伸びやかなボーカルが悪天候でも目の前を晴天に変えていく

　　9月1日、2日に山中湖で行われた【SPACE SHOWER SWEET LOVE SHOWER 2012】で、総勢最も注目を集めたのはやはり山下達郎。不安定だった天気も彼の音楽に味方し、一時は晴れ間も見せてくれた。

　今年ソロデビュー35周年ということもあり、全国ツアーや、ベスト盤の発売、過去のライブ映像でまとめたシアター・ライヴなど話題も多かったが、やはりこのイベントへの出演はその中でも大きなトピックとなっていた。テレビ出演も無く、ツアーチケットは入手困難で野外の音楽フェス出演はあり得ないと思われていたが、2010年の【RISING SUN ROCK FESTIVAL 2010 in EZO】に出演、生きる伝説が生きていることを証明してくれた。その【RISING SUN ROCK FESTIVAL 2010 in EZO】以来となる今回も期待に胸を膨らませた幅広い年齢層の音楽ファンが山中湖に集まった。

　ほぼ予定時刻に本人が登場すると会場から「待ってました！」と大きな歓声が上がり、彼らを迎える。リヴィング・レジェンド本人を初めて目の前にした観客からは「本物だ！」、「動いてる！」、「喋った！」などの声も聞こえてくる。山下達郎本人による巧みなギター・カッティングで幕を開け、「LOVELAND ISLAND」のコーラスパートを軽く披露し、ライブの定番である「SPARKLE」からスタート。伸びやかな彼のボーカルは悪天候でも目の前を晴天に変えていく。

　「こんにちは、山中湖！ 思ったより若い人がたくさんいて恥ずかしいです。大学の学祭の真ん中に先生バンドが紛れ込んだような、そんな感じがします（笑）」と軽いMCの後に「DONUTS SONG」。某ドーナツ店のCMソングとして長年親しまれてきた本楽曲では「拍手、手拍子！」と観客が大きな手拍子で盛り上がり、一体感は高まっていく。「富士山も2回登ったことがあります」と話し、「山の中なので山の曲を」と紹介し、始まったのは「僕らの夏の夢」。若いファンにも親しみのある曲を連続で披露してくれた。

　「お祭りですから、スペシャルゲストを呼びました。この人です。」と紹介し、ギターが奏でたのは「家に帰ろう（マイ・スイート・ホーム）」のイントロ。軽やかに竹内まりやがステージに登場し、あのやさしいメロディーを披露。続いて「元気を出して」では「ラララ」の大合唱で会場が幸せの空気で満たされていく。空もこれを察知したのか太陽も顔を出してくる。竹内まりやがステージを去ると「ちょっと得した気になったでしょ？ 」の言葉通りに観客は大満足の雰囲気。そして、富士山が歌詞に登場するファンクブルース「俺の空」ではクリーントーンだった山下達郎のギターも歪んだ音色に変えて佐橋佳幸（Ｇ）とのギターバトルを展開。曲のラストに「返せよ、この野郎！」の一言が際立った。続いて疾走感たっぷりの「BOMBER」で更に会場をヒートアップさせてゆく。

　男気たっぷりの2曲の後、「アトムの子」に突入。手拍子はどんどん大きくなり、お祭りムードは最高潮に。「青い水平線を?」と歌う「RIDE ON TIME」のイントロで更に会場は盛り上がっていく。伸びやかなボーカルと完璧と言えるバンドの演奏が山中湖の大自然に響きわたる。メンバー紹介の後メンバー全員がステージ中央に集まり、クライマックスと思いきや、「もう一曲やります」の一言。観客が夏の終りのこの時期に一番聴きたかったであろう「さよなら夏の日」のプレゼント。また少し雨の降りだす中、シンクロするように「雨に濡れながら僕等は大人になって行くよ」と歌うこの曲に多くの観客が酔いしれた。山中湖という最高のロケーションと最高に上質なポップスは大自然に共鳴するように鳴り響いた。

　「この後はPerfumeです。僕も観て帰ります（笑）」と言われたPerfumeは次のステージで「夏は9月末までです！（のっち）」と宣言し、松田聖子の「夏の扉」で終わったはずの夏を再開させた。流石。

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