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「モアナも私も自分の信じる道を進んだ」― 『モアナと伝説の海』英語版エンド・ソングを歌う、アレッシア・カーラ 初来日インタビュー
名門レーベル<デフ・ジャム>からデビューした、現在20歳のカナダ出身の新星シンガーソングライター、アレッシア・カーラ。2015年にリリースされたアンチ・パーティー・アンセム「ヒア」が、じわじわと米ビルボード・ソング・チャートを上昇し、最高位5位をマーク。同誌による“年間ベスト・ソングTOP10”にも選出された。翌年リリースされ、全米8位を記録した「スカーズ・トゥ・ユア・ビューティフル」では、“美”に執着する現代社会の在り方に対し「あなたはそのままで美しい、何も変える必要なんてない」と歌い、世代を超え大きな共感を呼ぶ。自身と同じ年頃のポップスターのように着飾ることをせず、あくまで自分らしくあることを貫く彼女のアーティストとしての断固としたスタンスも評価され、米音楽業界で活躍する女性を表彰する【米ビルボード・ウーマン・イン・ミュージック・アワード2016】では、<ルール・ブレイカー賞>を受賞した。さらには、ディズニー映画『モアナと伝説の海』のエンド・ソング「ハウ・ファー・アイル・ゴー」の歌唱に抜擢されるなど、今もっとも注目される若手ポップ・アーティストの一人だ。そんな彼女のデビュー作『ノウ・イット・オール』が遂にここ日本でもリリースに。日本デビューに伴い、2月末に初来日したアレッシアに話を訊いた。
TOP Photo: Getty Images Entertainment
他のことはあまり得意じゃなかったし、音楽しかやりたいことがなかった
――アレッシアが記憶している、最初の音楽体験はどんなものでしたか?
アレッシア・カーラ:2~3歳の頃、ディズニー、セサミ・ストリートとか子供向けの音楽がつまったテープやCDを持ってて、それを永遠と聴いて、一緒に歌っていたこと。実は、映像にも残ってて、詞も完璧に暗記してたみたい。それが一番昔の記憶かな。多分両親が作ってくれたか、私が音楽を好きなことを知っている周りの人がくれたものだったと思う。
――中でも、特にお気に入りの曲は?
アレッシア:いくつかあって、イタリア語のもあるわ。
――両親がイタリア系なんですよね。
アレッシア:そう。英語に訳すると…“飛べ、小さなミツバチ”っていう曲があるんだけど、それをよく歌ってた。あとセサミ・ストリートの曲で「I Love Trash」がお気に入りだった。
――オスカー・ザ・グラウチの。
アレッシア:知ってるの?スゴイ!タイトルを言っても知らない人が多くて(笑)。そう、それがお気に入りの一つだったの。
――幼い頃から音楽に触れてきたと思うのですが、「シンガーソングライターになりたい」と自覚したのはいつですか?
アレッシア:昔からずっとなりたいと思っていたんだけど、第一に自分がそこまで才能があるとは思ってなかったし、現実的に無理だろうって考えてたから、本腰をいれてなかった。でも、年を重ねていくごとに、「他にもやっている人はたくさんいる、私がその一人になれない理由はない」って思い始めて、だんだん自信が沸いてきた。野心をもつようになって、頑強になったって感じかな。他のことはあまり得意じゃなかったし、音楽しかやりたいことがなかった。だから、とにかくやってみようと思ったの。
100%なりたいと思ったのは、大学受験を視野に入れなければならなくなった時。一応受験はして、結果をみようとは思っていたけど、正直な話、どの大学にも行きたくなかった。結果として、志願した大学はすべて合格したんだけど、何かが私のことを引き留めた。そして、とにかくやってみよう、音楽の道へ進もうと決断して、すべて断った。両親は、めちゃめちゃ反対したけどね(笑)。
――とはいえ、アレッシアの直観は間違ってなかったということですよね。
アレッシア:そう!うまくいって、本当に良かったと思ってる。
▲ 「Valerie」Amy Winehouse (Cover)
――では、その当時ソングライターとしてインスパイアされたのは?
アレッシア:エイミー・ワインハウスからは大きな影響を受けた。ソングライティングの面だけではなく、アーティストとしても。真実味のある、チルな音楽を作る、パワフルな女性アーティストたちに惹かれた。ローリン・ヒル、ピンク、ブラック・アイド・ピーズ…彼らは男女混合グループだけどね。あとは、フランク・シナトラとか。もう少し経ってからは、リアン・ラ・ハヴァス、ジョス・ストーンなどのソウルフルなアーティストを聴いてた。それにフランク・オーシャン、エド・シーランも。
――なるほど。曲作りはどんな風に行うんですか?
アレッシア:デビュー・アルバムを作っていた時と今では、すごく違うんだ。アルバムを作っていた頃は、時間がたくさんあったから、スケジュールを空けてスタジオに入って曲を書くっていう、規則正しい、計画された感じだった。多忙になった今は、スタジオをブッキングして曲を書く時間がないから、ソングライティングが衝動的になってきた。それってすごくクールで、自分の中から溢れ出てくる感情を曲にする方法を学んでるところ。曲って、自然にできたほうがいいものが完成する。俗に言う“word vomit”(言葉が制御されず出てくる)を経験してる。あ、むしろ“song vomit”か(笑)。ほんと無意識に自分の中から溢れ出てくるような気がする。アルバム・リリース後に書いた曲で気に入ってるものは、そんな風に書かれたものが多いんだ。
――YouTubeへ投稿した動画で人気を集め、そこから実際に人前で演奏するのは難しかった?
アレッシア:最初は全然すんなりいかなかった。自分の脳をだましつつ、人前で演奏ができるようになるまで、とても長くて、骨の折れるプロセスだった。すごくシャイだったから、13歳の時に初めてYouTubeに動画を投稿してから16歳の時にプロダクションと契約するまでの間すら、何億年って感じがした。自分の両親の前で歌うことすらままならなかったのを、時間をかけて、頑張って乗り越えていった。それを乗り越えられた途端にすべてが楽になって、自然な流れになっていったの。でもそこにたどり着くまで、とてもハードで時間がかかった。
――ちなみに、テイラー・スウィフトのアリーナ・ツアーで、たくさんの人々の前でパフォーマンスした時の心境は?
アレッシア:それまで、5万人を収容するアリーナで歌ったことなんてなかったから、怖かった。けれど、高校時代の本当に本当に怖かった時期は抜けていたから、少しはマシだった。あれがもう1年早かったら…そんな勇気なかったと思う。タイミングが良くて、心から良かったと思ってる。
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きちんとアイデンティティを持ったアーティストだということを証明したかった
――では、デビュー作となる『ノウ・イット・オール』を制作する上で、こだわった部分は?
アレッシア:いくつかあるんだけど、まず自分のサウンドを確立させたかった。それと、きちんとアイデンティティを持ったアーティストだということを証明したかった。それを詞や他の部分で見せることができたら、って。ラジオ・フレンドリーな曲を何曲か作るのではなく。アーティストを安易に置き換えることができるような曲は作りたくなかった。自分らしいを音楽を作ることとそれが聴き手にも伝わること。そして、このアルバムで私がしたことが、何年か後にもみんなの記憶に残ること。ただ単にキャッチーなのではなく、メッセージ性がある作品にしたかったの。
――そんな中、苦戦したことなどありましたか?
アレッシア:「Seventeen」を作るのはハードだった。あの曲はアルバム制作の中盤ぐらいに書いた曲なんだけど、自分が何を伝えたいのか、どんなアルバムにしたいのか、自問しなければならなかった。だから、アルバムにとってターニング・ポイントになった曲でもある。その時に、成長についてのアルバムにしたいんだ、って気づいたから。成長するというのがどういうことなのか。最初は方向性が定まっていなかったから、書くのが難しい曲だった。
それと「Four Pink Walls」もなかなかハードだった。初めて一人で書いた曲で、スタジオで書いたものじゃなかったから。一人で曲作りができる、ってまだ思ってなかった。自分のことを信用してなかったの。でも、その葛藤と不安を乗り越えたら、後はスムーズに進めることできた。
▲ 「Four Pink Walls」
――プロダクションの面にも、携わっているのですか?
アレッシア:プロデューサーたちにめんどくさいって思われるほどにね。かなりしつこいから、みんな私に飽き飽きしてると思う(笑)。今後ずっと歌っていく曲だから、すべての面で満足できる曲に仕上げたい。今はまだ未熟だけど、いずれは自分の作品をプロデュースしたいとも思っている。それなりにいい耳を持ってると思うから、プロデューサーにこうしたい、って言えるけど、それを自分でやれるようになったらいいな。そこまで辿りつけるかどうかわからないけど、望みは持ってる。
――「スカーズ・トゥ・ユア・ビューティフル」は、自分らしくあることをテーマとした楽曲ですが、アレッシア自身は、自分が抱える不安などをどのように乗り越えてきましたか?
アレッシア:難しい質問ね。今でも多少は不安と戦っているし、100%乗り越えることは不可能だと思うから。ここを変えたいと思う部分は、誰だって少なくとも一つはあって、日々取り組んでいってる。とはいえ、私はかなり強い“自己意識”を持っていて、自信に満ちていると思っている。ルックスだけではなく、内面においても。そう思えるようになるまで時間がかかった―外部の意見や自分の思い込みなどを振り払なければならなかったから。幸運にも、両親や私の周りの人々は素晴らしい人ばかりで、私のことを支持してくれ、自分を愛することを教えてくれた。幼い頃から自我が強くて、ネガティヴな意見は聞き入れないようにしてきたけど、心底ではやっぱり努力してきたし、常に葛藤があった。自分のルックスが大嫌いと思う日もあるし、なぜこの人のようになれないの、なぜ変われないの、とも思う。でも最終的に、自分がどんな人間か理解していて、自信のある人物だと思えるのは、すごくいい気分よ。
――曲に対するポジティヴな反響についてはどのように思いましたか?
アレッシア:全く予想していなかった。とても大胆な声明だったから、ネガティヴな意見が多いんじゃないかと思ってた。メディアや世の中が映し出している“美”のイメージに反するものだから。リスナーたちからはいい反響があるかなと思っていたけれど、メディアに関しては予想できなかった。業界の人々や音楽雑誌などでも高評価を得ることができたのは興味深いと同時に、私の考えに賛同してくれて嬉しかった。とはいえ、すべてがポジティヴではなかった。でもそれはしょうがないことだと思う。ポジティヴな面の方が大きくて、パワフルだったから、とても満たされた気持ちになったけどね。
――そして【米ビルボード・ウーマン・イン・ミュージック・アワード2016】では、<ルール・ブレイカー賞>を受賞しました。
アレッシア:本当にクレイジーよ!まあ、音楽業界に“ルール”があるっていうのも、「なぜ?」って感じで変だけどね。私がやろうとしていることをちゃんと見てくれていて、ポジティヴな行動だと評価してくれるのは嬉しい。すごくクールで、私自身もすごくクールな気分になった。
――授賞式であるにも関わらず、いつもと変わらないアレッシアらしい姿で、「スカーズ・トゥ・ユア・ビューティフル」をパフォーマンスをしていたのも素晴らしかったです。
アレッシア:うん。あれが本当に普段の私。特にあの曲を歌う時は、自分らしくあることが重要だから。普段からドレスを着て、メイクをするのが好きな人間だったら、そうしてたと思うけど、私はそうじゃない。だから、100%自分らしい姿で出演したかったの。
――以前アリシア・キーズがノーメイクでレッドカーペットを歩いた際の批判については?
アレッシア:ポジティヴなメッセージを広げようとしているだけなのに、若い女の子、というか女性を、そうやって批判したり、こき下ろす必要はないと思う。彼女は本当にアメイジングで、私と同じことをしているのはクールだと思う。
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モアナも私も自分の信じる道を進んだ
まるで、私の人生についての曲のように思えたから、歌いたかった
――ちょっと前には、米ビルボード誌の表紙をチャンス・ザ・ラッパーとマレン・モリスとともに飾りました。
アレッシア:マレン・モリスはとってもスウィートな子で、音楽も最高。チャンスに関しては、長年ずっと大ファンで…高校生の頃、彼のミックステープをひたすら聴いてて、それがなかったら高校生活をサバイブできてなかった。アーティストとして彼の隣に立つことができたのは、誇らしいことで、すごくクールだった。
――これまで実際に出会ったアーティストで、自身のアーティスト性に重なる、共感できると感じた人はいますか?
アレッシア:アーティスト性を確立している若いアーティストたちにはすごくインスパイアされる。チャンスはもちろん、ケラーニ、トロイ・シヴァンとか、しっかりとしたヴィジョンを持っていて、ケヴィン・ギャレットのように自分で何でもできる人…彼はアメイジングよね!とにかく自分らしくて、どんなこともできてしまう人たち。タイラー・ザ・クリエイターもそうだし、オッド・フューチャー関連のアーティストたちもいい例ね。
▲ 「Chance The Rapper, Maren Morris, & Alessia Cara Songwriting Secrets」
――アレッシアがアーティストとして掲げているミッションや目標はありますか?
アレッシア:いくつかあるけど。第一は、人の考え方を変えること。世の中に対する誰かの見解を変えることや何かについて考えてもらうこと、もっと誇り持つように誰かを促すことができたら、自分がするべきことはできてるって思う。とにかく誰かの考えをポジティヴに変えることね。
――『モアナと伝説の海』のエンド・ソング「ハウ・ファー・アイル・ゴー」を歌いたいと思わせてくれたのは?多くの場合、自分がシンガーソングライターだと、他人が書いた曲を歌うのには抵抗がありますよね。
アレッシア:うん。それ、すごく気にしてることなの。今回は、曲のメッセージ性、そして私自身がとても共感できる内容だった…私は昔ながらのイタリア系の家庭で育ってきた。新しいことを探求し、音楽の道へ進むこと―それは私の家系では過去にないことだった。同じことを思っていたモアナの人生と自分の人生が重なって、彼女の言葉すべてに共感できた。完璧な娘でいたい、と彼女が思う気持ちは私も同じ。両親に自分を誇りに思ってもらいたかったけれど、音楽をやったらそうは思ってくれないかもしれないって。最終的には、モアナも私も自分の信じる道を進んだ。まるで、私の人生についての曲のように思えたから、歌いたかったの。
▲ 「How Far I'll Go」MV
――では、ZEDDと「Stay」でコラボをする経緯に至ったのは?
アレッシア:彼には何かの授賞式で初めて会った。とても素敵な人で、昔からずっとファンだった。何か月間か連絡を取り続けてて、ある時彼が「一緒にコラボしない?」って曲のアイディアを送ってきた。デモ・バージョンで、仮のヴォーカルが入っていたんだけど、とっても気に入った。だから、「すごくいい曲だけど、自分に合うように少し詞を変えてもいい?」って返信したの。より曲作りのプロセスに参加したかったし。さっきあなたが言ったように、曲を書くのが好きだと、その部分に自分があまり携われないようなプロジェクトに参加するのには抵抗があるから。ZEDDはとても寛大で、「自分に合うようにしていいよ」って言ってくれた。そして素晴らしいビートを作り、私らしくもあり、彼らしくもある、ちょうどいい中間点にある曲に仕上げてくれた。これまで私が作ってきた曲に比べると、かなりポップだけど、私らしいから、とても満足してる。
――最後に、日本でショーをするために戻ってきてくれますか?
アレッシア:絶対に戻って来たい!【SUMMER SONIC】は素晴らしいフェスだ、って聞いてるから出演できたらいいな。もちろん単独公演もやりたい。
▲ 「Stay」(Lyric Video)
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ノウ・イット・オール
2017/02/08 RELEASE
UICD-6223 ¥ 2,420(税込)
Disc01
- 01.セヴンティーン
- 02.ヒア
- 03.アウトローズ
- 04.アイム・ユアーズ
- 05.フォー・ピンク・ウォールズ
- 06.ワイルド・シングス
- 07.ストーン feat.セバスチャン・コール
- 08.オーヴァードーズ
- 09.スターズ
- 10.スカーズ・トゥ・ユア・ビューティフル
- 11.ヒア (2:00 AMヴァージョン) (インターナショナル盤&日本盤ボーナス・トラック)
- 12.リヴァー・オブ・ティアーズ (インターナショナル盤&日本盤ボーナス・トラック)
- 13.マイ・ソング (インターナショナル盤&日本盤ボーナス・トラック)
- 14.アイム・ユアーズ (オリジナル・ヴァージョン) (インターナショナル盤&日本盤ボーナス・トラック)
- 15.ワイルド・シングス (アコースティック) (インターナショナル盤&日本盤ボーナス・トラック)
- 16.ワイルド・シングス feat.G-イージー (日本盤ボーナス・トラック)
- 17.ヒア (ロジック・リミックス) (日本盤ボーナス・トラック)
- 18.ヒア (ジェイデン・スミス・リミックス) (日本盤ボーナス・トラック)
- 19.スカーズ・トゥ・ユア・ビューティフル (NOTDリミックス) (日本盤ボーナス・トラック)
- 20.ハウ・ファー・アイル・ゴー (エンドソング) (日本盤ボーナス・トラック)
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