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The MANJI(ROLLY×佐藤研二×高橋ロジャー和久)『TRIPLED』インタビュー



The MANJI(ROLLY×佐藤研二×高橋ロジャー和久)『TRIPLED』インタビュー

「ロックって何をやってもよかったんじゃなかろうか」

 ROLLY(すかんち)×佐藤研二(マルコシアス・バンプ)×高橋ロジャー和久(X-RAY)によるThe MANJI特集インタビュー敢行。血肉になっているロックンロールを自由に鳴らし、8年ぶりの作品『TRIPLED』でメジャーデビューという“マジ卍”な物語を歩む姿にバンドの理想形を見た。目標は【レディング・フェスティバル】で演奏して話題騒然! いろんな意味で規格外なThe MANJIのロックンロールに今こそ耳を傾けるのだ!

インタビュー参加メンバー:

ROLLY(g,vo/すかんち)
佐藤研二(b,vo/マルコシアス・バンプ)
高橋ロジャー和久(dr,vo/X-RAY)

最近のロックって自由度が少ない。それに対して「おかしいな」とずっと思っていて

--The MANJI、自分たちではどんなバンドだなと感じていますか?

「地獄の極楽」MV(アルバム『TRIPLED』より)
「地獄の極楽」MV(アルバム『TRIPLED』より)

ROLLY:僕が思うに……技と技のぶつかり合いというか、刀と刀がぶつかり合うようなスリリングさとポップさを持ち合わせた、現代の日本においては他にいない、独特な3人組なんじゃないかなと思います。まさに今作は“TRIPLED”な感じの居合い抜き感が完成されたような気がします。

高橋ロジャー和久:ワシが最初にこのバンドに呼ばれたときは、もちろん緊張もしたけど、遊び場に呼ばれたような感覚があって。「何やってもいいのかな?」みたいな。堅苦しい感じじゃなくて、本来の、音楽をやり始めたときの、「こんなんやりたい、あれもやりたい」みたいなものをどんどんやっちゃう感じ。格好付けてロックやってるんじゃなくて、「これがロックなんだ」みたいな押し付ける感じもなくて、「え! これ、おもろいやん!」みたいな。それが今でもずっと続いてると思う。そういう意味で、子供が遊んでいるような面白さがある。

ROLLY:ロジャーさんの言葉で思い出しましたけど、The MANJIに「ロックンロール中学生」という曲がありまして、このタイトルはなかなか上手くこのバンドのことを言い表している感じがしますね。

佐藤研二:今ふたりの話を聞きながら考えていたんですけど、案外マジメにやっているんですよ。今のロジャーさんの「何やってもいい」という話。色んなバンドで「ロックって何をやってもいいはずなのに、何もしないじゃん」というものは結構見てきたんですよ。自分もそういう中にいなきゃいけない場面はあったし、いろんな経験を3人それぞれにしているから、我々は「海千山千のジジイじゃないかよ」と思われるかもしれないんだけど(笑)、案外マジメというか純粋にやってる。「これがいいんでしょ? 分かる分かる。でもこんなのもう30年やってるけどね」とかじゃなくて、エイトビートで「あ、ワン!ツー!スリー!フォー! ドゥンベベドゥベベ♪」みたいなものを「格好良い」と結構本気で思ってる。そういう感覚で出来るのがこのバンドの凄く良いところで、「こんなに楽しくていいのかな?」みたいなものをまっしぐらに真正面からやってる。「バンドは楽しいからやるんじゃないの?」というところを履き違えないでやれるバンドなのかなとは思います。

--そういう感覚でバンドを継続できるって簡単なことではないですよね?

佐藤研二:僕はそう思いますね。何でも「いいよ、いいよ。それでやろう、やろう」と言えばそれで話は進んでいくけど、「それで本当に楽しいの?」と思うことってあるじゃないですか? でもだったら、何か納得できないことがある時は「ちょっと待て! それは違う。俺はそんなの納得しない」と言わなきゃいけないと思うし、僕はそういう風に言う。それによってライブ中に本気で「いぇい!」と叫べるか叫べないかが変わってくるんだけど、そこはこのバンドはちゃんと出来てる。でもなかなかそういうバンドをやるのはそんなに簡単ではないと思いますね。

--なんでそれがこの3人だと出来たんだと思いますか?

佐藤研二:それぞれのキャラクターの組み合わせだと思うんだけど、例えばROLLYがワンマンな人だったらこうはならないと思う。「おまえにモノを考えろとは言ってない。俺の言った通りにやれ!」という人だったらこうはならないです。気に入らなかったら「いや、ダメだ」と言わせてくれる。お互いに好き勝手言い合える。それは相手が聞いてくれるから成立する話で「あ、そう」となったらそれでおしまいだし、バンドはそれで解散ですから。そういう意味では、良い形で組み合ってやれているのかなとは思います。

--ROLLYさんはこうしたバンドを今組めていることには、どんな感慨を持たれていますか?

ROLLY:ステージで演奏している瞬間に「あぁ……幸せだな」と思う。それだけのスリルを感じることが出来るんですよね。このバンドはフリーの部分も結構あって、ライブでもレコーディングでもどんどん誰かが何か新しいネタを仕掛けてくるんですけど、全く想像していなかった出来事がそこで起きるんですよ。で、何かを仕掛けたときに誰も乗ってこなかったらトホホなんだけど、まさに中学生のごとくぐわぁ!って乗っかってきて、それがまるで太陽のように燃え盛る瞬間のスリリングさは……他では味わえないですね。

--最初からその自由度を求めていたバンドだったんですか? それとも気付いたら自然とそういうバンドになっていったんでしょうか?

ROLLY:最初からソレっぽさはあったけど、どんどん熟成されて、今はさらに激しくなってるんじゃないかな。

Deep Purple - Hush
Deep Purple - Hush

高橋ロジャー和久:最近のロックって自由度が結構少ないんですよ。それに対して「おかしいな」とずっと思っていて。60年代の頃、レッド・ツェッペリンとかディープ・パープルとか自由なところがいっぱいあったんですよ。でも何でかそれ以降はみんなカッチリカッチリやってて「こんなにハードロックって不自由な音楽やったんや」とよく思う。ワシらがやっていたジャパニーズメタルとかもがんじがらめでね、今振り返ると「ようやってたな、そういうの!」って(笑)。で、今のロックバンドもそういう感じになってるバンドが多いと思うんですよ。決められた通りにやる。ほんまはロックってどこか自由なところがあって、毎回ライブで「昨日はこんなんやった。今日はこんなんやった」ってなるのが楽しいのに……でもこのバンドはそれが自然と出来るから、ワシらはもちろん、お客さんもきっと楽しいと思う。ま、たまにハズレるときもあるけど。

一同:(笑)

高橋ロジャー和久:「あ、今日はちょっとハズしたな!」って。

--仰る通り、ロックは何を歌っても奏でてもいい自由なもの。というイメージがある一方で「こうじゃなきゃいけない」といった様式美に凝り固まっていった現実もあります。

ROLLY:歌詞の世界でも、昔の日本のロックグループは、外道、四人囃子、はっぴいえんど、フラワー・トラベリン・バンド……そのバンドならではの言い回しとか言葉の選び方があったけど、いつの間にかみんな同じようなことを歌うようになってしまった。The MANJIで歌われていることは……タイトルからしてヘンなのが多いんですけど、要するに「ロックって何をやってもよかったんじゃなかろうか」という原点に戻ってるんじゃないかと思うんですよ。愛とか勇気とか希望とか切なさとかそういうことじゃなくてね、僕が中学生のときに神社でカツアゲに遭ったことを歌うとか。でもそういう自由さはロックシーンを見渡すと少なくなってきてる気がしますよね。

高橋ロジャー和久:ワシが最初にバンド組んでオリジナル作ったときは、三十五と書いて「みそご」と読む名前の用務員のおっさんがいたんですけど、それをネタにして「さんじゅうご! タッタンタタン! さんじゅうご! ツクツクタン!」みたいなノリの歌詞だったんですよ(笑)。

--そのノリはThe MANJIの歌詞とも通ずるものがありますよね。The MANJIのメジャー初となる3枚目の新作スタジオアルバム『TRIPLED』聴かせてもらいましたが、2017年の作品でありながら70年代の名盤感が半端ないという、時空も歪む強烈なロックアルバムだと思いました。実際にはどんな作品を目指して制作されたものなんでしょう?

高橋ロジャー和久:小細工なしのロックアルバムですよ。

ROLLY:あと、今ってすごく作り込んだオケが多いじゃないですか。でも我々のレコーディングはほぼダビングなしで、生々しさというか、各人の演奏の隙間とかも含めたライブ感があるものを収録してると思う。

--なので、今の時代においては異端のロックアルバムですよね。

ROLLY:クレジットで他のミュージシャンの名前が一切載ってないからね。ピアノも佐藤さんが弾いたし、チェロも佐藤さんが弾いてるし、すべてこの3人でやっている。

佐藤研二:その異端と思えた部分ってどんなところ?

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  1. 格好良いと思っているものが未だにツェッペリンやパープルで、ヴァン・ヘイレンは新人(笑)
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格好良いと思っているものが未だにツェッペリンやパープルで、ヴァン・ヘイレンは新人(笑)

--今ってサブカル的なものだったり、変化球的なアプローチをみんなが目指した結果、それが逆にフォーマット化されてどれも同じに聴こえたり、気付いたら本来のロックだったり王道をやる人がマイノリティになってきている。その中においてロック本来の面白さや格好良さを追求しているアルバムという意味で、異端だなと思いました。

Led Zeppelin - Kashmir - Celebration Day
Led Zeppelin - Kashmir - Celebration Day

佐藤研二:なるほどね。逆転現象で異端になっていると。なので、そういう意味においても僕らはマジメにやってると思いますね。話の論点がちょっとズレちゃうかもしれないけど、自分たちとしてはシンプルにハードなロックアルバム、痛快に「いぇい!」と言えるものを目指していて。でもどうしてもいろんなことがやりたくなっちゃうから、ある程度照準は絞ってますけどね。で、ロックをやるにあたって、音符の記号まで拘ってカチカチに作るのも自由だし、一行の歌詞も書かずにレコーディングする人がいても自由だと思う。その中でThe MANJIはどうかというと、自分たちは「王道をやろう」なんて全然思ってなくて。いちばん格好良いと思っているものが未だにツェッペリンやパープルで、ヴァン・ヘイレンは新人の感覚だよっていう(笑)。だから若い人からしたら「おー、オールドロックやってるよ」っていう感じがするんだろうけど、僕らはいたって21世紀のつもりでやってる。

--なるほど。

佐藤研二:ただ、ProToolsなんて、昔だったら夢のような機材がある時代において「なんでみんなやり直しのことを気にして演奏してるんだろう?」と思ったりはする(笑)。だって、何だって直せるんだから、めちゃくちゃやって間違ったら直せばいいじゃない、っていう発想でいいはずなのに。間違えないように演奏するなんて21世紀の発想じゃないと思うな。だから僕らとしては異端というところを狙ってるんじゃなくて、真っ正直に思っていることをやってるだけ。それが今の時代感覚からするとちょっと異端になるのかもしれないんだけど、自分たちは「これが世の中の音楽のスタンダードだろ」と思うものを割と素直にやってる。

--ちなみに、今作『TRIPLED』は前作より8年ぶりとなります。これだけの時間を要した理由がありましたら聞かせてほしいのですが……

高橋ロジャー和久:お話を頂きました。

--「そろそろ出しませんか?」と。

一同:(笑)

ROLLY:前2作はインディーズレーベルからリリースしていて、そこから時間が空きまして、各人別々の活動をして参りましたが、毎年【卍納め】というワンマンライブを札幌で必ずやっていて、それ以外のライブもちょこちょこやりながら継続はしていたんですよ。そしたら今回キングレコードさんから「ニューアルバムをそろそろ出しませんか」という話があったので、ならば最高傑作を作ろうじゃないかと。

--それってなかなかないバンドストーリーですよね?

Boston - Don't Look Back
Boston - Don't Look Back

ROLLY:8年ぶりというのは、ボストンぐらいだね。

一同:(笑)

ROLLY:ボストンが1stアルバムから2ndアルバム『ドント・ルック・バック』を出すまで4年かかっていて、そこから『サード・ステージ』までが8年。だからボストンと同じぐらいの間隔ですよね。

--ただ、ボストンと違うのは、8年後の新作でメジャーデビュー。これは聞いたことがない。

高橋ロジャー和久:それは地道な努力の結果ですよ(笑)。

佐藤研二:まぁ結果的には8年ぶりになっちゃったんだけど、計画してやってる感じではなくて。これがこのバンドの体質というか、バランスの取り方というか、無理に「バンドの看板出してるなら新作つくろうよ。ライブやろうよ」とはならない。マネージャーが「そろそろ動きがないと……」とかそういう話ではやってなくて、良くも悪くもバンド主体でやってるからこうなるんだと思う。その中でリーダーシップを発揮する人がいて、みんなの意見を取りまとめられる人がいたらもっと早い段階でリリースしていたかもしれないけど、でもこれがこのバンドのバランスの在り方なんだと思うね。それで8年のあいだに解散することもなかったし、今ここに来て「やるか!」とお神輿が上がったんだから、そういう意味においても型にはまってないバンドと言えるんじゃないかな。

ROLLY:僕含めて各人The MANJIだけをやっている訳じゃないし、レコード会社から「The MANJIで年に2枚アルバムを出して下さい」と強制的に言われるような感じではなかった。でも各人みんなデビューした頃はそういう感じでね、2年で3枚ぐらいアルバムを出していて、出さなきゃいけないから作る感じではありましたから、それから比べるとThe MANJIは自然体でロックバンドをやれてるし、だからこそ8年間が凝縮された凄まじいアルバムを作ることが出来たのかなって思いますね。

--10周年タイミングですし、知らない人の為にもお伺いしたいのですが、The MANJIは元々どういった経緯で結成されたバンドだったんでしょうか?

Black Sabbath
Black Sabbath "Iron Man"

ROLLY:話は高校生ぐらいまで遡るんですけど、フラワー・トラベリン・バンドと外道に物凄く影響された僕は、3人組の猟奇納骨堂というバンドをやっていたんです。そこではブラック・サバスやフラワー・トラベリン・バンドみたいな怪奇なロックをやっていて。で、ちょっと話は飛びまして1990年。すかんちでメジャーデビューするんですが、そこで明るくポップなロックグループで活動してきた自分が「高校生のときにやっていた、おどろおどろしい猟奇納骨堂みたいなやつをもう1回トリオでギンギンにやりまくりたい」と思うようになりまして。で、渋谷の東急ハンズの前から佐藤さんに電話して「こういうのをやりたいんだ。参加してくれないか?」と言ったらその場でOKしてくれて、それがきっかけです。

佐藤研二:で、高橋ロジャー和久の加入からTHE 卍という屋号での活動がスタートしたんです。

ROLLY:そうですね。ある時ロジャーさんに叩いてもらうことになるんですけど、ロジャーさんの魅力にハマった僕と佐藤さんは「絶対にドラムはロジャーさんが良いよね」って、ロジャーさんと初めて会った帰りの新幹線の中で話したんです。

佐藤研二:このバンドは「高橋ロジャー和久以外ありえない!」ってね。

ROLLY:その瞬間が本格的なTHE 卍のはじまり。

--そんなThe MANJI(今作からTHE 卍改めThe MANJI)のお三方がそれぞれどんなメンバーだと思うか。皆さんで語って頂きたいのですが、まずROLLYさんはお二人から見てどんなミュージシャンだと思いますか?

高橋ロジャー和久:(ROLLYは)持っていきますね、やっぱり。そこはさすがですな。普段はわりと地味な感じやけど(笑)ステージ立つと凄いことになる。

佐藤研二:あと、すごく人間的。例えば、すごく生真面目な部分とすごくいい加減な部分が両方あって、その両方が目に見える形で出てきちゃう。それを上手くカバーできる人っているんですよ。打ち合わせとかで何も考えてこなくてもその場で「えっと、それはね。昨日思ったんだけど、こうなんだよね」って言えちゃう人もいる。なんですけど、この人は何も考えてこなかったら「考えてきませんでした」って顔になっちゃうの(笑)。そういう意味で彼は良くも悪くもすごく人間的。それが彼の魅力だと思ってる。だからつまんないときはつまんない顔するんですよ。爪の先ほども面白いと思ってないのに「いぇい!」って言える人もいるんですけど、俺はそっちのほうが本当にガッカリするんですよね。「イヤならイヤって言えよ、おまえ!」と思っちゃう。だから完璧であることが良いことじゃなくて、その人で在ることがいちばん良いと思うから、それはミュージシャンとしてもそうだし、人としてもそう。で、彼はとても素直だし、あまりに人間的だし、そういう意味でも魅力的。

--では、逆にROLLYさんから見た佐藤さんはどんなミュージシャン?

ROLLY:音楽の鬼!

一同:(笑)

ROLLY:あと、ベースの鬼だよね。いろんなベーシストがいるけど、確実に「ベースの鬼」と言えるミュージシャン。でも意外と、みんなが思っているほど音が大きくない!

佐藤研二:ハハハハハ!

ROLLY:イメージ的には、物凄い音量で弾いてると思うんだけど……意外と大きくないんですよ。

佐藤研二:今、握手したい気分だよ! 本当に!

ROLLY:で、意外なほど歌も聴いてる。このバンド全体に言えることなんですけど、歌を大切にする。そういうところはありますね。でも自他共に認めるベースの鬼。キックの鬼みたいなもんですよね。

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「こんな連中いるんだ?」って好きになってくれる高校生がいたら、僕は抱きしめてあげたい

--ロジャーさんから見た佐藤さんは?

高橋ロジャー和久:いや、鬼ですよ。

一同:(笑)

高橋ロジャー和久:あと、すごくみんなの音を聴いてる。ちょっと抜けるときもあるし、暴走するときもあるけど、そこがまたこのバンドの面白いところで、それについていったら何かが起きる。「天才と狂気は紙一重」みたいな言葉が最も当てはまる人だと思います。

--では、ロジャーさんはどんなミュージシャンだと思いますか?

Kiss - Detroit Rock City (Rocks Vegas)
Kiss - Detroit Rock City (Rocks Vegas)

ROLLY:とにかくドラムプレイが格好良いですね。そして作曲する曲のポテチン感が凄い。クセになる魅力なんです。「難聴」だったり、今回のアルバムで言えば「フィフティーショルダー」だったり、こんなことをドラマーが歌いながら叩くっていうのは他では全く有り得ないですね。ドラムの人がこの感じ。ロックの常識を超えた……ポテチン感。なのに、ドラムが物凄く格好良い! あと、我々は年齢が近いんですよ。中学にいたら僕が1年生で、佐藤さんが2年生で、ロジャーさんが3年生なんです。だから、KISSの武道館公演をNHKで観た話とか、音楽の原体験が非常に近い。そういう感じも含めてロックンロール中学生ですよね。

--佐藤さんから見たロジャーさんは?

佐藤研二:ドラマーとしては皆さんご存知の通り、ラウドでハードなロックドラムを絵に描いたような人なんですけど、すごく繊細なタイプのドラマー。むやみやたらに強く引っ叩けばラウドな音になるんじゃなくて、テクニックでラウドな音を鳴らしている訳なんだけど、とにかくこの人は感覚がセンシティヴ。その最たる例は、この人のドラムのチューニングがすごく良い。「スティック食っちゃうんじゃないか?」と思うぐらいの感じでドラムを叩いている人には思えない。

--なるほど(笑)。

佐藤研二:で、今回のアルバムの中でもスネアの音色が何種類かあるんだけど、そういう自分の手柄話を一切言わない。「次の曲、行きます」って言うと黙ってスネア変えて、チューニングしてる。俺だったら「次の曲はこのベース使っちゃおうかな?」って言っちゃうんだけど、この人は何も言わず、いつも決まりの良いものをちゃんと生み出す。1stアルバムのときの話だけど、あまりにチューニングが良くて、スネアの音がゲートかけてるんじゃないかと思うほど鳴りが良すぎて「少しデチューンしてくれ」って言ったの(笑)。そんな風に「チューニングが良すぎる」なんて思ったこと他にないんだけど、でもこの人のドラムの音はそれぐらい良い。あと、音楽的瞬発力が凄い。これは経験値なのか何なのか分からないんですけど……まぁ樋口宗孝さんに薫陶を受けた人ですからね、数多の奏法はその流れを汲むものがあるのかもしれないけど、今回のレコーディングでもね、ギリギリのところで走っていく箇所がいくつかあるんだけど、マスタリングのときに「ROLLY、あそこでロストしてるだろう? 俺もロストしかかってる」と話してて、これはどういうことかと言うと、ロジャーさんが落とさないように何とかしてるんですよ。アンサンブルを崖から落とさないようにすり合わせてる。そういうすごく見えにくい、譜面にしにくいようなところなんだけど、その腕は本当に凄い。

--そんな御三方によるThe MANJIの最新アルバム『TRIPLED』。今のロックファンやバンドファンにどんな風に響いたらいいなと思いますか?

The MANJI(ROLLY×佐藤研二×高橋ロジャー和久)『TRIPLED』インタビュー

ROLLY:子どもの頃、例えばアースシェイカーの「モア」を学生バンドがみんなコピーしていたみたいに、学園祭とかでThe MANJIの「来るのでっす」をみんなコピーしていたら凄まじい……というか、異常な学校になるよね(笑)。そうなったら日本はどうなってしまうんだろう? でもこれを聴いて「こんな連中いるんだ?」って好きになってくれる高校生がいたとしたら、僕は抱きしめてあげたいね。

--そしてコピーバンドを結成してもらうと。

ROLLY:そうですね。……でもよくよく考えたらコピー出来なさそうだな! このバンドって!

--技術的には厳しいでしょうね(笑)。

高橋ロジャー和久:でも歌ってて楽しそうやけどな。

ROLLY:観てみたいよね、The MANJIのコピーバンド。「ヘイユー」の途中のソロの部分とか、とてもじゃないけど高校生が「弾いてみよう」とはならないと思うんだけど……でも観てみたいね。

--佐藤さんはどう響いてほしいと思いますか?

佐藤研二:我々と同世代の人は「あー、知ってる知ってる」ってすごく共感してくれるテイストだったりするのかなと思うけど、若い人たちに対しては「こういう音楽っていうのは、こんな風にこんなところでこうやって生き延びてるんだよ」って知ってほしいかな。60年代後半~70年代のツェッペリンやパープルといった、僕らが子供の頃に「これが神様の音楽だ!」と拝みたくなるほど夢中で聴いていた音楽が染み付いた人間がやってる音楽。「こんなの、いまどきやってる奴いないでしょ?」と思ってるかもしれないけど、こんな風にこんなところでこうやって鳴らしてるんだよ。上手く言葉に出来ないんだけど、そういうアルバムだと思ってます。

--では、最後に。The MANJIの野望や目標がありましたら聞かせてください。

ROLLY:この地球上のどこかで誰かがたくさん聴いてくれて、その中にハリウッドのプロデューサーみたいな人がいて、途方もないハリウッド映画のテーマソングに使われたらおかしいよね。そして我々は【レディング・フェスティバル】で演奏する。僕は英語が喋れないので、MCは僕が日本語で喋ったのを英語が得意な佐藤さんに直訳してもらう。そして【レディング・フェスティバル】で話題騒然。「まままままんじ」

佐藤研二:その曲、レディングでやったら2番から全員歌うよ?

一同:(笑)

ROLLY:日本人の僕らの歌を世界の人たちが歌ってくれたら痛快じゃない?

--このバンド名も生きてきそうですよね。日本でも女子高生の流行語大賞1位は「卍」ですし。

一同:えぇっ!

ROLLY:そうなの?

--「マジ卍!」とか言うみたいです。

佐藤研二:でもそれって若い人たちの間だけでシェアされてるものだから、俺らが便乗して言い出しても「えぇ?」ってなるだけでしょ(笑)。

--でも「まままままんじ」のシンガロングを聴いたら間違いなく反応すると思いますよ?

高橋ロジャー和久:では、ぜひ女子高生にも聴いてもらいましょう。

Interviewer:平賀哲雄

「地獄の極楽」MV(アルバム『TRIPLED』より)

The MANJI「TRIPLED」

TRIPLED

2017/07/05 RELEASE
KICS-3499 ¥ 3,300(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.MANJIパワーMANJIドリンコ
  2. 02.地獄の極楽
  3. 03.Let’s get FUNKY
  4. 04.フィフティーショルダー
  5. 05.来るのでっす
  6. 06.おまえにほれた
  7. 07.恋の奇跡
  8. 08.ヘイユー
  9. 09.まままままんじ
  10. 10.ユミコとタクシー
  11. 11.Fly High☆Me

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