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シェネル アルバム『Destiny』インタビュー
大好評のうちに幕を閉じたTBS系 金曜ドラマ『リバース』主題歌「Destiny」が大ヒット中のシェネルが、同タイトルを冠したニューアルバム『Destiny』を6月14日にリリースした。
自ら“ハイブリット”と評するアグレッシブなサウンドが耳を惹く作品になった理由から、日本と世界の音楽シーンの違い、本作で実現したMINMIとのコラボや10年を迎えた活動について振り返ってもらった。
何か新しいことをしたいと思っていた
--春からスタートしたドラマ『リバース』主題歌の「Destiny」が大ヒット。デビュー10週年を飾るに相応しい華々しいスタートとなりました。本作は、これまでよりチャレンジ性の高いサウンドが特徴だと思うのですが、こうした楽曲が広く支持されたことをどう受け止めていますか。
▲YouTube「シェネル - Destiny 発売中!【TBS系 金曜ドラマ『リバース』主題歌】6/14 New Album 発売」
--シリアスなストリングスから始まるトラックは、近年LAのダンスやヒップホップの匂いも感じさせますが、よりクラシカルなルーツも感じさせる重厚なサウンドで、音楽ファンも楽しめる作風だと思います。こうしたアグレッシブなアプローチを、デビュー10週年というアニバーサリーにトライした理由はありますか。
シェネル:まずドラマの主題歌を歌う機会に恵まれたことですね。当然その楽曲はドラマの内容に合ったものでなくてはいけないですから。ただ、この曲を構成する要素はドラマにまつわるものではあるんですけど、同時に制作していたアルバム『Destiny』で私が求めていたこれまでの作品と違う新しい音楽性やサウンドと、ピッタリあてはまったんです。それはまさに偶然でしたね。だからこのアルバムリリースのイントロダクションとして、アートワークを含めて新しい音楽性を皆さんに知っていただく良いきっかけになったと思います。それはまさに“運命”だったのではないでしょうか(笑)。
--確かに今回のニューアルバム『Destiny』は、日本での活動を主に見ていた人からすれば、サプライズに満ちた作品だと思います。ご自身では本作を“ハイブリッド”と表現しているそうですね。
シェネル:日本で前作『シェネル・ワールド』をリリースしてから2年ほどオフを取っていたんですが、その間は次のリリースなども決めていなくて、新しい方向性を探りたいという気持ちが強くあったんです。「ビリーヴ」や「Happiness」など、それまで日本で築き上げてきたイメージやJ-POPといったところから、少し距離を置いた新しい音楽性を模索したい。そういう気持ちで音楽制作を行っていたところ、ユニバーサルミュージックがそのサウンドに興味を持ってくれたんです。さらに、ドラマ『リバース』主題歌のお話も舞い込んでくる中で、日本で制作してきた音楽とこの2年間で模索してきた音楽が溶け合うような楽曲が作り出せたら面白いんじゃないか。そう考えて腑に落ちた部分があったんです。そこで、この“ハイブリット”という表現になった。本作には今の私の気持ちを強く込められましたし、非常に気に入っていますね。
--アルバムの2曲目「Heartburn」には、有名プロデューサー キース・ハリスが参加しています。
シェネル:キース・ハリスは日本でも有名人なのね! ブラック・アイド・ピーズやファーギー、最近では『ラ・ラ・ランド』にも携わっている最高のプロデューサーよね。--同曲は太いビートと、シンプルなサウンドレイヤーが特徴的ですが、LAに住み海外でも活動するシェネルさんにとっては、より自然体に近いサウンドだとも思います。
シェネル:そうですね。また、この曲を日本語で歌えたということにも喜びを感じました。これをきっかけに、例えば日本のクリエイターやアーティスト、リスナーも含めて、アメリカのサウンドと日本語の歌詞を組み合わせた楽曲の面白さに気付いて注目してもらって、浸透していって新しいトレンドになったらすごく面白いんじゃないかなって!- 聴けば聴くほど面白いものの方が、実は長く人の心に残る
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Interviewer&Photo:杉岡祐樹
聴けば聴くほど面白いものの方が、実は長く人の心に残る
--一方、3曲目の「Fun」のようにアーバンなポップスは、日本でも近年流行を見せています。シェネルさんは今の日本の音楽シーンをどのようにご覧になっていますか。
▲YouTube「シェネル『Destiny』6/14発売アルバムダイジェスト【TBS系 金曜ドラマ『リバース』主題歌収録!】」
私は、もっとお互い影響し合えたら良いんじゃないかと思います。西洋で流行っているサウンドを日本でも瞬時に取り入れてワッと盛り上がったり、逆に日本で流行っているサウンドが他国で盛り上がったり、双方で影響しあえることが起これば凄く良いのに……ってね。
--トップシーンのポップスはまだ保守的なサウンドが中心になっている日本が、世界と違う一番の要因はどこにあると思いますか。
シェネル:新しいもの、クリエイティブなものを生み出すようなリスクを冒すといったことは、やはり日本よりも海外の方が多く目の当たりにすると思います。日本の音楽は新しいもの、というよりも聴き手の需要に忠実すぎると感じることはありますね。“売りたい”と思うことは日本に限ったことではないのですが、リスクを冒す選択をすることが少ない。ただ、その反面、日本はすでにクリエイトされたものを取り入れて、より面白いものにすることに長けていると思います。--今作『Destiny』は、シェネルさんが日本のリスナーへ”こんな音楽もあるんだよ”と提示している作風だと思うのですが、ご自身ではそういった意識はあったりするのでしょうか?
シェネル:そう言ってもらえるのは嬉しいですね。けれど、その提示もリスナーに拒絶されないよう、やりすぎず、「聴いていて、これは?って思う何かがある。もっと聴いてみようって思う何かがある。」っていう違和感を抱かせられたらな、と思って制作しました。聴けば聴くほど面白いものの方が、実は長く人の心に残るものだと思っているので。確かにアメリカやヨーロッパも同じようなサウンドの音楽が氾濫していますが、その中からブルーノ・マーズのようなアーティストが突出してくるんですよ。あえてオールド・スクールな音楽を、彼ならではの解釈で発信していく。 アデルに関してもそうで、昔ながらの失恋がテーマであっても、今ならではのメロディや楽器やサウンドと組み合わせることで、現代人に新しさを感じさせて胸を掴んだ。そういったアーティストたちが“リスクを冒して新しいもの、自分らしいものをしっかり出していく”ことの例だと思うし、結果的に大ヒットを生んでいる。カントリー・ミュージックをポップに仕上げていったテイラー・スウィフトだってそうだし、少し前では考えられなかったことをやっている彼らは本当にすごいと思います。
--そのようなことをシェネルさんも日本でやってみたい気持ちはありますか?
シェネル:そうありたいとは思いますが、結果が出るまでにはなかなか時間がかかりそうね。でも、やはり自分の意志としては新しいものを出して、日本のリスナーにもインパクトを与えていきたいです。--「Destiny」はそれが成立しているようにも思います。ドラマ主題歌としてお茶の間で流れる楽曲でありながら、日本人には耳馴染みの薄いサウンドで、そしてメロディは日本人の心に響くものになっている。それは今のシェネルさんだからこそだと感じるのですが。
シェネル:そう思っていただけているのであれば、それはうまくいったのかもしれないわね。リリース情報
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Interviewer&Photo:杉岡祐樹
抱いていた夢やゴールは、思い描いていたカタチではないかもしれない
--また、「Out Love feat. MINMI」では、日本を代表するレゲエ・シンガーのMINMIと共演。今年の2月に15週年を迎えたMINMIに対し、“いつか一緒にお仕事したいですね!あなたとワールドワイドなスマッシュヒットを作れたら最高!”とコメントを送っていましたが、早くも実現する形になりました。
シェネル:「Outta Love」のメロディを手掛けているときに、“この曲はMINMIさんに合うんじゃないかな”って思ったんです。彼女はレゲエ、カリブのリズムやビートを取り入れていますし、すごく才能のある方ですよね。私は彼女の「シャナナ」が大好きでカバーさせてもらったこともあったことから、“誰がゲストに歌ってほしい”となったときに自然とMINMIさんを思いつきました。--「君がいれば」以降は、大バラードが続きます。「ビリーヴ」「Happiness」など多くの名バラードを持つシェネルさんですが、今まで以上のエネルギーを感じさせるパワフルな歌声に驚きました。ご自身で感じる一番の成長や変化は?
シェネル:特にここ5年ですね。色々なことに挑戦してきて、“私は実際どういう人間で、どんなアーティストになりたいのか?”って、自分の好きなものとそうじゃないものがよりわかってきたの。これからも変わり続けていきますし、探求し続けていくことなんですけど、より素の自分で心から歌えるもの、自然に歌えるものがだんだんわかってきたんだと思います。これまで自分があえてフタをしていたものは何だったのかに気付けるようになり、今では“もっと見せられるな”っていうところも発見できました。それにボーカリストとしての力強さも増してきたと思います。何年もの間ずっと歌を歌ってきて、現場を重ねてきて、シンガーとしてのパワーはついてきましたし、肉体面も鍛えてきたから。あと、結婚して4年になるんですけど、その中で伝えたいと思う物語も増えました。自分が作りたいと思う音楽を追求して、リスクを冒したり自分の主張を通すことが、前よりも怖がらずにできるようになったと思います。
--最後の1曲「終わらないラブソング ~Like A Love Song」は、10週年の締めくくりといっても過言ではない、壮大なスケールのバラードです。ラブソング・プリンセスの異名を持つシェネルさんのこれまでを総括するような楽曲だと思うのですが、この10年はどのような日々だったと思いますか。
シェネル:自分が抱いていた夢やゴールというのは、必ずしも思い描いていたカタチではないかもしれないけど、絶対たどり着けるものなんだということを実感しています。幼いころから“歌手になりたい!歌いたい!”という夢を持ってけれど、まさか自分が日本でこうやって活動しているなんて、当時は全然想像できなかった。でも自分が大好きな歌が歌えて、しかもプロとして愛してやまないファンの前で歌を歌えているので、夢は叶えている。自分が思い描いた通りのカタチではなかったものの、それはすごく嬉しいと感じているわ。
--本作の攻撃的なアプローチは非常に楽しかっただけに、次の作品やこれからの活動もすごく楽しみになりました。今後の活動は?
シェネル:よくぞ聞いてくれました! 実はもう1枚、新しいアルバムが完成しているんです! それは全世界でリリースされる作品で、全編英語詞のインターナショナル・アルバムになっているので、日本の皆さんには今作『Destiny』でしっかりウォーミング・アップをしていただいて、もう1枚も楽しみにしていてほしいですね。--今回のインタビューは以上になります。ありがとうございました!
シェネル:アリガトウ! 本当にしっかりアルバムを全部聴いていただいて、ありがとうございます。リリース情報
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