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ザ・ジャック・ムーヴス 来日直前インタビュー 「なぜ初期のソウルに影響を受けたブラック・ミュージックを“レトロ”と呼ぶのかな?」
2016年、彗星のようにシーンに現れたモダン・ヴィンテージ・ソウル界の逸材、ザ・ジャック・ムーヴス。60~70年のソウル・ミュージックへの深い愛情とともに、ヒップホップやR&Bの要素も取り入れるモダンなセンスも有する彼らが、デビュー・アルバム『ザ・ジャック・ムーヴス』を引っさげ、4月にビルボードライブに初登場する。
メンバーは、米ニュージャージー州ニューアークを拠点にするシンガー&マルチ奏者のズィー・デスモンデスと、プロデューサー/ドラマー/プロ・スケーターであるテディー・パウエルという二人。今回はそんな彼ら二人にメール・インタビューを実施、そのサウンドに影響を与えたものやバンドのバックボーンについて話を聞いた。ブギー・ファンク~アーバン・ソウル~ディスコまで、幅広い音楽性を咀嚼した、ポップでスウィートな音楽を奏でる新星デュオの言葉に、ぜひ注目して欲しい。
さらに、ズィーとテディーに、現在の音楽へと導いたルーツ・ミュージックについてインタビューを敢行。2人から公演に向けた動画メッセージも到着!
ザ・ジャック・ムーヴスが語るソウル、“レトロ”、ニュージャージ音楽への愛
──二人はニューヨークのスケートパークで知り合ったとのことですが、出会いについて詳しく教えて貰えますか?
ザ・ジャック・ムーヴス:ちょっと違うね。マンハッタンのズィーのアパートで、共通の知人のジェイ・サーブ(Jay Serbe)を通じて知り合ったんだ。元々、ボード仲間ではあったけど、本当に仲良くなったのは一緒に音楽活動を始めたのがきっかけだね。テディーは以前から曲作りをしていて、彼からMPCの使い方をはじめ、色々な手法を教わったんだ。サウンド作りをしたり、自分達で楽器演奏したりしているうちに、好きな曲のカバーをしようぜって話になった。で、やってみたら良いものが出来て、今はその延長って感じだね。
──ザ・ジャック・ムーヴスが始まるまでの、二人それぞれの音楽キャリアを教えて下さい。
テディー: Gユニットの「Feel Good」、U-ゴッドのアルバム『Dopium』やLP『Keynote Speaker』に携わった経験がある。あと、テディー・ベックス名義でソロ活動もしていて、これまでに『Dealin With The Ace』、『Air Dance Money』ってLPもリリースしてるんだ。他にも、ニューヨークで活躍するカリスマ・スケートボーダーでヒップホップMCのクウィム・カドーナ(Quim Cardona)の『Chocolate Girl』ってLPでプロデュースしたこともあるね。
G-Unit - Feel Good
ズィー:俺は地元で活躍するバンドでプレイしていたけれど、どれも本気ではなかった。あと、友だちでサーフ・フィルムメーカーのボブ・ギラーニ(Bob Gilanyi)の映像作品『Through The Looking Glass』で音楽担当をしたことがあるよ。
Through The Looking Glass
──あなた達の音楽からは60年代や70年代のソウル・ミュージックからの影響を感じます。あなた達にとって、そうした音楽との出会いはやはりヒップホップだったんでしょうか?
ザ・ジャック・ムーヴス:紛れもなくヒップホップだね。ヒップホップが俺達をオールド・ソウルの世界へ導いてくれた。でも、俺達の音楽に影響を与え、これほど音楽に夢中にさせてくれたのは、音楽を愛するという純粋な気持ちだと思うな。
--最初は単純に「古い音楽を再現してみよう」と考えていたとのことですが、あなた達のアルバムは、レトロな要素もありつつ、モダンな部分もありますね。その変化のきっかけが何かあれば教えて下さい。
ザ・ジャック・ムーヴス:世の中にはオールド・ソウル・ミュージックから派生したジャンルが数えきれないほどあり、俺達もそれに必然的に影響を受けてきた。でも、俺達はソウルだけじゃなく、全ジャンルが好きなんだ。ヒップホップ、カントリー、ロック、ディスコ、クラシック、ジャズ…。俺達のフィーリングにスーッと入り込んでくるものがどのジャンルにもある。それに、オールド・ソウルを完コピして分かったんだけど、そんな作業は俺達にとっては退屈で無意味だった。オリジナルの音楽を作った方がもっと楽しいからね。
――レトロなものと現代的なものをミックスするという点において、共感する現代のバンドやアーティストはいますか?
ザ・ジャック・ムーヴス:俺達は誰もマネ出来ない音楽を作っていると信じている。でも同じカテゴリーの音楽だなと感じる、もしくは俺達が好きな音楽を作るアーティストはいくつかいるよ。例えば、メイヤー・ホーソーンやリオン・ブリッジズ、アラバマ・シェイクスがそうだな。
でも、ひとつ疑問に思うのは、なぜ初期のソウル・ミュージックに影響を受けたブラック・ミュージックを“レトロ”と呼ぶのかな? だって、白人のキッズがギターやベース、ドラムを使った音楽は、ロックとかインディー・ロックと呼ぶけど、“レトロ”とは呼ばないよね? でも、ブラック・ミュージックとなると、生演奏の音楽だというだけで、過小評価されて“レトロ”だと区別される。俺達にとっては一種の人種差別のように思えるんだ。何とも理解できないね。
Leon Bridges - River
――アルバムは歌やドラムはもちろん、ストリングス等オーケストラの楽器がふんだんに使われているのが印象に残りました。この点について意識したことがあれば教えて下さい。
ザ・ジャック・ムーヴス:ドラムとベースのサウンドがファンキーであること、これが土台になっている。どの曲も始まりはシンプルな作業だったんだ。基礎をシンプルにして、そこからベースラインやドラムのリズム・パターン、コードを変えていった。このやり方であれば結構何でもイケるよ。直感で、これはシンプルな曲調がいいと思う時もあれば、トラック収録する前に大幅なアレンジを加える時もあるんだ。この感覚は、空気中にふわふわと漂っているような、誰も予測出来ないもので、俺達はラジオのようにその感覚をしっかりキャッチするように努めているんだよね。
――日本版のボーナス・トラック「Spend My Life」はジョージ・カーとの共作ですが、どのように実現したのでしょうか?
ザ・ジャック・ムーヴス:マジな話、これは願ってもない出来事だった。少しイライラして、スタジオに座って考えていた時、「ジョージ・カーに相談しなきゃ!」ってマジで叫んだんだ。で、それから一か月も経たないうちに、ニューアークで<Memories of Soul>っていうレコード店を営む男と出会って。彼はジョージの弟のビクターと知り合いで、その縁もあって。ビクターと面会する機会が出来たんだよ。ビクターは音楽とはあまり関係がなかったんだけど、彼のオフィスで待っている時に、ジョージの娘のサンディのライブのチラシを見つけた。そこになんとジョージの電話番号が書いてあって、こっそりメモしたんだ。オフィスを出た後、電話をかけたら本当に彼が出たよ。「ビッグ・ファンです!」って伝えて、「よろしければ制作を手伝ってくれませんか?」って聞いてさ。残念ながら、その時、彼はもうリタイアしていて、その場では断られちゃったんだ。でも、プロデューサーのポール・カイザーや、ジョージの友人が彼を説得してくれて、最終的には共作が実現したんだよ。
George Kerr - Takin' It
――バンドはニュージャージーの出身とのことですが、そのこととザ・ジャック・ムーヴスの音楽に何か関係はあると思いますか?
ザ・ジャック・ムーヴス:そうだね。俺達二人とも、地元ニュージャージーを拠点とするオール・プラチナム・レコードから誕生したソウル・サウンドを愛している。ここに関する悪いニュースはいっぱい流れているけれど(ニュージャージー州カムデンは全米で最も犯罪が多い都市と言われている)、ここには才能豊かなアーティストが数多くいて、シルヴィアとジョー・ロビンソン夫妻もそれが分かっていたんだ。ザ・モーメンツ、ホワットノウツ、ポンデロッサ・ツインズ・プラス・ワン、ジョージ・カー、リンダ・ジョーンズ、ドニ―・エルバート、オプティミスティックス等々、数え上げたらきりがないほど多くのアーティストがここから誕生したんだ。ニュージャージーは全米屈指の大都市、フィラデルフィアとニューヨークに挟まれているけど、最近はそれに負けないくらいビッグになってきているよ!
The Moments - Love On A Two Way Street.
――音楽以外に、創作の面でインスピレーションを受けるものはありますか? 例えば、スケートとあなた達の音楽の間に何か関係はあると思いますか?
ザ・ジャック・ムーヴス:思うね。スケートはフリースタイルのダンスって感じで、クリエイティブで、スケート独自のスタイルが確立されているんだ。スケート以外で挙げるとしたら、女性から、それとバカ騒ぎしている時にインスピレーションを受けるね。日々の生活や社会から受ける精神的なストレスから解放されて、宇宙空間に漂っているこの球体で暮らす俺達に与えられた短い時間の中で、違った生き方をしたり、前衛的な行動を取ろうと感化されるんだよ。
――ライブはどんな感じになるのでしょうか? じっくりと聴いて横に揺れる感じ?それとももっと激しくダンスする感じでしょうか?
ザ・ジャック・ムーヴス:両方さ! 俺達の存在を日本のみんなに証明したいね。日本のみんなには、俺達の音楽の支えになってくれていることに感謝しているし、敬服するよ。アルバムからの曲に加え、俺達が好きなカバー曲を披露する。日本でライブをすることはずっと俺達の夢だったんだ。良いショーになるから、ぜひ期待して欲しい。Wax Poetics Japan、Beat Inc.、Fat Bros.、DJ Muro、J-WAVE、InterFM897、そして俺達の曲を流してくれたり、紹介してくれたすべての皆さん、本当にありがとう!Love y’all from The Jack Moves!!
The Jack Moves - Doublin' Down
公演情報
ザ・ジャック・ムーヴス
ビルボードライブ東京:2016年4月8日(金)
>>公演詳細はこちら
ビルボードライブ大阪:2016年4月10日(水)
>>公演詳細はこちら
INFO: www.billboard-live.com
BAND MEMBERS
ズィー・デスモンデス / Zee Desmondes(Vocals, Multi-instrumentalist)
テディー・パウエル / Teddy Powell(Drums)
ジョシュ・オーティス / Josh Ortiz(Keyboards)
アーロン・フランシスコ / Aaron Francisco(Bass)
関連リンク
テディー・パウエル、ズィー・デスモンデス、それぞれのルーツを紐解くプレイリストを大公開
Teddy Powell’s picks:
01. Steel Pulse - “Your House”
中学3年の頃、よく友達の家で遊んでたんだけど、25歳くらいのスペイン人女性に部屋を貸していたんだ。僕の彼女になってくれって、いつも頼んでいたけど、僕は若すぎるって言って断られた。帰宅途中、毎晩この曲を聴いて彼女のことを考えていたな。
02. Eddie Kendricks - “Keep On Truckin”
近所に“The Key Joke”っていうバーがあって、ここでこの曲をプレイすると必ずケンカが起こったんだ。
03. Guns N’ Roses - “Nightrain”
この曲をプレイする時は周りに気を付けな。
04. Jamal - “Keep It Real”
この曲を聴くと、“Stretch And Bobbito”のテープを聴きながらニュージャージーからフィラデルフィアまでスケボーで行き来していた頃を思い出すよ。
05.Smokey Robinson and The Miracles - “Ooh Baby Baby”
超絶クールな一曲だ。たくさんの人がこの曲のコピーをしようと頑張ったが、誰もこの曲を再現出来なかった。”One of the original panty dropper's.”
06. The Drifters - “Under the Boardwalk”
夏の熱い日に、彼女と寝そべりながらキーンと冷えた酒をグイッと飲む。これ以上に最高な過ごし方があるか?
07. Ohio Players - “Skin Tight”
これまで聴いてきたクールなバンド、オハイオ・プレイヤーズの曲の中でもとくに長い曲で、ジュークボックスで掛ける価値のある歌さ。
Zee Desmondes’s picks:
08. The Originals - “The Bells”
この曲はずっと好きで、天国でコンサートを聴いているような気分にさせてくれる。ソングライティングもミュージックもとてもスピリチュアルで素晴らしくて、俺の結婚式や葬式で流すのにぴったりの曲だ。
09. Cissy Houston - “Nothing Can Stop Me”
挫折したり、くじけた時にこの曲を聴くと、不可能なんてないって頑張れるんだ。スウィートでありながら、力強くもあり、俺の意志を瞬時に取り戻してくれる、そんな歌だ。
10. Smokey Robinson and The Miracles - “Here I Go Again”
ソングライティングも演奏もパーフェクト! スモーキーはクールで、非常に才能のあるアーティストだよ。彼の作品は他と比べ物にならないくらい完璧すぎて、俺に多大なるインスピレーションを与えてくれたよ。
11. The Implements - “I Wish It Were Me”
1日に何回も聴いてしまうくらいで、毎日聴かずにはいられないよ。ベースプレイヤーが最高に良い!ボーカルのことは全く知らないけれど、俺にとってはレジェンドだ。ジョージ・カーが手掛けた世界を揺るがすこの名曲は、俺の心を震え上がらせた。
12. Jimmy Sabater - “Mia”
小旅行で訪れたブロンクスのウェストチェスター通りで店をやってるミゲル・アマデオと出会ったんだ。彼が手掛けた曲の話をして、ジミーのために書いたというこの曲を演奏してくれたんだが、心から感動した。あれ以来頭から離れなくて、いつも聴いているよ。
13. Marvin Gaye - “The Shadow Of Your Smile”
この曲を聴くと飛行機に乗って潜在意識の頂点まで連れて行ってくれるんだ。マーヴィンの才能と独創性は天使の高みに到達するもので、この曲はいつでも俺を泣かすことだって出来る。この曲を聴くと、なんだか自分が立派な人間になった気がするんだ。
14. Anton Coppola - “Love Remembered”
曲の構成はとてもシンプルなものだが、ものすごく気に入っている。フランシス・フォード・コッポラ監督作品の『ドラキュラ』のサウンドトラックのために作られたこの曲は、キャッチーで素晴らしい作品に仕上がっている。自分を奮い立たせてくれる曲が好きなんだけど、この曲はまさにぴったりの曲だ。
15. A Tribe Called Quest - “Jazz (We’ve Got)”
ファイフ・ドーグの早すぎる、そして悲劇的な死
この曲は子供の頃を思い出させてくれるんだ。小さい頃兄弟でニュージャージーやロング・アイランドに冬にサーフィンに行ってたんだ。この曲のバイブスは寒くて、暗い東海岸の冬を完璧に表現していると思う。実際のところはこの曲が収録されたアルバムを良く聴いてたんだけどね。すごくシンプルで平和な時間だったな・・・懐かしいよ。歳を取ると、子供の頃の時代や思い出がどれだけ貴重なものだったかってことに気づかされるよね。
16. Bob Dylan - “I’ll Keep It With Mine”
ディランの曲から1曲を選ぶのはホントに大変だ。でもこの曲はずば抜けてるね。とくに若いころの自分に、ディランの詩は色んなことを投げかけてくれたよ。ディランがやったように、俺も「深いこと」をやろうと思っているよ。決して普通の言葉で語られていないけれど、忍耐や運命について語る素晴らしい曲だと思う。詩というのは、忍耐とか運命といった事柄の真実について触れるときに必要になるんだ。
17. The Grateful Dead - “Clementine Jam”
高校生の時、2つの学校を行き来していたんだ。次の学校までは車で移動していたんだけど、そのときにこの曲を良く聴いて、そのままよく学校をサボってたね。ジェリー・ガルシアのギターが俺に語りかけてくるんだ。「学校に行くな。自由になれ」ってね。
ザ・ジャック・ムーヴスの二人から動画コメントが到着!
公演情報
ザ・ジャック・ムーヴス
ビルボードライブ東京:2016年4月8日(金)
>>公演詳細はこちら
ビルボードライブ大阪:2016年4月10日(水)
>>公演詳細はこちら
INFO: www.billboard-live.com
BAND MEMBERS
ズィー・デスモンデス / Zee Desmondes(Vocals, Multi-instrumentalist)
テディー・パウエル / Teddy Powell(Drums)
ジョシュ・オーティス / Josh Ortiz(Keyboards)
アーロン・フランシスコ / Aaron Francisco(Bass)