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【奥野真哉 生誕50年祭 「今宵かぎりの雑種天国」】開催目前 特別座談会 奥野真哉×志磨遼平×越川和磨×シシド・カフカ
12月2日(金)に恵比寿LIQUIDROOMにて開催される【奥野真哉生誕50年祭 「今宵かぎりの雑種天国」】。
ソウル・フラワー・ユニオンのキーボーディストにして、数々のアーティストのレコーディング、ライブなどでサポートやプロデューサーとして引っ張りだこの奥野真哉。その50回目の誕生日を祝うため、古今東西で活躍する人気ミュージシャンが一堂に会する歴史的一夜を目前に、今回は本人に加えてドレスコーズの志磨遼平、THE STARBEMSの越川和磨、シシド・カフカの3名を招いて笑いありロックファン必見エピソードありの座談会を行った。
シーンを代表するベテランから現在トップランカーとして活躍する面々、衝撃のニューカマーまで、総勢30名を越える面々を集めてしまう奥野真哉の人柄と真髄……、ぜひご堪能ください。
シシド・カフカ「奥野さんに支えていただいている心強さ、そして楽しさ」
--そもそも皆さんと奥野さんの出会いというのは?
シシド・カフカ:私はレコーディングに参加していただいたのが最初ですね。『K5』(Kの累乗)っていうアルバムで「あの夏、君が見てたモノ- feat.YO-KING(真心ブラザーズ)」にアコーディオンで参加していただいて、その後はライブもサポートしていただくようになって。今年4月に出したアルバム『トリドリ』でも「朝までsugar me」と「Spider trap」という曲をプロデュースしていただきました。 奥野真哉:昨年末の年越しも一緒にやったもんね。幕張で【COUNTDOWN JAPAN 15/16】の年越しカウントダウンをやったんだけど、そのタイミングで志磨くんもゲストで登場して、曲が終わったらカウントダウンをやろうって言ってたんだけど、いざ終わってみたら残り2秒しかない(笑)。バンドの後ろにカウントダウンが表示されてるんだけど俺はすっかり忘れてて、志磨くんがずーっと後ろを気にしてるから「不審者がステージが入ってきたのか……?」って思ってた。 志磨遼平:カウントダウン前に「第九」をやるんですけど、予定通りに進めばフル尺でやって、もし押してたらショートバージョンでいきましょうって話になってたんですよ。僕は途中から出ていって指揮をする役だったので、押し気味だったら僕が後ろを向いてバツを作りますと。で、本番になって僕が出ていったら残り15秒。全然バツなのに、誰も僕のバツを見てない!(笑) 奥野真哉:「何で志磨くんバツ出してるんだろう? ウエノくん間違えてるの?」って思ってた。 志磨遼平:むしろウエノさんだけ気づいてくれてたんですよ(笑)。 シシド・カフカ:そんな年明けを一緒にすごしていただきました(笑)。私は元々、同期を使っていたのでクリックを聴きながら演っていたんですけど、それを無くしてからはほとんど奥野さんにご一緒いただいています。当初はクリックが外れることで、それまで軸となっていたものが無くなる上での心もとなさを感じていたんですけど、奥野さんに支えていただいている心強さ。そして楽しさをプラスしてくださるんです。 志磨遼平:同期やクリックには無かったユーモアですね(笑)。 奥野真哉:プレイのいたらぬところを笑いでカバーして50年(笑)。 シシド・カフカ:私はドラムをプレイしながら歌っているので、見失うところをすべてカバーしてくれる心強い存在です。
志磨遼平「この日ばっかりは廊下で着替えるんやろうなって」
越川和磨:奥野さんはプレイヤー生活何年になるんですか? 奥野真哉:鍵盤を始めてから30年。元々はギターをやってて、(ローリング)ストーンズの2代目ギタリストを狙ってたんやけど(笑)。で、途中からモッズに憧れてリッケンバッカーを買って、ポール・ウェラーみたいなギタリストになろう思ったんやけど、買った一週間後にニューエスト・モデルに入っちゃったので、リッケンを売ってオルガンを買うことになって……。今でもチャンスがあればギタリストの座を狙ってるよ(笑)。 志磨遼平:奥野さんはギターもお上手なんですよ。奥野さんが作られたデモを聴いたことがあるんですけど、ギターとベースも録音されていたので「いいですね、これ」とお訊きしたら「これ、俺やで」って。 奥野真哉:センスが良いんですよね、光ってる(笑)。それは冗談だけど、今回のステージに出ていただく方々にはそういうセンスの部分を気に入ってもらっていて、一緒に仕事した人たちなんだろうなって。カフカちゃんに曲を作らせてもらったり、昔毛皮のマリーズで一緒にやらせてもらったのも、アレンジ面まで共有してもらえてる結果なのかなって。 基本的に自分のことをあんまり鍵盤プレイヤーとして捉えてなくて、好きな音楽を共有するために鍵盤を利用しているというか。鍵盤の人が個人でやる生誕祭とかだと、もうちょっと弾き語りとかがメインになるじゃないですか。でも僕は自分の好きな曲ばかりを集めてやるライブにしたいなって。 志磨遼平:僕らが一番下っ端ですからね。この日ばっかりは廊下で着替えるんやろうなって(笑)。 越川和磨:僕らは10年くらい前、毛皮のマリーズのインディーズ2nd『マイ・ネーム・イズ・ロマンス』を作っていた時に、ローディーなどをされているQ太郎さんや、うつみ(ようこ)さんたちと一緒に飲んでたことがあったんですよ。その時に僕らが「鍵盤入れたいなあ……」みたいな話をしていたら、その場でQ太郎さんが「奥野に訊いてみよう」って電話をかけていただいて。 志磨遼平:ちょうどレコーディングしている最中だったんですけど、そこで奥野さんに参加していただいて、次のアルバムからはアレンジも一緒にやっていただきましたね。 奥野真哉:だから僕がマリーズを仕上げたといっても過言では……(笑)。- 奥野真哉「スケジュールが合わない限り、断ったことがない」
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Interviewer&Photo:杉岡祐樹
奥野真哉「スケジュールが合わない限り、断ったことがない」
--奥野さんは客演やサポートで参加する上で意識していることなどあるのでしょうか?
奥野真哉:僕はスケジュールが合わない限り、断ったことがないんですよ。誘ってくれるってことは自分を必要としてくれていると感じてますし、そこが一番嬉しいじゃないですか。だから今、大変なことになってて(笑)。ずっと気にしないでやってきたんだけど最近は身体のことも考えて、演奏後にアイシングとかをしてる。 シシド・カフカ:私もめったにしないんですけど、何もしてこなかったから手首を痛めたりして、アイシングを始めてますね。 奥野真哉:ライブ直後ってアガってるから気にならないんだけど、みんな気をつけた方がいいですよ。まァ僕と同世代の方々は人間力が強いっていうか、あの人たちってステージの上だけじゃなくて普段からあのまま。ON / OFFを作らないタイプというか。だからずっとやれているんだろうし、嫌われてる人は嫌われてるんじゃないかな(笑)。 越川和磨:それは誰なんですか? 奥野真哉:えっとね。--仰らなくてけっこうです(笑)。ただ、ミュージシャンはアスリートと違って、加齢が必ずしもマイナスに繋がるものではないと思いますし、経年によってプレイも変化していくわけですよね。
奥野真哉:それは色々ありましたね。ソウル・フラワー・ユニオンの音楽も変わっていってるし、根本的な熱みたいなところは変わらないけど、身体に合った音楽になってくる気はしてる。プレイしている時は自分の中にある引き出しが出てくるわけで、積み重ねの中で培ってきた自分の宝物というか。長くやっている人はそういうところがいいんやろうなって思うし、若い子は若い子で瞬発性がいい。所詮音楽やから、満足してやれているかはその人の表情や気持ちの部分からわかる。ずっとそういう人でありたいなとは思うし、今回出てくれるのもみんなそういう風に見える人たちで、ミュージシャンとして濃いし我が強いよね。
志磨遼平:僕は若い頃は知らんで聴いていて、後に奥野さんだと知ることが多かったんですよ。僕らが中学生くらいの頃に、奥野さんは同世代の方々と世の中を席巻していましたよね。学生時代に奥野さんたちの音楽を聴いてきたから、隔世遺伝のように伝統的なロックンロールをやりたいと。でも、僕らはコードもロクにわかっていないような状況で適当にやってきたから、「あのレコードの何曲目の感じ……」みたいな言い方しかできないんですよ。専門的な言葉でお願いできなかった頃から奥野さんがいてくれたのはめっちゃラッキーで、そのイメージを形にしてくれるんですよね。 シシド・カフカ:私は奥野さんから出してもらったものに違和感を覚えたことが無いので、いつも「それいいですね!」って楽しい思いをさせてもらってます。
奥野真哉「死活問題ですよ。あれは一番ショックやった。」
奥野真哉:やっぱりライブに参加したりすると、自分のセンスの中で「このアーティストはこういうのをやったらかっこいいやろうな、かわいいやろうな」っていうのがわかってくる。カフカちゃんの場合はワイルドなドラミングをしているのに、かわいい部分が見えたのね。ハッピーな感じもあるし、そういう部分が好きだから「朝までsugar me」みたいな曲を作らせてもらったりとか。結局、自分の好きな音楽をその人にぶつける形になるよね、アレンジにしても音にしても。色々注文されて「この音、このフレーズ、あんまり好きじゃないのに……」って思いながらCDが出来上がったことが一度も無い。ひょっとしたらあったのかもしれないけど、そういう人からはじきに呼ばれなくなるから(笑)。今は全然ストレス無く仕事をやらせてもらってるね。
越川和磨:モンちゃん(中村“Mr.Mondo”匠)のTwitterで紹介されてた、【バンドマンのすべらない話】の楽屋でプレッシャーと戦う奥野さんの姿は面白かったですよ(笑)。(中村“Mr.Mondo”匠のTwitter)
--下手するとライブステージ前より緊張やストレスがありそうです(笑)。
志磨遼平:「車を運転していて、良いネタを思いついたら路肩に止めてネタ帳に書き込むねん」って、良いメロディが思いついた、みたいな感じで言うんですよ(笑)。 奥野真哉:そのネタ帳を去年失くしちゃって、死活問題ですよ。あれは一番ショックやった。これから何を指針に生きていけばいいのか……(笑)。関連リンク
Interviewer&Photo:杉岡祐樹
越川和磨「足を向けて寝られないのでケツを向けて寝ようと思います」
--では、そろそろ12月2日に恵比寿LIQUIDROOMで開催される【奥野真哉 生誕50年祭 『今宵かぎりの雑種天国』】への意気込みをお願いします。
越川和磨:俺は呼ばれると思ってなかったから、奥野さんから直接お電話をいただいて「自分でよければ喜んでやらせていただきます!」ってお答えしたんですけど、電話を切った後で「何を言っとんねん……」って引くくらい凄すぎるメンツじゃないですか(笑)。ただ、奥野さんにはかつてバンドの流れも作っていただいたし、シシドさんの曲に参加させていただくきっかけなども奥野さんですから、足を向けて寝られないのでケツを向けて寝ようと思います。 奥野真哉:こういうところが良いよね(笑)、西くん(=越川和磨の愛称。毛皮のマリーズ時代に名乗っていた“西アメリカ”より)は。 越川和磨:まずは50年を祝いに行く思いですし、誰々とやることの緊張よりも、「奥野さんおめでとうございます。何でこんなに早く逝ってしもうたんや……」という思いで(笑)。本当にハッピーな1日になるので、当然緊張はありますけど本当に楽しもうかなって思ってますね。 志磨遼平:西くんはギタリストとして色々参加するので大変だと思いますけど、僕やシシドさんは自分の曲をひとまずは歌って……。ただ、僕と奥野さんは大きな仕事もありますからね。それだけが今、不安かなと(笑)。僕の音楽人生を懸けて臨もうかなと。 シシド・カフカ:私も奥野さんから直接お電話をいただいてものすごく嬉しかったんですけど、ラインナップを見て驚愕しました(笑)。でもそこに混ぜていただけることが光栄です。緊張もありますけど楽しみですね。素敵な夜になるだろうなって、一緒にお祝いできることが幸せです。 奥野真哉:まあ、見てもらったらわかると思うけど、自分のバンドがいない(笑)。ここをどう説明したらいいのか日々考えてるんやけど、誘った時にアイツも「俺なんかより幅ある人に来てもらった方がええやん」ってしおらしいことを言ってて、日時が迫ってきてメンツを固めなきゃいけない段階になってもう一回確認してみたら、「ああ、そういや言っとったなあ!」って、福岡でライブ入ってるって話で(笑)。自分のバンドのメンバーがひとりも出ない生誕祭も珍しい(笑)。まあ(ソウル・フラワー・ユニオンは)ワンマンが近くにあるから、ウチのファンにはそこに来てもらいましょう。
どこにも無いイベント、1曲1曲を噛み締めてやっていきたい
--では最後に、12月2日で50歳を迎える奥野さんからお三方にアドバイスなどはありますか?
奥野真哉:俺はあんまり年上でとか、キャリアがあってとか、そんなに嬉しくない。共に生きていきたいなっていうのがあって、若い子と付き合う時も同じ目線で同じ経験をして、感性を共有し合うようにしてる。50歳になれば年齢的には離れていくのかもしれないけど、センスや感覚はずっと若い子らと一緒でいたいよね。 志磨くんも西くんもカフカちゃんも、俺からしたら若手のミュージシャンかもしれないけど、ずっと対等でいられるような気がしている。そこでお互い切磋琢磨していると思うし、少なくとも俺はすごく勉強させてもらってる。 志磨遼平:奥野さんがそうしてくれるんですよね。萎縮しないように気遣ってくれるから、僕らも要望をお伝えしやすいんです。 奥野真哉:志磨くんはそうやって、すごいダメ出ししてくるんですよ(笑)。 志磨遼平:さらに先のクリエイティビティまで一緒に行きたい、という飽くなき探究心でございます(笑)。 奥野真哉:でも本当にそっちの方が絶対いいからね。年齢がいってくると誰も怒ってくれなくなるけど、そうなると広がっていかない感じがするんですよね。やっぱり一緒に作っているバンドメンバーみたいなのが、俺は好きなんやろうね。できたものに対して同じ喜びを持ってその場にいたい、それだけのこと。今回のイベントもそういう人に出てもらっている感じがあるし。言っても時間には制限があるからドタバタしちゃうところはあるかもしれないけど、絶対に面白いですよ。--この面々が今、LIQUIDROOMに集まるのは奇跡ですよ。
奥野真哉:外国でもプロデューサーの誕生日にノンジャンルな人たちが集まってライブをやったりするけど、フェスを凝縮したようなステージがあれば面白いのにってずっと思ってて、自分の50歳の誕生日を利用させてもらった感じもあってね。自分の誕生日を祝ってもらうって、恥ずかしいし恐れ多い感じもあんねんけど、自分がミュージシャンとして関わってきた人たち、スケジュールが合わへんで無理やった人たちもいるんだけど、バラバラな活動をしてきた人たちが一堂に会したらどうなるのか。そこがすごく楽しみ。どこにも無いイベントだと思うし、1曲1曲を噛み締めてやっていきたいなって。ライブ情報
【奥野真哉 生誕50年祭 「今宵かぎりの雑種天国」】
2016年12月2日(金)恵比寿LIQUIDROOM
開場 17:30 / 開演 18:30
出演:奥野真哉
ゲスト:朝倉真司、ウエケン、ウエノコウジ(the HIATUS)、うつみようこ、大森靖子、加藤ひさし・古市コータロー(THE COLLECTORS)、クハラカズユキ、越川和磨(THE STARBEMS)、小松シゲル(NONA REEVES)、佐藤タイジ(シアターブルック/TAIJI at THE BONNET)、シシド・カフカ、志磨遼平(ドレスコーズ)、TAISEI・NAOKI(SA)、田中和・田浦健(勝手にしやがれ)、地球三兄弟、ちわきまゆみ、トータス松本(ウルフルズ)、中田裕二、畠山健嗣(H Mountains)、ピエール中野(凛として時雨)、フラワーカンパニーズ、PES(RIP SLYME)、MAGUMI・杉本恭一・tatsu(LA-PPISCH)、真心ブラザーズ、真城めぐみ、Mr.PAN・Mr.LAWDY・Mr.GULLY (THE NEATBEATS)、YOKOLOCO BAND
特設サイト:http://www.breast.co.jp/okuno50th/
問:SOGO TOKYO 03-3405-9999
主催/企画/制作 : 奥野真哉生誕50年祭実行委員会
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