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【FUJI ROCK FESTIVAL '17】総力レポート~ライブ・フォト&レポ、インスタント写真、インスタグラムでフジロックを振り返る
新潟県・苗場スキー場にて2017年7月28日~30日にかけて開催された国内最大級の野外音楽フェスティヴァル【FUJI ROCK FESTIVAL】。初日からベスト・アクト候補のライブが勃発し、2日目には小沢健二のライブを観ようと集まったファンで<ホワイト・ステージ>が危険地帯と化し、その後エイフェックス・ツインの“さすが分かってらっしゃる”なVJに釘づけになっているとバケツをひっくり返したような大雨(まるで修行)がここ数年忘れかけていた“フジ感”を甦らせたり、そして最終日は花火&パイロとともに有終の美を飾ったビョークの衣装(マスク)が思いのほか大きく話題になっていたりと今年も色々ありました。そんな今年のフジロックには、前夜祭を含め125,000人が来場したとのこと。ここでは、当日の白熱のライブ&フォト・レポートに加え、味わい深いインスタント写真や出演者のインスタグラムでフェスの模様を振り返りたい。
DAY 1 l 2017.07.29 FRIDAY
DOCTOR PRATS / RAG'N'BONE MAN / ROUTE 17 Rock'n'Roll ORCHESTRA / GALLANT / RADWIMPS / スチャダラパー / THE xx / SAMPHA / QUEENS OF THE STONE AGE / GORILLAZ / ARCA DJ & JESSE KANDA AV / ELVIN BISHOP’S BIG FUN TRIO11:20~ @ WHITE STAGE
初日、<ホワイト・ステージ>のトップバッターを務めたのは、スペイン・テレッサ出身のメスティソバンドDOCTOR PRATS。彼らは、前夜祭でも<レッド・マーキー>で大いに盛り上がりをみせ、会場には期待に満ちたオーディエンスで溢れていた。メンバーは顔にインディアンのようなペイントを施し登場。ステージを目一杯使った彼らのオーディエンスを盛り上げることに特化したエネルギッシュでユーモラスなステージングと、フォーン隊の息ピッタリなパフォーマンスが会場を沸かせた。ラテンをベースにスカ・ルンバ・パンク・レゲエなどを自由にフューチャーした唯一無二のキャッチーなナンバーの連続で、オーディエンスを巻き込み躍らせた。盛り上がりが最高潮になると、かめはめ波のような振り付けでスタートした「Aha!」や、アヴィーチーの「The Nights」をバスク語でカバーしたナンバーなども披露され、会場ごとお祭り騒ぎに。観客を楽しませ躍らせた彼らの完全勝利で幕を閉じた。今後の動向も目が離せない。
13:20~ @ GREEN STAGE
UKが放つ2017年の最重要新人の初来日ということで、話題のフレッシュな才能を一目見ようと<グリーン・ステージ>には各国のファンが集結。オン・ステージは、ラグンボーン・マンことローリー、ギター、ベース、ドラム、キーボードに女性ヴォーカルという6人編成。まずは、始終大活躍だった女性ヴォーカルのコーラスから始まる「Wolves」で初見のオーディエンスを温め、続くドラムンベースの要素も伺える「Ego」では、元々ヒップヒップMCだったローリーが見事なフロウで、サム・スミスなどいわゆる正統派な歌ウマ・シンガーにはない個性を見せつける。中盤のハイライトとなったのは、キーボード以外のメンバーがステージからはけ、ピアノの伴奏のみでパフォーマンスされた「Skin」。イントロ部分で大きな歓声があがると茶目っ気たっぷりの笑みを見せたローリーだったが、気持ちを引き締め本気モードに突入すると195cmの身体から発せられる、迫力のあるソウルフルなヴォーカルが苗場の山々に響き渡り、後に演奏された出世曲「Human」よりも個人的には印象的だった。ラストは、ファンキーなベースラインとピアノがアクセントとなった「Hell Yeah」。ヴォーカリストとしての表現力とステージ上の存在感はピカイチなのだが、パフォーマーとしてはまだ初々しさが残るステージだった。
15:20~ @ GREEN STAGE
16:10~ @ RED MARQUEE
デビュー作『Ology』が【グラミー賞】にノミネートされ、韓国を中心としたアジア圏でも人気を誇るガラントの待望の初来日ということもあり<レッド・マーキー>は大入り。定刻を過ぎ、観客の期待度が頂点に達すると、やっとバンド・メンバーが登場し「Open Up」でライブが幕開け。ウォームアップするようにゆっくりと体を動かしながら、その美声を余すことなく披露すると初っ端からよめきが起きる。独特な動きでステージを縦横無尽しつつも、まったくブレのないファルセットは、「Bone + Tissue」ではグサリと突き刺さるような激しさ、「Miyazaki」で天にも昇る優しさをはらみ、そして「Percogesic」ではフリーキーさを醸し出すなど、表現豊か。まさに魔術師だ。小さい頃から憧れだった日本ということもあり、本人も気合十分なのがヒシヒシと伝わってくる渾身のライブは、「Weight In Gold」で締めくくられた。「雨が降っているけど、来て下さってありがとうございました」、「次のソングは~」など丁寧な日本語MCもさることながら、実力、カリスマ性、キャラ、すべての面においてこの日の<レッド・マーキー>ベスト・アクトと行っても過言ではないだろう。本人もTwitterに「早く帰ります」と投稿していたが、すぐにでも単独公演を実現させてほしい。
17:20~ @ GREEN STAGE
18:20~ @ RED MARQUEE
19:20~ @ GREEN STAGE
スモークと光の幻想的な雰囲気の中、<グリーン・ステージ>にThe XXが登場。2010年の<レッド・マーキー>、2013年の<ホワイト・ステージ>に続き3度目となる出演で、期待値の高まるオーディエンスで苗場高原は溢れていた。「Intro」からスタート。大きなステージだったが、シンプルな曲ですら繊細で想像を超える美しさがあり、見るものすべてを魅了した。メランコリックで、アンニュイな彼らの世界観は、演奏の良さも相まって夜のひんやりとした<グリーン・ステージ>にとてもマッチしており、そこにしかない光景と感動を生み出していた。途中、ロミーが感極まり、フロアにライトを当てさせて「I see you」と言い、披露するシーンも。オーディエンスを一切煽るようなこともせずに作り上げる、ステージとフロアの一体感には圧巻だ。後半、ジェイミーのDJタイムへ突入し、2人がステージに戻り「On Hold」を披露。大きなスクリーンに映るオリヴァーのしなやかな指や色気に魅了されたオーディエンスも多いのでは無いだろうか。そして、The XXの3人が織りなす緊迫感と一目瞭然な信頼感が絶妙で完璧なステージングだった。最後は「Angels」。一旦はけたオリヴァーがなかなか出てこず、観客が温かく迎えてテイク2。歌詞の最後の心のこもった“Love”が印象的で胸に響いた。完全にベストアクトで、これからも進化し続けるであろう彼らに注目したい。
20:30~ @ RED MARQUEE
初日の<レッド・マーキー>トリを務めたのは、SAMPHA。この日は、生ドラム、ドラムパッド、サンプラー、シンセ、キーボードなど打楽器オンリーのメンバー3人と共に、全員白いコーデで登場した。序盤、どこかミステリアスな雰囲気。だが、彼が歌いだすと、流石と言わんばかりにソウルフルで透き通る美しい歌声と、とてもフィジカルでパーカッシブなパフォーマンスで、観客を圧倒し、フロアから歓声が沸いた。SAMPHAの天使のようなドレッドヘアと、ステップを踏む姿はどこか愛おしい。スタート時は若干フロアに余裕があったものの、終盤に向かうにつれオーディエンスが溢れ出した。途中、バンド全員で1つのドラムを使いアンサンブルしたシーンは見物で面白く、とても盛り上がりをみせた。赤い照明に切り替わった瞬間に最後エモーショナルな「Blood On Me」でオーディエンスの心をガシっと掴んだ。SAMPHAの終盤にGorillazが被っていた為、離脱した人も現れたが最後までアクトを見届けたオーディエンスからはアンコールの声が上がるほど素晴らしいステージングだった。
21:00~ @ WHITE STAGE
2002年の初来日(withデイヴ・グロール!)の衝撃から早14年…やっとやっとクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ(QOTSA)再来日が実現した。『ソングス・フォー・ザ・デフ』のオープニングを飾る「You Think I Ain't Worth a Dollar, but I Feel Like a Millionaire」で幕を明けると、観客は一丸となって拳を突き上げ、ジョシュ・ホーミ兄貴率いるQOTSAの苗場への帰還を祝福。そのまま「No One Knows」~「Monster In Your Parasol」になだれ込み、初期の楽曲のオンパレードと兄貴のキレのあるシャウトに、今年って2002年だっけ!?と一瞬懐かしさが込み上げてくる。兄貴は思いのほかご機嫌で、「Misfit Love」では体をくねらせダンス(!?)を披露したり、曲の途中にさらっとコームで髪形を整える一幕も、そして極めつけは「Little Sister」の前に放たれた「この曲をガールズに捧げる」というクールな一言…一生ついていきます。「Feel Good Hit of the Summer」では、ちょうど裏で演奏していたゴリラズの「Clint Eastwood」をマッシュアップする粋な演出も。ラストは、オーディエンスを狂喜乱舞させた「Go With the Flow」から、強靭なギターとジョンのマシンガン・ドラムに痺れる「Song For The Dead」のダブルパンチ。冒頭ジョシュが杖をつきながら登場し、足を引きずるようなしぐさを何度かしていたこともあり、膝の持病が悪化しているようで少し心配になったが、(これが理由かわからないがフジロック後のフェスへの出演をキャンセルしている)、それを物ともせず最高にパワフルで、最高に胸アツなステージで、ベテラン・ロック・バンドの貫禄を十分に見せつけてくれた。次回は、ぜひ単独公演で…。
21:30~ @ GREEN STAGE
PHOTO: Masanori Naruse
今年5月に新譜『ヒューマンズ』をリリースしたゴリラズ。6月には自らが主宰となってフェス【DEMON DAYZ FESTIVAL】を開催。豪華ゲスト陣を迎えて凄まじいライブパフォーマンスを世界中に配信してくれた彼ら。フジロッカーに対して「こんな感じのライブだから予習しといてね!」と親切丁寧なアプローチを経て、満を持した状態で初日のヘッドライナーに挑んだわけでございます。結果を言えばものの見事に凄まじい「こんな感じのライブ」をやってくれたのです。もちろん豪華ゲストがぞろぞろ客演してくれるわけではございませんでした。(ペバン・エヴェレットとかきてましたよ!)が、スタートからスクリーンを効果的に使って名曲、最新曲を織り交ぜ、最前列のファンから、後方で眺めるように観ているオーディエンス、移動中の方々などなど、音の届く範囲すべてにむけてパワフルに、そして巧みな演出で観るものを魅力していきます。彼らはリリースしてきた音源を用いて様々な音楽ジャンルと交差し、飛び越えて、苗場から音楽の世界一周ツアーに連れ出してくれたのです。とりあえずの終着駅として戻ってきた苗場でのアンコールはキラーチューンオンパレード。大合唱でフィナーレと相成りました。また来日して単独やって下さいませ。本当に心よりお待ち申し上げます。
23:45~ @ CRYSTAL PALACE
0:00~ @ PLANET GROOVE
公演情報
【FUJI ROCK FESTIVAL '17】2017年7月28日(金)、29日(土)、30日(日)
新潟県 湯沢町 苗場スキー場
開場9:00 開演11:00 終演予定23:00
チケット:1日券19,000円、2日券36,000円、3日券43,000円
INFO: http://www.fujirockfestival.com/
関連リンク
DAY 2 l 2017.07.29 SATURDAY
H ZETTRIO / THE AMAZONS / THE AVALANCHES / THE LEMON TWIGS / CORNELIUS / DECLAN O'DONOVAN / TEMPLES / 小沢健二 / APHEX TWIN / LCD SOUNDSYSTEM11:30~ @ WHITE STAGE
朝イチの<ホワイト・ステージ>には前夜祭でも超満員で会場を沸かせたH ZETTRIOが降臨。フロアには、鼻を青く塗った“H ZETT M女子”の姿も。パラパラと雨が降っていたが、天気などおかまいなしに「Next Step」でパーカッシブに華々しく演奏した。その弾きっぷりと軽快なサウンドで、ホワイトを横切ろうとしている観客の足も止め、徐々にオーディエンスが集い始め満員に。集中力のあるタイトなアンサンブルから、メロウなバラードまで、緩急あるセットリストで朝から、オーディエンスの音楽魂に火をつけ躍らせた。中盤、テンションが上がったH ZETT Mが「フジロック!出れて嬉しい!いい天気!」と、空を仰ぎ「Neo Japanesque」を披露。H ZETT Mがショルキーに持ち替え、ギターさながらのパフォーマンスをするシーンも。BPMに伴い、会場のボルテージも最高に盛り上がりをみせた。ラストは小雨の中「Wonderful Flight」で美しく締めくくった。その痺れるクールな演奏と、オーディエンスを楽しませるパフォーマンスで3人に魅了された1時間だった。
14:00~ @ RED MARQUEE
ポップ、R&B、ヒップホップ、EDMなどにTOP40チャートが独占され、ロックが元気がないなんて言われている昨今。その影響はフェスのラインアップにも顕著になってきていて、10年前に比べ新人ロック・バンドが少なくなっているのは明らかだ。そんな中、45分を切るド直球なロックンロール・チューン満載なデビュー・アルバムをリリースしたばかりで、個人的に注目していたジ・アマゾンズ。疾走感溢れるアルバムのオープニング曲「Stay with Me」で爽快にスタートを切ると、ゴリゴリな骨太リフのグルーヴが気持ちいい「Black Magic」、ドラマチックなイントロとフロントマンのマットのシャウトが冴える「Little Something」などパワフルで、ザ“王道”なナンバーを次から次へと投下。マットがサラサラの赤毛をかきあげながら、歌う姿も最高にセクシーだ。若手バンドらしい勢いや熱量はあるものの、新鮮さや個性はあまり伺えず、後半はやや味気なく感じてしまった。とはいえ、ロック魂が体の一部のフジロッカーたちには大いに響いたようで、演奏が終わりメンバーがステージからはけた後も、ラストの「Junk Food Forever」のコーラスのシングアロングは鳴り止まなかった。
16:50~ @ GREEN STAGE
17:50~ @ RED MARQUEE
18:50~ @ GREEN STAGE
小沢健二さんご出演も相まって『賭博黙示録カイジ』の名表現<ざわ・・ざわ・・・>の文字が浮かぶように見えたフジロック2日目トリ前の<GREEN STAGE>。ステージ前面にスクリーンを吊るして期待感を煽るのはCorneliusだ。「hello FUJI ROCK」のテキストの表示を幕が降りると大歓声の中、小山田圭吾を筆頭に堀江博久、大野由美子、あらきゆうこの4人が白で統一された衣装で横一列に並び、それぞれの担当楽器を冷静沈着にプレイ。そして、『Mellow Waves』、『Sensuous』、『Point』、『FANTASMA』と最新作から20年前の名作までを並べ、この場所に集まった音楽ファンが聴きたいであろう楽曲を次々にチョイス。スクリーンに投影される映像と演奏の同期っぷりや、ライティングの演出力の高さ、そして、複雑な楽曲たちを精密に正確に表現するその演奏力は流石の一言。視覚と聴覚に“電流走る”刺激的な音楽体験の時間となった。この後<WHITE STAGE>で待つ小沢健二に移動したいけど「Count Five Or Six」のイントロが鳴ってしまい、「あーこれはやばい」と動けなくなった人が印象的でした。
19:30~ @ GYPSY AVALON
すっかり暗くなり、カラフルな照明に彩られた<ジプシー・アヴァロン>。すぐ裏で行われていた小沢健二のステージとは全く異なるピースフルな雰囲気の中登場したのは、カナダ出身のSSW=デクラン・オドノヴァン。まずは、思わず笑みが浮かんでしまうような、昔懐かしいピアノのメロディーラインが印象的な「Down To The Bottom」でスタート。主にキーボード、そしてギターを演奏するデクランをサポートするのは、ギター、ベース、ドラムの3人で、日本でバンド編成で演奏するのは、今回が初とのことだ。転がるように軽快なピアノのイントロから始まった「Hank」、同郷カナダ出身で昨年惜しくも亡くなってしまったレナード・コーエンの「Everybody Knows」の渋いカヴァー(選曲も泣ける~)、ファンキーなベースラインに心躍る「I Want You Close」など、デクランとバンドが奏でる熱を帯びた優しいメロディーの数々は2日目の夜を迎え、やや疲労感が増した体に優しく染み渡った。ライブ終盤になると、足を止めて演奏に聞き入る通りすがりの観客でステージ前方は埋め尽くされており、ふらりと立ち寄ったステージで良質な音楽と出会えるのもフジロックの魅力だと再確認させられた。
20:00~ @ RED MARQUEE
PHOTO: Masanori Naruse
2日目<レッド・マーキー>のトリを飾るのは、UKミッドランズ出身の4人組サイケデリック・ロックバンドTEMPLES。フジロックは3年ぶりの出演だ。タイムテーブルは小沢健二と丸被りにも関わらず、会場はほぼ満員で、「Colours To Life」でスタート。初っ端からスター感のある堂々としたステージングと、ストレートに刺さる彼の歌声で会場を沸かせた。「Certainty」、ギラギラとしたきらびやかなシンセを鳴り続かせた「Mystery Of Pop」などヘヴィで中毒性のある曲が続いた。「A Question Isn’t Answered」では大合唱とクラップが起こり、会場に一体感を生んだ。最後は「Shelter Song」。独特の世界観とサイケなサウンドで会場はドープな雰囲気に包まれ、ジェームスの歌声と相まってオーディエンスを虜にした。11月からは、東名阪でJAPAN TOURも開催予定で、今後も楽しみなバンドだ。
20:10~ @ WHITE STAGE
<WHITE STAGE>がぎゅうぎゅう詰め。昨年のBABYMETALも相当な人数で入場規制になっておりましたが、体が最前プロックのごとく身動きがとれない。ちょっと身の危険を感じるほど。おさまりきれないオーディエンスの興奮をひとまず発散させるようにご本人登場でカウントダウン開始。ゼロになったと同時に「今夜はブギー・バック」で幕開け。スチャダラパーのメンバーと共にステージに立って「ブギーバック」を歌う小沢健二。2017年とは思えない光景がそこに広がったのであります。もはや全編大合唱。隣の人は歌いながら泣いている。そりゃそうですよね。なかなか表舞台に立ってくれない王子がそこにいてみんなが欲しがった歌を歌ってるのだ。20代だったあなたも待っている間に40代。いろんなことがありましたよね。時間によってほどけた事件も、凝り固まった事件も。あのコが好きだったあの曲も、行きたくない学校や仕事の道中に聞いていたあの曲を。<WHITE STAGE>でのパフォーマンスはそれぞれの時間をきっちり受け止めて昇華させてくれるようなセットでありました。
21:00~ @ GREEN STAGE
2日目<GREEN STAGE>のトリを務めたのは、ヘッドライナーのリチャード・D・ジェームズこと奇才のAPHEX TWIN。伝説の第一回以来約20年ぶりの出演となる。2016年では姿が見れなかった彼を一目見ようと大雨で足場がぬかるんでいるのにも関わらず、会場は超満員だ。ステージには、大小さまざまなスクリーンが多数設置してあり、ステージの中心には大きなDJセット。大歓声の中、パフォーマンスがスタートすると、とめどなく一気にクールでエッジの効いたサウンドと光がひたすら放出された。スクリーンには、序盤、会場にいる観客の楽しんでいる様子が映し出されたが、次第に観客の顔にエイフェックスのエフェクトがかかり、スマイルマークや不気味な笑顔の顔に変化していく。今度は音と光に合わせ、ブレイクダンスを踊る不気味な顔をしたクマの着ぐるみが映し出され、ピカチュー、ドラえもん、キティーちゃん、ふなっしー、くまモン、ジバニャン、しまじろう、トトロなど日本のキャラたちに次々と変化し、オーディエンスをくぎ付けにした。
そして、今回ひと際盛り上がりをみせたのは、“フルアルバム『Syro』のイメージビジュアルを使用したコラ画像のVJ”だ。はじめは、2017年フジロック出演アーティストのゴリラズ、ロード、ビョークなどの顔がいじられ、次第にタモリ、マツコ・デラックス、イチロー、美輪明宏、宮崎駿、山田孝之など日本の有名人の顔がエイフェックス使用にいじられていく。中でも、会場がざわついたのは号泣した野々村議員や、話題になっている松居一代が召喚された時だった。その後、聖徳太子など日本の歴史上の人物の顔までいじれられ、完全に日本向けにできていたVJは会場を大いに盛り上げた。
最後のとどめには、それまで作り上げてきたものをすべて破壊する勢いで、10分以上もの間、地鳴りのような爆音ノイズとものすごい光が続いた。まるで攻撃されているかのようで、それまで踊っていたオーディエンスももはや呆然と立ち尽くす。ひと際異彩で圧巻のステージングは、期待以上で彼にしか作り出せない。完全に伝説のステージになっただろう。
22:00~ @ WHITE STAGE
前日のQOTSAに続き、ゼロ年代っ子にとってど真ん中なLCDサウンドシステム。そんな彼らの約10年ぶりの来日ステージは、ライブ・バンドとしての底力を存分に味わえる、史上最強にダンサブルなものだった。ステージ中央につるされた巨大ミラーボールを反射するカラフルなライトがクラブ・ムードを高めてくれる中、“The time has come”というリリックがまさにピッタリな「Us v Them」でライブがスタート。続く「Daft Punk Is Playing at My House」では、中心人物ジェームス・マーフィーのエモーショナルなシャウトとカウベルの音色、そしてやや速めのテンポな強靭ビートに合わせ、観客が踊り狂う。ジェームスを卓越した演奏でサポートする、ホット・チップのアルを筆頭とした名プレーヤー揃いの大所帯バンドによるモロダー節炸裂な「Tribulations」のうねるグルーヴ、「Yeah」のタイトなシンセ・ビートと打楽器セッションの絡み合いなど、その科学反応も見ものだ。9月にリリースされる新作『アメリカン・ドリーム』から「Call The Police」をはじめとする新曲3曲を演奏し終えた際に「新曲を辛抱強く聴いてくれてありがとう」という低姿勢っぷりも好感度大。ラストは「Dance Yrself Clean」~「All My Friends」という鉄板の流れで、これでもかというぐらいに踊らせる気概がスゴイ。唯一残念だったのが名バラード「New York, I Love You But You're Bringing Me Down」を聴けなかったことだが、比類のない人力グルーヴで、序盤の大雨を忘れさせてくれる最高以外の何ものでもないパフォーマンスを届けてくれた。
公演情報
【FUJI ROCK FESTIVAL '17】2017年7月28日(金)、29日(土)、30日(日)
新潟県 湯沢町 苗場スキー場
開場9:00 開演11:00 終演予定23:00
チケット:1日券19,000円、2日券36,000円、3日券43,000円
INFO: http://www.fujirockfestival.com/
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DAY 3 l 2017.07.30 SUNDAY
REAL ESTATE / LUKAS GRAHAM / MAGGIE ROGERS / JET / レキシ / STURGILL SIMPSON / TROMBONE SHORTY & ORLEANS AVENUE / LORDE / THE STRYPES / THUNDERCAT / BJÖRK / MAJOR LAZER12:30~ @ WHITE STAGE
創設メンバーでリード・ギタリストのマット脱退後、初のアルバム『イン・マインド』を引っさげた今回のライブ。ポツポツと雨が降る中、セッティングの時点でかなり長い尺で約2曲ほど演奏してくれるという大盤振る舞いぶり。1曲目の夏の昼下がりピッタリな「Stained Glass」やザ・バーズを彷彿させるノスタルジックな「White Light」など、さらに磨きがかかった新作収録の楽曲たちの極上ポップ・メロディに自然と体が動く。新たに加入したギタリスト、ジュリアンがどこか冷めた視線で遠くを見つめながらも、安定感抜群の熱っぽい音を繰り出すコントラストも味がある。軽快なギターラインにマーティンの滑らかな歌声が映える、名盤『アトラス』収録の「Talking Backwards」ではこの日一番の大きな歓声が。いつの間にか雨が止み、あっという間に奥ゆかしいマジカルな時間は終わってしまったが、「It’s Real」の心地よいリフレインはしばらく耳に残っていた。
12:50~ @ GREEN STAGE
14:00~ @ RED MARQUEE
レッド、イエロー、ブルーのトロピカル模様があしらわれたポップなオールインワン&マントという出で立ちで登場したマギー・ロジャース。まずは、牧歌的な「Color Song」を透明感あふれる美声でゆったりと歌いあげると、2曲目の「Split Stones」ではガラっと印象を変え、メタリックな質感のキーボードとミニマルなエレクトロニックスに合わせ、ステージの右から左まで隈なくエネルギッシュに動き回る。近年の世界情勢に感化され書かれたという「Hashtag」や「Better」では、ギターを手にしプレイヤーとしての一面も披露。特に印象的だったのはニール・ヤングによる「Harvest Moon」のいわばポップ・カヴァー。彼女の背景にあるフォーク・ミュージック、そして現在軸となっているダンス・ミュージックの異色の組み合わせが見事に昇華されていて、現在制作中というニュー・アルバムが非常に楽しみになる内容だった。ラストはファレルが絶賛した「Alaska」で締めくくり、様々な一面を持ち合わせた、言葉通り現在進行形のポップ・シンガーソングライターの日本初ライブには拍手喝采が浴びせられた。
14:50~ @ GREEN STAGE
振っていた雨も徐々に上がり始めた<グリーン・ステージ>には、JETが登場。2009年以来8年ぶりの出演だ。ステージ上のバスドラにはカタカナで“ジェット”の文字がテープで貼ってあり、なんだかチャーミング。オーディエンスからクラップが沸き上がり、「Cold Hard Bich」で幕を開けた。ゴリッゴリの骨太ロックサウンドとセクシーなニックの歌声で、渋カッコいいパフォーマンスが繰り広げられた。終盤、ニックがタンバリンを掴んだ瞬間から期待した人も多かったのではないだろうか。iPodのCMソングにも起用された「Are You Gonna Be My Girl」のイントロのタンバリンが流れると、同時に会場は一気に“待ってました!”の勢いで最高潮になりオーディエンスは、前方にドッと押し寄せモッシュし踊り狂った。自然とシングアロングも起こり大盛り上がりに。最後は、ロックチューン「Rip It Up」でニックの最高なシャウト共にステージを締めくくった。これぞ“ロックンロールだ”という圧巻のステージングだった。
15:50~ @ WHITE STAGE
16:50~ @ FIELD OF HEAVEN
18:50~ @ FIELD OF HEAVEN
<フィールド・オブ・ヘブン>には、ジャズ・バンドTROMBONE SHORTY & ORLEANS AVENUE。まず、バンドのオーリンズ・アヴェニューが登場し演奏し始めると、 右手にトランペット、左手にトロンボーンを持ちトロンボーン・ショーティことトロイ・アンドリュースが登場し「Backatown」でスタート。堂々としたステージングで音に無駄がなく、タイトで完璧なプレイと、フォーン隊の息ぴったりな振付で一気に観客を魅了した。メンバーそれぞれのソロのアドリブや、セッションもストレートにカッコいい。ステージを走り回り、楽しそうに自由にパフォーマンスし、観客を楽しませている姿はまさにエンターテイナーそのものだ。セットリストは、絶え間なくファンキーでキャッチ―な曲の連投でフロアは、前方にオーディエンスが押し寄せ、パーティのような大盛り上がりをみせた。中盤には、レッチリの「Give It Away」やストーンズの「(I Can’t Get No) Satisfaction」と「聖者の行進」のカヴァーも披露され、盛り上がりは最高潮に。彼らは、心底楽しそうにパフォーマンスし、そこにいる誰もがその空間を楽しみ、会場は多幸感に包まれた。本当に圧巻の素晴らしいパフォーマンスで、完全にベストアクトで幕を閉じた。是非、また来日に期待したい。
18:50~ @ GREEN STAGE
フジロックに思い入れがあるのはフジロッカーだけではなくアーティストも同じだ。この日のロードのライブは、そんなフジロックの持つ“魔法”を再確認させられるようなものだった。オープニングの「Tennis Court」から、個性的な歌声と妖艶なダンスとともに繰り広げられる唯一無二の世界観は20歳とは思えないほど確固たるものだ。だが、今回印象的だったのはロードことエラという生身の女性の姿ではないだろうか。“神童”と謳われた初来日に比べると大分表情がやわらかくなり、特に「Liability」を歌う前に観客に語りかける姿にはグッときた人も多かったはず。「この曲を書いたことで“一人”になるということを心から理解できた。それはとても貴重で特別なもの。同時に一人になることはすごくハード。もし今そんな風に感じている人がいたら、私があなたのそばにいるわ。今夜フジロックのみんなが、私のそばにいてくれているように」と薄っすら涙を浮かべながら、いつになくパーソナルな胸の内を語ったのも、フジロックの環境が手伝ってのことのような気がする。そんな彼女の想いは観客をさらに高揚させ、一体感と多幸感に満ちた「Green Light」でセットは締めくくられた。冒頭で「この3年間、初めてフジロックに出演した時のこと何度も思い起こした」と微笑みながら話していたが、今回のステージも観客はもちろん、彼女自身にとって印象的なものなったことだろう。
20:00~ @ RED MARQUEE
21:00~ @ FIELD OF HEAVEN
最終日の<FIELD OF HEAVEN>大トリを飾ったのはLA出身の凄腕ベーシスト、THUNDERCATことステファン・ブルーナーだ。2017年2月にリリースした『Drunk』は世界のあらゆる音楽メディアから好評。タイムテーブルはビョークの裏にも関わらず、彼の6弦ベースと美しい歌声を聴こうとヘブンにはたくさんのオーディエンスが詰めかけていた。「Rabbot Ho」でスタートし、初っ端から彼のソウルフルな美声と良質なサウンドで、3人が織りなすたまらない極上のグルーヴ感がヘブンを包み込んだ。どの曲も後半になると徐々に原型をとどめずジャム・セッションになっていき、超絶テクと怒涛のアドリブのオンパレードで観客を圧倒した。中でも、アンコールで披露した「Captain Stupido」と「Oh Sheit It's X」は原曲より、かなりアップテンポにアレンジされ、超高速プレイが繰り広げられた。一つ一つの楽曲のクオリティの高さはもちろん、ステファンの満足そうな笑顔でこの日が素晴らしいステージングだったことがいえる。彼らの真骨頂を目の当たりにした特別な時間だった。
21:00~ @ GREEN STAGE
PHOTO: Santiago Felipe
定刻を過ぎ、今回バックを務める室屋光一郎ストリングスとアルカのスタンバイが終わると、大きな歓声の中、ショッキング・ピンクのフワフワな衣装にヴェールを纏ったビョークが登場し、ステージ中央でお辞儀をする。甘美なストリングスの音色とどこか悲哀が漂う囁くような歌声が胸に突き刺さる「Stonemilker」、そして「Lionsong」と『ヴァルニキュラ』の楽曲が日本初披露される。
近年ビョークがこんなにも創造意欲を掻き立てられているのは、良き理解者のアルカの存在が大きいのではないだろうか。元々大ファンで、彼女の過去のカタログを隅々まで知り尽くしたアルカと組むことで、「Come To Me」や「Mouth's Cradle」など、絶妙なアレンジで新たな息を吹き込まれた楽曲たちは一層と輝きを増しているに思える。また内容が内容だけに「History of Touches」でアルカに寄り添い歌う姿は彼への絶対的な信頼を物語っており、ビョーク自身が「これまで経験した中で最も強い音楽的繋がり」と呼ぶのも納得ができる。
フェスということもあり『ヴァルニキュラ』の心臓、センターピースとも言える10分強の渾身作「Black Lake」が披露されなかったのは残念だが、その分ストリングスが際立つ「Isobel」(ダンスも激キュート)や「Bachelorette」などの人気曲とお決まりの「アリガット!」の掛け声で大いに盛り上げる。そしてラストはもちろん「Hyperballad」。イントロから大シングアロングが沸き起こり、クライマックスではパイロの炎と花火が次々と打ち上がり、大歓声の中、フジロック4度目のヘッドライン・セットを華々しく終えた。
ここフジロックでは4度ヘッドライナーを務め、常に革新的でオリジナリティ溢れるライブと世界観で観る者を魅了してきたビョーク。再びアルカとタッグと組んだ次回作のテーマの一つはユートピアと最新インタビューで話していたが、今回スクリーンに映し出されていた色鮮やかな鳥、蜂や蛇などの自然の映像から、徐々に新たなフェーズに突入しているのは明らかだった。最高のコラボレーターとともに、次はどう驚かせてくれるのか、今から楽しみでしかたがない。
22:00~ @ WHITE STAGE
公演情報
【FUJI ROCK FESTIVAL '17】2017年7月28日(金)、29日(土)、30日(日)
新潟県 湯沢町 苗場スキー場
開場9:00 開演11:00 終演予定23:00
チケット:1日券19,000円、2日券36,000円、3日券43,000円
INFO: http://www.fujirockfestival.com/
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INSTANT PHOTOS @ FUJI ROCK 2017
公演情報
【FUJI ROCK FESTIVAL '17】2017年7月28日(金)、29日(土)、30日(日)
新潟県 湯沢町 苗場スキー場
開場9:00 開演11:00 終演予定23:00
チケット:1日券19,000円、2日券36,000円、3日券43,000円
INFO: http://www.fujirockfestival.com/
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公演情報
【FUJI ROCK FESTIVAL '17】2017年7月28日(金)、29日(土)、30日(日)
新潟県 湯沢町 苗場スキー場
開場9:00 開演11:00 終演予定23:00
チケット:1日券19,000円、2日券36,000円、3日券43,000円
INFO: http://www.fujirockfestival.com/
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