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ましのみ『ぺっとぼとリテラシー』インタビュー
ポップに見えて
とにかく作れるモノは全部作りたいと思って作っています
--10月14日 渋谷WWWでフリーワンマンライブを開催(http://bit.ly/2BSOxJy)し、メジャーデビューを発表。その瞬間に立ち合わせて頂きましたが、今回はましのみがどんな人なのか、まだ見ぬファンに向けて発信できればと思っております。まず自身ではどんなアーティストだなと思ったりしますか?
【ましのみ】メジャーデビューアルバム『ぺっとぼとリテラシー』【全曲トレーラー】
--では、音楽的ジャンルも決め込んでいない?
ましのみ:全く決めてないです。私は今、どんどん曲を作ったり歌詞を書いたりすることが好きになっているので、自分が日々生活していて見つけたモノ、聞いた話、思ったこと、何でも書くようにしていて。ひとつ言うならば、私の中にある価値観を通して、他人になりきったりするような形であったとしても、そこに自分の価値観を落とし込んで書くようにはしていますけど、決まっていることと言えばそれだけ。とにかく作れるモノは全部作りたいと思って作っています。--ましのみのライブで特徴的なパフォーマンスと言えば、寸劇。あれはどういった経緯で取り入れようと思ったんでしょうか?
ましのみ:普段からひとり遊びを結構するんですけど、そのひとり遊びの中で寸劇も好きでやっていたんです。それで、ライブを見せる上で「飽きさせたくない。常に面白いと思ってもらいたい」という想いがある中で、普通にMCするよりも曲を生かす、ステージ全体を面白く飽きさせないようにするという意味で「寸劇、取り入れてみようかな」と思ってやったのが始まりです。--初めて披露した寸劇はどんな内容だったんですか?
ましのみ:「ハッピーエンドが見えません」でやったのかな。テイストは今と全然変わってなくて、でも笑いが起こると思ってやってはいなかったんです。たしか最初に披露したのがアウェイなところだったんですけど、そもそもお客さんの反応を期待していなかったので、傷つくとかもなく、やり切ることが大事かなと思ってやってました(笑)。--渋谷WWWでのフリーワンマン(http://bit.ly/2BSOxJy)でも劇団ひとりさながらの一人ニ役の寸劇で驚かせてくれましたが、そもそも音楽を始めたきっかけは何だったんですか?
ましのみ:小さい頃から歌うことが好きで「歌手になりたい」と漠然と思っていて、幼稚園児の頃は口に出して言っていたんですけど、物心ついたあたりから言えなくなったり、自分の中でも「無理だろうな」と思うようになって、その想いを押さえ込むようになったんです。で、普通に勉強して、就職して……という道を志して生きていたんですけど、大学受験が終わったタイミング。高3の夏ぐらいで歌手への想いを抑えられなくなっちゃって、それで「やるなら今だな。大学受験も終わったし、始めるぞ!」と思って音楽活動を始めました。--本来の夢に向かって歩み始めたんですね。
ましのみ:でも昔は歌が上手いと思っていたんですけど、音楽活動を始めて、実際に自分の声を録音してみたら「こんなに下手なの?」と衝撃を受けて(笑)。それで「私の武器は歌の上手さではないなと」思っていろいろ模索し始めたんですけど、でも歌うことは単純に好きですね。--その中で自分の武器は見出していったんですか?
ましのみ:はじめは歌う為に歌詞を書いていたんですけど、今は歌詞を書くこと自体がすごく好きになって、何かひとつ武器を挙げるとしたら歌詞がいちばん拘っていますね。--どの歌詞もましのみ節が炸裂していますが、どんな人生を歩んだ結果として「ハッピーエンドが見えません」みたいな歌詞を書けるようになったのか知りたいです。
ましのみ:音楽をやる前は本当に「友達大好き、楽しいこと大好き」みたいな。どちらかと言うと明るいほうだったと思うし、クラスでワイワイしているうるさい子だったんです。イベントとかも好きだし、行事とかも積極的に参加していたし。でも音楽活動を始めてちょっとしてから自分の中の価値観が変わっていって。それは音楽を始めて、歌詞を書くようになって、いろんなことを考え始めたからなのか。音楽を始めて、自分を置く環境が変わって、周りにいる人が変わったからなのか。それとも単純に17、18、19歳という思春期の変わる時期だったからなのか。自分でも分からないんですけど、それまでの自分は物事をもっと軽くというか、浅く見ていて、でもどんどんどんどん疑り深くもなったし、もっと細かいところまで興味が湧くようになったし、なんか……暗くなったなとも思います(笑)。--暗くなった?
ましのみ:根本が。元々明るくはあったんですけどアクティブではなくて、家でゴロゴロしているほうが好きなタイプではあったんですけど、それに拍車が掛かって……考え込むことがどんどん好きになっている感じはします。それから歌詞の内容も変わりましたね。以前のほうが王道的な歌詞を書いていたんですけど、価値観の変化と共に歌詞も振る舞いもぜんぶ変わっていきましたね。この数年で。- 人間は一面だけではないじゃないですか。曲にもいろんな面があっていい。
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Interviewer:平賀哲雄|Photo:山田秀樹
人間は一面だけではないじゃないですか。曲にもいろんな面があっていい。
--とは言え、ましのみの歌詞はメンヘラチックな暗い部分を全面に打ち出すというよりは、どこかポップにユーモラスにする為の一計を案じますよね?
【ましのみ】ナンセンスに逆戻り(Short.Ver)【MV】
--ましのみにはすごく様々な要素がありますよね。あらゆる方向性に枝葉が分かれていて、どれか一本の道を選んでない。あらゆる道に向かって「私だったらこうするな」という遊びがたくさんあるじゃないですか。
ましのみ:その通りだと思います。ただ、それは無理やりいろんな要素を作り出しているのではなくて、音楽的知識が元々なかったこともあって、ジャンルというもので区切らず作りたいモノを作っている中で出来たモノ。それを皆様に届けていない状態でわざわざ狭めるのはもったいないなという考え方ですね。今はまだ私のことを知らない方がたくさんいる訳ですし、どこから何が合致して興味を持ってくれるか分からない状態なんで、どうせ私が好きでやりたいと思っていることなら、全部突き詰めて私なりにやっていったほうが良いんじゃないかなと思って、曲もスタンスも全部そういう風にしています。--その発想ってすごくポップス的ですよね。近年は局地的に何かを極めていく人が多くて、局地的に評価されていく音楽が多いと思うんですけど、それ以前のヒット曲が多く生まれていた時代のJ-POPアーティストはもっと様々なアプローチをしていたと思うんです。その上で何をやってもその人になっていく流れ。それをましのみは久々に汲んでいくアーティストなんだろうなと『ぺっとぼとリテラシー』を聴きながら思いました。
ましのみ:本当ですか? ありがとうございます! 今、音楽を始めて3年になるんですけど、最初から「こういう曲も書きたいし、ああいう曲も書きたいし」と勝手に湧き出てくるのに、どうやって絞っていいか分からないと思っていて。すごく暗い曲ばっかりライブでやってみた時期もあったり、逆に明るい曲ばっかりライブでやってみた時期もあって、MCもいろいろ考えて寸劇を始めたりもしていたんですけど、その中で「自分の芯がないな」とずっと思っていたんですよ。なんで私は器用貧乏みたいな感じで、他の子に比べて芯がないんだろうって。ずっとずっとそれについて考えていたんですけど、でも全部やって、そのスタイルが私の芯になったらそれで良いんじゃないかと思ったんです。そっちに考え方を切り替えてから、ライブもそういう風にしています。--どれも好きだから全部やりたいと?
ましのみ:そうですね。人によって捉え方は違うと思うんですけど、例えばストレートなバラードを書いてみたり、俯瞰的な歌詞を書いたり、暗い歌詞を書いたり、いろいろ書いている中でも、さっきも言ったんですけど、ぜんぶ私の価値観に落とし込んで書いている歌詞で。別にそれを押し付けたい訳ではないんですけど、「私の価値観はここにちゃんとある」という芯があった上で生まれている曲なんですよね。人間は一面だけではないじゃないですか。人として生きている上で私にもいろんな面があって「この面が引っかかって仲良くなる人もいれば、こっちの面が引っかかって面白がってくれる人もいる」と思うので、そういう感じで曲にもいろんな面があっていいと思うんですよね。私は何かひとつを選べなかった。ぜんぶ同じように大切だったので、あとは聴いてもらう人に選んでもらえればなって。その結果どうなるか分からないけど、楽しんでもらいたいし、私の中では一応通してる芯はあるし、そのときそのときでベストを選んでいけばいいと思っていて。「流されればいい」ということじゃなくて、そのときのベストを選んでいく。--あと、ましのみはラップもしますよね。あの要素はどういうタイミングで取り入れることになったんでしょうか?
ましのみ:ラップも寸劇と一緒で、日常会話の中で……あれラップじゃないんですけどね! ただ韻を踏んでる風な会話にハマってて(笑)。それを動画にしてみたら、ちょっと面白がってくれる人がいたので続けてみたりとか、ブッキングライブで下を向いている人が振り返って曲まで聴いてくれるきっかけになればいいなと思って。だからMCとおんなじ感覚です。--なんで今の質問をしたかと言うと、ましのみは動きに落ち着きがないじゃないですか。
一同:(笑)
ましのみ:でも今日はちょっと落ち着いてます!--このインタビューが始まって30分ぐらい経ってますけど、手の動きが止まった瞬間が一度もないです(笑)。
ましのみ:え、本当ですか!?--やっぱり動きながらじゃないと喋れない人なんだなと。だからルーツにヒップホップがあるのかなと思っていたんですけど、そうじゃないんですね。
ましのみ:ない、ない(笑)。--自然とリズムを刻んじゃうんですかね?
ましのみ:どうなんでしょうね? でも昔から手を動かしながら喋るのがクセなんですよね。英語のプレゼンとかでも「片手だけしか使っちゃいけないから」と言われて。「アイドルじゃないんだから両手使って喋ってんじゃないわよ!」と怒られたりして。でもどうしても動いちゃうんですよ。だからもうしょうがないんだと思います(笑)。でもたぶん伝えたいんだと思います! 伝えたい気持ちが強くなると手が動くんだと思う。リリース情報
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Interviewer:平賀哲雄|Photo:山田秀樹
まずは賛否両論ぐらい起きないといけないなと思っていて(笑)
--あの日のライブでは「絶対にビッグになる。もっと広くて、面白くて、見たこともないような世界に皆さんを連れて行く」と仰っていましたが、メジャーデビューに向けてどんな想いで日々過ごしていますか?
ましのみ:実は結構ビビっていて……でもメジャーデビューというモノ自体にビビっている訳じゃないんですよ。私は音楽活動を始めたときから「歌で生きていきたい」という夢の為に頑張ってきて、歌をいろんな人に聴いてもらって、それぞれの聴き方で楽しんでもらいたいから、まず聴いてもらいたいし、それで売れて続けていきたいし、面白いことをしていきたいし。だからいろんな人に知ってもらう為のステップ、大きなきっかけのひとつとしてメジャーデビューがあると思っているんですけど、そのきっかけを生かせなかったら全然意味がないじゃないですか。だから「どれぐらい生かすことが出来るんだろう?」という部分で怖くて。何回もきっかけってあるモノじゃないと思うので、その数回しかないきっかけのひとつを迎えるということに対しての恐怖。それを「何をしなきゃいけないんだろう?」と日々考えることで落ち着かせている感じですね。--なるほど。
ましのみ:私はわりと「時間がない! ヤバい! 何かしなきゃ! もっと先に行かなきゃ!」って焦りがちなので。今はひとりでやっているんじゃなくて、周りの方と一緒に活動しているので、私が手が出せない範囲もたくさんある中で「私にしか出来ないことは何なんだろう」と日々考えて曲を作ったり、配信をしてみたり、ツイッターの内容を考えてみたり、ライブの構成を考えてみたりして……「出来ることをやっていれば大丈夫だよ! 私!」っていう状態です(笑)。--メジャーデビューした先のヴィジョンはあるんですか?
ましのみ:すごく漠然としているんですけど「どこの方向にまっすぐ向かっていきたい」とかじゃなくて、今回、私の今持っているモノを全部詰めたメジャーデビューアルバム『ぺっとぼとリテラシー』を出して、皆さんが「どういう聴き方をしてくれるんだろう? どういう受け取り方をして、どういうところに引っ掛かってくれるんだろう」というところも踏まえつつ、自分の好奇心やそのときそのときの気持ちも踏まえつつ、ライブも、音源も、それ以外のアクションもぜんぶ次のステップに進み続けていきたい、変わり続けていきたいと思っているし、でもその変わり続けていく方向はそのときにしか分からないと思うんですよ。そのときの最善を選び続けていくのが絶対に一番良いと私は信じているので。--では、最終的なヴィジョンは敢えて描かない?
ましのみ:最終的な形というのは考えていなくて、今のところは目の前のこと。まずメジャーデビューをどれぐらい生かして、満足のいく作品となったこのアルバム『ぺっとぼとリテラシー』をどれぐらい届けることができるか。そこでどういう反応が返ってくるか。これからどんなライブをしていけばみんなは楽しんでくれるか。今どんなことをしたらもっと面白いモノが届けられるようになるか。そういう目の前のことをひとつひとつ考えている状態で、それでいろんな人に知ってもらって大きくなって変わり続けられる状況。そこに辿り着きたい。求められていないと変わり続けることも許されないというか、売れていないとそもそも続けることが出来ないので。だから停滞はしたくないですね。広がり続けて、頑張り続けていきたいなと思っています。--ましのみのライブと今回のアルバム『ぺっとぼとリテラシー』を観て聴いている限り、世間の反応としては「ここは好きだけど、ここは嫌い」等の賛否両論も生みやすいアーティストだと思うんですよ。それをどう受け止めていくかも重要ですよね。
ましのみ:そうですね。でもまずは賛否両論ぐらい起きないといけないなと思っていて(笑)。そこからどこに絞っていくかというのは、もちろん聴いて下さる方の意見もありつつ、私も今のままの考え方ではないと思うので、そういう状況に置かれたときに「何をしたいか。何をしていくのが良いとそのとき思うのか」というところを大事にし続けていきたい。なので、安易にそういう周りの意見に流されるまま形を変えていきたくはないなと思います。きちんと自分の考える最善で進んでいきたい。--あと、今回のアルバムタイトルにもアートワークにも組み込まれているペットボトル。何故にましのみは2リットルのペットボトルを持ち続けているんでしょう?
ましのみ:いつの間にか隣にいたんです(笑)。たぶん音楽を始める前から飲んでいるんですけど、私は単純に水分量が凄いんですよ。で、お母さんもそうなので、DNA的に凄い量の水分を飲んじゃうんです。だから500ccとかだとすぐ無くなるんですよ。で、あれ、100いくらかするじゃないですか。でもこれは2リットルで97円。--お買い得ですよね(笑)。
ましのみ:で、全然飲み切れるし、家だったり、スタジオだったり、ライブハウスだったり、こういう場所に居るときは「絶対、これが良いな」と思って飲んでいたら、ステージドリンクとしても飲んでいたら、周りからいろいろ言われるようになって。それでこうやって説明する機会も増えていったんですけど、ずっと身近な人ですね。--身近な人(笑)?
ましのみ:ずっと一緒にいるけど、どんどん愛着が湧いてます(笑)。みんなにいろいろ言われることで愛着が湧いてきて、そこに在るだけで安心感さえ覚えるようになっています。--今やましのみを象徴するアイコンにもなってますもんね。そのうち、お水のタイアップとかも付くんじゃないですか?
ましのみ:たしかに! 欲しいですね!--では、最後に、ましのみをこれから知っていく人たちへメッセージをお願いします。
ましのみ:このアルバム『ぺっとぼとリテラシー』は、興味を持ってもらいやすいように1曲目に「プチョヘンザしちゃだめ」という曲を入れているので、どれから聴いていいか分からない人はコレから聴いてもらって、それで「面白いな」と興味を持ってもらえたら、あとは私の価値観で作ったいろんな曲を入れているので、とりあえず一通り好きに聴いてもらいたいです。好きに楽しんでもらって、逆に私にその楽しみ方も教えてもらえたらなと思います。リリース情報
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Interviewer:平賀哲雄|Photo:山田秀樹
ぺっとぼとリテラシー
2018/02/07 RELEASE
PCCA-4602 ¥ 3,056(税込)
Disc01
- 01.プチョヘンザしちゃだめ
- 02.ナンセンスに逆戻り
- 03.名のないペンギン空を飛べ
- 04.エゴサーチで幸あれエブリデイ
- 05.やりくりゲーム
- 06.Hey Radio
- 07.灰かぶり姫
- 08.ミスター
- 09.ストイックにデトックス
- 10.リスクマネジメント失敗
- 11.チャイニーズ再履修 (bonus)
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