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和田アキ子 『WADASOUL COVERS ~ Award Songs Collection』インタビュー



和田アキ子『WADASOUL COVERS ~ Award Songs Collection』インタビュー

「80過ぎても声さえ出ていればブルースを歌いたい」

 デビュー50周年記念リリース第2弾として、自身が愛する新旧のグラミー受賞曲を歌うカバーアルバム『WADASOUL COVERS ~ Award Songs Collection』をリリースした和田アキ子。このタイミングでインタビューさせて頂ける貴重な機会に恵まれた為、同作についてはもちろん、彼女の音楽人生についてもガッツリ語って頂いた。「私の夢は昔から、70代、80代になってね、シワが出来ようが、シミが増えようが、お尻垂れようが、おなかポッコンとなろうが、声さえ出ていれば、真っ赤なマニキュアして、葉巻くわえて、ブルースを歌うことなんですよ」―――普段テレビ等では聞くことのできない、音楽がすべてと語る歌手・和田アキ子の生き様。ぜひ感じてもらいたい。

和田アキ子の原点、レイ・チャールズとの出逢い「可哀想、助けてあげなアカンな」

--デビュー50周年、おめでとうございます。この半世紀、和田さんにとってどんな音楽人生だったと感じていますか?

▲YouTube「和田アキ子 - Stay With Me【『WADASOUL』iTunes配信中】 」
▲YouTube「和田アキ子 - Stay With Me【『WADASOUL』iTunes配信中】 」

和田アキ子:どんな音楽人生だったか……常に音楽がありましたからなんて答えればいいのか困りますね。例えば、毎週日曜日に放送しているTBSテレビ『アッコにおまかせ!』が33年、ニッポン放送『ゴッドアフタヌーンアッコのいいかげんに1000回』も28年やっていて、みんなに凄いと言われるんですけど、歌手・和田アキ子をやれなければ、どの番組もすぐ辞めていいと思ってるの。それぐらい、私にとって音楽はすべてなんですよ。

--そもそも音楽に目覚めたきっかけは何だったんですか?

和田アキ子:父親がよく歌謡曲を聴いていて、私はそのLPをクリーナーで綺麗に拭いて流す役だったんですけど、歌謡曲には興味が持てなくて。でも後々洋楽で音楽に目覚めるんですよね。それは学校がミッション系で、幼稚園から英語を教わるところだったんです。私はそこに中学から通い出したんですけど、小学校から通っている子は英語がペラペラなんですよ。私の時代、普通に暮らしていたら英語なんて『ララミー牧場』とか『名犬ラッシー』ぐらいでしか聞く機会がなかったから、学校で「How do you do」でいきなり声かけられても「なんじゃそれ?」みたいな。それで「クッソー! 負けたらアカン!」と思って、音楽で英語を覚えようと。それで『ララミー牧場』の「ローレンローレンローレン ローレンミソタピ♪」とか適当な英語で歌ったりして「英語はハッタリでいける」と思ったんです(笑)。

--英語はハッタリ(笑)。

和田アキ子:あと、親父が歌謡曲好きだったんで、よく近所のレコード屋に行っていたんです。親父は柔道の先生だったんですけど、そこの生徒が店員さんだったんです。だから「にいちゃん、英語覚えたいねんけど」「ま、ゆっくり見ていきぃや」みたいな感じでいろんなジャケットを眺めていたら、そこで初めて黒人を見たんです。「何、この人?」って。テレビでも観たことがなかったから。で、サングラスも初めて見たんですよ。ビックリして「おにいちゃん、これ誰?」って聞いたら「この人はレイ・チャールズ言うてな、7才のときに失明しはったんやけど、自分で勉強しはって、ロックとかリズム&ブルースとか歌ってるすごく素敵な人や」と。その説明を受けて子供心に「可哀想、助けてあげなアカンな」と思って。それで「聴かせて!」ってお願いして初めて耳にした曲が『愛さずにはいられない(I CAN'T STOP LOVING YOU)』だったんです。

--始まりがレイ・チャールズだったんですね。

和田アキ子:「この歌、良いわ!」と思って、それを必死に何回も聴いて友達の前で歌ったら「めちゃ英語上手いね!」って言われて「やったー!」と思って。それからブラックミュージックを聴くようになったんです。そのあと、中学からちょっと不良になり始めて、家もよく空けるようになって、それでワルになると自然とロックを聴くようになるんですよ。私たちの時代はライブハウスのことをジャズ喫茶と呼んでいたんですけど、よくジャズ喫茶に出入りしてて。そこでいちばん聴いていたのは当時すごく人気のあったプレスリー。でも『ハウンド・ドッグ』とか聴いてもプレスリーの英語は何言ってるのかよく分かんなくて、それで「やっぱり黒人が良いな」と思ってオーティス・レディングとかリトル・リチャードとか聴き出して。で、なんとなく飛び入りのジャズ喫茶で歌っていたところをスカウトされて今に至るんです。

--なるほど。

和田アキ子:話がちょっとズレますけど、今、コンサートツアーでいろんなところを廻っているんです。で、勝俣(勝俣州和)がコンサートを観に来て「高齢者が多い」とか「手拍子がリズムに合ってない」とかボロクソ言うんですけど(笑)、13歳とか14歳のときにファンになってくれた子が今60歳を越えていて、その中にはお孫さんがいる子もいるんですよ。私、学校もそんなに行っていないけれども、そんな自分の歌で「勇気付けられる」とか「元気が出る」って言われると、その子たち……おばちゃんになっても私は「その子たち」と呼んでいるんですけど、その子たちがいる限りは歌い続けたいなと。だから「50年の音楽人生」と言われるとすごく深いんですよ。なので、次までに答えられるようにしておきます(笑)。

--本当にいろんなことがあった50年ですもんね。

和田アキ子:そうなんです。歌手の命と言われているポリープも2回手術して、満身創痍になるぐらいいろんなことがあったんですけど……でも今がいちばん勉強してるし、いちばん摂生もしてるし、今がいちばん真摯に音楽と向き合っていますね。今までこんなに勉強したことなかったんですよ。音楽も何も気にしないでカバーしたりして、英語もいいかげんだったし。でも今回のアルバム『WADASOUL COVERS ~ Award Songs Collection』は英語の先生も3人ぐらいついて、本当にすごく勉強したんです。その知識や努力は誰にも持っていかれないから、昔みたいにぶっつけ本番でやっていたときの迫力と、今みたいに譜面も読みながら計算して歌うのと「どっちがいいのかな?」とは思うけど、勉強しないよりはしたほうが良かったかなって。今のほうがすごく充実してます。

--今このタイミングで勉強したいと思ったのは何故なんでしょう?

和田アキ子:これは50周年を迎えたからだと思います。私自身は何とも思ってないんですよ? だって、私の夢は昔から、70代、80代になってね、シワが出来ようが、シミが増えようが、お尻垂れようが、おなかポッコンとなろうが、声さえ出ていれば、真っ赤なマニキュアして、葉巻くわえて、ブルースを歌うことなんですよ。そう考えたら80まであと10年もあるし。話が昔に飛びますけど、エラ・フィッツジェラルドを観に行ったときに、おなかもポッコン出ていて、虫眼鏡みたいなメガネをかけて歌っていらっしゃったし、3年前に何かのパーティーで観たアレサ・フランクリンもそうだし、ティナ・ターナーもそうだし、みんな現役バリバリで歌っていらっしゃるんですよ。日本だと「大御所」とかって括るんだけど、私、音楽には国境がないように年齢もないと思っているんです。あと、国民性の違いだろうけど、アメリカなんかはそういうアーティストをみんなちゃんとリスペクトしてるんですよね。だから私もそういう歌手になりたいと思って、今回のカバーアルバム『WADASOUL COVERS ~ Award Songs Collection』にも臨んだところがあるんですよ。

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「世界のプレスリーと共演するって言うてたんちゃうの?」から50年

--あらゆる世代の洋楽カバーに挑戦されていますよね。

▲YouTube「和田アキ子 - WADASOUL COVERS ~Award Songs Collection ダイジェスト 」
▲YouTube「和田アキ子 - WADASOUL COVERS ~Award Songs Collection ダイジェスト 」

和田アキ子:こういうカバーを女でやっている人はあんまりいないんですけど、私は昔からカバーはよく歌っていて。めちゃくちゃな英語だったけど、ジェームス・ブラウンからプレスリーから歌ってきている中で、私もそういう歌手になりたいとちょこっと思っていて。そういう意味では「50周年って凄いのかもな」って。周りにそういう人がいないんで「よくここまで来れたな。でもまだまだ頑張りたいな」とは思う。あと50年やれるかどうかはちょっと分かんないけど。だって、デビューしたとき「50年やろう」とは思っていなかったから。目標が50周年じゃないですからね。デビュー曲が売れなかったから「ホリプロ、何を嘘ついとんねん」と思っていたぐらいで(笑)。

--売れると言っていたじゃないかと?

和田アキ子:「世界のプレスリーと共演するって言うてたんちゃうの?」って。デビューはRCAレコードというところで、日本人第一号の歌手だったんですよ。で、プレスリーもRCAレコードだったから「共演しよう」という話があったんです。でも実現はしなかったんですけどね。

--でも50年間にわたって音楽活動を続けられている人って少ないじゃないですか。和田さん以降の世代で50年音楽を続けられるスターって居ないかもしれませんよね。そう考えると50年歌い続けているというのは凄いことだなって。

和田アキ子:昨日、ウチの創立者の堀さんとお食事したんですけど、その創立者に「この浮き沈みの激しい芸能界で50年やって来れたアッコは凄いな。これからも出てこないと思うよ」と言われたときに泣きそうになっちゃって。その息子が今社長で、私のこと「嫌い」って言った奴なんですよ? 3才のときに(笑)。そういう意味では凄い年月なんだなって。当時としては珍しいエイトビートを取り入れて、ちょっと異質な感じがしていたのに、結果としてよくもったなって。芸能界って本当に微妙なところで、同じことをやっていると「違うことやってほしい」と言われるし、違うことやると「前のほうが良かった」と言われるし、「どうすればいいんだ? コノヤロウ!」みたいな(笑)。でもやっぱり人気商売だからね。人の気っていいかげんだから、その中で「私は歌手だ」という自負を持っていないと簡単に揺らぎますよね。私はランキング1位の曲もないし。でも今回のカバーアルバムもそうですけど、いろんな世代に聴いてもらいたいと思っているんですよ。

--マーク・ロンソン、ニーナ・シモン、アデル、サム・スミス、レイ・チャールズ、フランク・シナトラ、ノラ・ジョーンズ、エリック・クラプトンといった今作のラインナップを見ただけでもそれは感じます。

和田アキ子:カバーは昔から出しているんですよ。映画『野良猫ロック』の頃からやっているんですけど、50周年に向けて何が良いか考えているときに「私は元々洋楽好きだったんだから、グラミー受賞した曲とか1回やってみない?」と言って、私がデビューしたときの受賞者を調べてみたんですよ。そしたら、当時のアメリカではフランク・シナトラとエルヴィス・プレスリーが有名だったんですけど、プレスリーは獲ってないんです。そんな感じであらゆる年代で調べていく中で「こういう楽曲たちを歌い継いでいくことも私の使命なんじゃないの?」と思ったんです。それでこういう選曲になったんですけど、とっても使命感を感じたアルバムで、そこでも「私は歌手なんだな。歌手だからこそ出来ることがあるんだな」と思いましたね。だからこのアルバムが出せることはすごく嬉しいんです。

--リスナーとしては「和田アキ子が歌う『アップタウン・ファンク』? どんな曲になってんの?」ってもうそれだけで興味をそそるじゃないですか。実際にどのカバーも新鮮な衝撃や感動を与えてくれる音源になっていますし、それこそあらゆる世代に聴いてほしいですよね。

▲YouTube「Mark Ronson - Uptown Funk ft. Bruno Mars 」
▲YouTube「Mark Ronson - Uptown Funk ft. Bruno Mars 」

和田アキ子:マーク・ロンソンとブルーノ・マーズは独特なラップの発音だから『アップタウン・ファンク』は本当に大変でした。コンサートではこの曲で踊ってるんですよ? 後ろにダンサー4人つれてね。でもさっき言った13とか14の頃から観てくれているファンの子たちは、ニューヨークのアポロシアターにも来てくれたし、今回のコンサートツアーもほぼ全部来ると思うんですけど、私はその子たちに勉強している姿も見せなきゃいけないから『アップタウン・ファンク』にも挑戦しようと思って。あと、私が洋楽を歌っていると知らない人は「え、和田アキ子がマーク・ロンソン? アデル?」みたいな。そういう反応になると思うから良いなって。50周年ですけど、50周年でこういう課題を与えてもらえるのは嬉しいですよね。これは音楽だから出来ることだと思う。今回は久しぶりのアルバムなんですけど、大阪弁で「ようやった、和田アキ子! ありがとう、スタッフ」って感じですね。シナトラからマーク・ロンソンまで歌う人もいないと思うし、良いアルバムが出来たと思う。お正月のお重が50個貯まった感じもしますね(笑)。ちゃんと日持ちのする……日持ちじゃなく年持ちのする音楽を残してきているなって。

--レイ・チャールズ『愛さずにはいられない(I CAN'T STOP LOVING YOU)』で音楽人生が始まった人が、50周年のタイミングでその曲をカバーしているというのも……

和田アキ子:格好良いと思いません?

--格好良いです。音楽人生も詰まっている感じがします。

和田アキ子:本当はレイちゃんに生きていてもらって、一緒にデュエットしたかったんですけどね。音楽を始めたきっかけがレイ・チャールズだから、私にとっては今でも神様なんです。30周年のときは私の為だけに日本に来てくれて、国際フォーラムで一緒に歌って。それで「40周年もお願いね」って頼んだら「It's OK! Alright!」と言っていたのに……でもそんなご縁もあったからアポロシアターで歌えたんだと思うんです。東洋人で単独公演をやったのは私が初めてで、その後にはいませんからね。ブラックミュージシャンの殿堂ですから。だから未だにアポロの看板を見ると胸が熱くなります。リビングに写真が貼ってあるんですけど、震えますね。あのときの「やるぞ!」という気持ち。ド緊張したけれども、サム&デイヴのサム・ムーアとも一緒に歌って……そのサム・ムーアでさえもアポロに立つのは20数年ぶりと言ってましたからね。「呼んでくれてありがとう」とすごく喜んでくれて。そういうところにアジア人の私が出れたし、ましてや女で。それはすごく嬉しいし、誇りだし、だからこそこういうアルバムを出し続けて聴いてほしいなと思いますし、まだまだ進化していきたい。それを感じてほしいから、作ったモノに対して素通りされたくないから、自分でこうしてプロモーションで喋ったりもしてるんです。

--いつまでも進化していたいし、歌い続けたいし、聴かれ続けたい。

和田アキ子:でもしょっちゅう「辞めたい」とは言ってるんですよ?「辞めたい、辞めたい」とは年に何回か言いますけど、引退となると「辞めて何すんの?」ってなるし、実際何もやりたいことがないんですよ。70近いおばさんの不良はどこも受け入れてくれないでしょうし(笑)。そう考えると、歌手になりたくてなりたくて、レッスンしてレッスンして歌手になった人もいる中で、私みたいに勝手に不良して、いいかげんな英語で飛び入りで歌っていたような奴が50年続けられて、給料ももらえてるんだから「ちゃんとせなアカンな」って思いますよ。

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和田アキ子の生き様「もう私の生き様自体がブルースだと思っているから」

--デビュー当時の和田アキ子さんってどんな立ち位置だったんですか?

和田アキ子『WADASOUL COVERS ~ Award Songs Collection』インタビュー

和田アキ子:私はデビューしたときはアイドルだったのよ? 女学生が読む今で言えば『Seventeen』とかのランキングで1位だったんだから(笑)。それで「夜明けの夢」という曲なんて振り付けもあったりしてね。でも必ず生で歌う。バンドも生だったし、ライブ感がすごくあったし、テレビに出るということに特別感もあったんじゃないかな。あ、今、テレビで思い出したけど、デビューしてすぐにサム&デイヴと『ミュージックフェア』で共演してるんです。でも当時の私は全然緊張しなくて、歌うときも「かかってこんかい!」だったんですよ。でも今は全然ダメ。「なんでだろう?」と思うぐらい緊張する。昔は「和田アキ子様のお通りだい!」みたいな感じだったのに。いきものがかりの水野くん(水野良樹)に「また明日も歌いましょう」という新曲を作ってもらったんですけど、本当に良い歌だからずっと歌っていきたいと思っているんですよ。でも歌う前にめっちゃ緊張するんです。それは多分「下手な歌を聴かせられない」という想いがあるし、意識し過ぎなんだと思う。だから緊張解く為に毎回マネージャーに背中バンバン叩いてもらってるんです。知らない人が見たら「アッコさんのこと、ようあんだけ叩けんな」と思うだろうけど(笑)。

--それだけ緊張するのは、いちばん大事にしているモノが歌だからでしょうね。

和田アキ子:あー、なるほど。

--それだけ人生懸けてやっていることだから緊張するんだと思います。

和田アキ子:そういう風に受け止めると、緊張するというのは良いことなのかもしれませんね。たしかに、他では全然緊張しないですから。33年間『アッコにおまかせ!』で緊張したことなんて1回もないですからね。生放送なのに。スタッフから「1回ぐらい緊張してくださいよ」って言われるぐらい。だから歌うときに言われるんですよ。「なんで『アッコにおまかせ!』みたいにやれないの?」って。緊張しすぎて酸欠状態みたいになっちゃうから。歌は何にも持っていない自分が初めて認めてもらえたモノなんですよ。それを自分から壊してしまうのは失礼……という気持ちがどこかにあるのかもしれないですね。

--全ステージに対してそうなるんですか?

和田アキ子:大体そうなりますね。3,4曲歌えば緊張が収まるんですけどね。このあいだも『ミュージックフェア』の特番でね、JUJUと水樹奈々ちゃんが私の曲を一緒に歌ってくれたんですけど、そのリハーサルはね、私もちゃんと歌えていたんです。でも本番になったら物凄く緊張して! だからみんなに「リハーサルの音源を録っておいて下さい」と常に言ってるんです(笑)。

--最後に、50周年以降の和田アキ子はどんな歌手になっていきたいと思っていますか?

和田アキ子:昔は「大きい女は売れない」と言われたのに、自分で言うのもアレだけど「十分売れてるやないかい」と思うし(笑)、今もスタッフのみんなが頑張って私に課題を与え続けてくれているので、それに応えられるシンガー・和田アキ子で在りたいです。あとは、先程言った通り、80過ぎても声さえ出ていればブルースを歌いたい。それはもうジャンルとしてのブルースだけじゃないですね。年齢や雰囲気もそうですけど、もう私の生き様自体がブルースだと思っているから。

--となると、生涯現役でいたいということですよね。

和田アキ子:そうですね。エタ・ジェイムスなんてね、もう足悪くしてて、椅子に寄りかかるようにして歌ってるんですけど「格好良いなぁ」と思うから、そういう風になれたらホンモノかなって。歌は学校のテストみたいに点数がないし、この世界は「1+1=2」とは限らないし、となると何が正解か分からない。それでも自分なりの正解を求めて歩み続けないと、自分が振り返ったときに「何してんの? 和田アキ子」ってなっちゃうんですよね。昔はよく自問自答してね、「ナンボのもんじゃい、和田アキ子」って独り言を言ってたの。「しんどいなぁ。アッコ、もう辞める?」「なんで辞めんの?」「もうなんか一生懸命歌ってもレコード売れへんし、聴く奴もおれへんし、アカンで……」これぜんぶ独り言なのよ。でも結果、今ここまで来たから。だからやれるところまでやりきりたい。「ナンボのもんじゃい、和田アキ子」から「どんなもんじゃい、和田アキ子」と思ってね、みんなに聴いてほしいし、節目の年に良いアルバムを作ることが出来たので、それは本当に思ってる。そういう意味では、50周年は忘れられない年になると思いますね。

Interviewer:平賀哲雄

和田アキ子『WADASOUL COVERS ~ Award Songs Collection』レビュー

 和田アキ子、デビュー50周年記念リリース第2弾として制作された今作は、かねてより洋楽スタンダードを歌い継いでいる彼女が歴代の“グラミー受賞曲”の中から想い入れが強いもの、自身が歌う意味合いを感じ取ったもの、そして50周年を迎えてもなお進化していく和田アキ子を表現できるもの等、本人の意思で選曲した意欲的なカバーアルバムとなっている。

 マーク・ロンソン『アップタウン・ファンク』、アデル『ローリング・イン・ザ・ディープ』、サム・スミス『ステイ・ウィズ・ミー』、ノラ・ジョーンズ『ドント・ノー・ホワイ』といった彼女からしたら若手にあたる、近年の音楽シーンで革命を起こしてきたアーティストの代表曲に真正面から挑戦。いずれもソウルフルでありながら侘び寂びも感じさせる、和田アキ子でしか表現し得ない新曲へと生まれ変わらせていると思えば、ニーナ・シモン『フィーリング・グッド』、フランク・シナトラ『夜のストレンジャー 』、エリック・クラプトン『ティアーズ・イン・ヘヴン』、レイ・チャールズ『愛さずにはいられない』といった往年の名曲も愛情深くカバー。特に和田アキ子を音楽の道へと突き進ませるきっかけとなった『愛さずにはいられない』は、彼女も「本当はレイちゃんに生きていてもらって、一緒にデュエットしたかった」と語っていた通り、様々な想い入れがあるナンバーであり、そこに滲み出るエモーションを感じ取る度に目頭が熱くなる。

 カバーアルバムは数多くあれど、50周年のタイミングでこれだけ音楽的にも世代的にも幅広く、それでいて奥深い、もっと言えば歌い手の生き様がしっかり乗った作品をリリースできる人は他になし。歌に対して一切妥協してこなかった、そして80歳を過ぎてもブルースを歌い続けていく気満々の、生涯現役シンガーだからこそ生み出せた珠玉の一枚、ぜひとも聴いてもらいたい。

和田アキ子 - WADASOUL COVERS ~Award Songs Collection ダイジェスト

和田アキ子「WADASOUL COVERS Award Songs Collection」

WADASOUL COVERS Award Songs Collection

2018/01/24 RELEASE
UICV-1093 ¥ 2,547(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.イントロダクション
  2. 02.アップタウン・ファンク
  3. 03.フィーリング・グッド
  4. 04.ローリング・イン・ザ・ディープ
  5. 05.ステイ・ウィズ・ミー
  6. 06.愛さずにはいられない
  7. 07.夜のストレンジャー
  8. 08.ドント・ノー・ホワイ
  9. 09.ティアーズ・イン・ヘヴン
  10. 10.ステイ・ウィズ・ミー (MATZリミックス)

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