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HUSKING BEE 『Stay In Touch』インタビュー



HUSKING BEE 『Stay In Touch』 インタビュー

昨年、オリジナルメンバーの工藤哲也が再加入し、3人での活動が続いているHUSKING BEEが、前作以来、約半年というスパンで早くも新作『Stay In Touch』を完成させた。

MOROHAとのコラボやDuncan Redmonds(SNUFF)の参加をはじめ、様々なミュージシャンたちと織り成すサウンドを軸に、近年のライブに見る変化や今のハスキンが目指す先についてまで。磯部正文(g,vo)に訊いた。

「磯部はお客さんの一番後ろ、一番遠いところを目指して歌え! 」

HUSKING BEE 『Stay In Touch』 インタビュー?
磯部正文(HUSKING BEE)

--先日、MASS OF THE FERMENTING DREGSとの対バンライブを鑑賞させていただきました(取材日は6月中旬)。

磯部正文:ボーカルのなっちゃん(=宮本菜津子)曰く、ハスキンとの共演は初だったみたいですね。僕は以前MARS EURYTHMICSというバンドをやっている時とか弾き語りなどでも一緒に演ったりしているんですけど。

--現在のハスキンは昨年にテッキンさん(=工藤哲也 / b)が再加入し、平林一哉さん(g,vo)とオリジナルメンバー3名での活動となっていますが、以前のライブとの違いを感じる部分は?

磯部正文:ライブはその日その日で違いますし、暴れる人が何人かいればみんな巻き込まれるし、無理やりダイブしてる人がいたりとか(笑)。昨日は平日ということもあって仕事帰りの人たちも多かったと思うけど、珍しく平日だったからこそ来られた人も居ただろうし。終わった後に話したりしてると、「○○年ぶりに見に来ました!」みたいな人も最近は多いですね。

ただ、ライブとなると何人もの方が一堂に会してくれるし、初めて見る人もいると思うので、総合的に考えてはいますね。そういう中で、何にせよお客さんが“今日観に来てよかったな”って気持ちになるかどうか、それが自分としては強いこだわりというか。それは簡単なようで難しいことなので。

--約1時間半のステージで、若い頃に作った曲から最近の曲まで、変わらないパワーで歌い切る。これだけのキャリアを誇りながら、今なお強烈なエネルギーを感じさせるアクトに衝撃を覚えました。

磯部正文:たとえばサッカーだと本当にベストでできる年齢って、すごい方でも40歳くらいまでですよね。やっぱり若い頃の本当にベストなパフォーマンスを今やることは難しいだろうし、その中で何をするか。自分の身体と相談しながら、どこまでトレーニングするか、みたいなことでしょうし。
身体の衰えは如実に感じますし、抗えない中で、20年以上前に作った「WALK」をどうやるのよ?って。それは本当に毎回思うんですけど、実際に演り始めると“今日のベストでございます”みたいな感じでしかないというか(笑)。

もちろんランニングしたりとか、なるべく安心できる状態には持っていっているつもりですし、若い頃の“徹夜でも何だってできるぜ!”って身体ではなくなってくるんですけど、その分リラックスすることで力が出るところもあって。一時期、(奥田)民生さんの歌詞でそういう曲がたくさんあって“凄えな”って思ったんですけど、民生さんは僕よりも7つ上で先を行っている人で、いつも見習ってみようと思うんですよね。まぁ、手探りではありますし不安も常に持ち合わせていますけど、それは慢心していない証拠なのかなって。

--また、昨日のライブで気づいたのですが、歌っている時の磯部さんが上を向いていることが多かったと思いました。以前の磯部さんは、ギッと前を見据えていましたよね?

磯部正文:ハスキンを結成したばかりの頃は、パンクスの先輩で女性の方から「アンタはお客さんを見ながら歌うな!磯部はお客さんの一番後ろ、一番遠いところを目指して歌え!」って言われて「ハイッ!」って(笑) 。だからいつもライブハウスの一番奥にある非常口の緑色を見ていたんですけど(笑)、最近はやっぱり空が見えてるというか、ライブハウスでやってるんですけど野外でやってるイメージなんですよ。月が見えているイメージというか、月明かりのもとでやっている感じなんだよね。

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お釈迦様みたいなUKくんと、獣みたいなアフロくん

▲YouTube「HUSKING BEE「Re-By Chance feat. MOROHA」」
▲YouTube「HUSKING BEE「Re-By Chance feat. MOROHA」」

--また、今のファンが求めるのは、やはりかつての姿である部分も大きいと思いますか?

磯部正文:もちろん感じますし、お客さんと一緒の目線で考えること、求めてくださることに返す視点も大事なんですけど、ある種の裏切り。やっぱり開拓していかないと、目線を少しズラしてみたり視点を変えたりしないと、新しいものは見えてこない。一時期はそういうことで葛藤に近い感情もあったんですけど、最近は“そうであるからこそ以前作った曲も輝くのだ!”っていう自信になってきた。歌もうたいやすくなってきたんですよね。

さっきのアスリート的な話で考えると「キッツいなあ……」って思うんですけど(笑)、新しい曲が支えてくれている感じがするんですよね。「今なお新しい曲を作れているのだ」という自信は、サビを落としてくれる。2~3年前の方がきつかったかな。まだ、納得していないというか、新しいものを作る中でちゃんと仲良くできていない。古い曲に頼っているんじゃないかと思ったり、古い曲の方が盛り上がるジレンマを払拭できてなかったんだけど、今回作った曲とかは自信がありますね。

--そんな本作『Stay In Touch』には、MOROHAが参加した「Re-By Chance feat.MOROHA」が話題です。

磯部正文:MOROHAと何かやりたいねってなって、そういう場合、まずは呑みだべ、と(笑)。いきなりスタジオに入ってセッションでもできるとは思ったんだけど、正味な話、それならもっと突き詰める時間が欲しい。それも難しいだろうから、もっとポジティブに考えて既存曲にMOROHAが加わるなら何が良いか、って話になった時にアフロくんは「「欠けボタンの浜」でラップしたいっすね!」って。
でも、UKくんは僕と似てちょっとニヒルなところがあるでしょうから、「僕は無いと思います。はっきり言って誰もが期待できる、想像できるからです」って。「だとしたら「By Chance」っていう曲があるんだけど」って提案して聴かせてみたら、アフロくんは「いけそうッス、僕もうリリック出てきたッス!」(笑)。

--さすがですね(笑)。

磯部正文:英語詞の曲だけどMOROHAの世界観は壊さないというか、寄り添ってると思ったし、「By Chance」を作った当時の自分は非常にノッていたんですよ。最近は地に足を着けて“地球”って感じなんですけど、当時は“宇宙!”だったから(笑)。自分の中で理路整然としない散らばったものを整理して、面白い音にするイメージで作っていた。若くてノリにノッていた当時の気持ちが、今のMOROHAと混ざり合うだろうなって思って選んだんですよ。そこまでふたりに説明しなかったんですけど、たぶん伝わるだろうなって。

--ふたりの姿を見て、当時の自分と重なる部分はありましたか?

磯部正文:もちろん重なる部分はありましたけど、他の人には真似出来ない独自のスキルを持っていると思いますし、……特にUKくんのギターはジェイク・シマブクロさんを初めて見た時の衝撃に近かったというか、生で見たことはないけど押尾コータローさんをテレビで見た時と同じくらいの衝撃。そんなお釈迦様みたいな人と(笑)、獣みたいなアフロくん。がむしゃら感と優しさが共存しているような凄いふたり……の後に歌うわけですから、感化されたのか綺麗な声が出なくて。“あれ、ワシ出そうとしてないんかな?”と思いながらやってましたね。

--“四つの季節”という言葉をしっかり使っていたりと、アフロさんらしさも爆発していて見事でした。

磯部正文:気遣いの鬼!(笑) “摩訶不思議テーゼとか言っちゃっていいですか?”とか歌入れまでに何度か相談が来たんですけど、“だいじょうぶだよ、お好きにどうぞ”って。

--また、本作は1曲目「Stay in Close Touch」がインストだったのも意外でした。

磯部正文:自分としてはこうなったら良いなっていう希望。たとえば自分が好きなプロレス選手の入場曲になったら良いなって。そうなるとインストの方が可能性が広がるんじゃないか、と。すでにその選手には連絡取っていて、プロレスの選手にも色んな事情があると思うので使用できるかはわからないですけど、何にせよ作れたそういう曲を、SNUFFのDuncan Redmondsに叩いてもらえたっていうのがね。

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人を運べる、荷物も運ぶことができるし、大きなフェリーの牽引もできる

HUSKING BEE 『Stay In Touch』 インタビュー?
磯部正文(HUSKING BEE)

磯部正文: やっぱり長いこと続けているうちに関われなくなった方もいるし、それは何故なのかを考えることの方が心に残ったりする。でも、また連絡を取りたくなる人に実際連絡してみると、物事は非常に前に進むんですよね。やっぱり連絡取れないことばかりを引きずっていると、過去にもいけなくなるから、前に進むために連絡を取る。……みたいなことが今の自分には必要だったり、自然なことだったりするんだなあと、今回の作品を作っている時に何度も感じていて。 Duncanもダメ元で連絡したところから始まっているし、MOROHAもそう。今までがそうだったから、今でも連絡できる人にはちゃんと連絡を取って、っていう気持ちが今は強いですね。

--20年以上シーンの中心で活躍してきた磯部さんには、今の音楽シーンをどのように見えていますか。

磯部正文:まだネットがそこまでスピード化していない頃、新曲のデモなどをCD-Rに焼いて渡していたんですけど、その時から“こうやって焼けるっていうことは……?”って思い始めていたんですよ、“CDヤバくない?”って。そしてiPodが登場して、“あれ?全部タダになってくぜ……?”っていうのも、すでに10年以上前ですよね。

この先ずっと残るものっていう確信は無いし、新しいものが生まれて産業が生まれてビジネスになってと変化していくものなので、そこには廃れていくものの方が多い。でも、自分に立ち戻っていくと、言ってもまだ20数年なんだなーって。最近はたった20年っていう気持ちも出始めてきていて、不思議な感じですね。

音楽業界自体もビジネスとしてやっていくことが難しいと言われている状況ではありますけど、何かまた覆る時も来るだろうと思いますし、そこに人が集まったりする。たとえるなら海の波と一緒というか、自分たちはその海に浮かぶ船のようなイメージなのかな。大きな船だったりボートだったり、凄いスクリューが付いてたりとか、大きなバランスの中で色んな面白いバンドやアーティストがいて、それぞれに目的地へ向かっていく。この先どうなるのかな?っていう不安があった何年か前よりは、少し腹が座ってきたかな。

--今のHUSKING BEEが目指している目的地は?

磯部正文:ハッハッハ! どこなんだろうね? ……これは僕だけの考えかもしれませんが、一時期は本当に太平洋を横断するぞ!みたいな、嵐に遭おうが初めての経験の中で自分たちの力で……みたいなものがあったと思います。でも、今の感じだと、自分たちだけじゃなく人を運べる、荷物も運ぶことができるし、大きなフェリーの牽引もできる。そういうイメージの方が近いかな。

--MASS OF THE FERMENTING DREGSとの対バンやMOROHAとのコラボがそれに当たる?

磯部正文:そうそうそう。昨日はまさに“良いバンドいるからご紹介します”だったし、お互いがそう思っているというか、昔からある対バン形式のイベントならではですよね。昔はよく打ち上げとかで「ハスキンのCDのブックレットに乗ってるスペシャルサンクスのバンドは絶対に良いバンドだから、絶対に聴くっていう文化あったよね!」なんて言ってくれる人も多かったりとか(笑)。あのマインドは今も忘れてないですね。

--『Stay In Touch』 のラストに収録された「Ring Sizer」は、英語詞に日高央さんがクレジットされています。また、「Stay in Close Touch」にはキーボードの音も入っていますよね?

磯部正文:the chef cooks meのシモリョウ(=下村亮介)ですね。

--今までの人たちもしっかり参加していて、新しいトピックもある。という点が素晴らしいと思います。

磯部正文:新しい音楽を作る上で気軽に声をかけられるお友達というか、先輩後輩関わらず音楽を楽しんでいる人とは接していきたいと思っているので。HUSKING BEEだけでことを起こす、解決するのも、ある面で見たら良いという声があるかもしれないですけど、色んな人を巻き込む、関わっていくのもHUSKING BEEだし、そもそもが“トウモロコシの皮むき”の集まりですから(笑)。

Music Video
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HUSKING BEE「Stay In Touch」

Stay In Touch

2017/07/05 RELEASE
CRCP-40519 ¥ 1,834(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.Stay in Close Touch
  2. 02.Re-By Chance feat.MOROHA
  3. 03.Singin’ in the Rain
  4. 04.Skyscraper
  5. 05.Ring Sizer

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