Billboard JAPAN


Special

KSUKE『Billboard Presents Electric Asia Vol. 1』インタビュー&プレイリスト ~いまアジアのEDMシーンで何が起こっているのか?



 アジアを中心に活躍するDJ/プロデューサーの楽曲を集めたコンピレーション・アルバム『ビルボード・プレゼンツ・エレクトリック・アジア・ボリューム・ワン』が7月19日にリリースされる。中国のスーパースター、ジェーン・チャンのティンバランドが手掛けたトラック「ダスト・マイ・ショルダーズ・オフ」のスティーブ・アオキ・リミックスや、ジェシカ(元少女時代)の大ヒット・ソング「ワンダーランド」のリミックスなど、エクスクルーシブな楽曲が満載の一枚。“今EDMが一番アツいのはアジアだ!!”というコピーに違わぬ、注目すべき一枚となっている。(関連特集:ビルボード・プレゼンツ・エレクトリック・アジア・ボリューム・ワン』全曲解説

 そんな中、日本代表として同コンピに新曲「POOL feat. Meron Ryan」を提供したのがKSUKEだ。【ULTRA】シリーズをはじめ国内外のフェスを飛び回り、今や日本のEDMシーンの顔役とも言える彼。カルヴィン・ハリスが新境地のアルバムをリリースするなど過渡期に入りつつある2017年のEDMシーンにおいて、今回の“EDMアジア”なアルバムは果たしてどんな役割を果たすのか。また、その中でKSUKEがいま考えていることは何か。KSUKE本人に話を聞いてみた。

 また、特集の最後にはKSUKE選曲によるApple Musicのプレイリストも公開。夏にピッタリの選曲をぜひ合わせて楽しんで欲しい。

アジアの人が集まって、オフィシャルで一つの作品にするっていうのはなかった

――KSUKEさんは普段はバンコクに住んでいると聞きました。

KSUKE:2、3か月前からバンコクに住んでいて、時々、日本に帰ってきたり、韓国に行ったりとかしてます。アメリカから帰ってきて、しばらくは日本にいて、ギグとかをやりながら近くの国を回ってたんですけど、やっぱりタイの方が圧倒的に隣国への コネクションが良いので。今はタイで色々なコネクションを繋ぎながら模索している状態ですね。

――コネクションというのは?

KSUKE:今回のアルバムも、そうだと思うんですけど、やっぱりアジアでEDMやダンス・ミュージックが、すごく人気でタイもそうなんです 。(地理的にも)アジアの中心ということもあり、 タイ国内でフェスもよく行われているし、タイの後に他アジアの国にもツアーで回れるので、すごく動きやすいんですよね。例えば、中国に行って、そのままベトナムまで飛んで、インドネシア行って、シンガポール行って…みたいなツアーも組みやすいんです。

――今回のコンピレーションは、アジアを拠点に活動する「b2」というマネージメントが中心に制作されたそうですが、KSUKEさんはどのような経緯で参加することになったのでしょうか?

KSUKE:f(x)のAmberと一緒に作った「BREATHE AGAIN」が『Spotify』を中心にヨーロッパで盛り上がっていて、それがきっかけになって今回のお話を貰いました。バンコクを拠点に、日本人としてプロデュースを頑張っているということで選出されたのかなと思っています。


▲KSUKE x AMBER from f(x) - BREATHE AGAIN

――KSUKEさんの新曲「POOL」はタイトル通り、どこかゆったりサウンドが印象的な曲です。この曲はバンコクで制作したんですか?

KSUKE:いえ、作り始めたのは1年くらい前で、そこからちょくちょく詰めながら制作した曲ですね。タイトルが決まったのは後の方だったんですけど、最初は“夏”をイメージして曲を作っていて、その中でだんだんと“水”のイメージが湧いてきて。プールを感じることの出来るサウンドをシンセで作り込んだりもしているので、そこに注目して聴いてもらえると、すごく嬉しいですね。


▲KSUKE - POOL feat. Meron Ryan

――ご自身の曲が入ったコンピレーションが実際に完成してみて、どうでしたか?

KSUKE:アメリカのビルボード・チャートは、HOT100を中心に毎週チェックしているので、その名前を冠した盤に参加できたというは、すごく光栄でしたね。他の面々も聴いたんですけど、やっぱりクオリティの高い人が多かったです。ダンス・ミュージックってアメリカとかヨーロッパが強くて、どうしても落ち目を感じちゃうんですけど、「いまアジアもこんなに勢いあるんだよ!」というのを見せられる第一歩になったんじゃないかなと思います。MIX CD とかならあったと思うんですけど、今までこういう風にアジアの人が集まって、オフィシャルで一つの作品にするっていうのはなかったですよね。

――今までは、アジアとしてまとまり、ということはあまり意識していなかった?

KSUKE:正直、僕はあんまり感じてなかったですね。日本は日本で。タイはタイで。韓国は韓国で。下手したらライバル意識みたいなものを感じたこともあります。だから、こういう作品がきっかけで一歩踏み出せて、今後もどんどん繋がって作品を作っていけたら良いなと思いますね。

NEXT PAGE
  1. < Prev
  2. どうやって日本の文化をEDMに取り込むか?
  3. Next >

どうやって日本の文化をEDMに取り込むか?

――KSUKEさんから見て、各国ライブ会場はどんな雰囲気なのでしょうか?

KSUKE:国によって生活習慣が違うので、楽しみ方もそれぞれです。例えば、日本のフェスティバルだと、早い時間からみんな来て、最前でワーッてコスプレして、みたいなイメージあるじゃないですか? でも韓国だと、早めには来るんですけど、ブルーシートを広げてピクニックみたいな。初めて見たときはびっくりしました。ダンス・ミュージックを聴いていて、好きなアーティストとかも多分かぶってる部分もあると思うんですけど、楽しみ方は国によってちょっとずつ違うんだなと。初めて【ULTRA KOREA】に行った時も、「こんなのが世界にあるんだ!」と思いました。最近は韓国のアーティストとやり取りしたり、タイのアーティストと知り合えたりしているので、文化交流みたいなカッチリしたものじゃないですけど、音楽を通して意思疎通をしてお互いに良いところを吸収し合って、アジア全体で盛り上げアメリカやヨーロッパに負けないものが出来たら良いなと思います。


▲KSUKEも出演した【ULTRA KOREA 2015】アフタームーヴィー

――今回コンピレーションを聴いていて印象的だったのが、楽曲のバラエティの豊かさでした。我々はつい“EDM”って一口に括っちゃいがちだけど、実際にはビートの種類もサウンドも、すごく豊富なんだなと気付かされました。

KSUKE:EDMって一つのジャンルではあるんですけど、すごく定義が難しいんですよね。僕はそのまま“エレクトリックなダンス・ミュージック”って捉えていて、そもそも色んなサウンドの幅がある音楽なんです。だから、バラエティの豊かなコンピレーションになるのは、すごい自然なことなんじゃないかなと思います。

 それと僕も含めて(クリエイターは)みんな本国のビルボード(チャート)を見ていて好きなので、どうしてもそこから影響を受けちゃう部分はあるんですけど、それでもやっぱり各国それぞれ、その地で育った文化が自分の中に入ってると思うんですよ。タイはタイで、韓国は韓国で、日本は日本で。それもバラエティの豊かさに繋がってるのかなと思います。

――KSUKEさんは日本のEDMの特徴はなんだと思いますか?

KSUKE:特徴が無いのが特徴かなと思います。もちろん昔からディスコとかクラブの文化はあったと思うんですけど、ダンス・ミュージックとかEDMは基本的には海外から輸入されたものだって僕は思っていて。どうしても日本独自の文化ではない。だから、そこで今、日本人がやらなきゃいけないのは、どうやって日本の文化を取り込むかを考えることなのかな、と海外に行って改めて思いました。もちろん、海外を意識しなきゃいけないってわけでもないと思うんですけど「これは日本人にしか作れないでしょ?」みたいなもの、例えば、「アニメ見てないとこんな発想ないでしょ?」とか「寿司食ってないとこの発想ないでしょ?」みたいなものが絶対あると思うんですよね。

 それこそ昔の日本の音楽――例えば尾崎豊とか、僕が小さい頃に父と母が聴いていたような音楽も、絶対に海外とは違うベクトルで進んでいるので。後は日本のアイドル文化も、すごいスペシャルですよね。それをEDMと合体することが、正解か不正解かはわからないですけど、そういうものがある日本というのを取り込むべきだと思います。そうやって特徴が出てきて、それをヨーロッパとかアメリカの最前線で活躍している人たちが認めてくれて「日本のEDMってかっこいいよね」って言われれば勝ちだと思うんです。今はまだその状態に至ってないので、頑張らなきゃなと思って、プロデュースを続けています。

NEXT PAGE
  1. < Prev
  2. ダンス・ミュージックとポップスが、お互いに影響し合っている
  3. Next >

ダンス・ミュージックとポップスが、お互いに影響し合っている

――KSUKEさんは、DJをはじめて5年ほどになると思いますが、その間にシーンの変化を感じたりはしますか?

KSUKE:それはありますね。もともと僕はテック・ハウスを掛けていたのでBPMが120から128あたりのものがダンス・ミュージックだと思い込んでたんです。テンポをキープして長時間かけて揺れているのが楽しいと思っていたんですけど、今は150だったり75だったり、“トランジション”という変則リズムのものもあったりして。でも、そういう斬新な曲も好きで、自分の曲もそういった要素を取り込んで音楽を作ってます。趣味が変わっているというよりも、視野が広がっている感じですね。

――変化を自然に楽しめているんですね。

KSUKE:そうですね。「いまは○○が流行ってる!」とかいう人がいるんですけど、僕はあんまりそういうことは考えなくていいと思っているんです。流行るっていうのは斬新だから流行るわけで、みんなが好きになっちゃうのも分かるんですけど、チャートだけを観て、いまの流行をわざわざ好きになる必要はないと思うし、それをDJでプレイする必要もないのかなと思います。

――なるほど。バランス感が重要、と。普段はよく米国のビルボード・チャートもチェックされているんですね。

KSUKE:はい。ビルボードは結構チェックしてます。ダンス・チャートよりHOT100の方がよく見ますね。

――最近チャートで気になった曲やアルバムはありますか?

KSUKE:ケイティ・ペリーの『ウィットネス』が良くて、最近けっこう聴いてますね。ケイティ・ペリーは正直これまであんまり興味なかったんですけど。今回のアルバムは路線が変わったというか、5年前に聴いてたケイティ・ペリーとは全然違うなって。ダンス・チューンなんだけど、エモーショナルな部分やシリアスな要素もあって良いなと思いました。


▲Katy Perry - Chained To The Rhythm (Official) ft. Skip Marley

――アルバムは少し風変わりなダンス・ポップという感じですよね。

KSUKE:そうですね。ケイティ・ペリーの曲も「どうやって作ってるんだろう?」と思ってシンセの音を集中して聴いたりすると、間違いなくダンス・ミュージックで使われてる音だったりしますね。でも、それがそのままクラブで流れるか、というとそれはまた別の話で、だからリミックスがあるんだと思うんですけど。

――ケイティ以外にも、チャートに入ってくる曲の中にダンス・ミュージックの影響を感じることは多いですか?

KSUKE:いまのチャートの上位に入ってくる曲は、ほとんどEDMの影響を受けてると思います。チェイン・スモーカーズの曲が3曲くらい入っていた時は、ホントにびっくりしました。あとはZEDDがいたり…でもZEDDは初期のZEDDとは違って、ポップ寄りになってますね。ダンス・ミュージックとポップスが、お互いに影響し合っているんだと思います。そうやって、いろんな新しい化学反応を起こしてるんですよね。

――KSUKEさん自身も、今後ダンス・ミュージックではない音楽のプロデュースに関わる可能性もあるんでしょうか?

KSUKE:それは全然あり得ると思います。シンガーの方のプロデュースとか、自然な流れでそうなることもあるのかなと。


▲The Chainsmokers - Closer (Lyric) ft. Halsey

――今後、バンコクにはどれくらい滞在する予定なんですか?

KSUKE: 明確には決まってないです。でも何かを達成するまでは居たいなと思ってます。

――地元の音楽シーンとも関わりを持って?

KSUKE:そうですね。今回のコンピに参加しているドーム(・パコールン・ラム)とかも友達だし。去年タイのフェスに出た時に、現地の友達が出来たんですけど、彼らが本当にみんな音楽をやっている人たちなんです。この間、ホームパーティーがあったんですけど、向こうはスペースがあるので、ドラム・キットやDJブースとかが置いてあって。最初は僕がドラムを軽く叩いて「こんな感じね」とかやってたんですけど、そこにドラムがもっと叩けるやつが来て。そしたらそこに居た楽器の弾けるやつとか、シンガーの子が歌い出して。安いスピーカーにキーボードとかを繋いで、自然とセッションが始まるみたいな感じで。ああいうのは初めてだったので、すごく感動しました。そのうち外から酔っぱらいとかも来て、ちょっとしたライブみたいな感じになっちゃって(笑)。

 それ以外にも、まだリリースは全然決まってないですけど、地元のミュージシャンと一緒に曲を作ったり、自分がDJでプレイしないかも知れないような曲も経験として作ったりしています。そういう繋がりの中から、一つでも二つでも形にして、世に出せれば良いなと思いますね。

KSUKEプレイリスト

 特集の終わりにKSUKEにセレクトして貰ったApple Musicプレイリストを公開。インタビューと合わせて、ぜひ楽しんで欲しい。

 僕の新曲”POOL”にちなんで、僕が普段ヘビロテしている中から特に夏に聴きたい楽曲を選びました。是非この夏のBGMにして下さい!(KSUKE)

(V.A.) ジェーン・チャン シルヴァーストライク ザ・デブッツ ジェシカ ヤンニーン・ワイゲル DJ Soda ディヴァイン「ビルボード・プレゼンツ・エレクトリック・アジア・ボリューム・ワン」

ビルボード・プレゼンツ・エレクトリック・アジア・ボリューム・ワン

2017/07/19 RELEASE
WPCR-17868 ¥ 2,178(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.ダスト・マイ・ショルダーズ・オフ (スティーヴ・アオキ・リミックス)
  2. 02.ドロップ・ミー・イン・ジ・エアー
  3. 03.ハウ・マッチ・アイ・ニード・ユー
  4. 04.ワンダーランド (パンチ・サウンド・リミックス)
  5. 05.レインドロップス
  6. 06.ステイ・スウィート
  7. 07.メア・ガリー・メイン
  8. 08.バス・ラニ
  9. 09.POOL feat.Meron Ryan
  10. 10.TOKYO STYLE
  11. 11.サテライツ
  12. 12.ウォント・ストップ・フォー・ナッシング
  13. 13.ファン
  14. 14.アッパー・シティ
  15. 15.T.O.K.Y.O.

関連商品

ACCESS RANKING

アクセスランキング

  1. 1

    <インタビュー>YUTA(NCT) ミニアルバム『Depth』に込めたソロアーティストとしての挑戦――「たくさんの経験があったから今がある」

  2. 2

    和楽器バンド、活休前最後のツアーが開幕 10年分の感謝をこめた渾身のステージ

  3. 3

    JO1、ワールドツアー開催を発表「ここから世界に羽ばたいていきます」

  4. 4

    <インタビュー>米津玄師 新曲「Azalea」で向き合った、恋愛における“距離”――「愛情」の源にある“剥き身の生”とは

  5. 5

    <ライブレポート>ano「次に会う時まで必ず生きて」――ツアー追加公演完走、音楽でたどり着いた“絶対聖域”

HOT IMAGES

注目の画像