Billboard JAPAN


Special

フォール・アウト・ボーイ 『マ ニ ア』インタビュー~全米1位を獲得した最新作をメンバーが語る



フォール・アウト・ボーイ インタビュー

 フォール・アウト・ボーイが約3年ぶり、7枚目のスタジオ・アルバムを完成させた。2017年9月にリリースされる予定だったものの、そのクオリティーに満足できなかったバンドがリリースを延期。そして出来上がったのはEDM、トロピカル・ハウス 、ソウル、ポップなど取り入れた斬新かつ多彩な意欲作『マ ニ ア』だ。 アルバムは米ビルボード・アルバム・チャート“Billboard 200”にて初登場1位をマークし、 3作連続首位を獲得。4月には自身初となる武道館公演を含むジャパン・ツアーを控えている。 ここでは、 今作のリリースを記念して米ビルボードが行ったインタビューをお届けする。取材が行われた米NYタイムズ・スクエアのアーケード、Dave & Buster’sで撮影されたショートムービーも必見だ。

TOP Photo: Getty Images Entertainment

このアルバムは、過去2作より多くの生の楽器を用いている

――『マ ニ ア』は2017年9月19日にリリース予定でしたが、1月19日に延期したのは?

パトリック・スタンプ:焦りすぎていたんだ、単純に。アルバムを作るべきやり方ではなかった。リリース日に間に合うように慌てて曲を完成させようとしていた。ソングライティングよりリリース日が重要になってしまって、それってバカみたいだろう。音楽はそんな風に作るものじゃないし。アートはそんな風に作るものじゃない。

――数か月延期したことで得られたものは?

ピート・ウェンツ:これまで下してきた中で一番ベストな決断だったと思う…確か延期を決めた3日後に「The Last of the Real Ones」を書いたんだ。あの曲はアルバムにとってターニング・ポイントとなった。「Young and Menace」を書いた時、「これからどうすればいいんだ?」って感じだった。「~Real Ones」を書くまで確固たる場所をつかめてなかったと思う。

――当初のアルバムのサウンドはどんなものだったんですか?

ピート: 説明する一番いい方法は…俺たちには「1曲だけ知ってる」っていうライトなファンからアルバムをとことん聴きこむ熱狂的なファンまでいる。プレイリストに入れたり、シングルにしても面白くない曲もあって、アルバムに収録するには質や深みが足らなかった。とりとめのないクソみたいな感じって言ったらいいかな。ごく普通、まあまあな感じだったんだ。



▲ 「The Last Of The Real Ones」MV


――自分の音楽をとりとめのないクソみたいなと表現するとは中々厳しいですね。

ピート:まぁ、でも実際そうだったからね!俺たちはアニバーサリー・ツアーなんかもやってない。それをやるのが嫌だったら、自分が普通と思うような作品はリリースできない。

――もっと「Young and Menace」のようなエレクトロニックよりだった?

ピート:そうだな… 俺が思うに「Young and Menace」 は音楽的にショッキングで、あれほどショッキングなものはなかったけれど、よりああいうスタイルのものはあったよ。

――アンディ、ドラマーとしてのアルバムに対する見解は?特に 「Young and Menace」がスタート地点になったはことは、あなたにとって大きな変化でしたか?

アンディ・ハーレー:意外かもしれないが 「Young and Menace」 は生のドラムを結構使っているんだ。すごくヘンテコに聴こえるようにピッチを上げているだけで。 「Young and Menace」 は、近年のフォール・アウト・ボーイの曲の中で、最もドラムを多用していて、他の曲に比べてフィルインがかなり多い。「Heaven’s Gate」もほぼすべて生のドラムで、「Church」もたくさんドラムのサウンドが入っている。このアルバムは、過去2作より多くの生の楽器を用いていると思う。ただそう聴こえないだけで。

――お気に入りの曲は?

アンディ:「Heaven’s Gate」。パトリックの長所である“歌”を爆発させることができた曲だ。

――先ほどピートは、同じ頃デビューしたバンドがよく行っているアニバーサリー・ツアーをやることに難色を示していましたが、なぜですか?

ピート:俺個人に関して話すと、バンドをやってるのは「アルバムを最初から最後まで演奏する」ためじゃないから。俺にとってはスナップショットなんだ。リリースから10年経ったアルバムで再現してもらいたいと思える作品って個人的にあんまりないんだよね。特に自分が好きな曲をライブで今でも演奏してくれてるのであれば…そういうバンドも知ってるし、それはそれで別にいいと思うし、見下してるわけでもないけど、それは俺たちではないんだ。



▲ 「Young And Menace」MV


NEXT PAGE
  1. < Prev
  2. もし昔のままだったら、誰も興味を持たなかったんじゃないかな
  3. Next >

もし昔のままだったら、誰も興味を持たなかったんじゃないかな

――今でもポップ・ファンやTOP40にクロスオーヴァーできているロック・バンドであるというのは、どんな気分ですか?他にそういうバンドはあまりいませんよね。

ジョー・トローマン:(2008年にリリースされた)『フォリ・ア・ドゥ-FOB狂想曲』までずっと一人のプロデューサーを起用して、自分たちで曲を書いてきた。その後カムバックした時、共作したり、何人かのプロデューサーと仕事したり、そういった点で色々トライしてみるようになった。より最近のポップ・ミュージックのアルバムが作られているような手法を。これはバンドにとっていいことだったと思う。そう思わない人もいるけれど、もし昔のままだったら、誰も興味を持たなかったんじゃないかな。そうは言っても、前作2作に比べて今作はそれが少ないと思う。

パトリック: 僕が思うに、いつだってポップ・ミュージックを擁護しなければならない立場に自分たちを追いこんでしまった。ギタリストがいると、ポップ・ミュージックを嫌悪していると勝手に思われるから。それってバカげてる。ロック・ミュージックだってポップ・ミュージックだーその一部なんだよ。だから、「違う、全部アートだ」なんて振舞わなきゃいけないのは、変な感じだ。ビートルズだって、初めの頃はボーイ・バンドのようなものだった-永久クールでいるなんてことありえない。これがもうひとつ言いたいこと―自分たちがクールじゃない、なんてわかってる。こうやって長い間活動してこれた理由のひとつは…僕を見てよ、自分のことクールじゃないってわかってるからだよ!多分これは助けになってると思うね。



▲ 「Church」MV


――そう認識できたことは、長い目で見た時に有益だと思いますか?

パトリック:あぁ、人生において「自分ってクールじゃない。クールには一生なれない」って悟ることは、とても重要だ。それは父親になったからと言いたいところだけど、そうじゃない。

――あなたが学生だった頃、“クールなキッズ”とはどんな人たちだったのですか?

パトリック:僕が通っていた学校が変わっていたのは、いわゆるそういう “クールなキッズ” のグループの境界線があいまいだったこと。色々なグループがあったから。僕は、トロフィー・ケースの周辺にたむろっていたパンク・ロッカー、アーティスト、変わり者のグループに所属していた。学業以外だと、バンドや音楽にたくさんの時間を費やしていたから、同窓会に行ってもあまり多くの人を覚えていないと思う。フォール・アウト・ボーイは、中学2年生の時に結成したし、その前もいくつか他のバンドにいたから…あまり学校の授業に集中してなかった。

――高校時代のことについて話すのは楽しいし、振り返ることはいいことですよね。

パトリック:生徒よりも先生の方が記憶に残っているんだ、変だよね。僕の高校の英文学科は素晴らしかった。先生全員から多くを学んだ。それと音楽学科。オーケストラには所属していなかったけれど、オーケストラの監督も合唱団の監督も、お昼の時間に教室に内緒で入れてくれて、アップライト・ベースやピアノを弾かさせてくれた。今やっていることの多くは、この時に学んだんだ。 ピートが書いた詞を僕が編集する役目なのは知ってるよね?僕がリリシズムについて知っている大半にのことは、ほぼ英文学のクラスから学んだ。そして楽器に関しては、お昼を抜いたから知っているんだ。



▲ 「HOLD ME TIGHT OR DON’T」MV


――『マ ニ ア』でピートが書いた詞をあなたが書いた音楽へ付けていく作業はどうでしたか?

パトリック:今となっては、とても快適だよ。どんなことで喧嘩するか、どれはスムーズにいくか、 お互い大体わかっているから―どの詞を変えていいか、どれは変えてはいけないか、とか。今ではほぼ話し合わなくても大丈夫なんだ。まるで双子のように意志の疎通ができる。もしハードなことがあるとすれば、彼が天才的な詞を書いて、それを気に入らないこと。よくあることなんだ。こっちは、「それ最高の詞じゃん!」と思っても、「どうだろう、この一文がね。わかんないや」みたいな感じに。書いた本人に何となく弁護しなきゃいけないんだ。「何言ってんだよ?グレイトな詞じゃないか」って。

――では、ニュー・アルバムの中で一番気に入っている詞を教えてください。

パトリック:(「The Last of the Real Ones」の)“Tell me I’m the only one, even if it’s not true”(僕しかいないって言ってくれ、それが本心じゃなくても)。あれはすごく気に入っているよ。



Q&A by Chris Payne / 2018年1月25日Billboard.com掲載


関連キーワード

TAG

関連商品

マ ニ ア
フォール・アウト・ボーイ「マ ニ ア」

2018/01/19

[CD]

¥2,750(税込)