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『ラ・ラ・ランド』が【アカデミー賞】主題歌&作曲賞W受賞!『トロールズ』から『モアナと伝説の海』まで、サントラの最新トレンドに迫る
去る2017年2月26日、第89回アカデミー賞が発表された。史上最多タイとなる14ノミネートで話題になった『ラ・ラ・ランド』が最有力といわれていたが、作品賞には『ムーンライト』が受賞。主演男優賞は『マンチェスター・バイ・ザ・シー』のケイシー・アフレックが獲得するなど、予想に反して混戦となった。
さて、ここで注目したいのが、主題歌賞と作曲賞。こちらは前評判通り『ラ・ラ・ランド』が受賞したが、他のノミネート作品も力作ばかり。ここでは、アカデミー賞関連作から現在のサウンドトラックのトレンドを感じてみよう。
主題歌:「シティ・オブ・スターズ」ライアン・ゴズリング&エマ・ストーン
米ビルボード・アルバム・チャート 最高位2位
なんといっても今年の目玉はこの作品だろう。作曲賞及び主題歌賞(「City Of Stars」)をダブルで獲得した。ジャズをテーマにした『セッション』で話題を呼んだデミアン・チャゼル監督が、監督と脚本を手掛けたミュージカル映画は、往年の名画を思わせる米国伝統の美しい映像で、すでに日本でも大ヒット中。音楽を手掛けたジャスティン・ハーウィッツは、チャゼル監督と学生時代に同じバンドをしていたという若き盟友。ドリーミーなサウンドで映画全編を演出し、作品の成功に導いた。
▲ 「City Of Stars」
◎公開情報
『ラ・ラ・ランド』
監督・脚本:ディミアン・チャゼル
出演:ライアン・ゴズリング、エマ・ストーン、ジョン・レジェンド、J.K.シモンズ
配給:ギャガ/ポニーキャニオン
© 2017 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.
INFO: http://gaga.ne.jp/lalaland/
2017年2月24日(金)TOHOシネマズみゆき座他全国ロードショー
米ビルボード・ソング・チャート 最高位1位/米ビルボード・アルバム・チャート 最高位2位
主題歌賞ノミネートで話題になったのが、すでに米ビルボードのHot 100でも1位を獲得しているジャスティン・ティンバーレイクの「Can't Stop the Feeling!」。ちょっと懐かしいディスコ・サウンドを取り入れたポップ・ナンバーで、アニメ映画『トロールズ』のサウンドトラックに収められている。『シュレック』のチームで作られたこの映画は、音楽面でも話題。ジャスティンは、他にもEW&Fの「September」をカヴァーするなど、サントラ全編で大活躍。グウェン・ステファニーやアリアナ・グランデも参加した豪華盤だ。
▲ 「Can't Stop the Feeling!」
米ビルボード・アルバム・チャート 最高位3位
もう一作アニメ映画から主題歌賞にエントリーされたのが、『モアナと伝説の海』のテーマソング「How Far I'll Go」。劇中では主演声優のアウリィ・クラヴァーリョによって歌われるが、カナダの新進シンガーであるアレッシア・カーラのヴァージョンもサウンドトラックには収録。アレッシアは、ZEDDとの共演でもすでに話題になっており、先日はファースト・ソロ・アルバム『ノウ・イット・オール』もリリースされたばかり。今年注目したいアーティストのひとりだ。
▲ 「How Far I'll Go」
◎公開情報
『モアナと伝説の海』
ウォルト・ディズニー・ジャパン
© 2017 Disney. All Rights Reserved.
INFO: http://www.disney.co.jp/movie/moana.html
2017年3月10日(金) 全国ロードショー
音楽ファンが最も注目しておきたい主題歌賞のノミネート作品は、スティングによる「The Empty Chair」。シリアで斬首された米国人ジャーナリスト、ジェームズ・フォーリーをテーマにしたドキュメンタリー・フィルムで使用されている。故人を慈しむような静かなバラードで、スティングの円熟味を増したヴォーカルが聴く者の心に沁み渡る。
▲ 「The Empty Chair」
主題歌:「ネヴァー・ギヴ・アップ」シーア
『ラ・ラ・ランド』の影に隠れて目立たないが、この作品も6部門でノミネートされていた。5歳で迷子になり、Google Earthで家族を探すというユニークな設定の物語を音楽で彩るのは、アメリカ人のダスティン・オハロランとドイツ人のハウシュカことフォルカー・ベルテルマンの2人。いずれも現代音楽やポスト・クラシカルのジャンルでは高く評価されており、ピアノやストリングスで繊細に構築されたスコアが映画に深い陰影を与えている。
▲ 「Arrival」
◎公開情報
『LION/ライオン ~25年目のただいま~』
監督:ガース・デイヴィス
製作:イアン・カニンク
出演:デヴ・パテル、ルーニー・マーラ、ニコール・キッドマン
配給:ギャガ
© 2016 Long Way Home Holdings Pty Ltd and Screen Australia
INFO: http://gaga.ne.jp/lion/
2017年4月7日(金) TOHO シネマズ みゆき座他全国ロードショー
8部門でノミネートされていたとはいえ、ダークホースだった『ムーンライト』が受賞した理由には、音楽の良さも少しは関与しているのかもしれない。ドラッグや黒人間の同性愛といったヘヴィーなテーマに、ストリングスを多用した重厚な音楽を配したのは、作曲家のニコラス・ブリテル。オムニバス映画『ニューヨーク、アイラブユー』でのナタリー・ポートマン監督のパートで映画音楽デビュー。その後、『マネー・ショート 華麗なる大逆転』や『ニュートン・ナイト 自由の旗をかかげた男』なども手がけている。
▲ 『ムーンライト』トレイラー
◎公開情報
『ムーンライト』
監督・脚本:バリー・ジェンキンス
エグゼクティブプロデューサー:ブラッド・ピット
キャスト:トレバンテ・ローズ、アッシュトン・サンダース、アレックス・ヒバート、マハーシャラ・アリ、ナオミ・ハリス、アンドレ・ホーランド
© 2016 A24 Distribution, LLC
INFO: http://moonlight-movie.jp
2017年春、TOHOシネマズ他にて全国ロードショー
1963年に暗殺されたジョン・F・ケネディ大統領のファーストレディであるジャクリーン・ケネディを描いたノンフィクション。音楽を担当したのは、ミカチューの名前でも知られる英国のミカ・レヴィ。ミカチュー&ザ・シェイプスというアヴァンギャルドなポップ・バンドを率いる一方で、スカーレット・ヨハンソンが主演したスリラー作『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』におけるスケールの大きなサウンドトラックでもその才能を発揮。エレクトロニカとオーケストラ・サウンドを使い分ける手腕が見事だ。
▲ 『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』トレイラー
◎公開情報
『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』
監督:パブロ・ラライン
出演:ナタリー・ポートマン、ピーター・サースガード、グレタ・ガーウィグ、ビリー・クラダップ、ジョン・ハート
脚本:ノア・オッペンハイム
製作:ダーレン・アロノフスキ―ほか
配給:キノフィルムズ
© 2016 Jackie Productions Limited
INFO: http://jackie-movie.jp/
2017年3月31日(金)、TOHO シネマズ シャンテほかにて全国公開
今回のアカデミー作曲賞で、唯一ベテランとしてノミネートされていたのはトーマス・ニューマンのみ。とはいえ、映画音楽作家として超売れっ子の彼も、『ショーシャンクの空に』や『007 スカイフォール』などで何度もノミネートされているが、いまだ受賞しておらず、今回も残念ながら受賞を逃してしまった。とはいえ、このSF大作ではバラエティに富んだサウンドで映像を演出しており、彼の代表作のひとつに数えられそうな作品となっている。
▲ 『パッセンジャー』トレイラー
◎公開情報
『パッセンジャー』
監督:モルテン・ティルドゥム
出演:ジェニファー・ローレンス、クリス・プラット、マイケル・シーン、ローレンス・フィッシュバーン
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
INFO: http://www.passenger-movie.jp/
2017年3月24日(金)より全国ロードショー
Text: 栗本斉
ラ・ラ・ランド オリジナル・サウンドトラック
2017/02/17 RELEASE
UICS-1322 ¥ 2,750(税込)
Disc01
- 01.アナザー・デイ・オブ・サン
- 02.サムワン・イン・ザ・クラウド
- 03.ミアとセバスチャンのテーマ
- 04.ア・ラヴリー・ナイト
- 05.ハーマンズ・ハビット
- 06.シティ・オブ・スターズ
- 07.プラネタリウム
- 08.サマー・モンタージュ/マデリン
- 09.シティ・オブ・スターズ
- 10.スタート・ア・ファイア
- 11.エンゲージメント・パーティー
- 12.オーディション(ザ・フールズ・フー・ドリーム)
- 13.エピローグ
- 14.ジ・エンド
- 15.シティ・オブ・スターズ (ハミング)
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