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GOING UNDER GROUND 松本素生インタビュー ~CDデビュー20周年を語る。



GOING UNDER GROUND 松本素生インタビュー

 GOING UNDER GROUNDは1998年にCDデビュー作「Cello」を発表してから、今年で20周年を迎えた。そしてこれを記念し、初期のアルバム「かよわきエナジー」(2001年)、「ホーム」(2002年)、「ハートビート」(2003年)の3作を再録盤として、1月から3か月連続でリリース。そこには、当時と変わらないみずみずしくエモーショナルな音楽の輪郭がありつつも、同時に今のバンドが持つ多幸感も存在した。そこで今回、フロントマンである松本素生(G&Vo)にインタビュー。これまでのバンドの歩み、自身の変化、今作で伝えたかったこと、現在のGOING UNDER GROUNDこと……隠すことなくすべてを語ってくれた。その飾らない言葉は彼らの音楽同様、きっと心の奥に届くはず。

失敗も成功もなくて、ただただ楽しい

--バンドは今年、CDデビュー20周年。20年間を振り返ってみていかがですか?

松本素生:楽しかったです、20年間! メンバーも抜けてるし事務所も一回離れてるし、(バンドを)やめるタイミングはたくさんあったけど、やめなかったってことは楽しかったんだなって思いますね……好きだからやってるなって。山あり谷ありだけど、結局、そこも楽しめるようになって来ましたね。

--“楽しい”という気持ちで続けられるというのがすてきです。今は苦悩に押しつぶされそうに音楽をやっている人も少なくない気がするので……。

松本素生:音楽は特にそうだと思うし、自分たちもそこからだけど、気持ちの出発点としては負のパワーって大事。でもそのままやるのって辛いし、見てる側もそんなに楽しめないというか……。俺らはライブとか音楽の場を楽しいこととしてやってるから、それ(負)だともう満足できないんですよね。生活も変わって年を取って、例えば俺は店(東京にある「Bar 天竺」)もやりながら、中澤は中澤でバンド以外の音楽も制作しながら、暮らしの中で(音楽を)やってるわけじゃないですか。だからライブを1本やるっていうのも、俺らにとって相当特別なことなんですよね。非日常。一番楽しい場所。失敗も成功もなくて、ただただ楽しいようにやるっていう。だから、負の感情で終わっちゃうって、そんなもったいないことできない!っていうね。

--いろいろ乗り越えられたから、その考えに行き着けたんですか?

松本素生:どうなんですかね。でも、やならやめちゃえ!って思う瞬間とかありますけどね(笑)。やっぱり若い子たちは、すごくストイックだしね。

--はい。売れるには?みたいなことも、彼らはものすごく考えていますよね。

松本素生:最悪、売れなくても何も問題ないと思うんですよ。音楽をやれているなら。ただ問題はないけど、せっかくやるなら音楽で稼いで、次はこういうレコーディングしたいとか、そういう風に思うのはわかる。でも、別に誰からもバンドやってくれって頼まれてるわけじゃないしね。あ、俺は嫁からもそう言われてないから(笑)。だから家で“疲れた”とか言っちゃいけないんです。言うと“だったらバンドやめれば?”って言われる(笑)。それ(そういう考え方)って確実に自分たちのバンドの今に反映されてるし、そういうメンバーが残って今やってるんだと思うし、それで20年前より今の方が楽しいって思えるのは良かったなと思いますね。

--そういう姿をぜひ若い世代に見てほしいです。

松本素生:でもね、実はそういう人って僕ら以外もいっぱいいますよ、昔も今も。だけど、売れたいって思う人とは交わってない。例えばフェスに出ることが夢って人と、こっちは全然交わらない。でもこっちはこっちで、すごくふくよかな音楽をやっている人がたくさんいる、若いバンドでも。

--でも、GOING UNDER GROUNDは大舞台を中心とする世界も、そこと交わらない世界もどちらも見ていますよね。

松本素生:そうですね。そこはまじめなんだな。邪念がない。純粋! 純粋ボーイ(笑)!! バンドって人気が出たりCDが売れたりすると、お客さんがいるということ……聴いてくれてる人がいるということがわかるようになるじゃないですか。で、“その人たちのために!”ってなっちゃいがち。でもね、そうじゃないなっていうのに気づいたんですよ。お客さんのためにじゃなく自分のために作ったもの……“俺、こういう気持ちで作ったんだよね”っていうのを伝えても、最終的なゴールがそこ(お客さんのため)だと本末転倒になる。そこはね、やっぱ20年やってたらわかりますよね。

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バンドが好きだって気付いちゃったんですよね

--確かにまじめなほど“お客さんのために”ってなりそうですね。

松本素生:ただね、GOING UNDER GROUNDをやって気付いたのは、例えば武道館でやったらOKとか、CD売れたらいいとか、そういうことでは一切なかったなって……。もうそれより、やっぱり今が楽しいって思えるってこと……現在進行形で音楽をずっと作って、ああでもない、こうでもないって言いながらできることが、自分たちにとって一番宝物の時間っていうことだから。やりたいようにやって失敗するんだったらいいじゃないですか。でもやりたいようにもやれずに失敗するのは辛いからね。

GOING UNDER GROUND - かよわきエナジー 2018 〜forevergreen〜(Teaser)
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--そう思えることが20年続けられる理由ですね。そんな時を経て、今年は1月から3か月連続で懐かしい初期3作の再録盤がリリースの運びに……。

松本素生:最初は物販用に作ろうっていう話で……。ライブに来た人にパッと手に取ってもらえるような、弾き語りのアルバム作ろうって言って作ってたんですけど、いざやり始めたら、こうしたい、ああしたいってなって、ちょっとこれいいな!ってなったんですよね。

--まさに、先ほどの話ですね?

松本素生:そう。楽しくなっちゃって。で、これで20周年を盛り上げていきたいっていう話になったから、じゃあ初期の3作……一番の代表作というか「かよわきエナジー」、「ホーム」、「ハートビート」を!っていう。ここにはドンズバの世代がいるし、そういう人たちに“俺ら元気にやってるぜ!”っていうのも“お前はどうだい?”っていうのも含めて、この3作を(再録しよう)ってなったんですよね。

GOING UNDER GROUND - ホーム 2018 〜midnightblue〜(Teaser)
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--そういうメッセージを込めての、3作のセレクトだったんですね。

松本素生:実は、この(3作の)前に「GOING UNDER GROUND」っていうアルバム(2000年)があって、その後「グラフティー」(2001年シングル)ができるまでに、バンドの“爆発”があったんですよ(笑)。ビッグバンじゃないけど“こういう風にやればいいんだ! こうやったら俺たち、自分たちの胸の中でモヤモヤしているものを言えるぞ!”って。それで「グラフティー」ができた。その後の3作なんで、要は型ですよね。GOING UNDER GROUNDっていう型の3作。だから、「ハートビート」までで一回完結しているちゃ、完結してるんですよ。で、どういう風に広げていくか?とか、どう型を破っていくのか?っていうのが、それ以降。

GOING UNDER GROUND - ハートビート 2018 〜emotionalred〜​(Teaser)
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--と、なると20年分、3作以外のいろいろな時代を網羅したくはなりませんでしたか?

松本素生:でも、初武道館(2006年)の後とかは、まだリアルタイム過ぎて振り返るにはちょっと早いかなと……。

--そこはバンドにとって、どんな時代ですか?

松本素生:その前の「ハートビート」までで、まずはやっと地球に水と草が生え始めた(笑)。生き物が生まれて……。

--で、一回完結。そして……?

松本素生:その次は「h.o.p.s.」(2005年)から「TUTTI」(2006年)まで。この辺は“幸せ期”。何やっても楽しい感じ(笑)。で、そこから(伊藤)洋一が脱退(2009年)するまでが“思春期”。もっとこうしたいのに!とか、もっとこう思われたいのに!とか、バンドとしての自意識がやっと芽生えた。だからここからの楽曲は重厚感をまとうようになってきたと思う。で、その後に来るの(転機)が、(河野丈洋)脱退(2015年)。

--その時はもう“思春期”の悩みからは解放されていますか?

松本素生:そうでもない。まだ辛い(笑)。音楽が好きかどうかわかんない!みたいな。この辺で俺、結婚して家族ができるんですけど、青春の終わりだと思ってて……ここが。いろいろ考えて答えが出たんですけど、自分が青春真っ只中だと思っている時は自分が一番大事なんですよ。自分が見ているものがすべてで、それがプライオリティーの一番。でも子供ができると子供が一番大事になるし、自分より好きな人ができるってことじゃないですか。その時が青春が終わる時だなって。自分以上に好きな人ができた時が青春の終わりですね。でもそこで結構、それ(青春の終わり)ってどうなの?って悩んだりもしてる。

--その悩みは解決したんですか?

松本素生:いや、不安はそのまま連れて行く!みたいなことですね。でもね、バンドが好きだって気付いちゃったんですよね、丈(河野)が辞める時。実はここで一回解散の話になるんです。丈がやめるって言った時、俺とナカザ(中澤)は解散するって言ったんですよ。もういいだろう、潮時だって……。でも石原がやめたくないっていう話になって、じゃ、一回持ち帰って考えてみる?ってことになって考えた時、“あれ? バンドに責任はないな”っていう……。ただ(バンドと)それぞれの思惑が違うだけ。それ(各自の思惑)を理由にして、今までやってきたGOING UNDER GROUNDを終えるのは、“私情過ぎません?”って思えて、“やっぱりやろうと思う”ってナカザに電話したんですよね。それで、そこからまた変わっていく。

--そこから今はどんな時期ですか?

松本素生:最高に楽しい(笑)。もう一回デビューしたみたいな気でいる。自分が考えていること、思っていることを盤にして、音楽作ってライブやってって等身大でできてる。やっと自然体でできるようになったから、デビューに戻って一周した感じですね。バンドをやってるのも俺、店をやってるのも俺。前はそれをわざわざ一個のバンドっていうフィルターを通してじゃないと“自分ってこうです”って言えなかったのが、今は“全部、俺!”って言える。そういう意識になったのは大きいですね。
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年を取ったら年を取ったなって思える音楽が一番いいな

--そんな風に今を楽しむGOING UNDER GROUNDがアレンジして音を出しているからなのか、今回の再録3作は、聴くとオリジナル当時とは違った感情に……。泣くかと思っていたのに、泣きませんでした(笑)。

松本素生:ま、そうなるでしょうね。思い出いっぱいで期待して聴くと、結構裏切られるかもしれない(笑)。でも敢えてそうしたかったんですよね。思い出いっぱいにするなら、もっと別のやり方があるんですけど、今回はそうじゃなくて……。自分たちも楽しいと思ってできたし、なんか、曲の骨格だけを取り出したかったんですよ。例えば「ダイアリー」は、もともとは卒業式で歌う感じの(再録に近い)ゆっくりとしたバージョンで作ったんですよ。でも、みんな(バンド)に持って行って自然と8ビートになったんですよね。実はうちのマネージャーは、オリジナルの8ビートのバージョンは何とも思ってなかったんですけど、今回のアレンジで聴いたら“むちゃくちゃいい曲ですね!”って……(笑)。でも、そういうことになりたかったんですよね。もっと“自分のキモはここなんですよ”っていうのにフォーカスしたかったんです。

--それはオリジナル当時のことをしっかり思い出すことになりますよね。

松本素生:「かよわきエナジー」は本当に瞬発力というか“やっとできる!”っていう喜びで作っているんですけど、「ホーム」は基本的に暗いんですよ。当時“なんでBUMP OF CHICKENぐらい売れないんだ?”みたいなのもあって(笑)、精神状態的にちょっと深い所に落ちて行ってて、あの頃は友達も全然いなくて、夜、一人自転車に乗ってウォークマン聴きながらブラブラして……。だからもう一回レコーディングしても、何かどんよりというかね。そういうアルバムだったから、(今回も)こういう色になっていくんだなって……曲に呼ばれるというかね。変えようがない部分がわかったし、だから楽しかったですね。

--さて、そんなより濃厚さを増した3作を、それぞれ一夜ごとにステージで体現するライブが間もなく!

松本素生:今回のライブはちょっと今作の作り方に近くて、楽曲の骨格は変わらないんですけど、ロックバンドという集合体で鳴らすというより、この曲を作ってきた自分たちが、その曲を演奏家としてやるっていう感じです。だから主役は俺らではなくて曲。勢いじゃなくて、ちゃんと心の奥深い所まで届けられるように!っていうやり方です。

--できることも考え方も感覚も20年で幅が広くなったからこそのライブ。やっぱり楽しそうです。

松本素生:あとね、できないこともわかるから。だったら今の最善で、一番楽しめるやつをやろうよっていう。無理な調整はしない。俺、本当に等身大が一番いいと思ってるから、バンドも音楽も。年を取ったら年を取ったなって思える音楽が一番いいな。常に時間が進んでるバンドが好きです。そういう音楽が好きだし、そういう人が好きだし、自分もそうありたいなって思う。だから今回、主役は曲で、それを現在進行形の演奏家として、ボーカリストとしてセルフカバーで演奏します。ぜひ、楽しみにしていてください。

Text by 服田昌子
Photo by 塚田智一(KAFKA photograph)

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真夏の目撃者

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