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ドン・フェルダー 来日記念特集~元イーグルスのメンバー&至高の名曲「ホテル・カリフォルニア」共作者の軌跡を辿る
「ホテル・カリフォルニア」「ならず者(DESPERADO)」など数々の名曲を生んだ70年代ウエスト・コースト・ロックの象徴、イーグルスの元メンバーとして知られるドン・フェルダーの来日公演が約4年半ぶりに決定した。世界的人気を誇るロック・バンドのギタリストとして、またソロ・アーティストとして半世紀にわたりシーンを逞しく生き抜き、ロック史の一部となったレジェンドの軌跡を辿る。
フロリダ、ニューヨーク…そしてロサンゼルスへ
1947年にアメリカ・フロリダ州ゲインズヴィルに生まれたドン・フェルダー。早くからギターに目覚め、学生時代からすでに地元では指折りのギタリストだったというフェルダーは、当然のように仲間たちとバンドを結成し、本格的に音楽活動をスタートさせていく。10代半ばからいくつかのバンドを組んだというフェルダーだが、彼の若かりし頃のバンド仲間にはイーグルスの創設メンバーであるバーニー・レドン、さらにあのスティーヴン・スティルスがいたという。さらに、デュアン・オールマンから直々にスライド・ギターのテクニックを伝授してもらったり、逆に音楽教室でフェルダーがトム・ペティにギター教えたりといったゲインズヴィル時代のエピソードも彼の自伝に記されている。
1968年頃にはニューヨークでフローというバンドを結成し、ジャズ・レーベルのCTIからアルバムデビューを果たしたものの、思うような結果が出せずにバンドは解散してしまう。次の活動を模索していたフェルダーは、旧友であるバーニーの誘いでロサンゼルスに移り住み、グラハム・ナッシュやデヴィッド・ブルーらのバンドでギタリストとして活動するようになる。そして1974年、レコーディングへの参加を機にイーグルスの正式メンバーに加入することになった。
レコーディングを機にイーグルスの正式メンバーに
イーグルスというバンドについては、いまさら説明するまでもないが…1971年に西海岸を代表する歌姫、リンダ・ロンシュタットを支えるバックバンドとして集められた名うての若手セッションマンたち=グレン・フライ、ドン・ヘンリー、ランディ・マイズナー、バーニー・レドンの4人。彼らは結成の翌年にイーグルスとしてデビュー、一躍ヒットチャートを賑わすロック・バンドへと華麗なる転身を遂げた。ドン・フェルダーがバンドに加入するきっかけとなったレコーディングは、イーグルスにとって3枚目のアルバム『オン・ザ・ボーダー』の制作現場だ。カントリー色を全面に打ち出した2ndアルバム『ならず者』が商業的にふるわなかったことを受け、よりロック色の強いアルバムを完成させるべく、レドンの旧友でダイナミックなプレイが持ち味のドン・フェルダーにお声がかかったというわけだ。
フェルダーがレコーディングに参加したのは「過ぎた事(Already Gone)」と「地獄の良き日(Good Day in Hell)」の2曲。アルバムのオープニングを飾る「過ぎた事」では、イーグルスらしい軽快なカントリー・ロックにダイナミズムとハードさを与える一方、「地獄の良き日」ではデュアン仕込みだという流麗なスライド・ギターで美しいコーラスワークを支えている。このレコーディングを経て、イーグルスの正式メンバーとなったフェルダーは82年の解散まで、そして1994年の再結成から2000年までの間、西海岸から世界へと羽ばたいた偉大なロック・バンドの一員としての活動を続けることになった。
『呪われた夜』~『ホテル・カリフォルニア』
フェルダーがイーグルスの正式メンバーに加入して最初のアルバムとなるのが、1975年6月にリリースとなった4thアルバム『呪われた夜』。J.D.サウザーやジャクソン・ブラウンなど、これまでのイーグルスのサウンドを支えた西海岸人脈をリセットし、前作よりもさらにロック色を強く打ち出した同作はバンド史上初の全米ビルボードNo.1アルバムを獲得、さらに「呪われた夜」(1位)、「いつわりの瞳」(2位)、「テイク・イット・トゥ・ザ・リミット」(8位)の3曲が全米TOP10ヒットを記録した。同作ではフェルダーの存在を改めて印象的づけた「呪われた夜」でのカッティング・ギターのほか、「ヴィジョンズ」でリード・ボーカルも担当している
『呪われた夜』の大ヒットを受けて、翌76年にリリースしたベスト盤『グレイテスト・ヒッツ 1971-1975』も全米No.1を記録。当時のシーンにおいて“最も商業的に成功を収めているロック・バンド”となったイーグルスは、再びJ.D.サウザーを制作陣に迎えて同年12月に『ホテル・カリフォルニア』をリリースする。イーグルス加入以降、ギタリストとしての才能だけでなくソングライターとしての才能も開花させたフェルダーだが、まさにその集大成ともいえる作品がイーグルスの代表曲「ホテル・カリフォルニア」だ。おもにフェルダーが作曲を担当したという憂いを帯びた旋律、そしてミステリアスな歌詞が印象的な同曲は、たんなるロックのスタンダードとしてだけでなく、あらゆるジャンルのカバーやアレンジで発表され続ける20世紀を代表する名曲のひとつである。しかし、そのメロディーはもちろん、後半部分に訪れる2人のギタリストによる競演は、同曲一番の見せ場といっても過言ではなく、これこそが「ロック史上最高の名曲」といわれる所以である。
ダブルネックギターがトレードマークに
ドン・フェルダーが「ホテル・カリフォルニア」のレコーディングに使用したのが6弦+12弦のダブルネック・タイプのエレキギター「ギブソン・EDS-1275」。スタンダードな6弦のエレキギターとより美しいコード音を奏でる12弦ギターを、持ち変える必要なくプレイできるダブルネックギターは、現在までドン・フェルダーのトレードマークとなっている。ちなみに『呪われた夜』以降バンドとしての絶頂期を迎えたイーグルスだったが、音楽性や人間関係、ライフスタイルの変化により、フェルダーの旧友バーニー・レドンはバンドを去っている。「ホテル・カリフォルニア」でフェルダーとともにギターを演奏しているのは、レドンの後任として加入したジョー・ウォルシュ。途中加入のギタリスト2人による名演が光る同曲は、バンド史上4曲目となる全米ビルボードNo.1を獲得し、世界的大ヒットを記録している。
イーグルス解散~ソロ活動へ
「ホテル・カリフォルニア」は1976年のグラミー賞最優秀レコード賞も受賞し、アメリカを代表するロックバンドとしての地位と名声を欲しいままにしていたイーグルスだが、それ以降のバンド活動は決して順風満帆とはいかなかった。1979年発表の次回作『ロング・ラン』が全米ビルボードのほか世界各国でNo.1に輝くも、それ以降、イーグルスが新作を発表する事はなく、1982年、ついにバンドは解散。メンバーはそれぞれソロの道を歩むことになった。フェルダーは解散翌年の1983年に『エアボーン』を発表して以降、イーグルスの再結成~解雇とそれらにまつわる一連の騒動で、しばらくソロでのリリースはおこなっていなかったが、2012年に、クロスビー、スティルス&ナッシュやTOTOのスティーヴ・ポーカロ、スティーヴ・ルカサー、デヴィッド・ペイチら西海岸のロック・シーンを担ってきた盟友たちをゲストに迎えて約30年ぶりのソロアルバム『ロード・トゥ・フォーエバー』を発表。初の単独来日公演も実現した。
2012年の来日公演では、オープニングの「ホテル・カリフォルニア」にはじまり「過ぎた事」「呪われた夜」はもちろん「テイク・イット・イージー」などのイーグルス名曲をたっぷり披露、また、トレードマークのダブルネックのほか多数のギターを曲ごとに持ち替えてプレイすることで日本のファンをおおいに歓喜させたフェルダー。今回の来日公演もまた2012年同様、彼のキャリアを凝縮したエネルギッシュなステージを繰り広げてくれるに違いない。
公演情報
Don Felder Formerly of the EaglesBillboard Live Japan Tour 2016
ビルボードライブ東京:2016/11/7(月)~8(火)
>>公演詳細はこちら
ビルボードライブ大阪:2016/11/12(土)
>>公演詳細はこちら
INFO: www.billboard-live.com
BAND MEMBERS
ドン・フェルダー / Don Felder (Guitar, Vocals)
グレッグ・スラン / Greg Suran (Guitar, Vocals)
ティモシー・デュルーリー / Timothy Drury (Keyborads, Vocals)
シェム・ヴォン・シュロック / Shem Von Schroeck (Bass, Vocals)
ステーヴィ・ディスタニスラオ / Stevie Distanislao (Drums)
関連リンク
Text: 多田愛子
ホテル・カリフォルニア
2015/07/22 RELEASE
WPCR-80233 ¥ 1,650(税込)
Disc01
- 01.ホテル・カリフォルニア
- 02.ニュー・キッド・イン・タウン
- 03.駆け足の人生
- 04.時は流れて
- 05.時は流れて (リプライズ)
- 06.暗黙の日々
- 07.お前を夢みて
- 08.素晴らしい愛をもう一度
- 09.ラスト・リゾート
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