完全に入れ替わる形となった。
前作限りで脱退したホールズワースに代わるギタリストにダリル・ウェイズ・ウルフ等で活躍したジョン・エサリッジ、そして管楽器奏者アラン・ウェイクマンが加入。76年の『Softs』は、前作で提示したテクニカル・フュージョン路線を押し進めつつも、叙情的でエモーショナルな表現にも磨きをかけた前作に劣らぬ完成度の逸品だ。
78年までライヴ活動を行なったのち、バンドとしての音楽活動を終了。
81年に実質的なカール・ジェンキンスのソロ作と言える『Land Of Cockayne』を残し、ソフト・マシーンは解散状態となる。
それから約20年を経た99年、旧メンバー達を中心に立ち上げられたプロジェクト・グループ、ソフト・ウェアが発足。その後ソフト・ワークスへの改名を経て06年にはソフト・マシーン・レガシーへと発展する。
レガシー名義で発表された06年作『Soft Machine Legacy』や13年作『Burden of Proof』を聴いて、その往年と変わらぬ知的にして芳醇な、彼らにしか鳴らし得ぬサウンドの健在を喜んだファンも多かったのではないだろうか。
公演情報
ソフト・マシーン
~Farewell JAPAN Tour~
ビルボードライブ東京:2018/7/28(土)-29(日)
1st Stage Open 15:30 Start 16:30 / 2nd Stage Open 18:30 Start 19:30
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ビルボードライブ大阪:2018/7/31(火)
1st Stage Open 17:30 Start 18:30 / 2nd Stage Open 20:30 Start 21:30
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【BAND MEMBERS】
ジョン・エサリッジ / John Etheridge(Guitar)
セオ・トラビス / Theo Travis(Saxophone, Flute, Fender Rhodes)
ロイ・バビントン / Roy Babbington(Bass)
ジョン・マーシャル / John Marshall(Drums)
【Special Guest】
ゲイリー・ハズバンド / Gary Husband(Keyboards)
Shop Info
カケハシ・レコード
INFO:http://kakereco.com/
現在のソフト・マシーンとライヴの見どころ
09年以降、ジョン・エサリッジ(G)、テオ・トラヴィス(Sax/Flu)、ロイ・バビントン(B)、ジョン・マーシャル(D)という不動の4人で活動してきたソフト・マシーン・レガシー。2015年には、偉大なバンドの歴史を再び紡ぐことへの決意を表明するように、オリジナル名義であるソフト・マシーンへの復帰を果たしている。
レガシー時代の15年3月に公演を行なったビルボードライブのステージに再び上がることになる4人だが、ソフト・マシーンとしては今回が初めてにして最後の来日公演となる。
前来日公演時は、『Third』の「Facelift」や『Six』の「Gesolreut」 、『Bundles』の「Hazard Profile」などファンにとってはたまらない曲の数々を聴かせてくれただけに、今回も往年の名曲達がプレイされることに期待したい。
レガシー時代からほぼ10年にわたり活動を共にするメンバーによる息の合った職人的アンサンブルを、ステージから程近い距離で堪能できるのは、あらゆるロック・ファンにとってこの上ない体験になることは間違いないだろう。
ジャズ・ロックの歴史を作ってきた名バンドの最後の勇姿を、しっかりとその目に焼き付けてほしい。
Text:カケハシ・レコード 佐藤健太郎
公演情報
ソフト・マシーン
~Farewell JAPAN Tour~
ビルボードライブ東京:2018/7/28(土)-29(日)
1st Stage Open 15:30 Start 16:30 / 2nd Stage Open 18:30 Start 19:30
>> 公演詳細はこちら
ビルボードライブ大阪:2018/7/31(火)
1st Stage Open 17:30 Start 18:30 / 2nd Stage Open 20:30 Start 21:30
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【BAND MEMBERS】
ジョン・エサリッジ / John Etheridge(Guitar)
セオ・トラビス / Theo Travis(Saxophone, Flute, Fender Rhodes)
ロイ・バビントン / Roy Babbington(Bass)
ジョン・マーシャル / John Marshall(Drums)
【Special Guest】
ゲイリー・ハズバンド / Gary Husband(Keyboards)
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INFO:http://kakereco.com/
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