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Hi-Fi CAMP 『SUNRISE』インタビュー
「幕が下りるまで諦めたりしない 勝ちを疑わない」「前に進むことでしか 見えない世界があるから 願いは信じて待っていたって 決して叶いはしないさ」――。
これはニューアルバム『SUNRISE』収録曲『Pride』の歌詞にある言葉だが、今作において彼らは随所でこのような攻めの姿勢を見せている。
今回のインタビューでは、そんな仙台在住4人組ユニット Hi-Fi CAMPへ、アルバムについてはもちろん、震災を体験したからこそ生まれた感動バラード『ヒカリ』や今の音楽シーン、更には恋愛について。様々なことを訊いてみた。
震災後に思ったことは“前へ進んで行くしかない”
--3月からモールツアー(注1)を行ってきましたけど、自分たちにとってどんなツアーになりました?
TOSHIRO(dj):47都道府県をこんな短期間で廻ることって中々ないし、途中から麻痺するほどタイトなスケジュールでしたけど(笑)、確実に良い影響を受けましたね。今後に繋がっていくような糧になった。
KIM(vo):「わらしべ長者・絆」企画では、ただ義援金をお預かりするだけではなくて、日本を一つにする“橋渡し”的な役目もできたかなって。実際に絆で結ばれていく様子を実感できたし、本当に良い経験でした。
AIBA(key):北海道に行ったとき、寄せ書きの横断幕を作ってくれた人がいて。その寄せ書きも全国各地からメールのやり取りなどで書いてくれたみたいで、かなり嬉しかったですね。
--正直、被災地以外では震災に対する意識が薄れている気がしていたのですが、そうではないんですね。
SOYA(vo,mc):ツアーを始める前にそういう話はしていたんです。僕ら自身、まだ何も出来ていないことに対して悔やんでもいたから、今やれる事として、風化させないように今回のモールツアーを行った。
KIM:ただ、実際にやってみたら、風化しているって思うことよりも、東日本に対する気持ちの強さを感じることの方が多かったよね。こういう形でHi-Fi CAMPが来てくれて、初めて復興のために動けましたって感謝してくれる方もいましたし。
SOYA:皆さんから頂く物一つ一つに気持ちが込められていて、これだけ東北は全国の人に想われているんだなって感じることができましたね。
--そして、6月20日には3rdアルバム『SUNRISE』をリリースしました。Hi-Fi CAMPの良さが凝縮された1枚に仕上がっていますよね。
KIM:3枚目というよりは“新たな1枚”という意識の方が強いです。デビューした当初の気持ちを思い出して、「自分たちができることを全部やろう!」「まだやっていないことも全部やろう!」っていう想いが詰まったアルバム。全員で作詞に挑戦したり、マイクにまで拘ってレコーディングしたり、色々とトライしてみました。
TOSHIRO:自分たちが作ってきたHi-Fi CAMPという枠を少し越えた1枚になればいいなと。僕としては、進化の過程というか、次も見据えた作品なのかなって。今回のアルバムで色々と挑戦してみて、それを聴いた人たちの声を聞いて、また僕らも変ってくると思いますね。
--因みに、Hi-Fi CAMPの良さって自分たちではどこだと思います?
KIM:………AIBAの髪型じゃないですか?
SOYA:いや、サングラスでしょ?
TOSHIRO:スタイルもいいよ。
AIBA:じゃあ、真面目に答えますけど(笑)、『SUNRISE』にも反映されている通り“前向きさ”だと思うんですよ。3枚目にして、以前にも増して明るい曲が多く収録されているってことは、俺らの伝えたいことはそういうことなのかなって。
--確かに『SKY HIGH』は涙が出そうになるくらい明るい曲です。
TOSHIRO:震災で活動できない時期に作詞した曲なんですけど、その時期に思ったことは「前へ進んで行くしかない」だったんですよね。だから、こういう曲になった。
SOYA:最初にTOSHIROから渡されたときは、もしかしたら俺らのスタンダードになるかもしれないって思うくらいに「新しいな!」ってなりましたね。だから1曲目に収録しました。
--SOYAさんが作詞した『Boys be Ambitious!!』も前向きな楽曲に仕上がっていますよね。
SOYA:未来を担う若い子たちへ向けて書いてみた部分もあります。今の若い人たちは、大っぴらに夢を語らない人が多いじゃないですか。色々と空気を読んでいるからだとは思うんですけど、そこに対して勿体無いなって感じることがあって。もっとデカイこと考えようぜ、やりたいことをやりたいって言おうぜっていう、ちょっと説教じみた曲になっていますね(笑)。今後この国や世界をまわしてくのは、そういう子たちだと思うから、俺ら世代からのメッセージを残していけたらいいなと。ただ、こういうことを考えていると、俺も歳をとったなぁとしみじみ思います。
KIM:とりすぎじゃない(笑)? おじいちゃんだよ、完全に。
音楽家には音楽家にしかできないことがある
--若者だけでなく、自分たちへ向けたメッセージも込められている気がしたのですが。
SOYA:それもあります。俺ら自身、夢が叶っているのか叶っていないのか分からない状況だけど、決して気分は悪くない。もちろん、もっと上を目指していますけどね。それを体言していくことも使命みたいなものなのかなって思っていて。こういう歌を歌うからには責任も感じているし、自分自身にも喝を入れてます。
--今回のアルバムは、歌詞もサウンドも挑戦的な楽曲が多いですけど、それは何故ですか?
KIM:今年はとにかく沢山ライブをやろうっていう目標があったり、よりアクティブな活動をしていけるグループになりたいっていう思いがあるから、そうなっているのかも。
SOYA:常に変化し続けないといけないのかなって思うしね。
KIM:限界を感じることはないので、これからも色々な曲を書いていきたいし、どんどん魅力的なライブをしていきたいし、何歳になっても前へ進んでいきたいですね。
--『MY WAY~Realistic Dreamer~』でも新しいHi-Fi CAMPが表現されていますしね。
AIBA:アルバム全体を通して言えることですけど、“ありのまま”という感覚が僕の中ではあって。この曲も、やりたいことを素直に届けたいと思って制作したんです。元々、こういう曲が好きなんですよ。ただ、Hi-Fi CAMPらしさを考えたときにどうかな?と思って今まで避けていた部分があった。でも、徐々に自分たちが進化していく中で、今ならできるかもしれないなって感じたんですよね。
--そういった攻めの姿勢は、現在の音楽シーンで突出するためには大切な事だと思います。より多くの人にHi-Fi CAMPを広めていくために、自分たちでは何が必要だと考えています?
KIM:僕たちのモットーは「みんなの身近にいたい」という部分なので、ライブをガンガンやって、触れ合いを大事にして、少しでも興味を持ってくれた人とはすごく仲良くなっちゃおう! というスタンスで、自分たちの音楽を広めていけたらと思っています。
SOYA:リアルなメッセージというか、等身大の言葉をぶつけること、それを自分の感性で表現していくことが音楽なのかなって思うんです。そういう音楽家には音楽家にしかできないことがあると思うので、そこを広めていけたらいいですね。
--因みに、現在の音楽シーンをどのように捉えています?
KIM:配信も大事だけど、盤も買ってほしいなとは思いますね。僕は盤を買ったときの喜びを味わって育ってきたので、僕らのアルバムをきっかけに、CDの良さを改めて認識してもらえることが出来たら嬉しいなと。元々、音楽って目に見えないものだから、それがもっと目に見えない形でやり取りされちゃうと、どんどん薄れていく気がするんですよね。それを形に留めておくものが、CDやレコードだと思うので。仮にCDを捨てるときが来たとしても「あぁこれはあの時期に聴いたなぁ」とか想い出が蘇ると思うんですよ。だけど、データだとクリック一つで削除できちゃうので、それは少し寂しいかなって。
SOYA:ジャケット写真とかも拘って作ってるしね。
KIM:そうだよ、今回みんなエエ顔で写ってるよ。
TOSHIRO:是非どこを修正したか見て頂きたいですね(笑)。
SOYAは失恋大使!?
--また、『愛し君へ』や『月雪花』といった失恋ソングは、悲しいけれど優しくてあたたかい楽曲に仕上がっています。
KIM:毎回そうですけど、別れたことも無駄ではないので。思い出は自分の糧というか、その経験があったからこそ今の自分がいると思うので、悲しいラブソングもそういう雰囲気になるんだと思います。まぁ、僕たち、引きずりたがりですけどね。
SOYA:引きずりたいわけではないよ(笑)。
KIM:じゃあ、体質ですかね? 失恋ソングを書いて「君との出会いは無駄じゃなかった」とか言っておきながら、多分まだ引きずっているんでしょうね。
SOYA:男ってそういうところあると思いますよ。モールツアーで各地を廻っていても、俺たちのそういう失恋ソングが好きだって言ってくれる男性も多いですし。だから、これからも書いていきたいですね。
TOSHIRO:必ずアルバムに1曲は入れるんでしょ?
SOYA:入れます。決めてます。全国の男性のために。
KIM:“失恋大使”だもんね。
TOSHIRO:失恋したいから恋する、みたいなね。
SOYA:………(笑)。これからもたくさん失恋していきます。
--自分で言っちゃいましたね(笑)
SOYA:いや、でも本当に“ノンフィクションを目指す”じゃないですけど、これからはもっともっと自分を投影させていこうとは思っています。その方が伝わるんじゃないかなって、モールツアーを経て感じたので。
--また、バラードナンバー『ヒカリ』にはどのような想いが込められているんでしょう?
KIM:震災で感じた不安や想い、ありのままの気持ちを綴った曲ですね。あとは「東日本が今まで以上に美しくて強い姿を取り戻せますように」という、僕たち全員の願いを込めた希望の歌です。ただ、最初は歌っていると色々と思い出してしまって、辛くなるときもありましたね。でも、モールツアーで歌っていくうちに、来てくれる皆の顔が希望の光に見えてきて、途中から悲しみとかではなくて、今こうして歌えていることの幸せとかを感じられるようになった。モールツアーを経て初めて完成した気がしますね。
SOYA:悪いことよりも、人の優しさや絆の強さを思い出させてくれる曲なのかなって感じるんですよね。例えば、僕は近所の人と特に付き合いもなかったけど、震災後は皆で助け合ったんです。この曲は、そういうことを思い出させてくれる。自分の無力さを嘆いたことや、悔しい想いをしたこともあったけど、この曲に救われた部分もあるんじゃないかな。
--自分たちにとっても大切な1曲だということですね。
TOSHIRO:僕も最初はこの曲を聴くと震災のイメージが強かったんですけど、モールツアーを経て、明日を照らしていけるような歌になったかな。悲しい歌ではあるけれど、その先にしっかりと希望の光が見えるというか。
AIBA:震災直後もこういう曲を出したいと思ったけど、僕はどうしても偽善っぽくなってしまう気がして、変に誤解を招くような聴かせ方もしたくなかったから止めたんです。だから、今このタイミングで出すことができて良かった。“自分に刻む”という意味でも、この曲を作ることができて本当に良かったと思います。
--最後に、今回のアルバムはどんな方に聴いてほしいですか?
AIBA:制作時間も長くかけたし、自信を持って作った楽曲たちだし、新たな試みもしている。なので、『ヒカリ』という曲があるように、光の輪が広まっていくように、このアルバムも全国各地の皆さんに届いてくれたら嬉しいです。
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