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フェイス・エヴァンス 来日記念特集~その波乱万丈なヒストリーを追う
90年代を代表するR&Bディーバのひとり、フェイス・エヴァンス。メアリー・J・ブライジに続けとばかり颯爽と登場し、比類なきヴォーカリストとしてリスナーを魅了した。スキャンダラスなネタも多いが、その実力ぶりは誰もが認める通り。そんな彼女の4年半ぶりの来日公演がまもなく行われる。ここでは、あらためて波乱万丈なヒストリーを追ってみよう。
フェイス・エヴァンスは、1973年にフロリダ州のレイクランドに生まれた。生後すぐに、ニュージャージーに移り、経験なクリスチャンの家庭だったこともあって、幼少時から教会で歌うようになる。ハイスクール時代にはいくつかのジャズ・バンドを掛け持ちするほどの実力を付け、1993年にロサンゼルスへとチャンスを求めて移住。ショーン・コムズ(パフ・ダディー)と出会ったことで、アル・B・シュアやメアリー・J・ブライジのバック・コーラスといったチャンスをものにし、1994年にはラッパーのビギーことノトーリアスB.I.G.と結婚。徐々にソロ・デビューの準備に取り掛かっていく。
1995年にショーン・コムズが主宰するバッド・ボーイ・レコードからシングル「You Used To Love Me」で、満を持してデビュー。この曲はビルボード・チャートのHot100で24位にまで上昇。その後、ファースト・アルバム『Faith』をリリース。こちらもHot100で22位、R&Bチャートでは2位という、新人にしては大きな成果を残し、輝かしいデビューとなった。アルバムはトータルで100万枚以上ものセールスを記録している。しかし、さらにこれからという時に大事件が起こる。それが、夫であるビギーの暗殺だ。いまだに多くの謎が残るこの事件に巻き込まれた彼女は、良くも悪くも時の人となってしまう。
▲ 「You Used To Love Me」
そんな彼女を救ったのが、事件直後に発表された大ヒット・ナンバー「I'll Be Missing You」だ。この楽曲は、ショーン・コムズがパフ・ダディー名義によりフェイスと112をフィーチャーしたシングル曲で、ザ・ポリスの名曲「Every Breath You Take」を大胆にサンプリングしたことでも大いに話題になった。そして、英米を含む各国のチャートで軒並み1位を獲得し、全米だけでも300万枚以上ものセールスを記録。この1曲にフィーチャーされた鮮烈な歌声によって、トップR&Bシンガーとしてのステイタスを築き上げた。
▲ 「I'll Be Missing You (Feat. Faith Evans & 112)」Puff Daddy
翌1998年に発表したセカンド・アルバム『Keep The Faith』は、当然のように前作を上回るチャート・アクションを見せ、全米チャートで6位にまで上昇した。本作には、パフ・ダディーを逆フィーチャーしたシングル「All Night Long」が収められており、こちらもHot100では9位にまで上り詰める大ヒットとなった。続く、サード・アルバム『Faithfully』(2001年)も大ヒットし、ジェニファー・ロペスと共作したバラード・ナンバー「I Love You」や、旧友ミッシー・エリオットと共演するなど話題性の高い作品となった。
▲ 「All Night Long (Feat. Puff Daddy)」
古巣のバッド・ボーイ・レコーズを離れたフェイスは、キャピトル・レコードに移籍。4作目となるアルバム『The First Lady』(2005年)をリリース。ネプチューンズやジャーメイン・デュプリといったプロデューサーを迎え、ファレルも参加した本作は、ビルボード・チャートのアルバム・チャートで2位、R&Bアルバム・チャートでは1位と、過去最高のチャート・アクションを見せてくれた。
フェイスの特徴といえば、そのクールなスタイルのヴォーカルや抜群のコーラス・センスだが、それ故多くの楽曲にフィーチャーされている。先述の「I'll Be Missing You」がその最高峰ではあるが、他にもノトーリアスB.I.G.「One More Chance」(1995年)、ホイットニー・ヒューストン「Heartbreak Hotel」(1998年)、エリック・ベネイ「Georgy Porgy」(1999年)、ロビン・シック「Got 2 Be Down」(2007年)などで、存在感のあるヴォーカルを聴かせてくれる。
それだけ引っ張りだことはいえ、彼女は精力的に活動するタイプではなく、どちらかというとじっくりと作品に向き合うシンガーだといえる。そのため、『The First Lady』以降のリリースは少し間が空いてしまう。『Something About Faith』(2010年)、『Incomparable』(2014年)と数年ごとに力作を発表するが、大きなヒットには至っていない。しかし、2009年には待望の初来日公演をビルボードライブで行い、R&Bファンの間では大きな話題となった。
ここ数年はこれといったトピックもなかったフェイスだが、2017年に入って急激に騒がしくなる。というのも、亡き夫であるビギーとのデュオ名義によるアルバムを制作するというニュースが流れたからだ。実際に出来上がってきたアルバム『The King & I』は、スヌープ・ドッグやバスタ・ライムス、そしてビギーのかつての愛人で犬猿の仲といわれたリル・キムや、フェイスの実の娘チャイナ・タージェレイといった豪華なゲストが参加。レジェンドへの惜しみない愛とリスペクトが綴られた傑作となった。ビギーの死後20年経ってもこのようにして二人の奇跡の共演が実現したことで、R&B及びヒップホップのファンからあらためて熱狂的な評価を得ている。
そして、再来日も決定し、MTV presents SOUL CAMPへの出演と、東阪でのビルボードライブ公演が予定されている。デビューして20年以上のキャリアを誇る今もなお、新鮮な歌声を聞かせてくれるフェイス・エヴァンス。その圧倒的なステージをぜひ体感してもらいたい。
▲ 「When We Party (ft. Snoop Dogg)」Faith Evans & The Notorious B.I.G.
▲ 「Legacy」Faith Evans & The Notorious B.I.G.
公演情報
Faith Evans
ビルボードライブ大阪:2017/10/5(木)
1stステージ開場17:30 開演18:30 / 2ndステージ開場20:30 開演21:30
>>公演詳細はこちら
ビルボードライブ東京:2017/10/9(月・祝)
1stステージ開場15:30 開演16:30 / 2ndステージ開場18:30 開演19:30
>>公演詳細はこちら
INFO: www.billboard-live.com
BAND MEMBERS
フェイス・エヴァンス / Faith Evans(Vocals)
ジェームス・ライト / James Wright(BGV)
ダネトラ・ムーア / Danetra Moore(BGV)
ジャスティン・ブルックス / Justin Brooks(Keyboards)
コンラッド・リーヴス / Conrad Reeves(Guitar)
ロナルド" CJ" アレキサンダー / Ronald"CJ" Alexander(Bass)
ジョン・ドリュー・シェード / John Drew Sheard Ⅱ(Drums)
ジャロン・ウィルソン / Jaron Wilson(Percussion)
デシン・ジョーンズ / DeSean Jones(Saxophone)
アーロン・ヤニク / Aaron Janik(Trumpet)
関連リンク
Text: 栗本斉
ザ・キング&アイ
2017/05/19 RELEASE
WPCR-17691 ¥ 2,420(税込)
Disc01
- 01.ア・ビリオン
- 02.レガシー
- 03.ビューティフル (インタールード)
- 04.キャント・ゲット・イナフ
- 05.ドント・テスト・ミー
- 06.ビッグ/フェイ (インタールード) [FEAT.ジャマール・ウーラード]
- 07.トライナ・ゲット・バイ
- 08.ザ・リーズン
- 09.アイ・ドント・ウォント・イット [FEAT.リル・シーズ]
- 10.アイ・ゴット・マリード (インタールード) [FEAT.ママ・ウォレス]
- 11.テン・ワイフ・コマンドメンツ
- 12.ウィ・ジャスト・クリックド (インタールード) [FEAT.ママ・ウォレス]
- 13.ア・リトル・ロマンス
- 14.ザ・バッデスト (インタールード)
- 15.フール・フォー・ユー
- 16.クレイジー (インタールード) [FEAT.112&ママ・ウォレス]
- 17.ゴット・ミー・トゥイステッド
- 18.ホウェン・ウィ・パーティー [FEAT.スヌープ・ドッグ]
- 19.サムバディ・ノウズ [FEAT.バスタ・ライムス]
- 20.テイク・ミー・ゼア [FEAT.シーク・ローチ&スタイルズ・P]
- 21.ワン・イン・ザ・セイム
- 22.アイ・ウィッシュ (インタールード) [FEAT.ケヴィン・マッコール&チャイナ・タージェレイ]
- 23.ラヴィン・ユー・フォー・ライフ [FEAT.リル・キム]
- 24.NYC [FEAT.ジェイダキス]
- 25.イット・ワズ・ワース・イット
- 26.ボディ・ランゲージ (日本盤ボーナス・トラック)
- 27.マイ・B (日本盤ボーナス・トラック)
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