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タワー・オブ・パワー 来日直前インタビュー
世界最高峰のファンク・バンドとして活動を続ける、 タワー・オブ・パワーが、いよいよ今月5月に来日公演を行う。その公演を記念して、TOPの結成メンバーの一人で、1968年の結成以来、一度も途切れることなく活動を続けてきた彼らを見守るエミリオ・カスティーヨにインタビュー。来年リリース予定の活動50周年アルバムのことや、日本人アーティストとの仕事を含む過去にTOPが参加したセッションの話など、幅広い質問に答えてもらった。
“世界最長のファンク・バンド”として50周年に向けて
――来日公演楽しみにしております。早速ですが、多くのファンが心配している、デヴィッド・ガリバルディとマーク・ヴァン・ワォーゲンヒゲンの回復具合について教えてください。
エミリオ:二人とも順調に回復に向かっているよ。ただ完全復帰まで時間がかかりそうだね。デヴィッドは目の手術を二回行う必要があって、もしかしたら、更にもう一回追加になるかもしれないから11月まで戻らない予定。マークは自宅安静をしていて、そのうち良くなると思うよ。
――来年には結成50周年を迎えるTOPですが、ここまで活動を続けて来られたインスピレーションは何なのでしょうか?
エミリオ:それはいたってシンプルだね。音楽と友情、そしてファンのおかげさ。でも一番は、これまでの活動を全て可能にしてくれた神を強く信じてきたおかげかな。
――活動を続ける中で、ロール・モデルとなったバンドやミュージシャンがいたら教えてください。例えば、ジェームス・ブラウンはどうだったでしょうか?
エミリオ:僕はシンガー、ソングライター、そしてエンターテイナーに影響を受けている。ジェームス・ブラウンももちろんその内の一人だけど、他にももっといるんだ。シンガーで言えば、グラディス・ナイト、ディオンヌ・ワーウィック、ロナルド・アイズレー、フィリップ・ウィン、そしてジョニー・テイラーから胸を熱くさせる情熱を学んだ。バート・バカラックやゴフィン&キング、モータウンやブリル・ビルディングで活躍したソングライターからは、その歌詞に含まれたストーリー、巧みな言葉の技、そして一流のソングライティング技術の面でインスパイアを受けたよ。エンターテイナーで言ったら、ジェームスはもちろん、プリンス、スライ・ストーン、ロジャー・コリンズ達がステージ上で繰り広げるエキサイティングなパフォーマンスに衝撃を受けたな。今ここで挙げたアーティスト達は、ほんの一部だよ。
Johnnie Taylor - Rome Wasn't Built In A Day (Live)
――TOPは地球上で最も成功を保っているファンク・バンドの一つだと思いますが、その中でも、一つだけハイライトを一つ上げるとしたら、どの場面を選びますか?
エミリオ:これまでもハイライトと呼べるシーンはいくつもあったけど、一番はまだまだこれからかな。でも、40周年の時は最高に素晴らしかった出来事の一つだね。
――逆に、困難な場面はどうでしょうか? バンドの岐路になったような場面があれば、それをどう乗り越えたかも含めて教えて下さい。
エミリオ:バンド史上最悪の時代は70年代後半~80年代初期だろうね、私達がたくさんのドラッグ問題を抱えていた時期だ。この時期はちょうど低迷していた頃でもあったね。でも、そこから這い上がれたのは、神が私達に捧げてくれたものは天の恵みであると学んだから。それからはきちんとした生活を送り始めて、事態が好転し始めたんだよ。
――ただでさえ、バンド運営は大変なのに、大所帯のバンドをまとめ上げるのは並大抵の難しさではないと思います。あなたの考える、リーダーとして必要な資質があれば教えてください。
エミリオ:忍耐力、我慢、そしてたくさんの祈りの力がリーダーには必要だと思うよ。幸運にも神はその能力を私に与えてくれた。いつも言うのは“神がおやりになった。私はただそこにいただけだよ”ということだね。それに加えて特に重要なのは、バンドメンバーはしっかりと選ぶ力かな。
――来年、50周年を記念したアルバムが出るということですが、進み具合はいかがでしょうか?
エミリオ:16曲はミックスが済んでいて、残り12曲はこれからというところ。最終的に13曲をCDに収録する予定だ。外れた楽曲は将来、別の作品として発表されるかも。今作のレコーディングは私の見果てぬ夢をはるかに超える経験で、ジョー・ヴァネリと共同プロデュースを務めることができてラッキーだったよ。
――28曲をレコーディングした後にベストな13曲を選ぶ、というのはチャレンジングな方法だと思いますが、そうした道を選んだのはなぜでしょうか? また、アルバムにはゲストは参加しますか?
エミリオ:マイケル・ジャクソンの“必要以上にレコーディングして、その中から12曲ピックアップする”というワザを真似したんだ。ベストな作品を実現させたかったんだよ。ゲストはまだ考えているとこだね。
日本人ミュージシャンとのセッション/今回の来日ついて
――TOP、TOPホーンズはセッション・プレイヤーとしても数多くの作品に参加され、日本人アーティストの作品にもいくつか参加されてます。以下の曲はそれぞれTOPの参加曲として日本で有名な作品なのですが、それぞれ覚えていますか? もしよければ、今聴き返した時の感想を教えてください。
まずはかまやつひろし「ゴロワーズを吸ったことがあるかい」(1974年)はいかがですか?
エミリオ:TOPらしいサウンドが生きているね。僕らがやったセッションに間違いないよ。
かまやつひろし「ゴロワーズを吸ったことがあるかい」(1974)
――RCサクセション「ファンからの贈り物」(1974年)はどうでしょうか?
エミリオ:この曲とセッションのことはよく覚えているよ。最初にホーンのリックを聴いた時に僕らの「オークランド・ストローク」に似てるなって思ったんだ。当時はそれが少し気になってたんだけど、今は気にしてないし、作品としてもすごく良いなと感じるね。
RCサクセション「ファンからの贈り物」(1974)
――続いて、朱里エイコの「愛のめざめ(I'm Not A Little Girl Anymore)」(1975年)はどうでしょうか?
エミリオ:この曲はずっと僕のフェイバリットの一曲だね。歌もプロダクションも最高だよ。
朱里エイコの「愛のめざめ(I'm Not A Little Girl Anymore)」(1975年)
――その他、日本人アーティストに限らず、特に印象に残っているセッションや作品があれば教えてください。
エミリオ:リトル・フィートとのセッションはどれも素晴らしいものだった。特にライヴ・アルバム『ウェイティング・フォー・コロンブス』は最高だったね。あとは、ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースとのセッションも。音楽的な方向性で意見が見事に合致したんだ。リンダ・ロンシュタットとアーロン・ネヴィルの「ホエン・サムシング・イズ・ロング・ウィズ・マイ・ベイビー」も印象的だね。
――最近の音楽シーンについてはどのように感じますか? かつてと比べるとコンピューターで作られた音楽が増えたように思いますが、物足りなさなどは感じますか?
エミリオ:私は、良い音楽も誕生すれば、くだらない音楽も生まれるものだと思っている。それでも若い人たちは良いものを見極めるさ。コンピューターで何でもできるこの時代、ミュージシャンにとっては素晴らしい音楽を手掛けられる時代になった。しかし、それもミュージシャン達がそのテクノロジーを使いこなすまで。テクノロジーに私達ミュージシャンが支配されてしまっては終わりだと思う。
――方で、TOPは多くの若いミュージシャンにとってリスペクトの対象です。あなたたちから見て、見所があると感じる若手はいますか?
エミリオ:トリー・ケリーとダンプスタファンクには才能を感じるよ。
――今回の来日公演はどのようなものになる予定でしょうか? 今までと特に違うところがあったら教えてください。
エミリオ:夜ごとに内容を変えているから確かなことは言えないんだ、ただひとつだけ言えるのは、エキサイティングでソウルフルなショーが待っているということだよ!
――今回公演を行うビルボードライブへは、どんな印象を持っていますか?
エミリオ:前回のビルボードライブでの公演は凄く楽しかったね。オーディエンスのノリも良かったし、演奏や会場のサウンドもすごく良かったね。今回の公演も楽しみだよ。
――最後に、公演を楽しみにしているファンへメッセージをお願いします。
エミリオ:世界で一番の日本のファンへ、また日本でライヴができることを、我々TOPはすごく楽しみにしているよ。日本でのライヴは、常に私達の大切なイベントだ。いつもありがとう!