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GLAY『WINTERDELICS.EP~あなたといきてゆく~』HISASHI単独インタビュー
U2のようなバンドになっていきたいなと思っています
55枚目のシングル『WINTERDELICS.EP~あなたといきてゆく~』が完成、リードトラック「あなたといきてゆく」のミュージックビデオ(http://bit.ly/2heVKeU)も話題のGLAY。今作のリリースを記念してHISASHIへの単独インタビューを敢行! センセーショナルなものへの愛情をツイッター等で感じさせている彼のルーツ~GLAYのメンバーとして見てきたバンドドリーム、そして激しく変わり行く音楽シーンやGLAYの今後についてまでと、貴重な話をたくさん訊かせてくれた。
BiSに注目した理由~スターリンなどセンセーショナルなものへの憧れ
--HISASHIさんにこうしてインタビューさせて頂くのは初めてなんですが、2014年に僕が主催したSuG×BiS【異端児フェス】(http://bit.ly/1iSNbEn)を観に来て頂いていまして。
HISASHI:あ、主催されていたんですね! その後のBiSの横アリ(解散ライブ)がGLAYのツアーと重なって行けなくて、それで伺わせて頂いたんですけど、あのライブは驚きましたね。もう本当に感動したというか「こんなにエモーショナルなんだ!?」と思って。あのときは「BiSが解散しちゃうのは勿体ないな」と思いましたよ。--当時、よくBiSについてツイートされていましたよね。何がきっかけでハマったんですか?
HISASHI:それまでそんなにアイドルに興味はなかったんだけれども、明らかにBiSの出現だったりでアイドルというものが変わり始めたじゃないですか。それで「僕らもエンターテインメントといいうものに関してもっともっとアップデートしていかなければ」と思ったんですよね。それもあって「BiSはどういう経緯でこうなったんだろうか? あ、こういう制作陣との関係性があるのか」と思ったりして、すごく興味深かったですね。--HISASHIさんから見てかなり新鮮に映った?
HISASHI:そうですね。ロックバンドがちょっと元気ない世の中に風穴を開けるぐらいの勢いで出てきたから……いやー、すごく印象的でしたね。今もプー・ルイちゃんは復活したBiSで活動してるから「頑張ってほしいなぁ」と思ったり、ちょっと前にベッドインの【スナックアーバン】でウイカ(ファーストサマーウイカ/現BILLIE IDLE(R))ちゃんと久しぶりに会ったんですけど、彼女の声も「すごく格好良いなぁ」と思って好きだったりして、今でも注目しています。--BiSに限らず、元々センセーショナルな存在に惹かれる人ではある?
HISASHI:僕はもう生い立ちというか生まれがね、本当に素朴な自然の街で育っていて、どうしても思春期あたりから刺激が欲しくなる訳ですけど、僕の街には何もなかったんです。だから札幌のインディーブームだったり、東京のアンダーグラウンドがすごく刺激的に感じて。それで「この街ではダメだ」と思ったのが高校ぐらいですかね。で、バンドだけじゃなくていろんなエンターテインメント、アングラの舞台だったりとか音楽以外のムーヴメントにもすごく興味があったんですよ。今、尖がったアイドルとか「面白いことやってるな」と思う人への興味も多分そこから始まっているんだと思います。--HISASHIさんに最初に「センセーションとはこういうものか」と衝撃を与えたのは、具体的には何だったりするんですか?
HISASHI:『クリープ』って映画かな。大道芸だったり見世物小屋だったり……若干タブーであるものが映画になっていて衝撃を受けたんですよ。そういったちょっと目を伏せたいものというか、そういうものがすごく魅力的に映って、そこから『宝島』のスターリンの映像とかハナタラシのライブとかそういうもの全部を観たくて触れたくてしょうがなくなって、それで高校卒業してすぐ東京に出てきましたね。--今でこそHISASHIさんのそうした性質はSNSなど通して知れ渡っていますけど、スターリンやハナタラシに魅了されていた人がGLAYに辿り着くというのは、冷静に考えると不思議ですよね。
HISASHI:たしかにそうですね(笑)。俺的にはビジネスとして成功してもしていなくてもバンドはやりたかったし、なんて言うんだろう? むしろそういった成功をしていないアンダーグラウンドの人たちのほうが魅力的に映っていた。ソレばっかり追いかけていたんですけど、そこからGLAYと出逢ったとき、とにかくみんなすごくマジメに音楽に取り組んでいたんです。その姿勢に憧れというかシンパシーみたいなものを抱いて「2人目のギタリストとしてやっていこう」と思ったのが高2ぐらいかな。- GLAYがモンスターバンドとして第一線に立ち続けている要因
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Interviewer:平賀哲雄|Photo:Jumpei Yamada
GLAYがモンスターバンドとして第一線に立ち続けている要因
--当時、GLAYがスタジアム級のモンスターバンドになるとは思っていたんでしょうか?
HISASHI:当時、東京ドームがコンサートとして使える一番大きいハコだったんですけど、僕らの目標は渋谷公会堂だったり、もっと小さいと鹿鳴館だったりとか。だから「武道館で出来たら言うことないなぁ」みたいな感じだったんです。なので、スタジアムとかに自分たちのステージを作るみたいなことは考えられなかったですよね。ただボンヤリと音楽しかやりたいことがなくて、ライブの衝撃が忘れられなくて続けていただけで、あんまり将来のことは考えてなかったです。そんな感じで自分たちの好きなように音楽をやっているうちに、いきなりデビュー。僕ら、早かったと思うんですけど、デビューすることが決まったんですよね。--そこからGLAYがこれだけの長期間にわたり第一線に立てている要因。HISASHIさん的にはどんなところにあると思いますか?
HISASHI:90年代のバックグラウンドが僕らにいろんな良い影響を与えてくれたと思うんですよね。CDが売れて、とにかくメディアに出て、かなり目に付くようなところに出て行って、TAKUROは売れる曲を求められて、それはすごく過酷で大変だったんだけれども、今となってはすごく感謝すべき時代だなと、背景だなと思います。--そこがベーシックにあるから今があるというか。
HISASHI:そうですね。音楽制作の時間の大切さも分かったし、逆にメディアに出る大切さも分かったし。だから本当にもう、僕は「2000年をきっかけに」という風に線引きをしているんですけど、それまでは本当にあっという間でしたね。23歳ぐらいでデビューしてから駆け抜けるように時が過ぎていった。--「2000年をきっかけに」具体的にはこの前後でどう変わったと思いますか?
HISASHI:1999年に僕らは動員20万人超の幕張でのコンサートがあったり、ドームツアーがあったりして、もう本当に飽和状態というか「もうこれ以上何やるんだ?」みたいな状態だったし、逆に言えば「そこまでは付き合ってやろう」と事務所に対して思ったりもしていたので、年末もレコ大に出て、紅白に出て、カウントダウンやって。とにかく2000年になる瞬間までのあいだに僕たちのやりたいことだったり、見たい光景とかはすべて形に出来たんじゃないかなと。--マンガや映画で描かれるようなバンドドリームそのものを現実化してみせた。ただ、その一方でHISASHIさんはRadio Carolineのウエノコウジ、THE MAD CAPSULE MARKETSのMOTOKATSUとバンドを組んだり、氷室京介、宇多田ヒカルからBiS、藍井エイルといった多種多様なアーティストの作品にも参加されています。それだけ幅広く活動されているHISASHIさんから見て、それこそ2000年以降大きく変わっていった音楽シーンの今はどんな風に映っていたりしますか?
HISASHI:90年代の音楽シーンは「このCDを持っていないと流行に遅れる」とか「歌えないとモテない」とかそういう風に映っていて、僕らはあの頃第一線で活動していたかもしれないけど、二次的なものだったんじゃないかなと思うんですよね。そこから時代が変わって、CDから配信になって、人々が「音楽を取る」というね、全くあの頃と違う環境になって、僕らはお客さんへのダイレクトな音楽の提供の仕方を考えたりしているんですけど、むしろ今のほうが音楽は自由になってきているんじゃないかなと思う。昔みたいに「シングルはシングル曲入れて、カップリング曲入れて、カラオケ入れる」という考え方よりは、「もっともっとバンドがやりたいことをやればいいじゃない?」という考え方に変わっていきました。それで買わない人はいるかもしれないけど、買ってくれる人が楽しんでくれればそれでいい。ま、俺はダビングとかでも全然良いんだけど。でも本当に今はこういう環境があるから、シングルでも曲を多めに入れたりとか、アルバムもその時々で違ったテイストにしたりとか、すごく自由にやれているなと感じますね。--いろんな意味でテンプレが必要なくなりましたからね。では、リスナーとして見ても今の音楽シーンは面白いと感じますか?
HISASHI:そうですね。ジャンルも多様化して、音楽を発表する場もインターネットになったりしているので、むしろそれがメインストリームになっているからいろいろ聴けますし。でもアイテムも好きなアーティストのものは買うんですよ。そういう意味では変わっていないのかなとも思うんですけど。リリース情報
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Interviewer:平賀哲雄|Photo:Jumpei Yamada
新作について~U2のようなバンドになっていきたいなと思っています
--そういうシーンの変化もある中で、GLAYは今どんな存在になっていると思いますか?
HISASHI:どうなんでしょうね? ここまでいろんなことがあって、厳しい局面もあったりしたんですけれども、メンバー4人が変わらずにそれぞれ尊敬しつつ次なる曲を楽しみにしたりとか、例えばGLAYはレコーディングの現場がすごく賑やかなんですよ。変わらず一緒にやってて、本当に音楽制作が楽しいんです。もちろんコンサートもそうなんですけど、その感じが伝わってくれたらいいなと思っていて。あと、俺は時代の変わり目ってチャンスだと思うんですよ。今はいろんなチャンスが転がっているんだけど、みんなそれが見えづらかったりする。でも僕らはそれをちゃんと見据えて時代時代に対応していきたいなと思うので、音楽の環境が変化していくことに対して否定する感覚はないですね。--むしろ楽しんでいる?
HISASHI:実際、楽しいですね! 僕らの世代はレコードからCDになって、今みたいな配信になったりしているので、ガラリと変わってる。その間にはコピーコントロールCD(CCCD)とかもあったりして、いろんな局面に立ったりもしたけれど、それはそれで楽しかったですからね。「多分、コピーコントロールCDだとこうなるよ」って考えながらミックスとかもしていたので、そしたら結局は何も変わらなかったり。--そういう変化に対して仕掛けていったり対応していくこともクリエイティヴな訳で、そこを面白がれた人のほうが強いですよね。
HISASHI:そうですね! そういった活動をしている人のほうが見てて面白いですもんね。--そんないろんな時代を生きているGLAYの新作『WINTERDELICS.EP ~あなたといきてゆく~』がリリースされます。HISASHIさん的にはどんな作品に仕上がったと感じていますか?
「あなたといきてゆく」ミュージックビデオ(short ver.)
--その表題曲「あなたといきてゆく」にはどんな印象を?
HISASHI:アルバムのレコーディングがあったんですけれども、その中ですごくGLAYのオーソドックスな曲で、それぞれ他のメンバーがイニシアチブを握った曲があった中で、僕自身も「こういう曲、聴きたかったなぁ」という気持ちがあったんですよ。GLAYが始まった頃というのは、BOØWYからの影響も大きかったんだけれども、もっとバラードの印象が強かったんです。そういう曲があるからこそもうちょっとダークサイドの曲だったりも生きていて、だから「あなたといきてゆく」はGLAYにとってすごくオーソドックスな曲だなと思いました。--HISASHさんのギターもザッツGLAYな音になっていますよね。ちなみに、自分ではHISASHIをどんなギタリストだなと思ったりしますか?
HISASHI:GLAYの楽曲に対するアプローチはすごく自信があるんですよね。どんな曲が来ても。例えば今回はTAKUROが書いた曲ということで、それに似合う服だったりアクセサリーが必ずあるはずだと思って、それを間違いなくチョイスすることが自分の役割だろうなと思ってます。--では、ひとりのミュージシャンとして今後挑戦してみたいことはあったりしますか?
HISASHI:たくさんありますね。例えばかなりデジロックを意識していた時期があったりしたんですけど、その時々に鳴っている音だったりに影響されたりもして。でも最近そういうことをやってないなと思うので、もうちょっとそういう過激なアプローチもしてみたいな。もっともっとたくさん挑戦したい、最近やってないからやりたいなと思うジャンルはたくさんありますね。--では、最後に、GLAYが今後どうなっていってほしいと思うか。ヴィジョンみたいなものがありましたら聞かせて下さい。
HISASHI:多分、僕ら4人自体は「珍しい曲作ってきたな」というメンバーもいれば「オーソドックスでホッとするGLAYを打ち出してきたな」というメンバーもいたり、そういうところは変わらないと思うんですけれども、バンドとして言うと、U2のようなバンドになっていきたいなと思っています。すごく憧れるバンドの形。U2のように常に進化していたい。もちろん、ザ・ローリング・ストーンズのように変わらないスタイルもあるし、どっちも誇れるバンド像だと思うんですけど、僕らは常に新しく、オーソドックスなものは更に深く掘り下げていきたいなと思っています。リリース情報
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Interviewer:平賀哲雄|Photo:Jumpei Yamada
WINTERDELICS.EP ~あなたといきてゆく~
2017/11/22 RELEASE
PCCN-29 ¥ 2,200(税込)
Disc01
- 01.あなたといきてゆく
- 02.時計 (再録)
- 03.Satellite of love (再録)
- 04.Joker (LIVE from VISUAL JAPAN SUMMIT 2016)
- 05.「SUMMERDELICS」 reprise
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