ある時期に「ダンサーから歌手に移らなきゃ」と思ったんだ。

▲リオン・ブリッジズ

――初来日でフジロック初出演でしたが、どうでしたか？

リオン・ブリッジズ：　最高だったし、とっても気に入ったよ。衝撃を受けたというか、本当に興奮したね。初来日であんなに大勢の人達の前でパフォーマンスできて嬉しかったし、みんなも楽しんでくれたように見えたよ。

――プライベートでも日本には来たことがなかった？

リオン・ブリッジズ：そうなんだ。これがプライベートだったらよかったな～なんてね（笑）。

――日本の印象は？

リオン・ブリッジズ：　とても親切な人が多いし、色んなものや場所を見たけど、日本は美しくてユニークだと思うね。

　　　

――元はダンサー志望だったそうですが、音楽を始めたきっかけは？

リオン・ブリッジズ：　ある時期に「ダンサーから歌手に移らなきゃ」と思ったんだよ。このままダンサーを続けていっても将来のキャリアとして難しいんじゃないかっていう壁にぶち当たったんだ。

その時は大学でダンスの授業も受けてたんだけど、母を手伝うために仕事を掛け持ちしなくちゃいけなくなって、授業を受けるのを辞めたんだ。だからその後は、ギターを弾いて歌うことくらいしかできなくて。でも、そっちの方が自分でもすぐ出来ることだったし、オープン・マイクに行けば自分の曲を歌えることもできた。だからダンサーになるよりも歌手になろうと思ったんだ。

――オープン・マイクで歌い始めてからは、プロのダンサーを目指すことを辞めたんですか？

リオン・ブリッジズ：　そうだね、歌い始めてからは、あまりダンスの練習もしなくなったし、授業も受けなくなったからね。ただ音楽をやりながら働いてたってかんじだったかな。

――なぜ50、60年代のレトロ・ソウルを参考にしたスタイルなのでしょうか？影響を受けたアーティストはいますか？

リオン・ブリッジズ：　この時代にこうゆうスタイルの音楽をやろうと思ったのは、ラファエル・サディークとかの音楽にインスパイアされたからってこともあるかな。もともとR&Bが好きで、特に50、60年代の頃のR&Bのスタイルやフォームがとても魅力的だと思ってたんだ。でも、何で今の時代に、ブラック・ミュージックのカテゴリーの中でこういう音楽をやってる人がいないのか疑問に思ったんだよ。それをきっかけに、自分がこの伝統的な音楽を受け継いで、自分のスタイルで音楽を作りたいと思ったんだ。

――ラファエル・サディークという名前が出てきましたが、自分もラファエルのように色々なジャンルの音楽をやっていくアーティストになると思いますか？

リオン・ブリッジズ：　まだ具体的にはわかんないんだけど、今はソウルをやってる自分しか考えられないかも。でもコンピレーションとかでコラボして、自分はビートに合わせて歌うっていうこともやりたいと思ってるよ。ナインス・ワンダーとかフライング・ロータスとかも好きだから彼らとも一緒にやってみたいとは思ってるよ。でも今はこのソウルっていう路の上にいるから、もしかしたら自分の楽しみとしてカントリーとかゴスペルのレコードを出したりするかもね。今は、自分が乗ってるこの線路に沿ってやっていこうと思ってるよ。

――アッシャーやジニュワインのファンともお聞きしましたが？

リオン・ブリッジズ：彼らの音楽ってすごくいいよね。彼らのような音楽が出来る人って他にいないんじゃないかな。歌もすごくいいしね。ラジオでかかってる曲なんかはかかさず聞くよ。

――彼らのダンスもチェックしてます？

リオン・ブリッジズ：　もちろんだよ。彼らはダンサーでもあるからね。次のMVではどんなダンスをするのか？とか。自分のMVの参考にもなるからいつもチェックするようにしてるね。

――ブレイクのきっかけとなったアルバム『カミング・ホーム』ですが、ヴィンテージ機材でライブ・レコーディングをしたと聞きました。なぜ最新機材が揃う現代で、あえてヴィンテージで収録したのでしょう？

リオン・ブリッジズ：　一緒にアルバムを作ったプロデューサーたちが、そのヴィンテージ機材を持っていてね。面白い話なんだけど、そのプロデューサーたちは僕と会う前から、その機材を使って歌ってくれるソウル・シンガーを探してたみたいで、もし見つからなかったら自分たちからそういうシンガーを探しに行こうと思ってたんだって。そしたら偶然にも僕がそこでアルバムを作ることになってね。それで、そのヴィンテージ機材を使ってライブ・レコーディングしたんだ。今の時代、ヴィンテージ風の音を作り出す機材もあるけど、そのサウンドはやっぱり同じではないんだよ。

――ホワイト・デニムのアーティストとも一緒にアルバムを作ったようですが、もともとホワイト・デニムのことを知っていましたか？

リオン・ブリッジズ：　これも面白いんだけど、レコーディングに参加する前は、ホワイト・デニムのことを全く知らなかったんだ。聴いたこともなかったね（笑）。でもたまたま彼らがオースティンでショーをしていて。たぶんあれは彼らと実際に会う1週間前とかだったかな。みんなで彼らのショーを見てて、誰なんだろうこの人たち？って思って、すぐにネットで調べたよ。（笑）

――そうなんですね（笑）レコーディングはどうでしたか？

リオン・ブリッジズ：　レコーディングは上手くいったよ。すぐに意気投合したね。スタジオに入る前はとても緊張したけど、すぐにリラックスした雰囲気になって、「この曲はこういう意味だからこういう風にしよう」っていう感じで、テープマシーンをオンにして、歌って曲を収録していったよ。

音楽にしろ、服装にしろ、その他のヴィジュアルにしろ、
良いものを取り入れていこうと思ってる。

――では、そのアルバム『カミング・ホーム』はどのような思いで作りましたか？

リオン・ブリッジズ：　アルバムを作ってたときは、まさか自分がレーベルからアルバムを出せるなんて思ってなかったんだ。しかもヒットして成功するなんてね。ただ単に、自分の曲をプロフェッショナルにレコーディングできるだけで嬉しかったんだ。そのアルバムを友達とかに、自分のアルバムを作ったんだぜって自慢できるくらいだと思ってた。でも、ふたを開けてみたら、自分の想像を遥かに超えた結果になったよ（笑）

――『カミング・ホーム』の収録曲には、お母さんのために歌った「リサ・ソーヤー」など、他の曲もラブソングが多いですが、誰か特別な人のことを思い浮かべて歌っていますか？

リオン・ブリッジズ：　そうだね。全部がそうじゃないけど、例えば「ブラウン・スキン・ガール」とかは当時付き合ってた彼女と初めて会ったときのことを思い浮かべながら作ったよ。しかも、これも偶然なんだけど、その彼女と出会った場所は、さっき話したプロデューサーたちと出会ったオースティンのバーだったんだ。マジカルな場所だよ。他にも、「ツイスティン・アンド・グルーヴィン」は祖父母が出会ったときの話を聞いて作ったよ。まあだから僕の曲は家族や自分に近い人のことを歌っていて、歌詞も事実に基づいていることが多いね。

――音楽同様、服装やSNS（インスタグラムなど）もレトロというか、モノクロだったりしますが、ビジュアル面でも何かポリシーがありますか？

リオン・ブリッジズ：　そうだね、自分のスタイルに合ったヴィジュアルにしようと思っているよ。音楽にしろ、服装にしろ、その他のヴィジュアルにしろ、良いものを取り入れていこうと思ってる。それに、クラッシックなものが好きだから、50、60年代にこだわっているというよりか、それがいい写真なら、それで良いって感じかな。単にモノクロが好きなのかも。

――インスタグラムの写真の中で、先月ビルボードライブでも公演を行ったテラス・マーティンとの写真がありましたが、今後なにか一緒にプロデュースする予定があるのでしょうか？

リオン・ブリッジズ：　ああ、あの写真ね。あの時はたまたまLAでテレビ番組用のレコーディングをしてたんだよ。テラス・マーティンとは初めてそこで会ってね、彼もすごいクールだよな。一緒にスタジオで収録してたときも、彼のやり方に驚かされたよ。みんなが1曲に集中してやってるときに、彼はそこから広げていって色んな音を生み出してたんだ。今はまだ具体的に彼と一緒に何かを作る話はないけど、本当にクールだから何か一緒にできればいいなと思うよ。

――『カミング・ホーム』がグラミー賞にノミネートされたときの気持ちは？

リオン・ブリッジズ：　あの時の気持ちは喜び以外の何物でもなかったね。本当に特別な瞬間だったよ。オートチューンのポップやヒップホップの曲が流行っている時代に、こういうオルタナティブなタイプのレコードや音楽が、まさかグラミーでノミネートされるなんて思ってなかったからね。本当に名誉なことだと思ってるよ。

――2014年からたった2年でここまでブレイクしましたが、一番の大きな変化は？

リオン・ブリッジズ：　一番の変化は、忙しくなったことと有名になったことかな（笑）。自分にとってはまだ難しいというか。曲作りして歌って有名になるっていうことに慣れてないからね。

――Leon （リオン）は本名ではないと思うのですが、この名前にしようと思ったきっかけは？

リオン・ブリッジズ：　“Leon”っていうのは、実は大学にいた頃のニックネームだったんだけど、友達から『クール・ランニング』って映画に出演してる俳優のレオン・ロビンソンに似てるよね！って言われたことがきっかけだったんだ（笑）。しかも最近、本物のレオンにも会うことができたんだよ。まあそれで、ニックネームの“Leon”で呼ばれるようになって。それで音楽を始めたときに、“Leon（リオン）”と“Bridges（ブリッジズ）”って意外と合うしイカしてるじゃんと思って、“Leon Bridges（リオン・ブリッジズ）”にしようと決めたんだ。だから今も友達からは本名じゃなくて“Leon”で呼ばれてるよ。

――普段はどんな音楽を聴いていますか？

リオン・ブリッジズ：　最近は、全般的にソウル以外はどんな音楽でも聞いてるね。特にトラップ（ラップ）、ヒップホップをよく聞くかな。あとは、カントリーとかも聞いたりする。ビヨンセの最新アルバムも聞いたけど、すごくよかったよね。でも、やっぱりヒップホップを聞くことが多いね。あとは、もちろんR&B。特に2000年代とか90年代に流行ってたやつとか。

――最近のお気に入りのアーティストは？

リオン・ブリッジズ：　最近でいえば、アンダーソン・パーク、BJ・ザ・シカゴ・キッド、ギャリー・クラーク・ジュニア、あとは、ジェームズ・ブレイクとかかな。今思いつくのはそのくらい。

――これからの目標は？

リオン・ブリッジズ：　音楽を通して自分がどれだけ人々に恵みを与えられるかってことかな。資金面でもね。具体的には、自分の近所で色々な支払いとかに困ってたりするシングルマザーのために何かできればいいなと思ってるんだ。

――最後に、このインタビュー記事を読んでくれているファンの方へメッセージをお願いします。

リオン・ブリッジズ：　ファンのみんな、愛してるよ。いつもサポートしてくれて本当にありがとう。またすぐに会えることを祈っています！

――ありがとうございました！

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