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ルーカス・グラハム インタビュー:「7イヤーズ」が大ヒット中のデンマーク・バンドが遂に世界アルバム・デビュー!
「僕が7才だった頃」という印象的なフレーズから始まる「7イヤーズ」で、現在大ブレイク中のデンマーク出身バンド、ルーカス・グラハム。同曲はこの3月に米国Billboard Hot100で第3位を記録、さらにUKチャートでも連続1位を獲得し、ルーカス・グラハム(ボーカル)、マーク・“ラブスティック”・ファルグレン(ドラムス)、マグナス・“マグナム”・ラーション(ベース)、キャスパー・ドハード(キーボード)という幼なじみで結成されたこのバンドを一躍、世界的なブレイクを約束されたグループの一つへ押し上げた。
結成は2010年。デンマーク国内、ヨーロッパ、そして世界へとその人気が飛び火するバンドが、この4月に初の世界デビュー・アルバム『ルーカス・グラハム』をリリースする。バンドのフロントマン、ルーカスの情熱的な歌唱と、ヒップホップ以降のバンド・サウンドが一体となったその音楽性は、レトロなポップスやソウルの影響を感じさせつつもモダンで唯一無二。マルーン5のファンにも、アデルのファンにも、テイラー・スウィフトのファンにもおすすめしたい作風に仕上がっている。アルバムは4月1日に配信がスタート、20日に国内盤CDがリリースされる。その発売を前にBillboard JAPANではバンドのインタビューを掲載。アルバムのことはもちろん、音楽的なキャリアや精神性について、ルーカスの言葉に注目して欲しい。
TOP Photo: Jeff Forney
「日本には完璧を目指す文化があると思う」
−−すでに多くの人達に同じことを言われたんじゃないかと思いますが、あなたの音楽を聞いて、あまりの凄さにぶっ飛ばされました。
ルーカス・グラハム(以下LG):最高だね。どうもありがとう。僕も、大傑作だと思ってるよ。僕のアルバムだから、そう信じないとね(笑)。
−−1月末に、Shazam Japanのウイークリーチャートで、「7イヤーズ」が1位を獲得したんですよ。欧米には少し遅れをとっていますけれど、日本にもすでにあなたのファンがいるんです。デンマークから遥か遠く離れた国で、あなたの曲が成功しているって、どんな気分ですか?
LG:最高にワイルドな気分だね。なぜなのかは分からないけど……。実は、日本に日本人の友達がいるんだ。コーイチロー・モリっていうんだよ。彼はダンサーで、舞台をやりにデンマークに来ていたんだ。僕が10代の頃に会ったんだけど、彼と一緒に7つの舞台劇に出たよ。だから、彼が僕の曲を聞いてくれたらいいな、なんて思ってて(笑)。彼がデンマークに来る時は連絡をくれるんだけどね。
−−きっと聞いてくれてると思います! 日本についてはどんな印象を持っていますか?
LG:まず春の桜が思い浮かぶな。大事なお祭りだよね。僕達の国にも、南西部に桜を沢山見られる地域があるんだよ。あと、子供の頃は日本といえば忍者と侍だった(笑)。それと、僕は2軒のミシュラン・レストランの共同経営者をしているから、食べ物のことを考える時に、よく日本のことを考える。僕はすごくすごく食べ物が好きなんだ。
−−日本のことを良く知っているんですね。
LG:もちろん。だから僕達、日本に行きたいんだよ。日本には完璧を目指す文化があると思う。それって素晴らしいことだと思うんだよ。僕達も音楽で完璧を目指しているからね。例えば「7イヤーズ」は、作曲にかかった時間は3時間半だったんだけど、プロデュースにほぼ2年かかったんだよ。この国の大部分の人達はそんな働き方してないんだけど、僕達は完璧を求めて仕事してる。可能な限り完璧なものを作ろうとしているんだ。それって、日本文化においてはノーマルなことだと思うんだよね。
−−そうですね。多くの日本人は完璧を求めて細部にまでこだわるハードワーカーです。良く知ってますね。まだYoutubeでしか見たことがないですが、あなた達のライヴは本当に素晴らしいので、ぜひ日本にも公演をしに来て欲しいです。ライヴはあなた達にとって、どれぐらい重要なことなんでしょうか?
LG:ライヴでプレイするのは、僕達にとって一番重要なこと、ライヴ・ミュージシャンとしての僕達の中核だよ。でも同時に、ライヴは感情を解き放つ場所でもあるんだ。ステージに上がって、ハードワークでたまった緊張を発散するんだよ。そして、観客との親密な繋がりを獲得しようとするんだ。ステージの上にいると、時間の流れが変わるんだよね。全てがスローダウンするのと同時に、全てがスピーディーになるんだ。だから、何をするかとか、どこに動くかとかを選ぶ時間は普段よりもあるんだけど、全てが3秒で終わって、気づくとステージ裏にいるような感じなんだ。それからアンコールのためにまたステージに出て何曲かやって、アンコールが終わって、観客が会場から去って、ホテルの部屋に戻って部屋の明かりを消した時に、思うんだ。「まるでたった3秒前にステージに上がって、爆発したみたいな気分だ」って。
−−へええ。ステージの上にいる間は、違うゾーンに入り込んでいるような感じですか?
LG:それを説明する言葉が見つかるといいんだけど、英語やデンマーク語には存在しないと思う。ただインドとか日本とか中国の哲学には、それを表現する言葉があると思うんだよね。中国では、“禅”って呼ばれてるんじゃないかな。
−−なるほど、“禅”なら日本でも使われている言葉です。分かりますよ。
LG:あ、そうなんだ! 多分だけど“禅”の境地って、全てが完璧で、起こることの全ては、起こるべくして起こっているんだ。だから、そこでは失敗も失敗じゃなくて、自分が今いる現実の一部としてただそこにあるんだ。
−−理解できる気がします。
LG:でも、欧米のジャーナリストにこれを説明するのは難しいんだよね。欧米人でこれを体験する人は多くないから。瞑想もそれほど行われてないしね。今の西洋にはスピリチュアリティが足りないんだよ。でも、これから戻って来ると思うんだ。宗教じゃなくて、精神性とか、信念とかがね。
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「バンドの方がずっと楽しい」
−−今回が初めての取材なので、まずは経歴から教えて下さい。バンド名があなたの名前なので、ソロアーティストと勘違いしている人もいるんじゃないかと思いますが、“ルーカス・グラハム”はバンド名なんですよね?
LG:うん。バンドだよ。ピアノとキーボード担当のキャスパーは、3、4歳の時からピアノを弾いてる。言葉を完璧に話すようになる前に、ピアノを完璧に演奏してたんだよ(笑)。ドラマーのラヴスティックは、6歳の時からドラムを叩いてるんだけど、オモチャのドラムは3、4歳で叩いてたって。それから、ベーシストのマグナムは8歳でベースを弾き始めたんだ。僕も8歳の時に歌い始めた。だから4人分合わせると、80年以上音楽をやってるんだ。さっきの日本人の仕事ぶりの話に戻るけど、僕達の稽古はデンマークの多くの人達がやらないレベルだったんだ。だから僕達は他の人達よりもスキルがあるんだよ。それにもう長年一緒にプレイしているから、お互いの演奏の仕方も理解しているし、お互いを信頼しているんだ。他の人達が僕達よりも怠けてるとは思わないよ。僕達の方が、より情熱を持っているっていうだけの違いなんだと思う。
−−8歳で本気で音楽を始める人は少ないですから、スタート地点が違いますよね。
LG:僕はこれを理解するのは大事なことだと思ってるんだけど、何かに秀でた人間になりたかったら、10年間、1万時間を費やすことが必要なんだ。でも現代社会では、何をやるにしてもスナップチャットやインスタグラムが重要で、全てがインスタントの満足を基にしてる。そして誰もがYoutubeでハウツーもののビデオを見たがってる。1万時間も何かを練習したがる人なんて、ほぼいないんだよ。
−−でもあなた達は、それをやったんですね。
LG:うん、それだけ練習したし、今でも僕は歌のコーチに教わってるよ。今の僕はマルチプラチナム・レコードを獲得して、母のために新しい家を建てて、自分のアパートとレストランと別荘を所有してて、もう必要なものなんかないんだ。物を持ちすぎだよ。でも、歌のコーチは必要なんだ。僕は毎日、買いたいものがあるかどうか考える時に、「これは僕に必要なのかな?」って自問するようにしてる。そうしないと全く必要でないものを、一杯欲しがってしまうからね。
−−お金が一杯あると、そうでしょうね。
LG:うん。でもね、僕は子供の頃、自分の家が貧乏だってことを知らなかったんだ。服は全部誰かのお下がりだったし、3日間同じ夕飯なんて普通だった。ミートソースを大量に作って、翌日はその残りを使ったラザニアで、その次の日はチリコンカルネとかね。大きくなってから、「父と母にはお金がなかったんだ!」って気づいたんだよ。でも、僕は全然知らなかった。そんな風に育てられたことを忘れないでいるのは大事だと思ってるんだ。自分に子供ができた時に覚えていたいのはそのことで、子供達には僕の家がお金持ちだと気づかせたくないんだ。僕の言いたいこと、分かる?
−−分かりますけど、あなたは世界的に有名になるはずだから、不可能に近そうな気がしますが。
LG:でも、それはメンタリティの問題なんだよ。家で子供達に対してどんな風に接するかっていう。自分達の子供だけじゃなくて、家に遊びに来る子供達に対してもね。だから有名人でも、いい人間を育てることはできると思うんだ。そうでなければ、有名になることは代償が大きすぎるよ。
−−なるほど。あなた自身は、いつ音楽を仕事にしたいと気づいたんですか?
LG:パフォーマンスをすることはずっと僕の一番の目標で、野望だった。幼い時にデンマークでファミリー・コメディ映画に出演した経験があって、2歳の時に始めて、7歳までやってた。そして8歳の時に少年合唱団に入って、13、14歳まで続けた。8歳でアニメの声優の仕事もやり始めて、それは21歳ぐらいまでやったよ。15歳から舞台演劇もやった。だから、これまでやってきた全てのことが、パフォーマンスをする情熱とやる気と能力を養ってくれたんだ。
−−それだけの経歴があっても、ソロではなくてバンドで音楽をやることにしたんですね。
LG:バンドの方がずっと楽しいからね!
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「アルバムから7曲がトップ20入りして、3曲がトップ10入りしたんだ」
−−アルバムを聞いていると、あなたが非常に幅広い音楽から影響を受けているのを感じます。子供の頃、好きな音楽はどうやって見つけていたんですか?
LG:僕は父に人としても、音楽的にも、とても大きな影響を受けてるんだ。父は沢山レコードを集めていて、あらゆるタイプの音楽を僕に聞かせてくれたんだよ。ロックンロール、ソウル、ポップ、ファンク、ブルーズ、ジャズなんかをね。あと、僕はヒップホップも好きだった。父はラップはあまり理解してなくて、ちょっと退屈な音楽だと思っていたんだけど、「こういう音楽が好きで、インスピレーションを見いだせるなら、聞くことが大事だ」って励ましてくれたんだ。英語の「インスピレーション」って、宗教で使われるラテン語では「魂(スピリット)を吹き込まれた」っていう意味なんだ。だから、日本の人達には、インスピレーションよりも「魂を吹き込まれた」っていう方が理解しやすいんじゃないかな。魂を持てれば、それに身を任せられるんだよ。でも魂がない状態だと、それを探して時間を費やすことになる。魂に出会って、魂を手に入れるためにね。
−−あらゆるものを聞くことによって、様々な音楽の魂があなたに吹き込まれたんですね。バンドを結成してからは、どのようにここまで辿り着いたんですか?
LG:僕たちが一緒にプレイするようになったのは2010年。僕自身は2009年にプロデューサーのダン・ステファノと一緒にアルバムの曲作りを始めた。バンドを結成する前にも、僕とマークは2005年にフォーク・バンドをやってたんだ。マークは僕と同じ学年で、マグナムは一学年下だったから、全員がある程度知り合いだったんだ。それで、2010年にバンドでリハーサルをした後、2011年にデンマークでレコード契約を獲得した。Youtubeに2曲の自主制作ビデオをアップしたら、膨大な動画再生数を達成したよ。その後、国内でのツアーが全て完売(計3万人を動員)になって、2012年にファースト・アルバムを400万枚売って、シングルも500万枚売れた。2015年の2枚目のアルバムも400万枚売れたと思う。デビューから数年経った今は世界中でブレイクしていて、僕達にとって全てが最高に面白いことになってるね。
−−世界デビュー盤となる今回のアルバムにも収録されている「ドランク・イン・ザ・モーニング」が、本国で初めて一位を獲得した曲ですよね。その時はどんな気持ちになりましたか?
LG:この曲がiTunesで発表された時、僕達はツアーに出てたんだ。その3週間後にアルバムがリリースされたんだけど、アルバムから7曲がトップ20入りして、3曲がトップ10入りしたんだ。一週間、1位から3位まで独占したんだよ。まさに激動の時期で、本当に素晴らしかったよ。クレイジーな体験だった。
−−その後、「ベター・ザン・ユアセルフ(クリミナル・マインド・Pt2)」も1位になったわけですが、この曲は「ドランク・イン・ザ・モーニング」とは全く別のタイプの曲で、最初に聞いた時にその差に驚きました。この曲の内容について教えてもらえますか?
LG:僕の友人達についての曲で、彼らは銃で撃たれた後、刑務所に入ったんだ。刑務所の壁の中にいる友人達を持った経験を歌ってる。彼らは神様にとってはベストな子供ではないかもしれない。でも、僕と一緒に育った僕の友人達であることに変わりはないんだ。彼らが刑務所に入って、もちろん胸が痛いよ。友人の一人は銃で撃たれて病院送りになったしね。大きな感情を込めた曲だよ。
−−あなたの曲はどの曲もそうなんですが、本当に赤裸裸で、心からの誠実な感情が歌われていることが伝わってきます。特にこの曲はそれが強烈に伝わってきて感動しました。
LG:ありがとう。「ベター・ザン・ユアセルフ(クリミナル・マインド・Pt2)」は僕の曲の中でも一番の曲の一つになった気がしてる。「7イヤーズ」よりも良い曲だって感じてるんだ。この曲の書かれ方や、曲のユニークさという点でね。ピアノのメロディは、名前を忘れたけどモーツアルトかバッハか、クラシックの作曲家の曲なんだよ。古いクラシック曲のメロディを使ったんだ。それが曲にとてもダークな感情を与えた。素晴らしい曲に仕上がったよ。
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「全ての体験は、“陰陽”なんだ」
−−「7イヤーズ」についても聞かせて下さい。まず、お父様が亡くなられたこと、お悔やみ申し上げます。
LG:ありがとう。
−−この曲も後世に残っていく名曲だと思います。どんな風にこの曲が生まれたのか教えていただけますか?
LG:まず僕のプロデューサーのリストホープが、この曲のピアノの旋律を演奏し始めたんだ。トゥルルルルールー(歌う)っていうパートをね。それで僕は何も考えずに歌い始めたんだよ。(歌う)「僕が7歳だった頃、ママに言われたっけ」って。それから一緒に曲を書き続けて、3時間半後に曲が出来たんだけど、8分から10分ぐらいある長い曲になって(笑)。長過ぎる歌詞って素敵な特権だと思うよ。大抵の人は、歌詞が短すぎて悩むものだからね。その後で曲を短くしていって、今ある形に仕上げたんだ。俳句みたいなものだと思うんだよね。君達の俳句って、文字が限られてるよね。だから、俳句を詠む時って、沢山のアイディアと文を最初に書き出して、それを絞って最も意味がある文にしてるんじゃないかと思うんだ。そして、僕達にとっての俳句は3分半の曲なんだよ。僕は曲が3分半の形態だっていうことがすごく気に入ってるんだ。
−−そうやって絞り込んでいるからこそあなたの歌詞はどれも強烈に心に残るんだと思います。この曲の「目指す場所しか見えてない、失敗なんて信じない、どんなに小さな声だって、デカイことがやれるはずだから」っていう一節は、あなたが自分とこのバンドの力を本当に心から信じていることが伝わってくるからすごく好きです。でも、それだけ自分達を信じていても、ここに至るまでに辛い状況になったことはありましたか?
LG:父が亡くなった時は、本当に本当に辛かったよ。父は僕にとって最大のインスピレーションだったし、バンドの初のショウをブッキングしてくれたのは父だったし、僕達に色々なことを話してくれたし、僕達のキャリアを支えてくれていたんだ。でも、僕にパフォーマンスを強制したことは一度もなくて、ただ僕が好きなことをやるのを励ましてくれたんだよ。だから父が亡くなった2013年、僕は飲みすぎで、食べすぎで、吸いすぎで、寝すぎの生活を送るようになって、エクササイズもほとんどしなかった。それでその年の年末、歌えなくなったんだよ。ヨーロッパ・ツアーの18公演を中止して、僕は寝たきりになった。1ヶ月話すことを禁止されてね。脂身の多い肉、神戸ビーフとか、辛い食べ物とか、ジュースや果物も食べちゃ駄目だと言われて、野菜とお米とパスタだけの生活に切り替えたんだ。コーヒーやお茶も飲めなかったから、大変だったよ。でもそうやって、ライフスタイルを変えたんだ。植物ベースのヘルシーな食事をして、エクササイズをして、僕の楽器である声を労ったんだ。
−−そうやって辛い時期を乗り越えたんですね。
LG:うん。それに音楽はいつも辛い時期を切り抜ける助けになってるよ。曲を書いたりすることがね。声を取り戻した後すぐに、「7イヤーズ」を書いたんだ。
−−「7イヤーズ」だけでなく、「ハッピー・ホーム」、「フューネラル」、「ユー・アー・ノット・ゼア」など、このアルバムに収録されている曲の多くは、お父様が亡くなられた後に書かれた曲ですよね?
LG:そうだよ。あと、「ドンチュー・ウォーリー・アバウト・ミー」もね。
−−父親との別れを経験した後、人としてあなたはどんな風に変わったと思いますか?
LG:今の僕は、僕の家族、母と姉妹達を世話する男になった。それに音楽ビジネスにおいて、僕が担う責任も増えたと思う。だから、多分より大人になったと思うし、より責任を取れるようになったんじゃないかな。でも同時に、昔と変わらず同じ地元に住んでいる同じ男でもあるんだ。自分がどんな人間で、どこを目指しているのかを忘れないことは大事だと思う。全ての体験は、“陰陽”なんだよ。現実の世界では、何かを選ぶ度に、他の何かを失ってる。あることを目指せば、他のことを目指せなくなる。結果として、無数にあるオプションの中で、常にあるのは一つの適切な決断、適切な道だけなんだ。だから、時には世の中のノイズを遮断して、自分や周りのエゴと関係ない自分にとって本物の決断を見つけることが大事なんだよ。
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「ポップ・ミュージックとして曲を書くよりも、ヒップホップの曲として書く方が、ある種の自由が得られるように思う」
−−「ママ・セッド」もまた、名曲です。初めて聞いた時、思わず涙が出ました。あなたのお母様はこの曲を聞いて、どんな反応をしましたか?
LG:「私、こんなことあなたに言ったかしら?」って聞かれたよ(笑)。それで「ママ、その辺は詩の許容範囲だから」って返事した。この曲は、素敵な子供時代と愛に溢れた両親、人生の様々ないい経験からどんなことが得られるかを表現しているんだ。これはライヴやフェスティバルでのマーチャンダイズのブースで、僕と会って大興奮する子供達によく伝えようとしてることなんだけど、「僕を尊敬しようとしないでくれ、僕はロールモデルじゃないから。僕はただ曲を歌っているだけのシンガーだから、君達は両親を尊敬するべきだよ」って。そして親もまた、子供達を尊敬して、子供達を大きなインスピレーションとして見るべきなんだ。だから、僕をインスピレーションとして見ないで欲しい、僕はただの僕なんだよ。
−−すでにあなたの音楽にインスパイアされた身としては、完全には同意できないですけれど、いいアドバイスですね。
LG:それに自分から遠く離れたところより、自分に近い存在からインスピレーションを得る方が簡単だと思うんだよ。誰かの絵を写真で見るよりも、実際に美術館に行って間近で見た方がありがたいと感じられるよね。でも今はインターネットの世界で繋がっているせいで、人々は自分達が実際にいる場所のありがたみを忘れちゃっているような気がするんだ。ネットで色々検索はするのに、自分の家の外に出てみることはしないっていう。「見て、東京の夕日、すごく綺麗だよ!」とか言われても、「いや、コペンハーゲンの夕日もかなり綺麗じゃないか? 同じ夕日だよね」って思うんだよ(笑)。
−−(笑)そうかもしれませんね。「ママ・セッド」のミュージック・ビデオについても教えていただけますか?
LG:「ママ・セッド」のミュージック・ヴィデオの半分はロサンゼルス、半分はコペンハーゲンで撮影したんだ。それと、僕達のドキュメンタリー・ビデオからの映像も入ってる。お下がりの服を来ていた貧しい子供時代から、リッチになって、アメリカにツアーに行って、家から離れていることが多くなって、夢に見ていたような大観衆の前でパフォーマンスして、っていう物語を表現したビデオなんだ。
−−「ストリップ・ノー・モア」は「ドランク・イン・ザ・モーニング」のようにユーモア溢れる楽しい曲ですが、この曲の途中であなたはラップに突入しますよね。ラップも歌声と同じように素晴らしくて感嘆しました。あなたの音楽の斬新で魅力的な点は、古いソウルやファンクやロックを、ごく自然な形で現代の新しいヒップホップと融合させたところだと思うんです。あなたにとって、ヒップホップの魅力とは何ですか?
LG:第一に、ドラムとベースラインが好きなんだ。それから、歌詞の書かれ方。僕の歌詞の多くは、ラップとして書かれているんだよ。たとえば「ベター・ザン・ユアセルフ(クリミナル・マインド・Pt2)」も、メロディの部分を除くと、「お前に会いに行けないって手紙をもらった、時間はないけどお前に会いに行くと約束した」っていう風に、ラップになってるんだよ。
−−ええ、私が融合といったのはそういう意味で、本当にさりげなく自然に交ざり合ってるんですよね。
LG:ポップ・ミュージックとして曲を書くよりも、ヒップホップの曲として書くことによって、ある種の自由が得られるように思うんだ。そうすると、「7イヤーズ」とか「ハッピー・ホーム」、「ベター・ザン・ユアセルフ(クリミナル・マインド・Pt2)」のような構成の曲を、さらにユニークな曲にすることが可能になるんだ。「ハッピー・ホーム」や「7イヤーズ」はオールド・スタイルのバラード曲で、フックらしきものが存在しないからね。色々と実験してみることによって、魔法が生まれるんだよね。
−−今後、このバンドで達成したい目標はなんですか?
LG:まず、世界中でナンバー1になりたい。これは今、「7イヤーズ」で達成できた国も出てきてるよ。でも、一番のゴールは物語を伝えることだと思う。目標についてはバンドで沢山話し合ってるんだ。取材も含めて大勢の人達に質問されるからね。だから僕達は、「なぜ僕達はこれをやってるんだろう?」ってお互いに問いかけたんだ。結局、大事なのはナンバー1ソングでも何かの賞でも金や名声でもなくて、人々の前でパフォーマンスをすることなんだ。そこで得られる喜びと、人々と繋がる“禅”の感覚は、とにかく驚異的なんだよ。言葉では説明できないくらいね。それまでに経験したどんなこととも違うんだ。
−−「7イヤーズ」では60歳になった時のことも歌われていますが、60歳になるまでパフォーマンスを続けたいですか?
LG:アハハ。全てが計画通りに進んだら、それって一般的にはありえないことだけど、そのチャンスはあるよ。大事なのは、練習を続けて、前進し続けて、自分にストレスをかけずに、歌いすぎず、歌わなさすぎずでいることだと思うな。そしてこのクレイジーな状況の中で、バランスの取れた精神を維持し続けようとすること。そうだね、60歳になっても僕に歌わせて欲しいな。最高の僕になってるはずだよ。
−−では最後に、日本のファンにメッセージをお願いします。
LG:ハードワーク、鍛錬、完璧さっていう日本人の価値観を忘れずに、世界に対して広い心を持っていて欲しいな。西洋文化のファーストフードと怠け癖の病気には侵されないように気をつけてね。それから、日本に行ってプレイするのをすごく楽しみにしているよ。日本は本当に素晴らしくて美しい国だと思ってるから。全て順調に進んだら、近いうちに日本に行くからね!
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