Special
モーニング娘。'17 工藤遥卒業(工藤遥&野中美希/工藤遥単独)インタビュー
私は「アイドルとしてモーニング娘。って凄いと思う。モーニング娘。は格好良いんです!」って自信を持って言えるんですよ。私はこのグループを自慢できる――― いまだかつてないアイドルストーリーを歩んだ工藤遥のすべて、ここに解禁。
「だから、あなたもこれからいくらでも変わっていけるんだよ」
工藤遥(10期)&野中美希(12期)インタビュー
--【モーニング娘。誕生20周年記念コンサートツアー2017秋~We are MORNING MUSUME。~】も残すところ12月11日の工藤遥卒業スペシャルだけとなりましたが、自分たちの中ではどんなツアーになっていますか?
工藤遥:20周年のアニバーサリーイヤーであることは間違いないですし、内容も昔から今まですべてのモーニング娘。を感じてもらえるようになっているので、私たちとしては、回替わり曲とか内容がどんどん進化していくという面では、大変と言えば大変なんですけど、でも今までパフォーマンスできなかったアルバム曲とかカップリング曲とかたくさん披露できる場でもあるので、楽しいですね! めちゃめちゃ! 野中美希:一言で表せないぐらい盛りだくさん! それぐらい内容が詰まっている。工藤さん最後のツアーでもあるし、森戸知沙希(14期)ちゃんにとっては最初のツアーでもあるし、今の14人体制になって最初で最後のツアーでもあるし、シングルもアルバムも引っ提げて、回替わりで過去の曲をめちゃめちゃ披露しているツアーでもあるんです。本当に盛りだくさん過ぎて、ファンの方も本当に飽きないと思います。何回来てもらっても! それぐらい内容の濃いツアーになっています。--意外な楽曲もどんどん披露している訳ですね。
工藤遥:ファイナルでやるかどうかは分からないんですけど、1stアルバムや2ndアルバムの曲とか、例えば「NIGHT OF TOKYO CITY」(2ndアルバム『セカンド モーニング』収録)とか歌ったんですよ。昔から20年間にわたってモーニング娘。を好きでいてくれている方もいらっしゃるにせよ、やっぱり若い方もめちゃめちゃ増えていて、そういう私たちの同世代が知らないような曲もパフォーマンスしています。個人的には「BE ポジティブ!」(8thアルバム『SEXY 8 BEAT』収録)や「パープルウインド」(7thアルバム『レインボー7』収録)辺りは自分にとって神アルバムの収録曲なので、そういう曲がパフォーマンスできたこともめちゃくちゃ嬉しかったです。憧れをついに実現できたというか、ひとりのモーニング娘。ファンとしても嬉しい内容ですね。--20周年のタイミングでモーニング娘。のメンバーで居られていることには、どんな感慨を持たれていますか?
工藤遥:奇跡だと思ってます! 父親が「愛の種」(インディーズデビューシングル)を何気なく本人たちから買ったひとりなんですよ。当時、両親は名古屋に住んでいて、そこで『ASAYAN』を観てて、「近くでやってるなら、会社帰りに寄ってみよう」ぐらいのテンションで応援の為に1枚買ったらしいんです。そんな父親がいて、その娘が後にモーニング娘。のメンバーになって、そして20周年のアニバーサリーのときに居て……なんか、私個人的には親孝行という感じもしますし、先輩たちが作って来て下さった長い歴史のあるモーニング娘。にめちゃくちゃ良いタイミングで在籍できていることは、本当に奇跡だと思いますし、運命的だなと思います。 野中美希:私は20年前に生まれていなくて「LOVEマシーン」以降生まれなので、実感があるかないかと言われたらないんですけど……なんですかね? 運命に連れて来られた感じはあって。すごく昔からモーニング娘。が好きでしたし、なんか直感で「受けたい!」と思って、それでモーニング娘。に入ったので、本当に「運命!」って感じがするんです。だからこの20周年に居れることにも運命を感じていて、この先もこの運命を辿ってどんどん良い方向に持っていけたらなと思います。--今回のツアーは、工藤遥卒業ツアーでもあった訳ですが、野中さん的にはどんな気持ちで一緒にまわってきたんですか?
野中美希:1回1回「あ、工藤さんが卒業されるんだな」と思っていた訳ではないんですよね。もちろん工藤さんの卒業を意識した部分もあるんですけど、やっぱりどうしてもまだ実感が湧かないんですよ。ずっと一緒に活動してきたメンバーだったので。だから本当に居なくなったときに実感するのかなと思うんですけど、私はそれまでいつも通りに工藤さんと接して、吸収できるものは全部吸収していきたいなと思っています。--工藤さん自身はどうですか?
工藤遥:私も実感湧いてないですね。私も「きっと卒業してひとりになったときに初めて実感するんだろうな」と思っているんですけど、それは無意識的に考えないようにしているのかもしれないです。今歌って踊って汗かいて……っていう瞬間を「幸せだな」と感じている。そっちの気持ちのほうが強いので、どうしても「卒業か……しんみり」みたいな感情が後回しになりがちというか。 野中美希:でも唯一「ちょっと感じるな」と思う瞬間は、コンサートでファンの方が工藤さんを見て泣いているとき。その瞬間だけは「あ、そっか!」と思ってウルッと来たりします。--そんな工藤さんの卒業シングルでもある『邪魔しないで Here We Go!/弩級のゴーサイン/若いんだし!』が、Billboard JAPAN Top Singles Sales(週間シングル・セールスチャート)にて1位。そのセールスに加えてラジオオンエアやルックアップ、Twitter、ダウンロードなどの回数を総合した“JAPAN HOT100”でも堂々の1位を獲得しました。
▲モーニング娘。'17『若いんだし!』(Morning Musume。'17[You’re Young Anyway!])(Promotion Edit)
--モーニング娘。として最後に参加したシングルで1位という評価をもらえたのは、どんな気分?
工藤遥:めちゃめちゃうれしいです。私が「卒業する」と発表して「どれぐらいの人が注目してくれるんだろう?」とはずっと思っていたんですよ。卒業効果というのは絶対にある訳じゃないですか。卒業していった先輩たちに負けず劣らず、どれだけ私は注目してもらうことが出来るのか。どれだけ自分が世間に通用するのか。それがいちばん分かる瞬間だろうなと思っていて、だからこそ!「数字がすべてではない」とは言いますけど、やっぱりこうして1位を獲得できたのは嬉しいですし、ちょっとでも私の卒業がきっかけで改めてモーニング娘。に注目して頂けたのかなと思うと「貢献できてよかったな!」と思いますね。--ということは「私の卒業シングルの結果がイマイチだったらどうしよう?」とか、わりと気にはしていたんですね?
工藤遥:気にしてました!「私の卒業効果なくないか?」みたいな状況になったらどうしようって(笑)。圧倒的存在だった道重さゆみさんだったり、エースの鞘師里保さんだったり、お茶の間の人がみんな知ってる鈴木香音さんだったり、偉大な先輩たちが卒業していって「この流れで工藤遥ってヤバいな!」と正直思ってて、本当に何の盛り上がりもなく終わってしまったら「私のモーニング娘。人生って一体?」ってなるじゃないですか! でもこうやって結果が残せてよかったです。本当にありがとうございます!--特に「若いんだし!」はまさに工藤遥の卒業ソング! といった内容になっていましたもんね。野中さんは「若いんだし!」に対してどんな印象を持たれていますか?
野中美希:歌詞には「若いからいろんなことにチャレンジすればいいじゃん」というつんく♂さんからのメッセージも入っていて、それは工藤さんに向けたメッセージでもあると思うし、でも私たちにもすごく響くところがあって。例えば、私は英語が特技ですけど「音楽にも力を入れてみよう」と思ってピアノをもっと練習してみたりしてます。それは「若いんだし!」を聴いたのをきっかけにです! あと、MVも素晴らしくて、格好良い系のMVが多いモーニング娘。にとっては珍しい、みんなではしゃいでいる内容だったんですけど、工藤さん含め12人でワチャワチャしている瞬間ってすごく楽しいんですよ。だから「この空間から工藤さんが居なくなってしまうのは寂しいな」とも思いながらの撮影だったんですけど、出来上がりを観たら本当にみんな楽しそうにしていて、いつまでもたくさんの人たちに観てほしいMVだなって思っています。--あれはもう限りなく素に近いんですか?
工藤遥:そうですね。私がいちばん好きな瞬間ばっかり切り取られているMVだと思いますし、バスの中のシーンもあるんですけど、私たちはモーニング娘。というバスに乗って走り続けている訳じゃないですか。そこから私が降りるにあたって「じゃあ、まわりはそんな私をどう見てるんだろうな?」とか……なんて言うんですかね? モーニング娘。に居た6年間だけじゃなくて、私の人生すべてみたいな。その人生を進んでいく上で人と出逢っていって、その瞬間瞬間も表現されているから……「工藤さんってどんな人生を歩んできたんですか?」と聞かれたら「「若いんだし!」のMVを見て頂ければ全部分かります」と答えられるぐらい、本当に愛と想いと……いろんなものが詰まった作品になったなと思っています。--あの涙はどうして流れちゃったんですか?
工藤遥:私、しんみりしているときよりも「何? ハルちゃん、泣いちゃうの?」みたいな感じで茶化されているときのほうが泣きそうになるんですよ。それで、MVでリップシーンを撮っているとき、私のソロパートになった瞬間、みんながめっちゃ茶化してきて! それで思わず泣いてしまいました。「こうやって茶化されることもなくなるんだな」って一瞬でも思ってしまった私の負けです(笑)。 野中美希:ガチワチャワチャでしたから(笑)。--「若いんだし 無限だし 勇気がそりゃ必要な時もあるだろが WOW WOW WOW 結果を先に気にすんな!」というフレーズは、つんく♂さんがお父さんだとしたら娘への教えのような歌詞ですよね。
工藤遥:そうなんですよ! なので、この歌詞をもらった時点でまず1回泣き、曲を聴いて泣き、MV撮影で泣き、ダンスレッスンで泣き……みたいな。この曲にまつわるすべての場面で本当に涙していて。つんく♂さんがこの曲を通して「私に手紙を書いてくれた」という感覚もありましたし、つんく♂さんは常々「ここがゴールじゃない」と仰っていたんですよ。それを改めて伝えてくれたメッセージというか「工藤がやっていることは間違いじゃないし、工藤の人生なんだから好きにしなさい」という温かさみたいなものは本当に感じましたね。「体の水分、全部出ていくんじゃないか?」「人間ってこんなに涙出るんだ?」と思うぐらい、この曲には泣かされましたね。 野中美希:私、泣いているところ全部見てるんですけど(笑)、さすがにそのときはつられて泣きそうになりました。本当に心に染み渡る歌詞、そして目の前で工藤さんが泣いているという状況。そんなの、絶対にうるうる来るじゃないですか。だからこの先も忘れられない瞬間になりそうです。工藤さんが卒業されるときに、工藤さんが初めて歌詞をもらって読んでいるとき、そして泣いている瞬間は、きっと脳内再生されるんだろうなって。--この曲、工藤さんの卒業公演で歌ったら凄いことになっちゃいそうですよね。
工藤遥:いや、本当ですよね。歌える気がしないです(笑)。--野中さんから見た工藤遥について伺いたいのですが、12期メンバーとして加入する前はどんな印象を持たれていましたか?
▲モーニング娘。'15『青春小僧が泣いている』(Morning Musume。'15[An Adolescent Boy is Crying]) (Another Ver.)
--ジェントルマンだと男になっちゃいますね(笑)。
工藤遥:ハハハハ! 野中美希:ジェントルウーマンみたいな! 例えば、泣いている子がそこにいたらササってティッシュを持ってきたりとか、そういう優しい心遣いができる方で、後輩メンバーに工藤さんのファンがたくさんいるのもよく分かるなって。私は逆に空気を読めないタイプなので(笑)すごく尊敬します! ブログにも書いたんですけど、楽屋のお片づけを工藤さんが進んでやっていらっしゃって、それを見て後輩たちも「やらなきゃ!」となるんです。要するに「工藤さんの後についていきます!」って感じなんです。でもその工藤さんが卒業されるから、ついていく人がいない状況になる訳ですよ。だから今後は私が最初に動ける人になりたいなとすごく思います。--誰かが動かないと散らかったままになっちゃいますからね。
工藤遥:そうなんですよー。困っちゃうぐらい。 野中美希:だから工藤さんは本当にグループの中でいちばんのしっかり者なんです! なんであんなに気を遣えるのか本当に不思議なんですよ。おんなじ人間なのに!--でも工藤さんからしたら普通なんですよね(笑)。
工藤遥:そうですね。でも私が気にしぃの部分もあったりとか、私は過去にいろんなスランプを乗り越えてきて今に至るので、そういう意味ではモーニング娘。が今の自分を作ってくれたんです。野中は私のわりと出来上がった状態だけを見てるから「なんで出来るんですか?」と驚くと思うんですけど、たぶん最初から見ている人からしたら「いやいやいや、工藤は最初からああじゃなかったよ。この辺から変わったんじゃん」ってなると思うんです。なので、野中には「元々こういう訳じゃないよ? だから、あなたもこれからいくらでも変わっていけるんだよ」と言っておきたい。--ちなみに、野中さんにとって工藤さんはどんな存在だったんでしょう?
野中美希:ひたすらキラキラしている先輩。お顔も可愛いですし、スッピンでもすごく可愛いんですよ。それで持ち物とかもすごく女子力が高いんです。ティッシュとかハンカチとかリップクリームを常備しているタイプ。--野中さんは、ティッシュとかハンカチとかリップを常備しないんですか?
野中美希:私はわりと必要最低限タイプなんですよ。だから「○○持ってる?」と聞かれても「ごめんなさい、持ってないです」となる。でも工藤さんはそういうモノをちゃんと持っていて、整理整頓もしっかりされていて、完璧主義なのか分からないですけど、本当にすべてが整っているんです。それでいてメンバーからもスタッフさんからもすごく愛されていますし、うらやましいなと思います。「工藤さんになりたい」と何度も思ったことあります。 工藤遥:えー? うれしい!--では、工藤さんにとって野中さんはどんな後輩?
工藤遥:12期メンバーは加入当初、かなり大変だった面もある子たちだったので、すごく怒ったりもしたし、私にとってはいつまでも心配でおっかない子たちなんです。もう心配する必要もないぐらい成長していますし、各自にキャラクターや立ち位置も見つけている……にも関わらず、なんか「心配」って思っちゃうんだよなぁ。それぐらい愛おしい子たちなんですけど、特に野中は最近中心メンバーになってきて、何に対しても本当に努力家で頑張り屋さんだから、これからどんどんどんどん期待値が上がれば上がるほど「応えよう!」と思って努力すると思うんですよ。ただ、そればっかりになってほしくないなって。例えば「後輩が入ってきたから格好良い姿を見せなきゃ」とか「負けないようにしなきゃ」とか思い過ぎて、野中がこの3年4年で築き上げてきたものを見失ってほしくないと思うときがあります。やっぱり人一倍憧れが強くて「好き」が強い分、どうしても背伸びしがちなんですけど、私は等身大の野中が好きだったりもするし、変に格好付けなくてもちゃんと頑張っていることは知ってるから…… 野中美希:変に格好付けないほうがいい? 工藤遥:そう! そんなことしないで、これまで野中が学んできたことや頑張ってきたことをただただ真っ直ぐぶつけていってほしい、これからも!--野中さんをずっと見守ってきた工藤さんだからこそ言えることですね。
工藤遥:何年経ってもこのまま成長していってほしい。「私が卒業した後の歌割りとかどうなるんだろうな?」ってめちゃめちゃ気になるんですけど、正直「私のパート、野中に結構行くんだろうな」と思っているんですよ。そう期待もしているし、だからこそ「工藤さんがこういう風にやっていたから」とか「こういう風に歌っていたから」とか思わずに! そこは野中美希のパートになるんだから「野中が好きなようにやっていいんだよ!」っていう風に思ってますね。 野中美希:私、後輩が入ってきたときに「格好付けよう」と実際に思ったんですよ。だから今話を聞いていて「ごもっともです」と思いました。13期と14期が入ってきて、しかも森戸知沙希ちゃんはほぼ同期で、そういう新メンバーたちが入ってくると「格好良い人でありたい」と思って急にイキっちゃうところがあって(笑)。--ちょっと不自然に……
野中美希:すごく不自然に!一同:(笑)
野中美希:それで空回りしちゃって……リリース情報
⑮ Thank you, too
- 2017/12/06 RELEASE
- 初回生産限定盤[EPCE-7371/2(CD+BD)]
- 定価: 7,020円(tax in.)
- 詳細・購入はこちらから>>
- 通常盤の詳細・購入はこちらから>>
関連リンク
Interviewer:平賀哲雄|Photo:Jumpei Yamada
女優さんとして格好良く生きていく工藤さんをずっと見ていたいです
--でもたしかにこのまんまの野中美希を愛している人がたくさんいますし、このまま成長してほしいと思っている人もたくさんいますよね。
工藤遥:そうなんですよ! 野中美希:よく「愛おしいキャラだね」みたいなことを言われるんです。それがすごくイヤだったんですよ! なんかマスコットキャラクターみたいじゃないですか(笑)。--もっとストイックで近寄りがたいメンバーになりたかったと?
野中美希:格好良くて、なんかちょっとセレブ!みたいな(笑)。 工藤遥:アメリカに染まり過ぎだよ! 野中美希:でも10月上旬に18歳になって「私は等身大でいいのかも」と思い始めて。愛おしいキャラでも、実際にパフォーマンスを観たときに格好良ければ「ギャップ萌え」みたいなのもあるだろうし、変に格好付ける必要はないんだなとやっと気付いたんですよ。だから今工藤さんの話を聞いていて「やっぱりこのままで良いんだな。等身大のままでいこう」と思いました。--今の工藤さんの野中さんに対する語りがすごく熱っぽかったので、それだけ期待値が高いんだなと感じました。
▲モーニング娘。'16『セクシーキャットの演説』(Morning Musume。'16[Sexy Cat’s Speech])(Promotion Edit)
--という先輩の話を聞いていかがですか?
野中美希:自分で言うのもアレなんですけど、私、褒められたら褒められただけ伸びるというか、褒められ伸び子なんですよ! 工藤遥:褒められ伸び子(笑)。 野中美希:だから工藤さんから今「期待している」と言われたので、このあと家帰ったらライブ映像観まくって復習しまくると思います! やる気が漲っちゃって(笑)! でもその期待を絶対に裏切りたくはないから、その期待以上で返していきたいです。私、ここまで言ってもらっているのに、それで期待に応えられないのはイヤなんですよ。ただでさえ日常生活ではポンコツなのに、パフォーマンスでもポンコツだったらただのポンコツじゃないですか!一同:(笑)
野中美希:だからもう磨くしかないですね! 歌割りに関しても、これから実際にどうなっていくのかは分からないですけど、やっぱり9期さん、10期さん、11期さんが歌う場面が多いじゃないですか。でもこれからは「先輩ばっかりに取られたくないな! 後輩メンバーも目立てるようになりたい!」と思っていて。で、私、後輩メンバーには絶対負けたくないんですよ! だから私を筆頭に、歌は親から良い声を頂いたので、そこでも頑張っていきたいと思っています。--今の野中さんの話を聞いていると、工藤さん含むかつての10期っぽいですね。
工藤遥:そうなんですよ。なんかちょっと懐かしさも感じます。 野中美希:常に今メラメラしている時期なんです!--個人的に野中さんは【ファラオの墓】で大きく変わった印象があります。モーニング娘。の舞台はメンバーが大きく成長するきっかけになることが多いですけど、工藤さんから見ていかがでした?
工藤遥:そうですね。野中の華奢な感じとか「お姫様にすごくハマるな」と思っていましたし、野中ってどっしり構えているのも似合うんですけど、【ファラオの墓】をきっかけに繊細な動きが上手になったなと思ったんですよ。それがライブにも生きているので、野中にとってすごく大きな経験になったんじゃないかなと思いますね。あと、野中が演じたナイルキアという役は歌で魅せる部分も多かったので、舞台においては本当にこれから期待の星だと思います。--工藤遥にこれを言われるというのは……
野中美希:これから女優になられる工藤さんに……--演劇女子部の顔であった工藤さんに……
工藤遥:いやいやいや! 野中美希:いや、本当に! 本当にそうなので……【ファラオの墓】で工藤さんと恋仲を演じて、本当にこんな経験なかなか出来ないし、でもそれだけの役を私に任せてもらえてすごく嬉しかったですし、この役を頂いたときに「絶対にこのチャンスを逃したくない!」と思いました。すごく苦戦しましたし、演出家さんにもすごく注意されました。普段はガニ股で歩いちゃう癖のある私が女性らしいしなやかさを学んだり、今まで出演した舞台の中でいちばん大変だったんですけど、最終的に「すごく良かったよ」と言って頂けて……本当に嬉しかったですね。で、その経験が今のツアーにも生きてると思うんです。特に歌の部分では、その舞台期間に自分でも成長できたと思いますし、何より自分の歌声が好きになったので。--それまではあんまり好きじゃなかったんですか?
野中美希:あんまりいないじゃないですか、こんな声の人。--特徴的ではありますよね。
野中美希:でも私のファンの人に「なんで私のことを好きになったんですか?」と聞くと、声から入った人がわりと多くて。だから「私はこれから声で魅せていくべきだな」と思ったんです。演技はもちろん、声で魅せていきたいと思えた【ファラオの墓】でした。--工藤さんも舞台経験を積むごとに表現力が増していきましたよね?
工藤遥:私も舞台に教えてもらったものはめちゃめちゃ大きいですし、舞台で表現を褒められたことによってライブでの表現が変わったところは本当にあるので、おそらく野中も同じようなタイプなんだろうなって思いました。でも私はそのままお芝居の道へ進むけど、野中はそれをアイドルとして歌やダンスのほうに反映させていく訳だから、そういう意味ではここから私とも違う成長をめちゃくちゃ見せていくと思いますし、それこそ「来年の舞台でどんな役をやるのかな?」とか「それを終えた後の野中はどうなるのかな?」とか楽しみなポイントがめちゃめちゃ増えたので、早く客観的に見てみたいです。--野中さん、めちゃめちゃ期待されてますよ?
野中美希:(涙声になりながら)もう本当に……やる気しかないです!--工藤さんが卒業するまでの残り僅か。どんな風に過ごしたいなと思いますか?
野中美希:私は敢えていつも通り過ごしたいです。「居なくなっちゃうんだなぁ」と思うと……それは良くないなと思って。工藤さんはこれから女優になられて、また新しい夢を追いかけていく訳じゃないですか。それって本当に素敵なことだから泣いて送り出したくないんですよ。と言いながら卒業セレモニーでは多分泣いちゃうんですけど(笑)、私が勝手に寂しくて! でも気持ちは笑顔で送り出したい。「応援します! いってらっしゃいませ! 工藤さん」といった爽やかな感じでみんなと送り出したいです。でも泣いちゃうかなぁー?--それは12月11日を迎えてみないと分からないですよね。
野中美希:泣きながら堪えちゃうからよく分かんない顔になっちゃうんで……だから笑顔で送り出せたらいちばんなんですけれども。--自分の為にも(笑)。
野中美希:自分の為にも! 工藤遥:映像に残っちゃうからね(笑)。--あと、工藤さんの卒業直前に、3年ぶりのニューアルバム『15 Thank you, too』がリリース。ファン待望、メンバーも待望だったと思いますが……
工藤遥:それこそ野中含めた12期以降にとっては初めてのアルバムになりますし、私も卒業間近で自分の歌声をちょっとでも多く残せて良かったと思っています。女優になったら歌う機会は思いっきり減ると思うので。あと、とにかく今の私たちの世代にピッタリな楽曲ばかりなので、これからモーニング娘。を知ってくれるであろう方たちにも薦められますし、みんなの中にずっと残っていくアルバムになるんじゃないかなって思っています。 野中美希:『邪魔しないで Here We Go!/弩級のゴーサイン/若いんだし!』が14人でリリースする最初で最後のCDだと思っていて、そのときにはまさかアルバムが出せると思っていなかったんですよ! なので、もうひとつ形に残せる! しかもアルバム! それがすごく嬉しくて。まずみんなの声がここに残せることが嬉しいですし、本当に格好良い曲から可愛い曲、にぎやかな曲と……本当に「オールジャンル!」みたいな感じで収録されているので、昔からのファンの方も、最近ファンになった方もたくさん聴いてほしいです。最近は女性のファンの方がすごく増えているんですけど、女性って広めるのが好きじゃないですか。「私、今、モーニング娘。にハマっててさ!」みたいな感じで。なので、今回も「アルバム聴いてみてよ!」みたいな感じで広めてもらえたらいいなって思っています。--あと、今作は「ライブで聴いたことあるけど、いつになったらリリースされるんだろう?」と待ち続けた曲が満を持して収録されたりもしていますからね。これ1枚でちょっと歴史も感じられるというか。
野中美希:「私のなんにもわかっちゃない」は2015年の曲なので!--鞘師さんもライブで歌ってましたもんね(笑)。
工藤遥:やっとこさ、形になりました!--あと、今作には、現役14人による「愛の種 (20th Anniversary Ver.) 」も収録されていますが、先んじてオリジナルメンバー(中澤裕子/石黒彩/飯田圭織/安倍なつみ/福田明日香)×現役メンバーによる20周年企画シングル『愛の種(20th Anniversary Ver.)』も配信限定リリースされました。
▲モーニング娘。20th『愛の種』(20th Anniversary Ver.)(Morning Musume。20th[Seeds of Love])(ショートVer.)
--凄いことですよね。2人ともオリジナルメンバー(中澤裕子/石黒彩/飯田圭織/安倍なつみ/福田明日香)がデビューしたときは生まれていないわけで。
工藤遥:生まれてないです!--福田さんの在籍時代も知らない訳ですよね?
工藤遥:たぶん、福田さんがご卒業されてから生まれてるぐらい。そんなグループに自分が居る不思議、半端ないですね! 野中美希:MVも撮ったんですけど、おんなじ映像の中にいることが衝撃でした。ビックリしました!--12期ぐらいからすると、歴史上の人物みたいな感覚に近いんですかね?
野中美希:本当に! エジソンとか!一同:(笑)
野中美希:モーツァルトとか、それぐらい偉大な人たち! そんな方々とユニゾンで歌ったりするんですよ?「私、石黒さんといっしょに歌ってる!」みたいな。それがしっかり形になってリリースされる……凄いことだなと思いましたね。--では、そろそろ第1部の〆に入りたいんですが、最後に野中美希から工藤遥先輩へのメッセージをお願いします。
野中美希:工藤さんにメッセージ! 工藤さんは……私が12期メンバーとして加入して初めてお話した先輩なんですよ。舞台裏で。それで「すごくフレンドリーな先輩だな」と思ったのがまず第一印象で、それから先ほどもお話させて頂いた通り、根からしっかりされた先輩なんだなと感じて、お行儀とか、この世界での……なんて言うんだろう?--生き方?
野中美希:そうです! 生き方! 本当に生き方を教えて下さった先輩なんですよ。 工藤遥:そんな……(笑)。 野中美希:そう言っても全然大袈裟じゃないと思います。辞書みたいな先輩だなって。 工藤遥:辞書!?--困ったら工藤さんに聞けば分かると(笑)。
野中美希:本当に「困ったら工藤さんに!」って感じだったので、そんな辞書みたいな存在が居なくなってしまうんですよ。急に世界から辞書が無くなったらもうワタワタしちゃうじゃないですか! そんな状態になってしまうかもしれないですけど、そうなってしまわないように私もしっかりしたいと思いますし、これから12期もどんどん活動年数を重ねていって、モーニング娘。の中心になれるように、いつまでも工藤さんに心配されないように(笑)頑張っていきたいと思いますので、見守っていてほしいなって思います。そして、女優さんとしての工藤さんを私はずっと応援していたいと思っています。テレビに出ると決まったら「工藤さん出るから録画しよう!」みたいな。きっと雲の上の存在みたいになっちゃうと思うんですよ。「あのとき、一緒にインタビュー受けたなぁ……」って今日のことも思い出しちゃうと思うんですけど、それぐらい女優さんとして格好良く生きていく工藤さんをずっと見ていたいです。リリース情報
⑮ Thank you, too
- 2017/12/06 RELEASE
- 初回生産限定盤[EPCE-7371/2(CD+BD)]
- 定価: 7,020円(tax in.)
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Interviewer:平賀哲雄|Photo:Jumpei Yamada
元を辿れば全部【リリウム】あの舞台をやっていなかったら私はここにいない
工藤遥(10期)単独卒業インタビュー
--さて、ここからは工藤遥単独インタビューになります。工藤さんが小6のデビュー時にインタビューした身からすると、こうして卒業インタビューをする日がやってきたこと。とても感慨深いんですが、自分的には小学生からスタートしたモーニング娘。での活動は、どんな日々だったなと感じますか?
工藤遥:毎日毎日大変でした。何も分からない世界だったので、そこで新しいことを知って、それを生かしての繰り返しの6年間だった思います。その途中で、同級生とか見ながら普通の生活に憧れた時期もありましたけど、やっぱり普通の子が生きてきた6年より私は全然濃いものを得た6年間だったと思うので、あのタイミングでモーニング娘。になったことは間違いじゃなかったなと思いますね。--僕が初めて出逢ったときの工藤さんの印象は……
工藤遥:うわー! 怖っ!--まだ何も言ってないです(笑)。まぁもちろん幼いという印象はありつつも、分析力もあり、「あ、小6でこんなに語れるんだ?」と驚かされました。
工藤遥:本当ですか?--ただ、それからまもなく「あ、結構、生意気な子なんだな」と……
工藤遥:出たよ、もう! 会う人、会う人に言われるやつ(笑)!--2012年の主演舞台【ステーシーズ 少女再殺歌劇】のとき、田中れいな先輩の立ち合いのもとで9期と10期の話し合いがあったとインタビューで聞きまして。田中さんが「10期は先輩の9期にいろいろ言いづらいだろうから、この話し合いの場では先輩後輩なしで喋ろう」と言ったら、9期に対して工藤さんが「つーか、ここはこうで、あそこはああじゃないといけないと思うんスよ!」みたいな。田中さんいわく「立ち振る舞いも凄くて、座り方なんてお父さん座りなんですよ!」というエピソードを聞かせてもらってから、印象が大きく変わりました(笑)。
工藤遥:すごく憶えてる、それ!--あの頃の自分を今振り返ると……
工藤遥:もう黒歴史です、黒歴史!--よく「黒歴史」とは仰いますけど(笑)、でも幼いなりにすごく頑張っていた訳じゃないですか。どうしていいか分からないなりに「前へ前へ」出て行こうとした結果だったのかなと思うんですけど。
工藤遥:……今だから話すんですけど、私、モーニング娘。に入った時点で、ハロプロエッグ(※現ハロプロ研修生)から飛び出していったのが自分だけだったから「もうエース街道まっしぐらだ!」と思い込んじゃっていた訳ですよ。そこがそもそも間違いだったんです。いざモーニング娘。に入って蓋を開けてみたら上には上がいて、でも私には変なプライドがあったからなかなか吸収できないモノもあったし、自分がそれまで得てきたものと新たに得るもの。例えば、同じテーマで何かをするにしても、ハロプロエッグとモーニング娘。では違うやり方が求められるんですよね。でも「私はこう学んできたんだ!」という意思が強すぎたゆえに、他の10期の3人(飯窪春菜/石田亜佑美/佐藤優樹)みたいに純粋に受け入れることが出来なくて、成長が本当に遅かったと思うんですよ。そこで伸びまくっていた鼻をバン!とぶった切られて。入ってもう1年ぐらいで本当に崖っぷちで……絶望的な時期に入ってしまった。--ちなみに「鼻をバン!とぶった切られた」と感じた具体的な出来事って何かあったんですか?
工藤遥:入って1枚目の『ピョコピョコ ウルトラ』でもちょっと感じたんですけど、特にそれを感じたのは2枚目の『恋愛ハンター』ですね。石田亜佑美ちゃんだけが先輩たちと一緒に歌割りをもらっていて、それ以外の私たちは違う振り付けで踊ったりしていたんですよ。その状況を見て「本来なら私があっちに居たはずなのに!」と中学1年生ながらに思ったんですよね。それで「自分は思ったより出来ない子なんだな。自分より出来る子はもっといっぱいいたんだな。本当にナメてたな、この世界」と入って1年足らずで実感してしまって。そこからはもう這い上がろうにも這い上がることも出来ず……当時のシングルを振り返ってもらえれば分かるんですけど、ここ1,2年で私を知った人からしたら信じられないぐらい、マジで空気みたいなんですよ! あの頃のモーニング娘。の中での私は。ソロパートもなければ、歌割りもないし、ハジっこだし。でもその中でも「ちょっとでもグループの為にならねば」と思うから、話し合いの場とかがあると率先して意見したりとか……するようにしてたんじゃないかなとは思います。--当時はそうするしかなかったんでしょうね。
工藤遥:「だから強気なことばっかり言ってたんだろうな」とか「出来ない自分を隠そうとして強がっていたのかな」とか……今になって思うことですけど、それが私が加入してからの「黒歴史」と呼ばれる1,2年です。--普通に生活していたら、小6や中1でそんな大きい壁にぶち当たることってない訳じゃないですか。そもそも「エース街道まっしぐらだ!」と思うこともない訳ですけど、それを信じた子供が「そうじゃない」と現実を叩きつけられてしまった。上手く立ち回れなかったのは無理もないですよね。
工藤遥:でもそれがプロの世界なんですよね。ハロプロエッグ時代にフィーチャーして頂いた時期もあったりとか、選抜メンバーに選ばれることも増えたりとか、そういう流れがあったから「このままモーニング娘。に入ったら、もうこのまま良い風しか吹かない」と思っちゃっていたんですけど、やっぱり研修生とモーニング娘。では天と地の差で全然違うから。マイナス100ぐらいだった子がゼロになっただけでちょっと良く見えていたのがエッグ時代、でもゼロの子が1になったって「前には持ってこないよ」というのがモーニング娘。だから。その差は凄いなと思いましたし、やっぱりプロの世界なんだなと痛感しましたね。--話を戻しますが、自分じゃない10期メンバーがフィーチャーされ、その現実に挫折しながらも嫉妬していた訳ですよね。そういう時期はどうやって同期とコミュニケーションを取っていたんですか?
工藤遥:嫉妬はしていましたけど、それを表に出すようなことはしなかったです。元々人が好きで、誰かと一緒に居たりとか、誰かに頼られたりすることが好きだったから、ひとりになるのはイヤだったし、嫌われたくなかったんで、そういうことはしないようにしていました。あと、自分が出しゃばれる隙があったら、そういうときに発言したり仕切ったりしていたので、そういうことで気を紛らわせていたというか……そうやって自分の居場所を見つけようと、作ろうとしていたんじゃないかなと思います。--そういう意味では、最も必死だった時期かもしれない?
工藤遥:必死でした!--おそらく「私はモーニング娘。なのか?」という葛藤もありましたよね。
工藤遥:「名ばかりのモーニング娘。」という感じでしたね。もちろん今に比べたらモーニング娘。の凄さとか偉大さみたいなものは全然分かってなかったですし、とにかく「自分だけが目立てればいい」と思っていた時期ではあったので……というか「自分だけが目立てればいい」という理想にも近付けなかった頃だったから、必死でしたね。--そこからいろんな転機があったと思うんですけど、工藤遥にとって何よりも救いになっていたのは“舞台”だったのかなと。
工藤遥:めちゃめちゃ“舞台”でした!【ステーシーズ 少女再殺歌劇】がモーニング娘。に入って初めての舞台だったんですけど、田中さんと鞘師さんと並べたんですよ(※メインキャラ3名のうちの1名、ドリュー役に工藤遥はキャスティングされた)。それでメインのポスターになったときに……「勝った!」と初めて思ったんですよ。10期の中で。それで【ステーシーズ】が終わった後も「私はここ(舞台)でなら張り合える!」と思うことが出来た。それでファンの方からも「舞台だとすごく生き生きするよね!」って言われたんですけど、それは「何でもいいからひとつ勝ちたかった!」っていう気持ちの表れだったと思いますし、その気持ちが途切れることなく、最後までこのポジションをキープすることが出来たことは、私がひとつ自慢できることというか、誇りに思うことですね。--【ステーシーズ】のドリュー、【ごがくゆう】のリオン、【リリウム】のファルス、【トライアングル】のアサダ、【続・11人いる!】のタダ&フロル、【ファラオの墓】のサリオキス&スネフェル。工藤さんが演じてきた登場人物たちはすべて物語の中核を担う役でした。そうしたポジションを任せ続けてもらえたことに対しては、どんな感慨を持たれていますか?
工藤遥:素直に嬉しかったです! 最初は経験あるメンバーが少なくて、でも私はエッグ時代に何本か舞台に出ていましたし、その経験があるから選ばれたんだろうなと思っていたんですよ。でも「工藤をこの役にしたい」という想いを感じて嬉しかったのが【ごがくゆう】という舞台をやったときで、そのときも鞘師さんとメインを張ってやらせてもらったんですけど、それは【ステーシーズ】のドリューを評価してもらえたから。だからここに居られるんだなと感じることが出来たので、年々舞台に対する想いも強くなりましたし……私の居場所というか「私がいちばん輝けて理想形に近付けるのはここなんだな」と舞台をやりながら思ってました。--そして工藤遥が名実共にブレイクした舞台が【LILIUM-リリウム 少女純潔歌劇-】だと思うんですけど、あそこでファルスを演じたことが「イケメンキャラの確立」や「女性ファン急増のきっかけ」となっていきましたよね。そして表現者としても大きく成長していきました。
工藤遥:本当に“今の工藤遥”を作ってくれたきっかけだったと思います。【ステーシーズ】と【リリウム】の演出家は同じ末満健一さんなんですけど、末満さんには【ステーシーズ】のときに毎日怒られ過ぎて、泣かされ過ぎて、私は末満さんのことが大っ嫌いで(笑)!「二度と舞台なんてやりたくない!」と思ったぐらい苦戦した作品だったので、その2年後「なぜ末満さんは私にあの役(ファルス)を務めさせたのかな?」と思って。最初は「ただボーイッシュだからかな」と思っていたんですけど、あの役は末満さんからしてみればすごく想い入れのある役だし、めちゃくちゃ大事にされていた役だったんです。それを私に与えてくれたということは、何らかの大きな意味があるんだと思いましたし、私もそこですごく欲が出たんです。「言われるがままにやるだけじゃ物足りない」って。それで「自分はこうしたいんです。こうだと思うんです」っていう意見も言えるようになりましたし、それでたくさんの方から評価してもらえたことは自信にもなりましたし、ボーイッシュやイケメンキャラが定着してきたのも【リリウム】からだったし……--中二病キャラも今思えば……
工藤遥:そうですね! ファルスです! 元を辿れば全部【リリウム】なんですけど(笑)、でも本当にあの舞台をやっていなかったら、私は多分ここにもいないだろうし、モーニング娘。としてこの立ち位置にもいないだろうし、卒業も考えていないと思うんですよ。だから本当に【リリウム】に人生を変えられましたね。大転機でした。--そこで自信を掴んだことで、モーニング娘。のステージにおける工藤遥も大きく変わりましたよね?
▲モーニング娘。'15『Oh my wish!』(Morning Musume。'15[Oh my wish!]) (Promotion Edit)
リリース情報
⑮ Thank you, too
- 2017/12/06 RELEASE
- 初回生産限定盤[EPCE-7371/2(CD+BD)]
- 定価: 7,020円(tax in.)
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関連リンク
Interviewer:平賀哲雄|Photo:Jumpei Yamada
卒業してからもモーニング娘。の看板を背負ってやることはたくさんある
--もうひとつ「工藤遥の変化」とそれに伴う「工藤遥の魅力」に気付いた流れがあるんですけど、2013年春の田中れいなさんとまわる最後の全国ツアー。田中さんの代役を石田さんが急遽務めることになったとき、その背中に向かってステージ袖から何度も「あゆみん頑張れ!」と叫び続ける工藤さんの姿がありました。
工藤遥:憶えてます!--あの姿に「この子は本気で人の為に応援できたり、泣いたり、怒ったり、笑ったりできるんだな」と感じたんですが、かつては自分のことしか考えられなった女の子が何故あんな風に「あゆみん頑張れ!」と叫べるようになったんでしょうね? 冒頭の話だと、石田さんにはいろいろ思うところもあった訳じゃないですか(笑)。
工藤遥:ありましたよ! いっぱいありますよ(笑)!--そんな彼女を本気で応援できるようになった。そこにはどんな気持ちの変遷があったりしたんでしょうか?
工藤遥:モーニング娘。に入って速攻で挫折してから、自分に出来ることは人のサポートというか……言い方悪いですけど、雑務みたいなことは率先してやっていこうと思ったんです。単純に昔から細かい作業が好きだったり、片付けるのが好きだったりしたので、そういうことをずっとやってきて、そういうことしか出来なくて、だから「表舞台に立つより裏方のほうがきっと活躍できるだろうな」と当時は思ってました。でもそんな自分が人のことを想えるようになったのは、いろんな方たちが私のことを最後まで見捨てないでいてくれたから。舞台に関しても期待してくれていたからああいう役を頂けたんだと思いますし、ソロパートやダンスで目立つ場所をもらえなくてもジャケ写だけは前に出るようにしてくれたりして、それも私に期待してくれていたからだと思うんですよね。そういうことに気付けたのがあの頃だったんです。それで「私はこんなにいろんな人に想われてるんだから、私も同じことを誰かにしよう」と思うようになって、それからああやってあゆみんに声をかけられるようにもなりましたし。なので、本当に私の人格を変えるぐらいの出来事だったんですよね。--みんなの優しさや愛情に気付けたことにとって、自分も人に優しさや愛情を向けられるようになったと。
工藤遥:そういう人になろうと思ったし、私が誰かに優しさや愛情をもらったように、私も誰かに優しさや愛情を返そうと思ったんですよね。それがたぶん私のすべてに繋がっているんだろうなと思います。--その結果、工藤さんはメンバーからもモテモテになっていきます。
工藤遥:そうですね(笑)。有り難いことに!--どんな気持ちだったんですか?
▲アンジュルム『大器晩成』 (ANGERME[A Late Bloomer]) (Promotion edit(New Ver.))
--その結果、いろんな雑誌でも工藤さんと誰かメンバーのツーショット写真が多くなったり、そこでもひとつ自分のポジションを確立することになりましたよね。
工藤遥:そうですね。でも本当にいろんな人の手助けによってというか、いろんな人が何でか分からないんですけど、私に力を貸してくれたから……すべてはそれのおかげだと思ってます。--でも工藤さんにそういう素養がなければ、誰も近づいてこないですよ?
工藤遥:そうなんですかね?--そこに無自覚なのも工藤さんの魅力だと思いますが(笑)、でも舞台で自分のポジションを確立したアイドルもなかなかいませんし、そこで人の優しさに気付いて同性からモテモテになったストーリーも聞いたことないですし、かつてない魅力を持ったアイドルに工藤さんはなったと思います。そんな唯一無二のアイドルが卒業を考え始めたきっかけは何だったんでしょう?
工藤遥:もちろん舞台がどんどん好きになったこと、毎年新しい役に出逢えて「もっともっといろいろ演じたい」と思ったことも大きいんですけど、その中で「映像作品にも挑戦したい」と思うようになって、それとモーニング娘。の活動を両立したいと思ったんですよね。でも物理的に不可能な訳ですよ。年に4回ライブの時期があって(※モーニング娘。のツアー2本とハロコンのツアー2本)、舞台ももちろんあって、私たちはそれだけで1年のスケジュールのほとんどが埋まっているようなグループです。それでちょっと諦めていたところはあったんですけど……やっぱり挑戦したかった。ドラマとか映画に出て「工藤遥(モーニング娘。'17)」ってクレジットに入ったら「へぇー。この子、モー娘。なんだ?」って、私きっかけでモーニング娘。に興味を持ってもらえるじゃないですか。その結果、私以外のメンバーを好きになってくれてもいいし、私はモーニング娘。に貢献できればそれで良かったんですよ。--「モーニング娘。の為に」という気持ちが強かった訳ですね。
工藤遥:私は「アイドルとしてモーニング娘。って凄いと思う。モーニング娘。は格好良いんです!」って自信を持って言えるんですよ。私はこのグループを自慢できる。それを今のモーニング娘。を知らない人たちにも発信する為には、私がドラマとか映画に出ていったほうが良いと思ったんです。それなら私にも出来るかもしれないじゃないですか。でも物理的に不可能だった。でもそれがどうしても捨て切れなかったんですよ。で、気付いたらそういうことばっかり考えるようになって、その中でふと気付いたんですよね。「あれ? 今まで後輩のこととかグループのことばっかり考えていた自分が、自分がやりたいことばっかり考えられるようになっている。ということは、今、私にはグループや後輩に対して心配することがないんだな」って。それで年齢のことを考えたときに、今をときめく女優さんはみんな17歳とか18歳だから「これ、今だ!」と思ったんです。--なるほど。
工藤遥:仕事帰りの電車の中で思ったんですけど、「卒業するならこの年齢だ!」って。それで家帰ってお母さんに「私が「卒業して女優になりたい」と言ったらどうする?」って聞いたら「やるなら今だと思うよ」と言われて、それで「ですよね」と思ったからすぐマネージャーさんとか会社の方に伝えたんですよ。そしたら私が卒業するなら「女優になりたい」だろうと皆さん分かっていてくれたのか、すごく前向きに受け止めて下さって「工藤がやりたいならいいよ」と言って下さったんですよね。だからメンバーに相談することもなく本当にトントントンと話が進んで、4月29日の京都での卒業発表に至る感じだったんです。もしかしたら皆さん「1,2年前から考えていた卒業なんだろうな」と思われたかもしれないんですけど、期間で言ったら半年もなかったぐらいなんですよ。それぐらいもう迷いも悔いもなかった。--でもメンバーはビックリしましたよね?
工藤遥:してました! してましたけど、理由が女優だったから「やっぱりな」というところはあったと思います。メンバーはすごく楽しみにしてくれているんですよ。「石原さとみさんに会ったら紹介してね!」とか(笑)。--それは誰が言ってるんですか?
工藤遥:まーちゃんです(笑)。だからそういう風に期待してくれているメンバーがいるのも心強いですし、私も「分かった。じゃあ、頑張るね」と言ったからには石原さとみさんに会って「ウチのメンバーが好きなんです」と伝えなきゃいけない使命がある。--その為にも共演しなきゃいけない(笑)
工藤遥:まずそこまで頑張らなきゃいけないし、やっぱり卒業してからもモーニング娘。という看板は背負い続けなきゃいけないし……いつか私が主演を務める作品の主題歌をモーニング娘。に歌ってもらうことが次の夢なんです。それをメンバーに話すと「がんばれ」と言ってくれますし、先輩メンバーに関しては「自分もそこに居たいから早くしてくれ」って言うし(笑)、だから卒業してからもモーニング娘。の看板を背負ってやることはたくさんあるんですよ! だからまだまだ必死ですね。ガムシャラに頑張る期間は終わらないと思います。--では、12月11日にグループは卒業するけれども、その後も自然と「モーニング娘。との夢を追いかけていく為の活動」は続いていくことになる訳ですね。
工藤遥:そうなると思います!--そんな新たな夢に向かって旅立っていく工藤遥にとって、モーニング娘。はどういう存在だったと思いますか?
工藤遥:最も影響力のある存在。私の性格そのものを……人格が変わるぐらい、もっと言えば「人ってここまで変われるんだぞ!」という証明ができるぐらい変えてくれたのはモーニング娘。だし、礼儀とか人としてあたりまえのことを教えてくれたのもモーニング娘。だし、人から愛されることや好きになってもらうこともモーニング娘。が教えてくれたし、自分を肯定も否定もしてくれたのもモーニング娘。だし、このグループに入っていなかったら自分は腐っていたかもしれないなと思うぐらい、本当に人生を変えてもらいました。だからこそ私は夢を見続けることができるんだと思いますし、諦めず頑張っていくこともできるし、今こうして笑って、本当に手の届かない夢でさえも語れるのは、そもそも「モーニング娘。になりたい」という大きな夢をひとつ叶えられたからであって。もう本当に話し出したらキリがないぐらい、全部がモーニング娘。なんですよ。だから親と同じぐらい、私にとっては影響力のある存在です。--では、最後に、これまで共に活動してきたモーニング娘。のメンバーに向けてメッセージをお願いします。
工藤遥:私はみんなのことをめちゃくちゃ格好良いと思ってるし、めちゃくちゃ大好きだし、誇りに思っているので、私も頑張るんで、みんなも頑張ってほしい。OGの先輩の方々が現役によく「現役がこうして頑張ってくれているから、OGもテレビに出たりとか、こうして一緒にお仕事ができる。感謝してる」って声を掛けて下さるんですけど、私も「みんなが頑張ってくれてるから、自分も頑張れているんだ」って言い合える仲になりたいんです。だから私も超頑張るし、みんなも超頑張ってほしい。みんなが結果を出したら、私も負けていられないから結果を出せるように頑張るし。卒業したからってライバルじゃなくなる訳じゃないので。…………そんな13人に卒業を見届けてもらえて嬉しいですけど、私は「さよなら」じゃなく「またね!」という気持ちなので、これからもよろしくお願いします。Interviewer:平賀哲雄
Photo:Jumpei Yamada
リリース情報
⑮ Thank you, too
- 2017/12/06 RELEASE
- 初回生産限定盤[EPCE-7371/2(CD+BD)]
- 定価: 7,020円(tax in.)
- 詳細・購入はこちらから>>
- 通常盤の詳細・購入はこちらから>>
関連リンク
Interviewer:平賀哲雄|Photo:Jumpei Yamada
15 Thank you, too
2017/12/06 RELEASE
EPCE-7371/2 ¥ 7,150(税込)
Disc01
- 01.ジェラシー ジェラシー (Album Version)
- 02.ロマンスに目覚める妄想女子の歌
- 03.CHO DAI
- 04.私のなんにもわかっちゃない
- 05.邪魔しないで Here We Go!
- 06.Style of my love
- 07.ナルシス カマってちゃん協奏曲第5番
- 08.青春Say A-HA
- 09.若いんだし!
- 10.もう 我慢できないわ~Love ice cream~
- 11.弩級のゴーサイン
- 12.恋は時に
- 13.女子かしまし物語 (モーニング娘。’17 Ver.)
- 14.BRAND NEW MORNING
- 15.愛の種 (20th Anniversary Ver.) <Additional Track>
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