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Over The Top『ビバ無我夢中』インタビュー
今年の5月末にメジャーデビューを果たした4人組ロックバンド Over The Topが、畳み掛けるように2ndシングル『ビバ無我夢中』をリリースした。
ダイナミックなサウンドを展開する本作についてはもちろん、衝撃のバスライブや初ワンマンで得た大きな成長と見いだした課題、見守るNMB48メンバーが涙した岸野里香(vo)の「初めての星」、“解散”という驚きの歌い出しから始まるM-3「サヨナラには負けない」についてなどなど。前作に引き続き4人に訊いた。
ゼロからって気持ちなので、今までのキャリアとか関係ない
--デビューシングル『僕らの旗』のリリース当日に行ったプレミアムバスライブは衝撃的(http://www.billboard-japan.com/d_news/detail/51637)でした。
岸野里香:やってる時は夢中で、とにかくめちゃめちゃ楽しんでやってました! だから終わった後はすごく疲れてましたけど、気持ちよかったですね(笑)。 永見和也(b):最後の方はMCもなくぶっ通しで曲を演り続けてましたからね。 坂本夏樹(g):同じ曲をあんなに連続で演ったのは初めてだったかもしれないです(笑)。 田中裕基(dr&DJ):渋谷のスクランブル交差点で演奏する機会ってないと思うので、気持ちよかったです。--7月6日には東京 Shibuya WWW Xで開催したワンマン(http://www.billboard-japan.com/d_news/detail/53013)も拝見させていただきました。
坂本夏樹:スタート地点ですね、あそこが。「僕らの旗」に“約束の丘”っていう歌詞がありましたけど、武道館ワンマンという目標があるので、その足がかりとも言えるスタートをやっと切れたのかなと。 岸野里香:私自身、バンドでワンマンライブをやるのが初めてだったので、始まるまでどうすればいいか分からなかったんです。どれが正解か分からなくて、これかな?っていう想定すらなく、とりあえず始まった、みたいな。だからやっている間は本当にほとんど覚えてないです。でも終わってから、また新しくCDをレコーディングしたりとか、対バンでライブをしたりする中で、こうかな?っていうのがちょっと見えてきた気がするんです。初めての舞台としては成長できたライブでしたし、課題もたくさん見つかりました。 永見和也:ライブ中、それぞれのメンバーに対する発見が結構あって、里香ちゃんは緊張したって言ってましたが、本番で一番爆発していたのも彼女だと思います。後に同録などを聴いてみても、男3人は経験があると言いつつも何だかんだ緊張していた感じがあって、バンドとして課題が見つかった。スタート地点としてはすごく良かったと思いました。 岸野里香:翌週には大阪でのワンマンもあったんですけど、その間に今作のレコーディングもあったんですよ。自分では気づかなかったんですけど、ワンマンをやった後の方が良いって言われましたし、大阪のワンマンでも色々と話し合ったことでより良くできたと思います。 田中裕基:このバンドに関してはゼロからって気持ちで臨んでいるので、今までのキャリアとかあんまり関係ないんですよね。お客さんの層も違いますし、ワンマンの時はどういう感じになるのか、想像もできてなかった。実際に初めての雰囲気だったので、渋谷を踏まえての大阪では良い演奏ができましたし……。里香ちゃんはもちろんゼロからだったと思うんですけど、僕も同じ気持ちでやっていたところはありますね。
会場に来てくれたNMB48のメンバーは、あそこでボロボロ泣いた
坂本夏樹:(緊張感は)めちゃくちゃありましたね!僕、そんなに緊張する方じゃないと思ってたんですけど、今回は特に。里香ちゃんは緊張をバネにしてひっくり返せる力があるんですけど、僕は良いようにひっくり返せない(笑)。 岸野里香:ライブ前はずっと「緊張してない」って言ってたんですよ(笑)。 田中裕基:いつもうるさいのがさらに際立っていたので、何かおかしいなって(笑)。 坂本夏樹:小さいプレイになっちゃってて、抑えにいく感じになっちゃっいましたね。僕は4人ともフロントマンじゃなきゃダメだと思っているから、その中でギターというパートを担っているのであれば、どれだけ前に出られるか。もう一度考え直さないといけない、って思ったワンマンになって、そこから毎日のように猛練習をしてますね。32歳になろうとしている中、23歳の子から教わるっていうのは恥ずかしいんですけど、それができない大人はもっと恥ずかしい。 永見和也:ワンマンが終わった後は僕も同じ気持ちでしたよ。--また、岸野さんがNMB48の「初めての星」を歌うシーンも話題になりました。客席にはNMB48のメンバーもいましたが、集団のひとりとして奮闘していた女の子が、その先のステージでバンドのボーカルを担いながら当時の歌をひとりで歌う、というのは感動的でした。
岸野里香:会場に来てくれたメンバーは、あそこでボロボロ泣いたって言ってました(笑)。私にしかできない、私だから歌える歌。これがあったから今があるし、……うん。NMB48時代からついてきてくれているファンの方が多かったので、喜んでもらえたと思っています。--NMB48はなかなかオリジナル公演を用意してもらえないという紆余曲折があっただけに、初のオリジナル公演で披露されていた楽曲というのは、より感慨深いですよね。
岸野里香:NMB48時代の曲と今の曲は種類が全然違うので、私の曲が好きって言ってくれていた人から「NMB48時代の曲も歌って欲しい」っていうメッセージが上がっていたことは、SNSなどを通して知っていたんですよ。だからその部分は絶対に入れたかったんです。それに、山本彩もソロでのワンマンライブの時に「初めての星」を歌っていたこともあって、この曲にしたんですよ(笑)。チームNのオリジナルとしていただいた私たちの曲だったので、メンバーも感動したって言ってました。- 普段のレコーディングとは全然違う演奏ができた
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Interviewer&Photo:杉岡祐樹
普段のレコーディングとは全然違う演奏ができた
▲YouTube「【Over The Top】ビバ無我夢中(8/30発売!)」
--こうして色々な成長を遂げたOver The Topが、その成果を見せなければいけない場、それが2ndシングル『ビバ無我夢中』になります。
永見和也:今回の3曲は、歌を先録りするスタイルで進めていったんですけど、「ビバ無我夢中」は渋谷ワンマンの前に、残りの2曲はワンマン後に歌録りをして、演奏は大阪ワンマンの翌日にレコーディングしたんですよ。ライブでやった経験のある曲をレコーディングすると、お客さんとの空気感などを踏まえることもできるので、工程としてはめちゃくちゃキツかったですけど、良かったですね。 田中裕基:前作よりも曲に対して自然に演奏していて、前作はスタジオの回数もそれほど重ねずにレコーディングに入ったから探り探りなところもあったんですけど、今回はライブで演奏したし、スタジオに何回も入って作りました。自然にみんなのグルーヴを感じながらやれたのが、結果的に個性として出たのかなと思います。 永見和也:今回は歌を先録りして、その歌に合わせて楽器をレコーディングしたのが面白くて、ドラムとベースとでは、歌に合わせるリズムの解釈が違う。ドラムはオンでいくけど、ベースはそれより後ろにいくとか。そういうところも話し合いながらできて、活かせてカタチにできたのは良かったですね。歌のテイクも感情が乗っていて良かったので、普段のレコーディングとは全然違う演奏ができたと思います。歌が走っているところも合わせられるし、良いことしかなかったです。 坂本夏樹:僕はあんまりその辺は考えないようにしていて、やっぱり4人がフロントマンという意識があるので、自分勝手というわけではないですけど、4人が好きなようにやって、それでも合わさるとひとつになる。それが僕の理想とするバンド像なんです。
前作ではまずは抑えておかないとと思ったので、なるべく合わせようとしていたんですけど、今回ギターに関してはあんまり考えてなくて、他人の音をあんまり聴かずにやった。こういう角度の物が今度は広がっていければ……とは思いつつ、僕はやっぱりバンドの演奏を聴いて、もう一度歌で引っ張り上げて欲しいという思いもあるので、やっぱり歌は後録りがいいな(笑)。
「サヨナラには負けない」が僕たちの意思表示
--また、本作は「ビバ無我夢中」とM-2「Youthful Days」にて作詞家の方々を招いています。前作の作詞はすべてOver The Top名義でしたよね?
坂本夏樹:「ビバ無我夢中」については違う歌詞で何度かライブをしていたりしたんですけど、もう少し表現の幅を広げてみたいっていうのがあって頼んでみました。結果、やっぱり面白い歌詞になったと思いますし、自分たちではこのような言葉遣いはできなかったので、やってよかったと思います。 岸野里香:やっぱり音やメロディに対する言葉の入れ方、言葉数とかが全然違って、歌ってみると感動するくらい見事な歌詞で、『こういうことか!』って(笑)。作詞家の方って本当にすごいなと実感しました。同じメロディなのに1サビと2サビで言い回しが微妙に違ったり、息継ぎの部分まで全部考えられていて、歌っていてすごく楽しい! そういうことに気づけたのが大事だと思いますし、プラスアルファをしていただいた感じというか、ひとつ上に行けたかなと思います。--そんな中にあって、今作では唯一、皆さんが作詞したM-3「サヨナラには負けない」の歌詞が一番驚かされました。歌い出しで衝撃を与えるチャレンジからは、目標として掲げている武道館がおざなりではないことを思わされました。
永見和也:ハッとしてもらえるのは嬉しいですよね。--いきなり“本日僕らはここで見事解散するけれど”ですからね(笑)。
永見和也:個人的になってしまうのですが、僕は去年の秋に15年やってきたバンドを活動休止にして、以後はメンバー同士が疎遠になっていくと思っていたんです。でも、実際は今も連絡を取り合いますし、お互いを応援し合えている関係が作れている。みんなそういう経験を越えての今があるので、これから離れ離れになってしまう人たちに向けて、伝えたいことがあってこういう歌詞にしました。 坂本夏樹:これが僕たちの意思表示なんです。サヨナラって終着点のイメージがあるかもしれないですけど、ひとつの通過点でしかないと思うんです。いつまでも囚われていたら次に進めない。でも、それは大切なことと思っていることを作品に残したい気持ちがあった。ネガティブなように聞こえるかもしれませんが、それがあって今も前に進めているわけで、黒歴史でもなんでもないですから(笑)。僕でいったらこの前のワンマンライブは色々反省しなければいけないところがあったのですが、いつも初心に戻れるような楽曲が「サヨナラには負けない」なんですよね。リリース情報
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Interviewer&Photo:杉岡祐樹
Over The Topではコードにこだわってやっていきたい
岸野里香:(「サヨナラには負けない」は)次に進むための地点に立っている人たちを応援できる歌になっていると思います。やっぱり応援歌っていうのは説得力がないと始まらないと思っているんですけど、今があるからこういう歌が歌えると思っています。 永見和也:渋谷のワンマンで初めて演奏したんですけど、ライブが終わった後にNMB48の方々と里香ちゃんが泣きながら抱き合っているのを見て、この歌とリンクする部分があってすごく感動したんですよね。あと、「ビバ無我夢中」が特になんですけど、今回はコードをこだわれたなって思っています。1stはトライアド・コードというか、基礎的な進行に上モノを乗せる感じだったんですけど、「ビバ無我夢中」に関してはメロディに対してコードを細かく当てていく手法を初めて取り入れたんです。
オーケストラをやっている知り合いにメロディの譜面を渡してお願いしたら、自分の想像できないコード進行があがってきて。でも、よくよく聴いていくとメロディに寄り添った流れになっていたので、今回の制作はポイントになると思っています。ライブをやる時は3ピースになるので、他の曲と変化をつけたりライブを飽きずにやっていくためにこだわれるのはコードかなと。Over The Topではこだわってやっていきたいと思っています。
--そういう意味では、ギターのアプローチは純粋に今作の方が楽しめましたね。
坂本夏樹:僕は今までコード・バッキングをやってくれる人がいて、オブリを弾くケースの方が多かったので、今作の方が自然ではあるんですよね(笑)。今は単純な音色への追求をしたいと思っていて、前から僕のギターを聴いてくれている人は「あ!」って思うかもしれないですが、より良く聴こえるように研ぎすませていきたいと思っていますね。 岸野里香:歌に関しては歌い方とか感情の入れ方とかが、自然と身についてきたと思います。後から聴いて「え、これって誰が歌ってるの?」ってくらい変わったと思いますし、みんなが楽しんで演奏していることが音から伝わってくる。「ビバ無我夢中」とか、みんな笑いながら録ったんやなーって。そういう音の明るさみたいなものが乗ってるんじゃないかなって。仲もどんどん良くなってきてますし。これからは、獲りにいきたい!
--では、岸野さんのボーカルとしての一番の成長はどこにあると思いますか?
田中裕基:『僕らの旗』の時は良くも悪くも平べったいというか、刺さってくるところが感じられ難かったんですけど、『ビバ無我夢中』からは歌詞が伝わってくるようになったと思っていて。それを聴きながらレコーディングできたので自分の感情もノりましたし、僕も和也の言うようにボーカル先録りは良かったなって。今っぽい言い方になっちゃうけど、エモい演奏ができたと思うので、そこは里香ちゃんが成長してるなと。 岸野里香:ボイトレをやるまでの私はピッチ・コントロールを一番気にしていて、他人の歌を聴いていても音が外れることをすごく気にしていたんですけど、そこじゃない。やっぱり届けることが一番の目的だって、最近気づいたんです。ボイトレによってピッチが合わせやすくなることで、考えられる幅が広がった。1stの時は狭い視野でしか見られていなかったものが、ワンマンを経験したことでどうしたら伝わるかを考えるようになって、変わった部分があるんだと思います。ボイトレしたから……--どれだけボイトレを自慢したいんですか?(笑)
岸野里香:ボイトレって大事だなって思いました!(笑)渋谷ワンマンでゼロからスタートして、色んなことを思い知らされて、求められているものに気づけた。ワンマンをする前は、3人が言っていることがわからない、っていうのも結構あったんですよ。「うんうん、はいはい、わかったわかった」って言ってるけど正直よくわからない(笑)。でも、ワンマンを終えて何かが変わって、少しですけど言っていたことが理解できた部分があります。--では、2017年のOver The Topは何を目指していくのでしょうか?
岸野里香:対バンをたくさんしたいです。バンド好きな人から見たら、私がボーカルって時点で舐められて当たり前で、アイドルだからっていうのはあると思うんです。ライブハウスには色んなバンドを好きな方々がいるので、そこでどれだけの人を私たちに向かせることができるかっていうのは今後の課題になると思います。 永見和也:この間、ライブ終わりに名言出てたよね? 坂本夏樹:言ってやれ言ってやれ! 岸野里香:……私、対バンをしてわかったことがあって、獲りにいくのが好きだって気づいたんです(笑)。これからは、獲りにいきます!リリース情報
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Interviewer&Photo:杉岡祐樹
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