Billboard JAPAN


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KAI TAKAHASHI(LUCKY TAPES)×KENTO(WONK) Billboard Live対談インタビュー

 2017年3月16日、ビルボードライブ東京にてLUCKY TAPES、そしてWONKという新世代2バンドの共演ライブが開催される。昨年、それぞれ素晴らしいアルバムを出したバンド同士だが、意外にも共演は今回が初。そこで今回は両バンドのフロントマン、KAI TAKAHASHI(LUCKY TAPES)とKENTO NAGATSUKA(WONK)の対談インタビューを企画。ほぼ同い年の二人が、それぞれのバンドを背負う立場としてどんなことを考えているのか? また、初出演となるビルボードライブへの印象についても話を聞いてみた。インタビューは【第59回グラミー賞】の授賞式当日、2月13日に行われた。

90・91年生まれ ~同世代二人の原体験

--【グラミー賞】の結果はどうでしたか?

KENTO:順当過ぎて(笑)。「はいはい」って感じでしたけど…新人が結構ノミネートされてたじゃないですか? アンダーソン・パークとか。あの辺りの人が獲ってくれないかなとか思ってましたけど、安定のアデル、ビヨンセとかで。でも、単純に聴いただけでもすごいんで、彼女達は。「まあ、そうだよね……遠いな」って(笑)。

--高橋さんは?

KAI:まだ結果を見てないんですよ。チャンス・ザ・ラッパーとか、主要なタイトルだけ見た感じで。

KENTO:来年はチャイルディッシュ・ガンビーノとかもノミネートされると思うので、ああいう人たちがどんどん賞を獲ってくれれば良いなと思いますね。グラスパーが出てヒップホップっぽいサウンドはすごく増えたと思うんですけど、そうじゃない往年のP・ファンクというか。そういう人がいると、裾の尾を拡げてくれる感じがして、僕らが好き勝手し易いので(笑)。「こいつら全然ヒップホップじゃねえな…」とか思われても「まあ、これも良いでしょ?」って言えるかなって。


Childish Gambino - Redbone (Live From The Tonight Show Starring Jimmy Fallon)


--たしかに音楽的な裾の尾という部分は重要かも知れませんね。お二人は初対面とのことですが、ライブハウスで共演も?

KAI:無いですね。ライブもまだ観たこと無くて。

KENTO:僕らもそうなんです。

--共演が決まったときはどう感じましたか?

KENTO:素直に「おお!ここで!?」と思いましたね。

KAI:うん、面白い組み合わせだなと。

--意外な組み合わせという感じが?

KENTO:ありましたね。僕らがたまに一緒にライブをやってるのが、yahyelとかなので、「LUCKY TAPESさんが来るのか!」と思いました。

--なるほど。ちなみにお二人は世代的には?

KENTO:僕は90年生まれです。

KAI:僕は91年です。

KENTO:じゃあ一個違いなんだ。同い年くらいですね。

--リスナーとしては、お互い洋楽を中心に聴いてきたんですか?

KAI:そうですね。僕は結構隔たり無くっていう感じなんですけど、入りは洋楽です。

--どういったアーティストが入り口に?

KAI:洋楽を聴くようになったきっかけは、小6の時に行ったロサンゼルスで、現地のラジオで流れていたUSのヒット・チャートの音楽なんかを帰国後もよく聴いていましたね。ビヨンセやジェイ・Z、カニエ・ウエストとか。ちょうどメインストリームでブラック・ミュージックが多く鳴っていたので自然と耳にしていて、そこから色々と派生していった感じです。

--KENTOさんの原体験は?

KENTO:メンバー全員ルーツが全然違うんですけど、僕は一番はじめは3歳くらいからバイオリンをやっていて、小さい頃はバイオリンの音楽ばっかり聴いてました。中学に上がる頃は小澤征爾さんのオーケストラとかを聴いてたんですけど、入学して直ぐにスクール・バスの中で、そのことを話したら同級生に爆笑されたんです(笑)。で、「このままじゃモテない!」と思って、いわゆるJ-POPを聴き始めて。でも、それもしっくり来なくて、洋楽--ロック、グリーンデイとかSUM41とかを通って、最終的にツーバスなど体力を消費するドラムがやりたくて、中高生の頃はメタルに行き着きました(笑)

 で、高校を卒業する前くらいからブラック・ミュージックにどっぷりとハマって、大学の頃はジャズ・バンドに入って、2年くらいスタンダードとかを歌って。サークルには入ってなかったんですけど、ジャズ研とかジャズ界隈って、バンドよりプレイヤー単体で注目されることが多くて、僕もジャズだけじゃなくソウルとかも歌いたいなと思った時に、ボーカルとして呼ばれたのがきっかけで今に至ってます。歌をちゃんとやろうと思ったのが二十歳とかで、そこからですね。色々と広がっていったのは。

--高橋さんは最初に覚えた楽器は?

KAI:小学校の6年間と中学に入ってしばらくはエレクトーンを習っていて、中学の3年間は吹奏楽部でテナーサックスを吹いてました。

--バンドはどういった経緯で始めたんですか?

KAI:大学入る直前くらいまでは、バンドという概念すらなくて。ロックもポップスもR&BもEDMも全部隔たりなく音楽として聴いていました。高校3年の受験期にTOKYO FMの『SCHOOL OF LOCK!』という番組を毎日のように聴いていて、そこで始めて“バンド音楽”を知った。それから大学では軽音サークルに入って、初めてバンドを組んだんです。新歓ライブには何故かドラムで出演しました(笑)。でも、集団行動が苦手だから直ぐにサークルをやめちゃって…。

KENTO:ハハハ(笑)。

KAI:そこからは友達と独学でDAWを覚えて、ひたすら曲を作っていましたね。

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Lucky TapesとWONKの組織論

--たしかに、高橋さんのソロの音源とかは、ヒップホップ色が出てたりしますよね。KENTOさんは集団行動は?

KENTO:いや~本当に嫌いですね。そもそも自分の高校も馴染めなくて嫌いだったんですよ。サークルでサッカーをやってたんですけど、それも休んで週6でバイトしてお金を貯めて、高2の夏にイギリスに留学したりしてました。学校でやってたバンドも馴染めなくて、ウチのベースのINOUEが通ってた学校の部室に忍び込んで、練習したり。その後、WONKを始めて、たまたま彼と再会したんですけど…。チームプレイのスポーツも長続きしなくて、結果、一番続いてるのがゴルフですね(笑)。

--集団行動が苦手な人たちが揃って今、バンドを組んでるんですね。

KAI:たしかにそうですね。音楽っていう好きなことが中心にあるから変われたこともあったり続けられているけど。LUCKY TAPESは毎回10人前後の編成で動いていて、自分はフロントマンで作曲やアレンジも担ってるので、ある程度引っ張っていかないといけない。それを最初は全部1人でやろうとしていたので大変でしたが、徐々に慣れて、最近は仕事を上手く振り分けてやってます。

--じゃあ、普段プライベートでも遊ぶ「友達」というよりも、本当に音楽を通して結びついているバンドなんですね。

KAI:ああ、そうですね。学校が一緒とかでもなく、たまたま地元で音楽をやってるという繋がりから始まっているので。まあでも仲は普通に良いですよ。今度みんなで遊びに行く話もしていたり。


LUCKY TAPES - Gun


--そういう意味で、WONKはどういうバンドですか?

KENTO:ぶっちゃけ「会社かよ!」って思います(笑)。本当にプライベートの話を全然しないんですよ。みんな出来ることと出来ないことがハッキリしていて、でも、みんな一番好きなのは音楽だから、自分たちが一番やりたいこと、たどり着きたい理想を目指すのに最適な“ツール”がこのバンド形態だよね、みたいなところがあります。そういう意味では、足りない部分を補い合ってる一つのチームというか。

--プロジェクトのような?

KENTO:完全にそうですね。みんなで一個のプロジェクトを動かしてる会社、みたいな意識ですね。

KAI:僕らもバンドというよりかはプロジェクトに近い形態になってきていますね。メンバーの人数よりもサポートの人数の方が多く、プレイヤーもここ1年くらいでようやく固まって。アレンジや演出の相談をしたりアイデアを出し合いながらLUCKY TAPESという一つのプロジェクトを動かしている感覚です。

--なるほど。あと、WONKはファッションも含めて、総合的な見え方を意識した活動をしてますよね?

KENTO:そうですね。WONKは、良い音楽をやるっていう大前提はありつつ、色んなジャンルの人たちと良いものを作りたいっていうイメージがあって。例えばファッション・ブランドの作品と僕らの音楽がコラボする、みたいな。自分たちが作っているものが、どういう過程で消費者に届いているか?っていうところまで意識したいというか、そこまで面倒を見たくて。そういう意識があって、自分たちでレーベルをやってる部分もあるのかな。

--単に音楽を作るだけではなく?

KENTO:そうです。僕らも全然発展途上なので、これから出していく音楽の価値を見て貰いつつ、僕らのモノ作りに対する価値も見て貰いたい。僕らの思いとしては、新しい価値を作りたいっていうか。例えば(テーブルを指して)ここに飲み物が2個あるじゃないですか? それぞれ同じものなんだけど、WONKのメンバーが片方を「最高!」って言ったら、みんながそっちを取るみたいな。それって「僕らが“良い”って言ってる」っていう価値じゃないですか? それを色んなジャンルで作りたいんです。


WONK - Real Love feat. JUA & Shun Ishiwaka


--なるほど。ちなみに、お二人が今リスナーとして関心を持って聴いてる音楽ってどんなものなんですか?

KAI:さっきも話に出たチャイルディッシュ・ガンビーノとか良いですよね。ソロで音源を作っていた時は、サウンドクラウドやバンドキャンプを片っ端から漁って、レーベルを通さずに個人で音源を上げている人なんかも色々と聴いていたんですけど、最近は制作ばかりであまり新譜を追えていなくて。その中でもNONAMEやジョン・レジェンドの新譜は何周も聴きました。歌だけでなく、トラックが作り込まれている音楽に惹かれることが多くて。LUCKY TAPESとは直接結びつかないかもしれませんが。

--そこは分けて考えてるんですね。

KAI:そうですね。ソロ名義でトラックを作るときは、自分のやりたいことを自由に表現していて。LUCKY TAPESでは、もっと基本的な、音楽でお客さんやリスナーをどう楽しませられるか? という部分に焦点を当てています。

--WONKはどうですか?

KENTO:僕らは新譜を漁りまくってますね。自分たちの制作中でも、出会い頭に「○○の新譜聴きました?ヤバイっすよ!」みたいな会話が飛び交ったり、地方の遠征に言っても車内でそんな話しかしてない。情報交換もするので、特にアメリカの西海岸のレーベル、Stones Throwとか、Brainfeederとか、あの辺のアーティストって今ヤバイよねっていう感覚も共有していますし、“新しい波”みたいなものに対する意識もすごくあります。新しいことやっていてスゴい、っていう人もいるじゃないですか? 例えばアンダーソン・パークとか。ああいう人たちに対して、もの凄く嫉妬するんですよ。で、それを自分たちのモチベーションに変えるっていう。(新譜を聴くのには)そういう目的もあるのかなと思います。

 後は、気に入ったアーティストは全員で観に行くっていうのも決めていて。最近だとアンダーソン・パーク、カマシ・ワシントン、BIGYUKIさんとか。BIGYUKIさんは本当にヤバくて!

--パフォーマンスはもちろん、出音がすごかったと聴きました。

KENTO:会場が壊れるんじゃないかっていうくらい(笑)。本当にすごかったですね。ステージに立った時にアーティストって、演奏技術だけじゃなくて、例えばキーボードを弾いてても、BIGYUKIさんって暴れるように弾くんですよ。でも、キレイな旋律をしっかり弾いていて。あとは髪の毛が金髪だったり、そういうカリスマ性とか、アーティストとしてのあの人単体を、客観的に観ているというか。もちろん演奏やファッションも観ますし。

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カリスマ性と楽団~バンドの魅せ方

--アーティストとしてのカリスマ性みたいな部分は、自分たちでも表現していきたい部分ですか?

KENTO:そうですね。やっぱりそれはあります。僕らは作品に力を入れてることはもちろんなんですけど、僕らが作ってる作品の音数とかって、ライブでは表現し切れないと思っていて。音源には音源にこそ出来ることっていうのがあるし。その上でライブで出来ることってなんだろう?っていうのを、常に意識して活動してます。

 あと、これは単純に僕個人の問題なんですけど、フロントマンとしてカリスマ性ってすごく大事だなと思うんですよね。圧倒的に人を惹きつける力があるって、アーティスト、ステージに立つ人間として大事なのかなと思うんです。今一番欲しいのはアーティストとしてのカリスマ性と経験ですね。

--高橋さんはどうですか?

KAI:カリスマ性はもちろん必要だと思いますが、メンバーやフロントマンが立って見えるというよりかは、ステージ全体で音楽を作り上げて、それがエンターテイメントとして成り立っている様を表現していきたいと考えています。

--楽団のような感じ?

KAI:まさにそうですね。

--そういう見せ方の部分で指標になるようなバンドはありましたか?

KAI:特にこれっていうのは無いけど、日本で言うとceroや蓮沼執太さんがオーケストラと一緒にやっているのを見て、「こういう魅せ方もあるのか」と。


LUCKY TAPES - 贅沢な罠(LIVE)


--方向性は違いますが、お互い見せ方の部分はかなり考えてライブに臨んでるんですね。

KENTO:僕の場合、マイクしか持って無くて、身振り手振りも出来て、一番前に立ってる。それなのにドラムのARATAの方が目立ってるみたいな(笑)。もちろん、そういうパターンがあっても良いけど、やっぱり見え方の部分で他のメンバーに負けちゃいけないんじゃないかなと思うんです。結構、尺を決めないでソロ回しをしたりして、メンバーそれぞれが「負けねえぞ」っていう意識を持ってお互いにやってるのに、そこで俺だけが気を抜いてたら、絶対お客さんからしたら「フロントマン弱いな」ってなると思うんです。今のメンバーが、すごいメンバーだって感じるからこそ、僕は圧倒的なフロントマンでいなきゃいけないっていう義務感みたいなものはありますね。


WONK - 1st Album "Sphere"(Teaser)


KENTO:僕らって怖がられることが多くて…(苦笑) 今、何だかんだ世代で括られることが多いじゃないですか? “東京ニューウェーブ”みたいな。でも、その世代で頑張って、世界に通じる音楽を作って、日本の音楽業界を盛り上げていこうっていう意識があるので。音楽性の違いとかは関係なく、良いものは良いって感じで考えてますけどね。

--世代観を意識されてるんですね。

KENTO:そうですね。親がポケベル持ってて、僕らが中学生くらいの時に携帯電話とかが出始めて、それでYoutubeとかが観れるようになって…そういう環境で中高生時代を過ごして来て、その経験みたいなものがちゃんと技術として形になって、それを持って世の中に出てきてるのが僕らの世代だと思ってるから。そういう技術的な部分は海外も変わらないですよね。例えばハイエイタス・カイヨーテに「ラピュタ」っていう曲があって、日本のアニメーションっぽいサウンドが使われてたりするんですけど、この曲もYoutubeが無かったら生まれなかった音楽だと思う。逆に、英語の発音が多い日本人アーティストが増えてきたり、僕らのサウンドに日本の感じが全くないのも、この世代ならではなのかなと思います。

--高橋さんは今のお話はどうですか?

KAI:世代的な意識を普段からすることはあまりないけど、今の話はすごく納得できますね。

--同世代の感じが今度のライブでも出てくると面白そうですね。本番まであと1月を切りましたが、これまでお客さんとしてビルボードに行ったことは?

KENTO:あります。この間はビラルの来日公演も行きましたし、僕はホセ・ジェイムスは、1stも2ndもどっちも見るっていうくらい好きなんです。

KAI:ベニー・シングスやダイアン・バーチを観に行きました。

--率直にビルボードライブみたいなクラブ会場って、お二人にはどのように写るのでしょうか?

KENTO:アーティストに対して価値を持ってくれてるお客さんが来てくれてる、みたいな。料理とお酒とに加えて、音楽に払う料金があるじゃないですか? だから金額も上がる。でも、それを気にせず来てくれて、足繁く通ってくれる人たちって、その価値が金額に見合ってると感じてくれてるからだと思うんですよ。そういう意味で、ああいうハコに出れるというのは、アーティストとして嬉しいなと思います。…それでも「高いな!」と思うときはありますけど(笑)。

KAI:僕も最初は少し入りづらいというか、「ドレスコードとかあるのかな?」と構えていた部分があったけど、実際に行ってみると全然そんなことなくて、気軽に足を運べる過ごしやすい場所でした。あと、昨年末、大阪のビルボードに出演させて頂いた時に思ったのは、場所自体に特別感があるから、それが一つの演出になる。なので、お客さんもそういったところに価値を見出してくれれば良いなと思います。ちょっと贅沢をして非日常の異空間で音楽と食事を楽しむ。そんな場所。

--今回のライブでは特別な演出とかを考えてたりするんですか?

KENTO:僕らは考えてますけど…お楽しみということで(笑)

--分かりました。WONKは今週からヨーロッパ・ツアーですよね?(※2月中旬に開催)

KENTO:はい。ロンドン、ベルリン、パリと3都市で公演をやってきます。

KAI:僕らは海外はまだ視野にはないです。でも去年、台湾にライブをしに行ったら、想像していたよりも沢山お客さんが来てくれて、すごく盛り上がったことにはびっくりしましたね。やるとしたらまずはアジアくらいから徐々に行けたら良いな。

--それこそ韓国のR&Bとかは、ガラントがすごく人気があったりして、日本よりも進んでますよね。

KAI:ガラント、良いですよね。

KENTO:良いっすよね!ガラントの韓国でのライブもYoutubeで観ました。あと、びっくりしたのが、韓国のアイドル・グループでネオ・ソウルっぽいグループがいて「めっちゃかっこいいじゃん」って!

KAI:韓国の音楽は、トラックとかもすごくカッコイイですよね。

--韓国やアジアも、今は日本と地続きな部分がありますよね。そういう意味でも、2組の今後の活動を楽しみにしています。

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