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Anly 1stアルバム『anly one』インタビュー
沖縄の離島で人口わずか4000人の伊江島に生まれ育った天然素材にして、2015年に18歳でメジャーデビューを果たした新星シンガーソングライター Anlyが、4月26日に1stアルバム『anly one』をリリースする。
父の影響で幼少期よりブルースやロックの音楽を好んで聴き、高校進学で転居した沖縄本島にて弾き語りをスタート。卒業後、まもなく関西テレビ・フジテレビ系火10ドラマ『サイレーン刑事×彼女×完全悪女』主題歌でメジャーデビューと鮮烈なスタートを切った彼女が、初めてのアルバム作品で何を歌いたかったのか。
また、ポール・マッカートニー、クラプトン、エド・シーラン、ハートなどなど。楽器やサウンドへのこだわりも含めて、音楽愛に溢れた初々しい言葉の数々を、ぜひともともご堪能いただきたい。
伊江島から出てきただけで変わったところはいっぱいあった
▲YouTube「Anly 『太陽に笑え』Music Video」
--中学まで過ごした沖縄の伊江島は、人口約4,000人の小さな島とのことですが、現在の都内での生活とは全然違いますよね?
Anly:音の量が違いますね。伊江島はとっても静かで、牛の鳴き声とトラクターの音くらいしか聴こえないんですけど、東京では救急車や広告トラックの音が絶え間なく聴こえるし、音の刺激がすごいなあ……って。その影響は曲作りにも出ていて、メロディからできる曲が多くなったり、使っている言葉も鋭くなったり。狙いを定めているようなシャキッとした音が多いですし、歌詞もそういう質感になったりと、場所によって私の中のフィルターは変わるんだろうなって。--アルバムの1曲目に収録されている「太陽に笑え」は、2015年にメジャーデビューを飾った楽曲ですが、“歩け 歩け 負け続けても”や“泣いて 泣いて 喜べる日はまだ”など、18歳のデビュー曲とは思えない言葉が並んでいたのが印象的でした。
Anly:沖縄本島に居たころ作った曲なんですけど、きっかけは夏に国際通りというまっすぐな道でストリートライブをしていたときで。目のまん前に太陽があるくらいの時間帯で、とても暑い日だったんですけど、それでも立ち止まって聴いてくれる人がいた。私は歌いたいからここにいるけど、この人たちは私の歌を聴くだけのために時間を費やして、汗水を流しながら聴いてくれている……。 そう気づいた時に、自分が暑いと思っていたことが悪いなって思ったんです。こうやって立ち止まってくれる人がいるんだったら、もっと感謝して、歌える歓びを感じて歌い続けたいって。だからそういう言葉が出てきたんだと思います。--てっきり上京した当時のことを歌っているんだと思っていました。
Anly:希望の中にも不安は共存していて、伊江島から出てきただけでも変わってしまったところはいっぱいあったんです、訛りが無くなったりとか。当時は思わなかったであろう感情とかも生まれてきて、それは成長と捉えるべきなのか……とか、色々葛藤していた気持ちも入っているので、そう聴こえるのもかもしれないですね。歌というのは、作った時は当てはまらなかったとしても、いつか自分と合わさるからこそ作るもの、生まれてくるものなのかなって。それは高校生のころから思っていたんですけど、当時は自分自身でも意味がわからない曲ができることも多かったんです。でも、それが今になってズシリと来るときがあって、まるでメッセージボトルのように、その時がくるまで漂っていて、やっと私にたどり着いてくれた。高校生の自分からのメッセージを受け取ったような気持ちになれるので、そういう曲作りも大切にしたいと思っています。
楽器を弾くのも楽しいけど、私はやっぱり歌いたい
--中学生のころから曲作りを始めたそうですが、当時の目的は?
Anly:ただ歌いたい、っていう漠然とした目的で、自分自身の感情を満たすためだけにメロディや詞を書き溜めていました。そして高校に進学してマーチング・バンドでトロンボーンをやるようになるんですけど、“楽器を弾くのも楽しいけど、私はやっぱり歌いたいな”って。--以前ライブで、ひとりでステージに立って、ループペダルを駆使しながらエド・シーラン「ドント」のカバーと、オリジナル曲「Coffee」をパフォーマンスする一幕がありました。今では珍しいアプローチではないですが、簡単な手法ではないだけに驚かされました。
Anly:ループペダルを使った演奏は一か八かでもあって、それが良い方に働くか悪い方に働くか、ずーっと戦ってます。できたときの達成感は普通のライブでは味わえないものなので、そういうものに出会えたことが嬉しいです。そのきっかけはやっぱりエド・シーランで、いずれは彼のやっていることを進化させることができるミュージシャンになれたらと思っています。--普段聴く音楽も洋楽が多い?
Anly:ほぼ洋楽ですね。日本のバンドも聴きますけど、憧れる音作りについても海外の音楽を聴きながら“アコギのレコーディングって、どうやったらこういう音になるんだろう?”ってずーっと考えてます(笑)。--“空気の問題かな?”とか。
Anly:そうそう!“あっちは空気が乾燥してるからかな!?”とか、ドラムの音の違いとか、思うところはたくさんあります!--今回のアルバムでは、終盤にロックのダイナミズムを感じさせる楽曲が多く収録されていますが、確かに音はこだわっていますよね。
Anly:ドラムの音でずっと“う~ん……”って唸っていて、時間がどんどんすぎてしまうこともあったんですけど、アレンジャーの皆さんはちゃんと向き合ってくださるので、本当に感謝しています。リリース情報
anly one
- 2017/04/26 RELEASE
- 初回生産限定盤[SRCL-9379/80(CD+DVD)]
- 定価:3,240円(tax in.)
- 詳細・購入はこちらから>>
- 通常盤の詳細・購入はこちらから>>
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Interviewer & Photo:杉岡祐樹
ロックっていうイメージがあると思うけど、実はこういう一面も……
--ギタープレイヤーとして、Anlyさんが出したい音というのは
Anly:私はやっぱりアコギが好きで、“ノイズさえも良い”みたいな録り方をしたいんですけど、私にはまだそれを心から受け入れられる技術が無い。ただ、アコギの音がよく聴こえるように作りたかったので、『anly one』に入っている曲はすごく前に出してもらったんですよ、“もうちょっとだけお願いします!”って(笑)。今後はドラムとアコギだけとか、シンプルなものもやってみたいです。その方が声も聴こえてくると思っているので。--ライブで、ピンクのテレキャスやサンバーストのレスポールを弾いているAnlyさんもかっこよかったですよ
Anly:わあ、嬉しいです! 実は昨日もエレキを触っていて、“エレキもがんばろう!”って思ってました(笑)。エレキを持った時の重さが好きで、何か良いんですよ!--アルバム収録のM-10「レモンティー」は、アコギのアルペジオが綺麗に録音されている楽曲ですよね。
Anly:これは……苦労しました(笑)。この曲だけ、ドラムもベースもエレキも全部自分で演奏しているんです。レコーディングは大変だったんですけど、その分、各楽器が持っている性質や、いる意味をやっとわかった楽曲ですね。新しいものに触れると活性化するなって。それに宅録感も出したくて、“ポール・マッカートニーが初めて出したソロアルバム『マッカートニー』の雰囲気を出したいんです”ってアレンジャーの河野圭さんに相談したら、“じゃあ自分で全部やってみれば?”って(笑)。今後もアルバムを出すごとに、1曲は全部自分で演奏するのを続けたいなって思ってます。
--今回のアルバムに新録された楽曲としては、M-05「サナギ」やM-06「傘」もそうですよね。
Anly:はい。どちらも高校生のころにちょいちょい歌っていた曲なんですけど、私が思い描いている形で発表するのはこれが初めてです。シングルで出した曲は壮大なテーマで書いていることが多かったので、アルバム曲では女子トークをしているような、意外と素が出る曲を多くしたいと思って。 ロックだけじゃなくて、フォーキーな「レモンティー」も歌うし、「サナギ」や「傘」のようにアップテンポやキラキラした曲も作る。ガシガシしたロックっていうイメージがあると思うんですけど、実はこういう一面もあるんです!っていうのも伝えたかったんです(笑)。--「サナギ」はサーフロックっぽい印象もありました。
Anly:実は最初に使っているコードは、エリック・クラプトンが艶やかな曲を演奏しているのを見て、“これ良いな。何を弾いているんだろう?”って惹かれたところから作っているんです。スキマスイッチとのコラボは大切なターニングポイント
▲YouTube「Anly+スキマスイッチ= 『この闇を照らす光のむこうに』Teaser」
--スキマスイッチさんと共演したM-04「この闇を照らす光のむこうに」では、偉大な大先輩とのコラボながら1番のAメロがAnlyさんから始まるのに驚きました。
Anly:大切なターニングポイントだと思っています。おふたりは一緒にやらせていただくことが決定した最初のミーティングの時点から、“君は後輩だけど、曲作りをする面では同じ立場だからね”って仰ってくださって。本当に心から音楽を愛して、作っているんだなあって……。私みたいな後輩が言うのもなんですけど、本当に素敵な方々でした。しかもデータのやり取りとかではなく、3人でスタジオに入って作りました。自分の中で3~4つほどフレーズを作っていったら、“それ、いいね!”って、常田さんが私のイメージに合ったフレーズを膨らませてくださったり、大橋さんがそれを鼻歌で歌いながら次のメロディを作ってくださったりと、お互いのいろいろな部分が本当に混ざり合っている楽曲になっているんです。
歌詞に関しても、“上手く繋がらない!どうすればいいんだ!?”って悩んでいたら夜中に緊急会議を開いてくださったことがあって、大橋さんに“こういう目線で見るのはどう?”と助けていただいたり。本当に優しくて、感謝してもしつくせないお二人です。
--この歌詞からは、許すというテーマを強く感じました。
Anly:誰かを失った憎しみだったり哀しみだったり、自分に対してそれを与えた人間や事柄にずっと恨みを持っていると、負の連鎖みたいなものがずっと続いてしまうような気がしていて……。私は自分自身を許すことから、他人を許すことが始まるんじゃないかって思っていて、それをスキマスイッチのおふたりに話してみたら、“その歌詞は絶対使った方が良い!”って仰ってくださったので、“やさしさとは「ゆるす」ということ”という歌詞を書きました。--“焼きつくすほどに 強く消えない”から始まって、次の言葉が“絶望”と、20歳の若い子がこんなことを歌うのかと驚きます。
Anly:音に関しても歌詞に関しても、最初はすごく暗いところにいる主人公っていうイメージがあって、ピアノの音もこだわって常田さんを困らせてしまったんですよ、“もっと暗い方が良いです”って(笑)。ただ、最初の“焼きつくすほどに 強く消えない”と最後のリフレインの捉え方が変わっていたら良いなって思っていて、消えないものは絶望や失望だったのかもしれないけど、最後はあたたかいものを差す言葉であって欲しいなって。リリース情報
anly one
- 2017/04/26 RELEASE
- 初回生産限定盤[SRCL-9379/80(CD+DVD)]
- 定価:3,240円(tax in.)
- 詳細・購入はこちらから>>
- 通常盤の詳細・購入はこちらから>>
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Interviewer & Photo:杉岡祐樹
何だか昔の作り方が恋しくなったりして
▲YouTube「Anly 『カラノココロ』Music Video」
--Anlyさんはこれまでも、どこかに暗さや闇の部分、人に見せたくない感情などを言葉に歌詞にしています。
Anly:歌を作る上で、聴いた人が“もう一回やってみよう” “もうちょっと進んでみよう”って思ってもらえるような、光みたいなものが最後に見えて欲しいというのが私の曲作りのテーマなんです。私と同じ気持ちで落ち込んでたりする人がいるとするなら、どういう言葉をかけてあげればいいのか、常に悩みながら作っています。もしかしたら私が一人っ子だからっていうのもあるかもしれないですけど、兄弟や家族のような存在というか、歌は生まれた瞬間から自立していて、自分のものじゃないように感じるんです。ひとりの人間のようにそこにいて、世界中を歩いて悲しんでいる人がいたら“だいじょうぶ?”って背中に触れて、またどこかへ歩いて行くようなイメージで。
--メジャーデビュー以降に感じたことが後の曲に反映されると思うと、これから先の変化も楽しみですよね。
Anly:東京に来てから成長した部分もありますけど、もちろん消えていってしまった部分もある。それがまた復活したり、またどこかへ行ってしまったり……。それを繰り返すのが面白いんだろうなって思います。--消えてしまった部分というのは?
Anly:書いたままでOKって言えない。もう一度考えてしまうというか、それでも良いはずなのに、“もっと良い言葉はないかな……”って考えることが増えたなって。それも成長なんですけど、良い部分もあるし悪い部分もあるなって。--初期衝動が失われる?
Anly:その可能性もあるなって。どうにか思い出したい、と思うときはあります。--アルバムの最後に収録されているM-14「Come back」は、故郷を歌った曲でしょうか。
Anly:この曲は本当にまんまを書いたというか、書き直しもしなかったので、こういう曲を良いと言ってくれる人もたくさんいるし、M-07「カラノココロ」のように2か月くらい1~2行を考え続けた曲を良いと言ってくれる人もいる。どちらも良い部分の方が多いんですけど、何だか昔の作り方が恋しくなったりして! 今は意味がわからないけど、いつかわかるだろう、みたいな感じも好きだったというか(笑)。--無責任に曲作りできていた時代も楽しかったと。
Anly:そういう曲も混ざっているアルバムではあるので、本当に原点だと思います。あのステージにワンマンで立てるというのは……スターだ!
▲YouTube「エド・シーラン - キャッスル・オン・ザ・ヒル(字幕付き)」
--シングル曲も本当に印象的な楽曲が多くて、M-11「いいの」の“この若さで……?”っていう諦念も面白かったです。
Anly:すごく消極的な感じですよね(笑)。やっぱり勇気が出ない部分……、特に恋に関しては多いんですよ。消極的な方なら共感してもらえると思います(笑)。--大人なAnlyさんから子どもなAnlyさんまで感じられる、カラフルな作品になりましたよね。
Anly:これからもジャンルを決めずに、自分が良いと思う音楽をどんどん詰め込んでいければなって思っています!--ちなみに、最近気に入っている音楽とかあります?
Anly:やっぱりエド・シーランはずっと良いと思っていて、彼のスタイルは私が憧れるもので、アコギ1本でも表現できるしサウンドに挑戦している部分もある。世界中を旅して、聴いた音楽をみんなに聴きやすい形で提供するっていうのもアーティスト的だなって思っていて。彼のアルバムを聴いて、いつも元気をもらっています。 あと、久しぶりに聴いて良いなって思ったのがハートの『Jupiter's Darling』で、1曲目がチューニングから始まるのもかっこいい!私もやりたい!(笑)--そして6月には初めてのツアー【Anly 1st Live Tour 2017 "anly one”】で東名阪と沖縄をまわることが決定しています。
Anly:アコースティックな面もあるんですけど、沖縄でバンド形式のライブをするのは初めてなので楽しみなんです。それに桜坂セントラルはやってみたかったライブハウスですし、あのステージにワンマンライブで立てるというのは……スターだ!って(笑)。--最後に訊くのもなんですが、バンドをやろうと思ったことはなかったのでしょうか。
Anly:中学3年の卒業前に謝恩会みたいなのがあって、演し物があった方が良いということで2週間だけバンドをやったことはあるんですけど、バンドを組みたいと思ったことは無いです。--きっぱりと(笑)。
Anly:そのバンドは友だちとワイワイやれたので楽しかったんですけど、やっぱりひとりで歌いたいことが山ほどあるんです。ただライブ前の楽屋だけは別で、対バンの方々がワイワイ盛り上がっているのをひとりでサラダ食べながら見ているのは寂しいです(笑)。リリース情報
anly one
- 2017/04/26 RELEASE
- 初回生産限定盤[SRCL-9379/80(CD+DVD)]
- 定価:3,240円(tax in.)
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Interviewer & Photo:杉岡祐樹
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