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ナオト・インティライミ 『Shall we travel??』インタビュー
2010年 最強のエンターテイナーが遂に1stアルバム!
28か国を515日間かけてひとりで世界一周し、各地で飛び込みやストリートライブを敢行。世界の音楽と文化を吸収した圧倒的なパフォーマンスで、大きな反響を生むナオト・インティライミが初登場!
コーラス&ギターとして、Mr.Childrenのツアーサポートメンバーにも抜擢される、その実力。シングル『タカラモノ~この声がなくなるまで~』のスマッシュヒットも記憶に新しい、この夏、期待度No.1のニューカマーを徹底解剖です!
「……日本のお客さんは楽しくないのか!?」
--今年の2月にSHIBUYA-AXで初めてナオト・インティライミさんのライブはもちろん、楽曲を聴きましたが、新人らしからぬ堂々としたパフォーマンスに度肝を抜かれました。
ナオト:今、お客さんがひとりでも、十万人の前でも、その状況に応じたライブをする自信はありますね。昔は緊張することもあったけど、経験は大きいと思います。あと、やっぱりライブが好きなんですよね。あの空間はタマラなくて。
人、人間が好きで、世界を旅する時もコミュニケーション。遺跡よりも素敵な風景よりも、人と絡んで起きたことが一番覚えているし、一番自分を変えてくれたことだったりして。ライブっていうのは音を通じて、一緒にコミュニケーションして、一緒に作る。そういう時間、空間は好きですね。
昔は変にかっこつけたり背伸びしたり、「凄く見せよう」みたいな無駄なモノもたくさん背負っていたと思うんですけど、今はもっともっとナチュラル。いつも通りのテンションでやっていますね、スタンスとして。
--ナオトさんって音楽活動歴は長いんですよね? でも、そういう経歴があって今がある、っていうのが凄く分かるんですよ。例えばナオトさんはMCが面白いことも魅力のひとつですが、お客さんとあんまりベタベタしない。
ナオト:Sッ気があるんですよね(笑)、「うるせーよ!」みたいな!
--それなのに、ちゃんとあたたかさを感じられる。人と人との関わり合いを、本当に大切にしている方だと分かるんですよ。
ナオト:それはファン・インティライミもそうだし、周りのスタッフもそうだし。確かにもっと前の頃は「自分がこう思うから、これを形にするんだ」っていうことしかしてなかった。かといって今はやりたいことがなくて、周りに任せて流されてって訳じゃないんだけど、スタンスとして、自分が発信していく中で、一緒に何かを作っていく歓びを感じているんですよね。
--それは世界を旅する中で、飛び込みやストリートライブを経験したからこその感覚?
ナオト:うん、大きいと思いますね。特に、言葉が通じなかったりした時、大きな身振り手振りや、観客いじりが(笑)、けっこう大事になってきたりとかして。全然相手にされなかったことももちろんあるし、どうやったら振り向いてもらえんだろう、どうやったら集中して聴いてもらえるんだろう、注意を引き付けられるんだろう、っていうのは、やっぱり飛び込みやストリートのライブでも、今の活動のライブでも、毎回考えていたりしますよね。
--世界と比べた時の、日本のオーディエンスの特徴は?
ナオト:マイアミのミュージシャンたちが、「ガンズ・アンド・ローゼズが好きで、色んなDVDを観まくってる。この前、ブドーカン公演を観てたんだけどさ、……日本のお客さんは楽しくないのか!?」って(笑)。「いやいや違うんだ! アレでめちゃめちゃ盛り上がってるんだよ!」ってね。
コロンビアの野外ライブに同行させてもらったり、歌わせてもらったりもしたんだけど、確かにもうグイングインで! 自分の席なんか守らないし、グワァアアアってなってるのと比べたら違うけど。
Interviewer:杉岡祐樹
やっぱりMr.Childrenが大きかった
--やはり直接的な感情表現は、世界の方がダイレクトですよね。
ナオト:でも、もうひとつ対照的な話として、ブラジルの大御所シンガーが日本でやった時に、「日本のオーディエンスは世界一。こんなに集中して聴いてくれるんだ!」って。ブラジルでやると、お客さんは踊りまくってて聴いてるか聴いてないのか分からないんだって(笑)。ここまで注意を払って自分の音を聴いてくれるオーディエンスは他にいない、と。
日本人には恥の文化があるから、みんなが盛り上がってないと恥ずかしいっていうのは分かるんですけど、そうさせないために、盛り上がってない人が逆に浮いちゃうような空間作り。誰にでもある“盛り上がりたい”、“カーニバりたい”っていう気持ちを刺激してあげて、「楽しい」を開放できるような空間にしたいって考えてますね。--この10年で音楽の聴かれ方が大きく変化し、その中で音楽の価値というものが変わってきていると思うのですが、感じるところはありますか?
ナオト:価値が変わってきているとは思わないけど……、確かにちょっと感じたのは、豊かになりすぎている国、発展しすぎている国はエンターテイメントがありすぎて、その中のひとつになっているところがある。これから感に満ち溢れている国とかは、逆に「音楽しかない」っていう生活もあって。豆電球一個の部屋に出稼ぎ労働者たちが何十人も一緒に暮らしているようなところだと、ずーっと歌をうたっているんですよね。
もしかしたら本来、歌っていうのはそういうところから始まったのかもしれない。人と人が繋がっていくため ―――まあ雨乞いとか神頼みみたいな時にもたくさん歌っていただろうし、それがひとつの宴として、オマットゥリ(お祭り)として歌われてきた。そういう意味では、音楽が○○分の1になってしまっているところもあると思うけど、それでも音楽の力っていうのは強いと思いますし……。
--そうした状況の中、アルバム『Shall we travel??』を制作する上でのコンセプトなどはあったのでしょうか?
ナオト:最終的には旅感の出ているジャケットやタイトルですけど、実はそんなに旅をフィーチャーした、コンセプチュアルなアルバムにしようとした訳ではなくて。殆どが書き下ろしの楽曲なんですけど、今のナオト・インティライミがやりたい音楽をパッケージしようと。その中で、あの旅の経験が無意識の内に滲み出てたらいいな、くらい。
--例えば「こっちへおいで」(M-09)ではドミニカ発祥の“バチャータ”の要素を取り入れていますが、メロディは上質なJ-POP的なアプローチになっているから、とても聴き心地が良いんですよね。
ナオト:やっぱりMr.Childrenが大きかったんですよね。コーラス&ギターとして2年、ミスチルのライブに参加させてもらっているんですけど、実は世界一周の旅から帰ってきて、J-POPにおいて何がキャッチーかを見失っていた時期があって。本来、小学生の頃からJ-POPを聴きあげて育ってきたのに、特に帰ってきた直後、“帰ってきたぜ感”を誇張表現しちゃってた時期が!(笑)
だからミスチルの音楽を一緒に、間近で体感させてもらうことによって、原点回帰ですね。J-POPのど真ん中を何十年もやっているバンドと、っていうのは原点回帰させてくれた大きな経験になりました。
--「インディペンデント ワールド」(M-06)も、ジャック・ジョンソン的なサーフ・ミュージック的サウンドアプローチに、日本人の琴線に触れやすいメロディを融合させています。しかも、メロディ自体がリズミカルで気持ち良いんですよ。
ナオト:そうですよね(笑)。トラックだけじゃなくて、歌の中でのリズム回しとか、好きですね、確かに……。嬉しい聴き方をして頂いてますね(笑)。
Interviewer:杉岡祐樹
オマットゥリ男としては、真骨頂
--また歌詞についてですが、恋愛の歌であってもコミカルな歌であっても、共通して何処かに広さがある。旅をしてきた男ならではの視点を感じさせてくれます。
ナオト:あの旅があったから書ける言葉っていうのは、たくさんあると思うんですよ。(それまでは)無駄なものばかりまとっていたし、もっともっとシンプルに、大事なものは何なのかを並べられるようになったし。
旅前なんかは背伸びしようと思ってたからね。自分が大きくなることよりも、自分を大きく見せようと考えていた。中身は詰まっていないけど、良い歌詞を書いてる風に見せよう見せようって(笑)。
--また、本作にはスキマスイッチの常田真太郎さんをはじめ、大久保薫さんやsoundbreakersさんと、著名な方が参加されています。
ナオト:シンタくん(=常田)も心通じ合える気のおけない仲間で、自分のことをよく分かってくれている。自分もシンタくんの言葉の魔術師というか、操る能力に対するリスペクトがあるし、良い感じで融合させることができましたね。 大久保くんは9年前くらいから一緒にライブをやってましたし、soundbreakersも数年前、まだ僕が何処にも所属していない野良犬だった時代に対バンをして、ライブを見てくれていて。僕のライブを知ってくれているから、「タカラモノ~この声がなくなるまで~」(M-04)も泣き踊りができるものになっているし……。
このアルバムを通じて薄っぺらいものはないですね、関係性として。心通じ合った仲間と、さらけ出し合いながら作れた。それはスタッフもエンジニアもそうですよね。プロジェクトとして、メジャーという大きな舞台で、本質の部分の関係性を築けていることが、本当に嬉しいです。色んな歯がゆさが出てくることも多いと思うんですよ、商業に関わるにつれて。今はまったくそういうストレスがないというか、感謝の気持ちが強いですね。
--では、『Shall we travel??』はナオトさんにとってはどのような1枚だと?
ナオト:スタートですね。「Oh!My destiny」(M-07)って曲が象徴するように、旅も含めた自己紹介的な。とりあえずこの1枚で触りの部分というか、全てを知ってもらえるとは思ってない。まだ氷山の一角で、ストックの曲もまだまだ山ほどあるし、新しい音もたくさん作っていきたい。次の構想とかも色々あったりして、尽き果てる感覚は一切ないですね。でも、これがきっかけでライブに来てもらえたら、その心は離さないです。
--そして、これから夏がやってきますが、既に夏フェスの出演も決定していますね。
ナオト:オマットゥリ男としては、真骨頂ですよね! 開放的になれるし、ひたすらアゲていくのみです。
--秋には全国ツアーも決定しました。
ナオト:初めての全国ツアーに、バンドを引き連れていけるのが楽しみですね。2時間くらいにパッケージされたライブは、まだ全国で見せられていないので。東京だけでずっとワンマンのハコを大きくしてきましたから、凄く楽しみですね!
--MCも楽しみにしてます。
ナオト:……まあしゃべらないですけどね? 曲だけで繋いでいきますよ?
(一同笑)
--実際、どんなツアーになるのでしょう?
ナオト:基本はやっぱりこのアルバムの曲が中心になってくると思うんですけど、(音源を)聴いているだけじゃ絶対に感じられないような……、色んな飛び道具が(笑)。溢れて飛んでくるので、是非、アルバムを聴いて満足せずに。
特に配信の時代になって、そのアーティストとライブが一致しない。「あの曲は良いけどライブは行ってみたいと思わない」とか、ダウンロード数とライブの動員が一致しないような時代だと思うんですよ。着うた(R)持ってるけど、iPodには入ってるけどライブは行ったことないって方がいっぱいいると思うんですけど、試しに!(笑) 騙されたと思って試しに来て欲しいな。若い子にとっては数千円って高額ですけど、その分の価値を感じられなかったら、ポケットマネーで返しに行ったって良い。それくらいの勢いで来て欲しいですね。
Interviewer:杉岡祐樹
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