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「これだけ多くの人に届いているんだな」 ― 家入レオ インタビュー
2012年2月にデビュー、2015年2月には3rdアルバム『20』をリリースし自身4度目となる全国ワンマンツアーで15公演2万人を動員、2016年7月に月9ドラマ『恋仲』の主題歌「君がくれた夏」を含む4thアルバム『WE』をリリースした家入レオ。デビューから4年を経て、ヒットしたと感じた瞬間はいつなのか、ヒットチャートをどのように見ているのかについて話を聞いた。
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テクノロジーが発展してきているからこそ、生で聴くことに価値が生まれる
−−私たちは、音楽の浸透度を測るためにセールス、ダウンロード、ストリーミング、YouTube、ラジオなど8種類のデータを合算してチャートを作っています。家入さんは、日頃どのように音楽を聴いてらっしゃいますか?
家入レオ:今、色んな方法で音楽を聴けるような時代だからこそ、CDで聴くことを大事にしたいなと思ってCDを買っています。CDを買いに行く時間がない時は、ダウンロードをすることもありますが1曲だけではなく、アルバム単位でダウンロードするようにしています。
−−最近、どんな曲を聴いてらっしゃいますか。
家入:最近だと、D.A.N.や、Ykiki Beat、The fin.を聴いています。
−−子どもの頃は、お母さんのCDを通じて中森明菜やレベッカを聞いてらっしゃったそうですが、周りの友達はどんな曲を聴いていたんでしょうか?
家入:テレビで流れているようなヒット曲を聴いていました。子供の頃、毎朝その時に流行っている歌を歌う「みんなの歌」という時間があって。SMAPの「世界に一つだけの花」や「夜空ノムコウ」を歌っていました。
−−大きくなってからは、お母さんのCDだけじゃなく自分で買いに行ったりもしましたか?
家入:行きましたね。ただ当時のお小遣いだとシングルを1枚買うのが精一杯だったので、地元の駅前のCDショップの試聴機を、よく陣取って聴いていました。あとはレンタルショップにも行ったり、お年玉をもらった時にまとめて買ったり。
−−友達と貸し借りとかもしましたか?
家入:しました。好きなアーティストのアルバムがリリースされると「私は、こっちのCDを買うから、○○ちゃんは、こっちのCDを買ってね」って分担しながら買っていました。
−−家入さんがデビューされてから約4年の間だけでも、音楽の聴き方は大きく変わりました。特にここ数年は動画や音楽のストリーミングが浸透してきましたが、ストリーミングで音楽を聴くこともありますか?
家入:もちろんです。先ほどCDで聴いていると言いましたが、CDで聴くことだけが良いと思っているわけではありません。金銭的にも気になるCDを全て買えるわけではないですし。なので、ジャケ買いをすることもあれば、YouTubeを見ることもあるし、音楽との出会い方は様々だと思います。ただ音楽業界を発展させていくためには、音楽を聴く時にはある程度のお金は払うべきだと思っています。
−−そうですね。新しいものを生み出すには、大勢の人の時間とお金がかかっているわけですから。出会いがストリーミングだったとしても、そこからどんどん好きになってライブに行ったりCDを買ったりするる人も多いですよね。
家入:私がデビューした頃から、ずっと言われてきたことではありますが、手軽に音楽を聴ける時代になったからこそ、ライブの価値がすごく上がってきていると思います。初音ミクのように人間じゃない人もライブをする時代ですし。テクノロジーが発展してきているからこそ、生で聴くことの価値はより重要になっていくと思うので、ライブの時間は大切にしていきたいなと思っています。
−−何十公演とツアーをしたとしても、全く同じパフォーマンスにはならないですもんね。ライブには、その日、その時間にしか共有できない感動があります。
家入:ライブって、毎回 平均点を取れるようなパフォーマンスをすることは何回かステージを経験すればできちゃうと思うんです。それよりも毎回違う公演をすることの方が難しいんです。だってセットリストもメロディも歌詞も同じことを大抵はやるわけだから。でも、その日のお客様の空気感やバンドメンバーが言った一言で、微妙にライブって変わってくるんです。そういう違いを、きちんと伝えていけるようなライブにしたいと思っています。
−−トークの内容が変わることで、次に出る音色も変わってくるんですね。
家入:絶対、違うと思います。
−−音楽との接し方の一つとして、今 若い世代が最も多いのが動画ストリーミングだと思います。家入さんは、ミュージックビデオを作る際に意識していることはありますか?
家入:昔は「私は歌で勝負するんだ!」っていうことに、こだわりすぎていましたが、最近は考え方が変わりました。自分の音楽を届けるということはメロディと歌詞と歌だけじゃなくて、色んな要素も含めて総合的に伝えていかないといけないなって。
−−考え方が変わったのは、何か心境の変化があったのでしょうか?
家入:何かがあったわけではなく、年齢と共に徐々にですね。昔は「お洒落なんて、必要ない」って思っていましたから。歌で勝負できるかどうかに尽きるって。もちろん今も一番大事なのは「歌」ですが、歌以外のところも大事に作っていかなきゃなって最近すごく思うようになりました。
−−世界観の伝え方が上手だなと思うアーティストはいますか?
家入:カッコイイことをやるだけじゃなくて、エッジが効いたことを、きちんと世の中の人にも伝わるようにバランスを取って落とし込める人はすごいなと思います。例えばサカナクションさんは動画での見せ方も上手だし、ジャケットもお洒落だし、新しいものの発信の仕方がすごいって思います。あとは木村カエラさんも素敵です。まだお会いしたことはないんですが、日本のありとあらゆるアーティストと一緒にやりながらも、自分らしさを失わず、きちんと世界観を確立してらっしゃって、すごいなと思います。
−−では、今の“家入さんらしさ”って何でしょうか?
家入:色んなことに挑戦させていただいた結果、やっぱり思うのは自分の原点でもある“声”ですね。特に、今回のアルバムを作っていて感じましたが、一つの表現だけではなく、色んな表現ができる声だと思うので、そこはすごく自分の強みだなと思います。
リリース情報
WE
- 家入レオ
- 2016/07/06 RELEASE
- [初回限定盤 VIZL-986 定価:¥ 3,672(tax in.)]
- 詳細・購入はこちらから>>
- [通常盤 VICL-64588 定価:¥ 3,132(tax in.)]
- 詳細・購入はこちらから>>
関連リンク
ヒットしたと感じた曲は「君がくれた夏」
−−2012年にデビューされてから現在までの間で、自分がヒットしたなと感じたのは、いつでしたか?
家入:今までで、一番反響が大きかったのは2015年8月にリリースした「君がくれた夏」です。
−−Billboard JAPAN HOT 100でも1位を獲得し、6週連続5位以内にチャートインしました。
家入:ありがとうございます。でもチャートの結果というよりは、まわりの人に褒められることがすごく増えたのが印象的でした。放送局などにお邪魔するとみんな「あの曲、良かったじゃん」、「良かったね。家入」って言ってくださって。ドラマ『恋仲』の影響も大きかったと思います。10代の支持率が高かったので女の子のファンも増えて、街中で声をかけられることが多くなって。「これだけ多くの人に届いているんだな」って思いました。
▲ 「君がくれた夏」MV
−−たしかに、街中でもとてもよく耳にしました。
家入:反響が大きかった結果、この勢いを保ったままどうしていくかという話し合いをすることになって。 どんなテイストでやっていきたいのかとか、新しいことにチャレンジしてみた方が良いのかとか。言いたいことを言い合えるチームなので、何度も意見がぶつかって、言い合いになりながら話し合いを続けました。そうしたら「アーティストとしての家入レオも素敵だけど、こうやって接している時の家入レオもすごく魅力的だよ」って言ってくださった方がいて。その言葉で肩の力が抜けて、自然体でいて良いんだって思えるようになりました。もちろんヒットした方が全員幸せになれると思いますが、あまり気にしなくなりました。
−−じゃあ、あまりチャートは見ませんか?
家入:いえ、見ます。全くチャートを気にしないアーティストはいないですよ(笑)。
−−そりゃそうですよね。
家入:もちろん気になります。特にデビュー当時は結果がすごく気になったし、色んな人の意見が気になって落ち込むこともたくさんありました。でも私は全ての曲に愛情を注いで作っているし、売れたから良い曲、売れなかったら悪い曲じゃない。売れたか売れていないかを考えるのはレコード会社の方にお任せして、私がやるべきことは自分が面白いことをどんどん曲にして、少しでも自信を持って出せるものを増やすことだと思っています。
−−実は、私達はチャートを構成する8つのデータを分析できる「チャートインサイト」というサービスを作っています。ちなみに、これは「君がくれた夏」がチャートインしてから今までのグラフです。折れ線グラフの色の違いはデータの違いを表しています。例えば、「君がくれた夏」のリリースは去年の8月ですが今年の5月にTwitterとセールスが再浮上していますよね。これは、NHK『歌謡チャリティーコンサート』で、「君がくれた夏」をフルオーケストラで演奏されたタイミングの直後です。番組を見た人が感動してCDを買ったり、ダウンロードしたり、Twitterで拡散している様子が分かります。あと、家入さんの作品全体を通じて特徴的なのは、CDをPCに取り込む「ルックアップ」というポイントがずっと下がらないこと。CDをPCに取り込んだ時に、アーティスト名や曲名が表示されますよね?これは、グレースノートのメディアデータベースにアクセスして検索しているんですが、この検索回数をカウントしているんです。このデータによってCDを借りて聴く人や、買ったCDを繰り返して聴くためにPCに取り込んでいるファンの多さを知ることができます。他にはカラオケで歌うために繰り返し聴く時とか。家入さんのミュージックビデオは、歌詞を表示されている映像が多いですが、やはり一緒に歌いたいファンが多いのでしょうか?
家入:そんな動向が見えるんですね。私は言葉を大事にして作っているので、ミュージックビデオという限られた時間で、なるべく歌詞が伝わるように表示させています。
−−今回リリースされたアルバム『WE』ですが、前作から約1年5ヶ月ぶりとなりました。20代になってから、自分の書く詩に変化はありましたか?
家入:そうですね。20歳を過ぎてから行ける場所も増えましたし、交友関係も広がりました。それに、プライベートでお酒も飲めるようなったのでテキーラコークっていう言葉も出てきたり。私生活の変化によって、浮かんでくる言葉も変化していると思います。
−−歌詞は、どういう時に思い浮かぶんでしょうか?
家入:今回のアルバムは制作期間が約半年しかなかったので、スタジオにこもって作りました。ただタイトなスケジュールの中でも、下北沢に行ったり朝まで飲んだりしているので、そういう日常をメモしながら歌詞の材料にしています。
−−アルバムのタイトル『WE』は、どのような思いを込めて付けられたのでしょうか。
家入:今までのアルバムは、プロデューサーの西尾芳彦さんに支えてもらいつつ、1人でこもって自分を追い詰めすぎるくらい追いつめて作ることが多かったんですが、今回は多くの人にエッセンスをもらいながら作ることができました。プロデューサーの多保孝一さんやミュージシャン、アレンジャーの方のおかげで自分の曲がどんどん大きくなっていく過程が、すごく幸せで。自分は1人じゃないんだって思いながら作ることができたので「WE」というタイトルにしました。
−−色んなテイストの曲があって、とても楽しく聴かせていただきました。
家入:私は17歳でデビューしてから思春期の葛藤についての歌が多くて、みんなそれぞれ自分の中に光も闇もあるのに、私の場合は闇の部分だけにスポットが当たることが多くて。仕事を通じて知り合った方に「友達と一緒にパンケーキを食べに行ったんです」って話すと、「えぇ!」って驚愕されることもあって。
−−たしかに、友達とパンケーキは意外ですね…。
家入:そういう反応を見て、「私、ちょっとマズイな」って思い始めたんです(笑)。それでインタビューで「私も、ハジけたりしますよ」って話すようにしたんですが、やっぱり音楽でも表現しないと説得力がないかなって。それで作ったのが「Party Girl」です。この曲のおかげで自然体になることができて、肩の荷が下りました。
−−このアルバムには、家入さんの色んな一面が詰め込まれているんですね。
家入:今までのアルバムは、どこかで福岡を引きずっていましたが、今回は東京に来てからの1stアルバムのような作品です。今回、プロデュースしてくださった多保孝一さんのおかげで音に対してとても自由になることができましたし、4年の間に色んなことに慣れることができました。デビュー当初はテレビに出るのもすごく苦手で。テレビに出演できるのは、多くの人の支えのおかげなのに「ただ歌を歌いたいから東京に来ただけなのに」って思っちゃうこともあって。カメラを向けられても何をしたら良いのか分からないから、固まってしまって。でも、そういう環境にも慣れることができて、本当にやりたいことができた1枚でした。
リリース情報
WE
- 家入レオ
- 2016/07/06 RELEASE
- [初回限定盤 VIZL-986 定価:¥ 3,672(tax in.)]
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- [通常盤 VICL-64588 定価:¥ 3,132(tax in.)]
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アルバムを通じて、人との出会いの大切さを再認識した
−−タイトル曲の「we」も、かわいくて素敵でした。
家入:この曲はウーリッツァーを弾き語りしながら、一発録りをしました。初めて詞を先に書いてからメロディを付けたんですが、自分でも「すごく良い曲ができたな」と思っています。スタッフの方から「家入レオが作詞作曲したバラードを聴きたい」って言っていただいて、急遽作ることになって。アルバム制作の終盤にさしかかっていたので、タイトなスケジュールだったんですがスタジオにこもって作り上げました。今まで私が作った曲は、良く言えばストレートだけど、悪く言えば押しつけがましいところがあったと思います。でも今は「私の曲を嫌いって言う人もいるかもしれない。気が向いた時にだけでも聴いてもらえれば」って思えるようになりました。そして、どんな時に来てくれても大丈夫って受け止められるアーティストでいたいなあって。そういう心の変化を歌にしたのが、この「we」です。
−−たしかに、そっと包みこんでくれるような温かさも感じました。でも、アルバムの最後に入ってそうな曲ですが、ちょうど真ん中に入っているというのが面白いですね。
家入:何曲目に入れるか、とても迷ったんです。最近、アナログレコードにハマっているんですが、もしこのアルバムがレコードだったら、「we」でA面が終わって、B面の一曲目が「Hello To The World」だったら最高だなと思って真ん中に入れることにしました。
−−アナログも聴かれるんですね。
家入:そうなんです。「シティボーイなアイツ」の歌詞にあるように、下北沢で買いました。
−−「Party Girl」も家入さんの作詞作曲ですね。
家入:この曲は、80kidsにシンセサイザーのアレンジをお願いして作ったので、とても派手な仕上がりになりました。今まで「家入レオの曲を聴くと、懐かしい気持ちになる」と言われることが多かったんですが、嬉しい反面ちょっと引っかかっていた部分もあって。その頃は、ビートルズとか色あせない音楽が好きだったので、その影響もあると思うんですけど…。でも最近は同年代のアーティストの音楽も聴くようになってきたので、今 自分が聴いている音を自分のアルバムにも落とし込みたいと思って作りました。
−−日頃、聴いている曲がこのアルバムにも表れているんですね。
家入:そうですね。他には、「シティボーイなアイツ」は、Galileo Galileiのアルバムのプロデュースにも関わっているPOP ETCのクリストファー・チュウにアレンジャーとして参加してもらいました。細かい音のやり取りはありましたが、最初から決まったなっていう手応えを感じられましたね。他にも、サカナクションの制作の方にもエンジニアとして参加してもらったり。音作りについても、とてもこだわって作っています。自分の作品としてきちんとリリースしたかったので、オーケストラの録音からミックス、マスタリングまで全工程に立ち会わせてもらいましたし。でも多保さんとお会いしてから半年で一気に作り上げたので、みんなボロボロでしたけどね。多保さんなんて、髭そってなかったですもん。
−−髭を剃る時間もないくらいだったんですね。
家入:今回のアルバムを通じて、人との出会いの大切さと、出会えるかどうかは運なんだなっていうことを感じました。そしてスタッフにすごく恵まれているなと実感して、自分の心を開くことができるようになりました。今までは自分の書いた歌詞について何か言われると、否定されているような気持ちになって、アドバイスとして受け止められなくて。でも落ち着いて考えてみたら、まだ21歳なのに自分が一緒にやりたい人とやらせてもらえるなんて、ものすごく恵まれているじゃないですか。だったら周りの人が「家入にこれを書いてもらったら面白いんじゃないか」とか、「こういうテーマで作ってもらったら良いものが生まれるんじゃないか」っていうアイディアは、どんどん取り入れた方が良いと思うし、その結果自分自身がもっと大きくなれればと思えるようになりました。
−−周りの人からのアドバイスによって、新たな自分を発見できることもありますしね。
家入:そうですね。それに、どんな人とやっても自分がブレない自信も生まれてきました。
−−これから挑戦したいことは、ありますか?
家入:アルバムが完成したら、ちょっと休みたいなって思っていたんですが、作り終わってみると、もう次の曲を作りたいです。色んな人と一緒に作ってみたいし、他のアーティストとコラボレーションもしてみたい。
−−家入さんの作曲した作品も、もっと聴きたいです。
家入:そうですね。今回は、2曲 自分で作曲できたということも自信を持てた理由の1つです。前作の『20』 は、自分の作曲した作品が1曲もなかったので、シンガーソングライターって紹介されるのが重荷になってしまって。デビューしてからも高校にも通っていたので、作曲する時間がどんどん減っていってしまって。今回のアルバムを通じて、作曲できるかどうか舵を切っていくのも自分次第なんだなって改めて思いました。来年でデビュー5周年になるので、これからはリリースのタイミングに関わらず、制作をし続けるというスタイルに戻していきたいなと思っています。
−−最後に、音楽を通じて何を伝えたいですか。
家入:結局、自分が伝えられることって自分の人生の範囲の中でしかないですよね。なので嬉しいことも楽しいこともできるだけ多く経験して、自分の目から見た景色を伝えていければなって。あるディレクターの方から「世の中にはプロの作詞家の人もいるんだから。でも、ファンの人が待っているのはレオちゃんが、どう感じたかっていうことだから」って言われて、そう思えるようになりました。なので、自分の生み出すものに自信と責任をもって伝えていきたいと思っています。
▲ 4th Album『WE』トレーラー
リリース情報
WE
- 家入レオ
- 2016/07/06 RELEASE
- [初回限定盤 VIZL-986 定価:¥ 3,672(tax in.)]
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