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大原櫻子『さよなら』インタビュー
「すごく生々しいし、そういう歌をずっと歌いたかった」
水野良樹(いきものがかり)作詞作曲の新作『さよなら』についてはもちろん、家入レオ×大原櫻子×藤原さくらの3人によるプロジェクトや、大原櫻子の表現者としてのメカニズムにも迫った必読インタビュー。ぜひご覧ください!
家入レオ×大原櫻子×藤原さくらのユニット結成秘話~3人それぞれの特性
--前作『マイ フェイバリット ジュエル』リリース時(http://bit.ly/2zQzp2h)以来のインタビューになりますが、この間に家入レオ×大原櫻子×藤原さくらの3人によるライブと「恋のはじまり」の配信リリースがありました。あのプロジェクトはどういう経緯で始動したものなんでしょうか?
家入レオ×大原櫻子×藤原さくら「恋のはじまり」 ライブver.
--水面下で動いていて、あとは承諾を取ればいい状態まで持っていっていたんですね。家入さんが作ってきた曲を最初に聴いたときは、どんな印象を持たれましたか?
大原櫻子:めっちゃ良い曲だと思いました。「レオちゃんがシングルで出さないともったいなくない?」と思うぐらい、すごく良い曲だなって。あと、普段3人で会っているときの話題はやっぱり女の子同士だから恋バナが多くて、だから「恋のはじまり」みたいな曲が生まれたんだろうなと思います。--そもそも家入レオさんと藤原さくらさんとはどんな経緯で出逢ったんですか?
大原櫻子:レオちゃんは、番組でレオちゃんの曲をコラボさせて頂いたんですけど、そのときに「仲良くなりたいな」と思って。そのあとに2人の対バンイベントがあったんですよ。それですごく仲良くなって、夕飯を食べに行くというより朝ごはんを一緒に食べに行く仲になったんです。夜だとお互いスケジュールがなかなか合わなくても、朝だったら合うので。それでどんどん仲良くなりました。さくらは、ビクターのコンベンションライブで「はじめまして」って挨拶して、同じ年齢の音楽をやっている子で仲良い子がそれまでいなかったので、連絡先を交換して「仲良くなってください」みたいな。それから3人ともビクターだったので、3人でよく会うようになりました。--友達としての家入さんと藤原さんはそれぞれどんな印象?
大原櫻子:レオちゃんはクールで寡黙な人だと思っていたので、例えば「友達になって!」とか言っても「私はそういうチャラい人とは友達になりません」と言われちゃうようなイメージでした(笑)。すごくガードが固いんだろうなと思っていたら、実際には私より全然明るい子だったからすごくビックリして。さくらは「変わり者かな?」って最初は思いました。でも音楽を聴いていると歌い方とかすごく色っぽいから、女性らしい人なのかなとも思っていたんですけど、仲良くなってみたら「あれ?」って。結構少年でした(笑)。無邪気な感じ。--アーティストとしてはどんな印象?
大原櫻子:さくらは早く海外に行ってほしい。日本だけじゃなく海外の人にも彼女の歌は広まってほしいです。レオちゃんはカリスマ性が凄いというか、あそこまで格好良い女性ソロアーティストってこの年代にいないし、女性に憧れられるアーティストにどんどんなっていってほしいです。--では、その3人の中で自分自身はどんな存在だと思っていますか?
大原櫻子:えー、分かんない(笑)。--じゃあ、質問を変えます。ここまで活動してきた中で「自分は世間にどう思われているんだろう?」とか……
大原櫻子:すっごい思います! でも世間的なイメージは、元気で、色気はあんまりなくて……活発な子?--ポップなイメージですよね。自分的には「こう見られたい」とかあるんですか?
大原櫻子:こう見られたい? いや、健康だったら(笑)。--健康な人だと思われていればいい?
大原櫻子:健康的な人とは思われたいかな。毎日楽しく生きていそうだと思われていたい。言葉のチョイスがアレですよね(笑)? あ、夢を与えられたらいい!- さよならの裏側にある「ありがとう」滲ませたいなと思って歌いました
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Interviewer:平賀哲雄|Photo:Jumpei Yamada
さよならの裏側にある「ありがとう」滲ませたいなと思って歌いました
--ということは、ネガティブだったりダークな面はあまり出したくない?
大原櫻子:そういうところを出すのは作品がいいかな? 舞台とかお芝居でも表現していけたらいいなと思いますけど、なるべく普段は明るく生きていきたい。--そこはデビューから一貫されていますよね。なんでそういう人になれたんだと思いますか?
大原櫻子:私、本当に友達に支えられて生きているなと思うんですけど、私の中で友達ってすごく大事な存在で、その友達がみんな明るいんですよ。それが私にとって有難いんです。私は考えすぎちゃう人だから救われることが多い。だから私もそういう人になりたいと思っているんです。--そういう気持ちが常にあるんですね。今「考えすぎちゃう人」と仰っていましたが、どんなときに考えすぎたりするんですか?
大原櫻子:私、すごく心配性なんですよ! 高校時代に「心配性の櫻子」と言われていたぐらい(笑)、例えば「ああいう風に言っちゃったけど、大丈夫かな?」とか「この人は何で傷ついているんだろう? アレかな? コレかな?」とかすごく考えちゃうんです。--「あの人に嫌われていたらイヤだな、傷つけていたらイヤだな」と思っちゃう?
大原櫻子:思っちゃうかもですね。--分かります。僕もそうです。
大原櫻子:みんなそうか! でも「私はこうです!」みたいな人っているじゃないですか。それが藤原さくらだったりするのかなと私は思っていて、憧れる。軸をすごく持っている感じ、すごく格好良いなって。--たしかに格好良いですよね。でも大原さんの中にあるネガティブな感情は、最終的にはポジティブに昇華していく訳ですよね?
大原櫻子:それが面倒くさいことにひとりではなかなか昇華できないんですけど、友達と会うと元気になる! だから友達と会っていて暗いときはあんまりないですね。--ネガティブにぐるぐる考えちゃうようなことって音楽やお芝居に生かせるところはあるんじゃないですか?
大原櫻子:めっちゃ生きますね。イヤなことがあって、でも歌わなきゃいけない状況があったとして、それは別にマイナスじゃないんですよね。そのイヤだった経験が歌だと生きてきたりすることがある。今回のシングル「さよなら」もそういう曲だと思います。--大原さんはポップで明るいイメージですが、その一方で【リトル・ヴォイス】では地獄のような人生を送ってきた人の歌を表現したりもしている訳じゃないですか。でもそれが表現できるのは、大原さんの中にもしっかりネガティブな感情が日頃からあるおかげなのかなって。
大原櫻子:あー、それはめっちゃありますね! 日頃から考えすぎるし、めちゃくちゃ相談もしちゃうけど、それは悩みなんですけど……--でもそれが無くなったら表現者として少しつまんなくなっちゃう。
大原櫻子:うん、多分そうだと思います。--普段はみんなに明るく見られていたいけれど、その真逆の自分も歌手や女優としては表現できる。そんな大原櫻子に「さよなら」はピッタリなバラードだと思うんですが、自分の中ではどんな楽曲に仕上がったなと感じていますか?
大原櫻子 -さよなら Music Video Short ver.
--水野良樹(いきものがかり)作詞作曲の今作、水野さんとはどんなディスカッションやコミュニケーションを重ねながら作り上げていったんでしょう?
大原櫻子:今年の初めにメロディーを頂いて、そのあとに歌詞が付いたものを頂いて、練習の仮レコーディングと本番のレコーディングがあったんですね。それで最初は水野さんから何も聞かず、私が曲を受け取ったイメージのままに歌ったら、歌いながら泣いちゃいそうになっちゃうし、普通に暗い感じになって。でも水野さんとお食事しながらいろいろお話を聞かせて頂いたときに「悲しんで歌う曲じゃないんだな」と思ったんです。悲しみもあるけど、心が温まる歌でもあるから。それで「この曲って別れた直後の歌なのか、少し時間が経って落ち着いて前向きになっていく歌なのか」メールで水野さんに確認したんですけど、そしたら「どっちも」とレスポンスがあって「おー、難しい」と思って。でもすごくストーリーがある楽曲だから全然歌いにくくはなくて、むしろ歌っているうちにどんどんどんどんそういうテンションになれて、本番はちゃんと表現することが出来たかなって。--感情の動きを表現するのに難しさは感じながらも、最終的には曲のストーリーに誘われるようにしっかり表現することが出来たんですね。
大原櫻子:そうですね。あと、この曲はデモを頂いた段階で「これは私が歌いたい」と思いました。今の私が歌いたい曲だなって。--逆に言えば、今の私だからこそ歌えた曲?
大原櫻子:そうですね。でも「今の私が歌いたい曲」ってずっと歌っていける曲でもあると思っていて、だから「早く歌いたい」と思っていました。リリース情報
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Interviewer:平賀哲雄|Photo:Jumpei Yamada
お芝居を観て頂いた上で歌を書いて下さる「こんなにも身を委ねられるんだ」
--前回のインタビューで「歌い続ける理由」について「もっともっと幅広い人たちに響く歌を歌いたい。その想いがずっとある気がしていて、それこそ子供から大人まで知っている楽曲。でもそれって「知ってもらうこと」を目的に作ったから広まるんじゃなくて、聴いてくれる人たちが共感したり胸打たれたりするから広まっていくんですよね。なので「心に触れる楽曲」を歌いたい。そういう楽曲を追い求めているから、歌い続けているのかなって思います」と語ってくれていたんですが、そういう曲に今回出逢えた感覚もあるんですか?
大原櫻子:はい。長く歌い続けられる歌ってそういうことだと思うから。--そもそも水野さんの曲を歌うこと自体にはどういう感慨を持たれたりしましたか?
大原櫻子:前回の「マイ フェイバリット ジュエル」を手掛けて頂いた秦 基博さんは、ひとりのアーティストとして「凄い人だなぁ」と憧れている感じだったんですけど、水野さんはもっと近い距離の人という感覚だったんです。それは私のお芝居を観に来て下さっていたから。私をひとりの人間として見たときに、やっぱりお芝居ではいろんな表情を出しているし、そこで分かってもらえるところもあると思うんですよね。そのお芝居を観て頂いた上で歌を書いて下さる。そうなると「あ、こんなにも身を委ねられるんだ」と感じることが出来て。「凄い包容力の中に飛び込んでいける」という感覚でしたね。そういう嬉しさと安心感があったかな。--それは今までにない感覚だったんですか?
大原櫻子:秦さんや亀田誠治さんの曲を歌わせて頂いたときは嬉しいし、すごくウキウキする感じだったんですけど、水野さんに対しては「ウキウキ」ではないんですよね。ホッとする感じがあったんです。その結果として「音楽面ではこういう感じをあんまり出したことはなかったかな」と思える一面を出すことが出来ている。--それは簡単に言うと、お芝居のほうの大原櫻子も出すことが出来ている?
大原櫻子:そうですね。それはありますね。この曲は感情がひとつではないじゃないですか。シンプルに「ポップな感じ」とか「楽しい感じ」とかではなくて、嬉しい、悲しい、苦しい、どうすればいいか分からない、自分が分からない、でも何か掴めた気がする……そういういろんな感情がワァーってある。それはすごく生々しいし、そういう歌をずっと歌いたかったんですよね。--では、ようやく出逢えた感がある?
大原櫻子:はい。それを音楽でも出してしまって良いのか悪いのか分からなかったんですけど、でも「やりたい」という想いはスタッフさんに伝えていたんです。「早く、早く」って(笑)。だから今回それが実現できる曲に出逢えて嬉しいです。--「大原櫻子の代表曲」と言っても過言ではない存在になっていくんじゃないですか?
大原櫻子:そうなったら本当に嬉しい! 私にとってすごく大事な曲だと思っているので、みんなにとってもそうなってほしい。すでにライブで披露させて頂いているんですけど、リリース前なのにみんな物凄い眼差しで「私が何を歌っているのか」分かろうと一生懸命聴いてくれているんですよ。それでSNSとかで「良い曲だったなぁ」みたいな感想を書いてくれているので、すごく嬉しいです。あと、身近なスタッフさんの評判も良くて、若い人だけじゃなくて、むしろ年配の方のほうがすごく感動して下さっていたりするんですよ。--これまでも大原さんの曲に涙したことはあるんですけど、自分は気持ちがグッと突き刺さってくる曲がいちばん好きなんですよ。
大原櫻子:そうなんですね! 私もそう!--その中でも「さよなら」は強く突き刺さる曲ですし、もしかしたら大原櫻子をよく知らない人が聴いても「良い曲だ」と涙できるナンバーなんじゃないかなって。
大原櫻子:そうなんですよ! それで良いんですよね。--音楽的にはそれがいちばん理想ですよね。誰が歌ってるからとかじゃなくて「純粋にこの曲が好き」と思って、自分の歌のように聴いたり歌ったりしてもらえる。それが音楽としてはしあわせなことじゃないですか。
大原櫻子:うん。曲を好きになってほしいですよね。だから、純粋にたくさんの人に「さよなら」は届いてほしいなと思います。--今回のインタビューでも感じましたけど、大原さんって音楽表現者として純粋だし、軸がしっかりありますよね。
大原櫻子:本当ですか? でも、私、音楽の知識があまりないんですよ。表現する上ですごく拘りはあるけど。--でも知らないゆえにソレと初めて会ったときのリアクションは純粋なものになりますよね?
大原櫻子:あ、そうですね! だから「このアーティストのこの曲のリズムはこうでこう」とか言われてもよく分かんないんですけど(笑)、直感は何もないゆえに働くかも。--結果、素直に歌えたり、素直に感動することができる。
大原櫻子:でもそこは欠点でもあります。曲聴きます、映画観ます。それで「どうだった?」と聞かれたときに「めっちゃ楽しかった!」とか「マジでつまんない」とか一言で終わっちゃうんです(笑)。だから何が楽しかったのかまで言えるようにならなきゃいけない! もう子供じゃないんだから!--(笑)。今作のリリース後にはリリースイベントも控えていますが、来年2月にはミュージカル【FUN HOME】も始まります。ここから先の大原櫻子、どういう表現者になっていければいいなと思っていますか?
大原櫻子:次の舞台でレズビアンの役に挑戦するんですよ。同性愛者。--難しい役ばかり毎回やってますね!
大原櫻子:そうなんですよ(笑)! なんでなんだろう? でも課題がいっぱいあったほうが私も演じていて楽しいので、それは嬉しいですね。今回「さよなら」のような大人な曲も歌わせて頂きましたし、お芝居のほうでも深みのある作品に携わっていきたい。大原櫻子という人間の知名度も広がってほしいけど、そういう作品のひとつひとつを観てほしいなと思っています。あと、来年2018年は22歳、ゾロ目の歳で良いことありそうだなと思っていますし、いろんなことに挑戦していくことになると思うので、ぜひ楽しみにしていてほしいです!リリース情報
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Interviewer:平賀哲雄|Photo:Jumpei Yamada
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