Special
誰もが認めるファンク界の最高峰、ジョージ・クリントン&PARLIAMENT/FUNKADELIC 来日記念特集
ジェームス・ブラウンから始まったファンクの歴史が最高潮に盛り上がったのは、ジョージ・クリントン及びPファンクと呼ばれる彼の仲間たちが台頭した70年代後半だろう。ダンサブルなファンク・バンドは多数現れたが、彼らのようにスケール感と猥雑さとシニカルな味わいを見せる集団は類を見ない。加えて、壮絶なまでのライヴ・パフォーマンスや優秀なミュージシャンを生み出した功績を考えると、誰もが認めるファンク界の最高峰。その中心人物であるジョージ・クリントンは、まさにファンクの帝王の名に恥じない存在だ。まもなく来日公演を行なうジョージ・クリントンがどのような偉業を成し遂げたのか、その足跡を追ってみたい。
ジョージ・クリントンは、1941年生まれ。米国ノース・カロライナ州のカナポリスという町で生まれ、その後はニュー・ジャージー州のプレインフィールドに移り住んでいる。10代の頃にフランキー・ライモン&ザ・ティーンエイジャーズというドゥー・ワップ・グループに心酔。自身でもパーラメンツというグループを結成する。実家が床屋を経営していたが、そこで夜な夜な仲間たちを集めてドゥー・ワップの練習をしていたという。
パーラメンツは、小さなレーベルからシングルをリリースするなど地道な活動をしていたが、あくまでもローカルの域を超えなかった。しかし、クリントンはモータウン・レコードからソングライターとして迎えられることになる。そのうちにめきめきと力を付け、1967年に発表したパーラメンツの「(I Wanna) Testify」が大ヒット。ビルボードのR&Bチャートで3位、ポップ・チャートで20位を記録する。
勢いに乗ったパーラメンツが発展し、新たに生まれたのがファンカデリックだ。ヴォーカル・グループとそのバック・バンドという形態が、インストゥルメントの要素を進化させ、ファンクとサイケデリック・ロックの合体を試みることになる。1968年にウェストバウンド・レコードと契約を交わし、シングルを数枚リリース。1970年に初のアルバム『Funkadelic』で本格的にデビューを果たし、『Free Your Mind... And Your Ass Will Follow』(1970年)、『Maggot Brain』(1971年)、『America Eats Its Young』(1972年)、『Cosmic Slop』(1973年)といった強烈なインパクトのアルバムをリリース。ジミ・ヘンドリックスからスライ&ザ・ファミリー・ストーンに続くファンクとロックの融合をさらに進化させていった。
ファンカデリックの躍進の一方で、クリントンはパーラメントを本格的に始動。すでに1970年に『Osmium』を発表していたが、権利の問題でパーラメントという名義が使えなくなっていたため、1974年にようやくカサブランカ・レコードと正式に契約し、リリースできることとなった。『Up For The Down Stroke』(1974年)、『Chocolate City』(1975年)とリリースを重ねるが、決定的となったのは1976年発表の『Mothership Connection』だ。宇宙空間を舞台に猥雑なファンクを展開し、SF的な世界観で圧倒的な人気を得ることとなった。ここからシングル・カットされた「Give Up The Funk」はビルボードのTop100で15位まで上昇するなど、破竹の勢いで評価を高めていく。その後も、同様のコンセプトで、『The Clones Of Dr. Funkenstein』(1976年)や『Funkentelechy VS. The Placebo Syndrome』(1977年)などヒット作を発表。「Flash Light」(1977年)と「Aqua Boogie」(1978年)の2曲のシングルがR&Bチャートで首位を獲得している。
もちろん、ファンカデリックも平行して精力的にリリースを行い、『Let's Take It To The Stage』(1975年)や『Hardcore Jolies』(1976年)といったロック色の強いファンクの傑作を連発。そして、1978年には彼らの最高傑作といわれる『One Nation Under A Groove』を発表。大規模なアンサンブルによるギラギラとしたサウンドで、ファンクの真髄を提示した。続く『Uncle Jam Wants You』(1979年)ではエレクトリックなサウンドを盛り込むことで新鮮なイメージを作り上げ、シングル・カットされた「(Not Just) Knee Deep」も大きな話題となった。
ファンカデリックとパーラメントは主要メンバーの大半がかぶっていることもあり、彼らを総称してPファンクと呼ばれている。ここからは多数のファンク・スターが生まれることとなった。とくに、ベーシストのブーツィー・コリンズと、キーボード奏者のバーニー・ウォーレルは、Pファンクのサウンドの要といっていいだろう。また、エディ・ヘイゼル、ゲイリー・シャイダー、マイケル・ハンプトンといった個性的なギタリストや、ドラムのゲイリー・“マッドボーン”・クーパーやジェローム・ブレイリー、コーラス隊のパーレットなど、多くの才能が集結。その一部は、単独アルバムのリリースも行うなど、Pファンク勢は一時代を築いた。いわば、クリントンはファンク学校の校長とでもいうべき存在だったのだ。しかし、時代の流れもあってパーラメントは徐々に失速。1980年の『Trombipulation』を最後に活動を休止する。同じく、ファンカデリックも、1981年の『The Electric Spanking Of War Babies』が実質上のラスト・アルバムとなった。
クリントンが自身のソロ・アルバムを発表するのは、1982年になってから。ファースト・アルバム『Computer Games』は文字通りコンピューターを駆使したサウンドで、エレクトリックなファンクを披露し、「Atomic Dog」の大ヒットと相まって新機軸を生み出し、その後もコンスタントにアルバムをリリースしていく。ソロになってからの大きなエポックといえば、プリンスとの出会いだろう。Pファンクから多大な影響を受けていたプリンスは、彼のレーベルであるペイズリー・パークにジョージを勧誘。『The Cinderella Theory』(1989年)と『Hey Man, Smell My Finger』(1993年)の2作を制作している。また、プリンスの映画『グラフィティ・ブリッジ』(1990年)にも出演するなど、この時期は密なコラボレーションを行った。
他にも、レッド・ホット・チリ・ペッパーズやプライマル・スクリーム、スヌープ・ドッグからケンドリック・ラマーに至るまで、ジャンルを超えた共演を行い続けている。ソロ・アーティスト及びPファンク・ファミリーとしての活動は全盛期に比べると落ち着いてはいるが、今もなおその影響力は絶大で衰えることがない。R&Bからジャズのミュージシャンにいたるまで、彼を慕う発言はしばしば聞かれるし、ヒップホップ・シーンではPファンクをサンプリングすることは定番といってもいい。
ライヴ活動に関しても、休むことなくPファンクでしかできない強烈なパフォーマンスを観せ続けている。過去数回に渡るビルボードライブ公演も、もはや伝説といっていいだろう。まもなく行われる来日公演でも、圧倒的なステージを見せてくれることはずだ。
公演情報
George Clinton & PARLIAMENT / FUNKADELIC
ビルボードライブ大阪:2016/11/28(月)
>>公演詳細はこちら
ビルボードライブ東京:2016/11/29(火)~30(水)
>>公演詳細はこちら
INFO: www.billboard-live.com
BAND MEMBERS
ジョージ・クリントン / George Clinton (Musical Director, Vocals)
スティーブ・ボイド / Steve Boyd (Vocals)
ゲイリー・クーパー / Gary Cooper (Vocals)
マイケル“クリップ”ペイン / Michael“Clip”Payne (Vocals)
ブランディ・スコット / Brandi Scott (Vocals)
トニーシャ・ネルソン / Tonysha Nelson (Vocals)
パタヴィアン・ルイス / Patavian Lewis (Vocals)
テイリ―・パークス / Tairee Parks (Vocals)
トレイシー・ルイス・クリントン / Tracey Lewis Clinton (Vocals, Rap)
ボウヴィエ・リチャードソン / Bouvier Richardson (Rap)
カルロス"サー・ノーズ" マックマレイ / Carlos"Sir Nose"McMurray (Dancer)
アンプ・フィドラー / Amp Fiddler (Keyboards, Vocals)
ダニエル・ベッドロジアン / Daniel Bedrosian (Keyboards)
トラファエル・ルイス / Trafael Lewis (Guitar, Stage Manager)
ドウェイン・"ブラックバード"・マックナイト / Dewayne “Blackbird” Mcknight (Guitar)
ギャレット・シャイダー / Garrett Shider (Guitar, Vocals)
ライジ・カリー / Lige Curry (Bass)
ベニー・コワン / Bennie Cowan (Trumpet)
グレッグ・トーマス / Greg Thomas (Saxophone)
ベンジャミン・コワン / Benjamin Cowan (Drums)
関連リンク
Text: 栗本斉
関連商品