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「欠点もひっくるめて、完璧だ、と思える作品が作りたかった」― ニック・カーター 来日インタビュー

ニック・カーター 来日インタビュー

 1993年に米フロリダ州オーランドにて結成され、後に世界的ボーイズ・グループとなったバックストリート・ボーイズ(BSB)の最年少メンバーとして、90年~00年代のポップ・シーンを席巻したニック・カーター。2002年には、メンバーの中でいち早くソロ・デビュー作『ナウ・オア・エヴァー』を発表し、その9年後の2011年にはソロ第2弾『アイム・テイキング・オフ』で米ビルボード・アルバム・チャート初登場14位に輝いた。また近年では、グループやソロ活動と並行して、ニュー・キッズ・オン・ザ・ブロックのジョーダン・ナイトとのユニット=ニック&ナイト、リアリティ番組や人気ダンス番組『Dancing with the Stars』への出演、映画製作など、多彩な活動を行っている。そんなニックが、約5年ぶりのソロ作『オール・アメリカン』を完成させた。BSBのメンバーとして初来日した1996年からちょうど20年という節目の年に、新作を引っさげ来日を果たしたニックに、最新作、Nissyとのコラボ、初めて父になる心境やBSBの今後について話を訊いた。

TOP Photo from Nick Carter Fan Event 2016 on 2/12

曲もアルバムも、日本のことを想いながら作った

−−最新作『オール・アメリカン』が完成した際に、「自分がずっとなりたかったソロ・アーティストになれたような気がする」という発言をしていましたが、なぜこのように感じたのですか?

ニック:その日の気分によって変わることもあるけどね(笑)。でも、確実にその姿に近づいている、っていう風には感じてる。アルバムごとに、何か新しいことに挑戦して、何か新しいことを学ぶ。だから、まだ自分が望むソロ・アーティストにはなれていないけれど、少しずつ近づいているのは確かだね。

 『Dancing with the Stars』に出演したことで、パフォーマンス面においてもかなり自信がついた。ソングライターとしても腕が上がってきている。歳を重ねることで熟してる、という感じかな(笑)。ステージに上がる度に、自分の成長を自覚しているよ。

−−アルバムの制作はいつスタートしたのですか?

ニック:8か月前ぐらいかな。BSBの【In A World Like This Tour】の途中で少し空いた時間があった時、僕はテネシーにいたんだけど、その時にまた(ソロ・)アルバムを作りたいな、って考え始めた。その主な理由は、日本に行きたかったから。来日すると、いつも楽しい時間を過ごせるし、ファンも最高だから。

−−日本のファンにとっては嬉しい言葉ですね。

ニック:彼らは本当にスウィートで、僕のことを大切に思ってくれている。音楽も気に入ってくれるし、僕のことを批判しない。だから彼らのためにアルバムを作りたかった。そしたら、日本に戻って来れると思って。曲を書き始めても、日本のリスナーやファンがどのように反応してくれるか、常に気にかけていた。どんな曲だったら、彼らに気に入ってもらえるんだろう、とか。だから、曲もアルバムも、日本のことを想いながら作ったんだ。



−−主に曲はどのように書き始めるのですか?ギターとか、色々な方法があると思いますが。

ニック:その時と場合によるね。僕は、何でも考えすぎてしまうから、ギターのアレンジとか、そういうテクニカルな部分は、ソングライターやプロデューサーに任せてるけど、もちろんギターを弾いている時にアイディアが浮かぶこともあるし、先にヴァースやコーラスを思いついたり、ドラム・トラックを聞いて何かひらめいたり、メロディを口ずさんだり、曲のタイトルやコンセプトを考えたり…曲作りには色々なやり方があるんだ。

−−因みに、今作のためにどれぐらい曲を書いたのですか?

ニック:書いた曲は、ほぼすべてアルバムに収録されているよ。その他に2曲あったけど…1曲はナターシャ・べディングフィールドと書いた曲だった。その2曲は、あまりよくなくて、未完成のままに終わったんだ。

−−制作をスタートした際、どのような作品を目指していましたか?

ニック:最終的なゴールとしては、楽しげで、あまり深刻じゃない、ユーモアがある作品にしたかった。ちょっと皮肉なね。そして、映画のサウンドトラックのような作品…まるで映画の脚本を書いているような感覚かな。

−−やや自虐的だったり、自分のイメージや立ち位置を鋭く自己分析している部分もありますよね。

ニック:そうだね。真実に基づいてるものもあれば、僕が面白おかしく書いたものあるけど。ウィル・フェレルの映画や『ハングオーヴァー』シリースを観ているような、ユーモアと皮肉が詰まったストーリーたち。僕的にはうまくいったと思ってる。アルバムの最大のテーマは、物事を真剣に考えないことだった。歳を取るとともに、自分の居場所を見つけたい、という気持ちが大きくなる。そんな中で、僕にとってコメディはいつも心の拠り所だった。

 自己分析力は、長年この業界にいると自然と身につくことの一つだと思う。うまくいったこと、いかなかったことを照らし合わせて、じゃあ次はこういう風にやってみようっていう具合に。僕は長年ボーイズ・グループの一員として活動してきた。クールな素振りをしようと思ったことはなし、実際にクールだったこともない(笑)。それをきちんと受け入れることで、自分を偽ることのプレッシャーから解放される。僕は楽しいことが大好きな人間だ。真面目な面もダークな面も持ち合わせているけど、第一に人生を楽しみたい、っていう願望があるんだ。

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欠点もひっくるめて、完璧だ、と思える作品が作りたかった

−−BSB、そしてソロでも共作しているダン・マッカラが、今作にソングライター、プロデューサーとして参加していますが、彼との仕事の醍醐味は?

ニック:ダンと一緒に仕事をするのが好きなのは、彼は流れに身を任せることに抵抗がないから。僕が、「このアプローチも試してみたい。」って言うと、あまり深読みせずに「じゃあ、やってみよう。」って言ってくれる。彼と一緒だと創造のプロセスをより楽しめる。ソングライターとしても尊敬しているし。彼はポップやロックに造詣が深くて、BSBとしても「Incomplete」で仕事をしている。彼が持ち合わせているロックさが特に好きで、彼と一緒だとその部分をさらに探究できると感じるね。

−−今回、アメリカ人のソングライターやプロデューサーのみ起用したのには、何か意図があったのですか?

ニック:僕とローレン(ニックの妻)は、テネシー州ナッシュヴィルにしばらく住んでいたんだ。引っ越した理由は僕が地元のソングライターと曲を書きたかったからで、ダンも近所に住んでいた。ちょうどスタジオで、ダンと3、4曲作っていた時に、猛烈な寒波が来て、吹雪でどこにも行けなくなってしまった。それが、このアルバムを前進させるきっかけとなったんだ。まぁ、短い話、彼らと一緒に作業していたスタジオから身動きが取れなかったっていうのが理由だね(大笑)。他にどこにも行けなかったんだ。アルバムを完成させたかったから、ちょうど良かったけど(笑)。

−−そうだったんですね。なぜ気になっていたかと言うと、BSBとしては北欧のプロデューサーやソングライターと曲作りをすることが多くて、彼らは方程式のようなアプローチで曲作りをしますよね…。

ニック:そう、箱にピッタリ入れるような感覚!

−−それとは、まったく違うことがやりたかったのでは、と思って。

ニック:でもその通りだよ。それが、ダン、キップ(・ウィリアムス)、そして特にブライアン・シャックルと曲作りをするのが好きな理由なんだ。さっきも話したけど、必要以上に考えすぎずに作業を進められた。物事を深読みしすぎるのは、長年北欧のプロデューサーと仕事してきたゆえの癖だと思う。彼らは、すべてにおいて完璧さを求めるから。それを取り除いて、欠点もひっくるめて、完璧だ、と思える作品が作りたかった。もう何十年も“完璧”でいたしね。いい例なのが、「Man on the Moon」。2、3度、曲を通して歌っただけでヴォーカルを録り終えたんだけど、バックグラウンドに余計なサウンドを入れたりせず、“ライブ感”を重視した。そのプロセスはすごくクールだったね。



−−近年では、BSBはもちろん、ジョーダン・ナイトとのニック&ナイトでも、ソングライティングに精力的に参加していますが、これらの経験が今回のソロ作にもたらした影響は?

ニック:どのコラボも違うから、様々な経験を得られる。BSBの場合は、他に4人のメンバーがいるから、彼らの意見を取り入れながら作業を進めていく。誰かと初めて一緒に仕事をする場合、ニック&ナイトの時のジョーダン・ナイトがそうだけど、探り探りな部分があるし、お互いのやり方に合せながら、進めなければならない。新しい曲を1曲書くこと、新たな人とコラボすること…何事も勉強で、どんなコラボからも学ぶことがあるんだ。

−−コラボと言えば、日本盤のアルバムでは、Nissy(AAA)と「変わらぬ想い / Nothing Gonna Change My Love For You」のカヴァーをデュエットしていますね。

ニック:Nissyが、自分の好きな曲っていうことで、選んでくれたんだけど、実は僕もこの曲が大好きで、9、10歳ぐらいの頃…まだBSBに入る前に、歌唱コンテストとかタレント・ショーでよく披露していたんだ。だから、すごく懐かしかったし、アメイジングな偶然だね。

−−他にも候補は挙がっていたのですか?

ニック:何曲かあったけど、日本の人々も知っているカヴァー・ソングで、僕が気に入っていたのは、やっぱりあの曲しかなかった。

−−今回の来日で彼に直接会うことが出来ましたか?

ニック:実は、まだ会えてないんだ。お互いファンで、彼はいいシンガーだし、選曲のセンスも抜群。グループに所属しているという部分でも親近感を感じる。それに僕自身、新しいことに挑戦したり、初めての人と仕事するのは好きだから、楽しかったし、とびきりのコラボになったね。

−−そして90年代のポップ・ファンには夢のような、アヴリル・ラヴィーンとのコラボ曲も収録されています。

ニック:(笑)。

−−アヴリルとは、BSBとして一緒にツアーもしていましたよね。

ニック:うん。そのツアーがきっかけで、ローレンも含め、仲良くなったんだ。ある時「日本のためにアルバムを作っているんだけど、一緒に何かやってみない?」ってアヴリルに連絡したら、「いいわ!日本ためだったらもちろんやるわ。」って快諾してくれた。2人とも日本が大好きだから(笑)。説得する必要は全然なかったんだ。

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−−話は少し変って、今振り返ってみて、常にメディアに追われながらティーン時代を過ごさなければならなかったことの中で、一番タフだったのは?

ニック:う~ん。そこまでタフだと感じたことはないかな。ぶっちゃけ、タフなのは、今の世の中に蔓延しているTwitterやInstagramとか、そういうもの。

−−当時、それがなくて良かったと思いますか?

ニック:そうだね。あの頃、様々な試練に耐えなければならなかったから、そういうものがあったら、今の僕のキャリアはなかったと思う(笑)。世の中自体が今と全然違くて、多少のプライバシーがあった。僕らに会いたければ、ライブやインストアに来てもらうことしか手段はなかった。現代の主流であるスマホを使えば、すぐに誰とでも繋がれるという世の中じゃなくて、人との繋がりはよりパーソナルなものだった。今になっても、ものすごく献身的なファンベースがあるのは、そのおかげでもあるんじゃないのかな。

−−そしてBSBのメンバーとしての初来日からちょうど20年と聞いて驚きましたが、当時のことで何か記憶に残っていることはありますか?

ニック:その時に行ったインストアについては、もうあまりよく憶えてないな~(笑)。あ、ちょっと待って、何か思い出したかも…でもすごくカオスで、とにかく長時間サインをしてたことぐらいかな。

−−新しいBSBのアルバムの制作に取り掛かっているそうですが、既にスタジオ入りしているのですか?

ニック:うん。順調に進んでるよ。まだ色々模索している最中だけど。スケジュール的には、年末か来年の初頭にシングルをリリースして、来年の中旬にツアーがスタートするって感じかな。それまではソロ活動を続けていこうと思ってるよ。日本には、ソロ・ツアーで6、7月頃に戻って来れたらいいね。

−−一時期はメンバー同士の確執などもありましたが、今では以前に増して結束が堅くなっていますね。AJが自身の誕生日にも関わらず、ニックのMV撮影にやってきたというニュースも先日ありましたし。

ニック:そう!あれには、本当に驚いたよ。彼は、どんなに変ったことでも、興味を持ってくれるし、色々新しいことをやろうとしてる僕のことをいつでもサポートしてくれる。僕のヘンテコでクレイジーなゾンビ映画にも出演してくれたしね(笑)。



−−その映画には、当時のボーイズ・グループ仲間も多数出演しているそうですね。

ニック:そう!『Dead 7』というタイトルで、ボーイズ・グループ仲間やローレンも出演しているよ。奇想天外なコンセプトの映画で、人類滅亡後の設定で、ゾンビ映画とアメリカン・ウェスタン映画のクレイジーなクロスオーヴァーって感じだね。作るのがすごく楽しい作品だった。

 出演してくれたボーイズ・グループ仲間とは今でも仲がいいんだ。実は、今日もジョーイ(・ファトーン / イン・シンク)と電話で話したし、みんなとグループ・メールもしてる。今後、また何か一緒にやれたらいいね、って話もあがってる。クルーズとかコミコン(Comic-Con)でのイベントとかね。

−−わかりました。ニックの音楽以外の活動について、さらに伺いたいのですが、『Dancing with the Stars』への出演から得たことは?

ニック:忙しく過ごすのが好きなのと学ぶことが好きで、自分に挑戦するのも好きだ。何かに挑戦することで、人間として成長できるから。あの番組への出演は、僕が人生において特にやりがいのある仕事の一つだった。TV上で評価され、一度しかないチャンスの中で、完璧な踊りを見せなければならなかった。自分のことを優れたダンサーだと思っていないから余計にタフだった。でも、一生記憶に残るような、いい経験なった。自分の能力の真価が問われるような、試練でもあったね。

−−ニュー・アルバムのリリース、『Dancing with the Stars』への出演などキャリアも順調の上、第一子の出産も控えているそうですね。

ニック:子供が生まれることで、自分の人生にいい変化を及ぼしてくれることを期待してる。長い間、こういう業界で活動していると、変化ってすごく必要なんだ。子供が生まれることは、僕にとって新鮮な出来事で、前向きな変化になると思う。あと、容姿はどうなるのかな、とか、一人の人間が形成されていくプロセスに立ち会えるのは、とてもクールだよね。とにかく、すごく楽しみにしているよ。

−−では、最後にニックにとって“優れたポップ・ソング”とは?

ニック:曲を書く度に、新しいことをやろうと試みるから、周りからは困惑されることもあるけど、みんなが繋がりを感じられるような曲を書こうと努力している。アルバムを作っても、聴いた人が全曲気に入るわけではない。みんな音楽の趣味が幅広いから。だから、一つのアルバムの中で様々なことに挑戦して、そのどれかを気に入ってくれれば嬉しい…僕は趣味が変わってるから、全世界で唯一自分だけが好きな曲もあるわけだし(笑)。で、質問に戻ると、優れたポップ・ソングは人をハッピーにする力を持っている曲なんじゃないかな。

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ニック・カーター「オール・アメリカン」

オール・アメリカン

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