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videoolio vol.26: Jeff Bhasker~本年度グラミー年間最優秀プロデューサー受賞!「アップタウン・ファンク」を含むヒットの数々をMVとともに振り返る
注目のアーティスト、バンドやプロデューサーなどをミュージック・ビデオとともに紹介する【videoolio】。今回フィーチャーするのは、2月におこなわれた【第58回グラミー賞】にて「年間最優秀プロデューサー」を受賞したジェフ・バスカー。今年度の「年間最優秀レコード」を受賞したマーク・ロンソン ft. ブルーノ・マーズ「アップタウン・ファンク」のプロデュースや、2012年に「伝説のヤングマン ~ウィー・アー・ヤング~」でファン.を世界的に大ブレイクさせたことで知られるバスカーがこれまでに手がけてきたヒット曲の数々をミュージックビデオで紹介。 ◎過去のvideoolioはこちらから>>>
アメリカ・ニューメキシコ州ソコロ出身のジェフ・バスカーは、幼い頃から母にピアノを習い、キーボーディストとして音楽活動を開始。日本でも人気の高いソウライブのエリック・クラズノーが中心となって結成したファンク・バンド「レタス(Lettuce)」の初期メンバーとしてソングライティングを手がけるようになった。ミュージシャンとして活動していたバスカーがプロデュース業をスタートさせたのは2000年代前半のこと。拠点をニューヨークからロサンゼルスに移し、新鋭女性シンガーのゴアペレや西海岸のクセ者ラッパー、ゲームなどのデビューに携わりシーンで注目を集め、徐々にトップ・アーティストからのオファーが舞い込むようになっていった。
Kanye West
(2008年)
バスカーにとってトップ・アーティストとの最初の大仕事は、2008年にカニエ・ウェストの4thアルバム『エイト・オー・エイトズ&ハートブレイク』。前作『グラデュエーション』でグラミー賞4部門を受賞しノリに乗る一方、プライベートでは最愛の母の死や恋人との別れ、逮捕劇など波乱続きだった当時のカニエ・ウェスト。バスカーはそんな彼の右腕となり、リード・シングルの「ラヴ・ロックダウン」のほか、ほとんどの収録曲に共同プロデューサー&ソングライターとして名を連ねている。同曲は全米3位、アルバムは見事全米No.1ヒットを記録。
Jay-Z ft. Kanye West & Rihanna
(2008年)
ジェイZが2009年にリリースしたアルバム『ブループリント3』のセカンド・シングルとなった同曲は、カニエ・ウェストによるプロデュースで、バスカーはソングライターとして参加している。ジェイZ、リアーナ、カニエ・ウェストというトップスター3人の豪華共演は当時大きな話題となり、グラミー賞でも「最優秀ラップ/サング・コラボレーション賞」「最優秀ラップ楽曲賞」の2部門を受賞。バスカーにとって自身の携わった作品のグラミー賞獲得はこれが初。全米ビルボードでは惜しくも最高位2位。同曲に続いてシングル・リリースされたアリシア・キーズとのコラボ「エンパイア・ステイト・オブ・マインド」が全米No.1を記録し、もちろんアルバムも文句なしの全米No.1ヒット作となっている。
Adam Lambert
(2009年)
キャリア初期はR&B/ブラック系アーティストのプロデュースが目立つバスカーだが、JAY-Zの作品を手がけた2009年には、米人気オーディション番組『アメリカン・アイドル』から飛び出したアダム・ランバートのデビュー作にも参加している。バスカーがプロデュースを手がけた「フィーバー」はランバートとプライベートで親交のあるレディ・ガガが自身の未発表曲を提供したもの。同番組で準優勝し、国民的スターとなったランバートのデビュー・アルバム『フォー・ユア・エンターテイメント』は、バスカーのほかにもドクター・ルーク、マックス・マーティン&シェルバックら稀代のヒットメーカーたちがプロデューサーとして名を連ね、全米3位の大ヒットを記録している。
Alicia Keys
(2009年)
続いても2009年の作品。バスカーはアリシア・キーズの5作目『エレメント・オブ・フリーダム』に共同ソングライター/プロデューサーとして4曲にクレジットされている。そのうちの1曲「トライ・スリーピング・ウィズ・ア・ブロークン・ハート」は力強くエモーショナルなバラードで、アルバムからのシングル曲としては最も「アリシアらしい」とファンの間で人気のナンバーだ。前作が爆発的なヒットを記録し、R&Bシーンのみならず世界の音楽シーンから熱い視線が注がれていたアリシアの作品に全面的に参加したことで、バスカーのプロデューサー/ソングライターとしての地位をより確かなものにした。アリシアとバスカーは2012年『ガール・オン・ファイア』でも再びタッグを組んでいる。
Kanye West ft. Rihanna & Kid Cudi
(2009年)
カニエ・ウェストの5thアルバム『マイ・ビューティフル・ダーク・ツイステッド・ファンタジー』でもバスカーは多くの楽曲の共同プロデュース/ソングライティングを担当している。なかでもアルバムのハイライト曲「オール・オブ・ザ・ライツ」はリアーナ、キッド・カディを筆頭に、ファーギー、アリシア・キーズ、エルトン・ジョン、ドレイク、ザ・ドリーム、ジョン・レジェンド、ライアン・レズリー、ラ・ルー、チャーリー・ウィルソンらが参加し、その豪華なラインアップが話題に。この年のグラミー賞でカニエ・ウェストは「年間最優秀楽曲」含む7部門にノミネートされ、同曲で「最優秀ラップ楽曲賞」「最優秀ラップ・コラボレーション賞」の2部門を受賞。カニエはラップ・カテゴリ4部門を独占することになったが、主要部門「最優秀アルバム賞」に自身のアルバムがノミネートされなかったことを理由に授賞式をボイコットし話題となった。
Lana Del Rey
(2012年)
2012年の音楽シーンを席巻したラナ・デル・レイのメジャーデビュー作『ボーン・トゥ・ダイ』。モデル顔負けの美貌と悲哀に満ちた独特の世界観をもった新鋭歌姫の出世作にも、バスカーは3曲ほどプロデューサーとして参加している。そのうちの1曲「ナショナル・アンセム」ではプロデュースの傍らキーボードとギターも担当。元キーボーディストであるバスカーは、演奏面でアーティストをサポートすることも多く、2013年にプロデュースを手がけたビヨンセのアルバム『4』でも、キーボードやギターを自身が担当、ギター・ソロも披露している。「ナショナル・アンセム」はシングルとして大ヒットにはいたらなかったが、デル・レイがエイサップ・ロッキーとともにケネディ夫妻を演じたミュージック・ビデオが話題となった。
Fun. ft. Janelle Monáe
(2012年)
R&B/ヒップ・ホップ界を中心に確固たる地位を築いてきたバスカーが次に挑んだのは、インディー・ロックバンド、ファン.のプロデュースである。彼らのメジャーデビュー作『サム・ナイツ ~蒼い夜~』プロデュースすることになったバスカーは「伝説のヤングマン ~ウィー・アー・ヤング~」にジャネル・モネイを起用することで、ポップ・ロックにソウルフルなフレイバーを注入し、これが見事6週連続全米No.1に輝く大ヒットを記録。ついにグラミー賞の主要部門である「最優秀楽曲賞」の栄冠を手にし、ファン.のメンバーとともに授賞式で登壇を果たしている。ファン.は同年の最優秀新人賞にも輝いており、彼らの世界的ブレイクの仕掛人としてバスカーの名がさらにシーンに広まることになった。
The Rolling Stones
(2012年)
ファン.を世界的にブレイクさせた2012年には、こんな超大御所との仕事も。ローリング・ストーンズが50周年記念ベスト盤『GRRR!』のために書き下ろした新曲「ドゥーム・アンド・グルーム」。90年代以降、ストーンズの数々の作品を手がけ、ブルーノート・レコード現社長でもあるドン・ウォズとともにバスカーは同曲のサウンド・プロデュースに携わった。大御所アーティストが現シーンのトップ・プロデューサーを起用するのは決して珍しいことではないが、バスカーはおもにシンセサイザーを使ったビートメイクを担当し、アナログ限定リリースされた同曲のリミックスも手がけている。
Bruno Mars
(2012年)
デビュー前に一緒にバンドを組むなどお互いトップ・シーンで活躍する以前から親交のあったブルーノ・マーズとバスカー。大ヒットを記録したブルーノ・マーズのデビューアルバム『ドゥー・ワップス&フーリガンズ』に続き、2012年12月にリリースされたセカンド・アルバム『アンオーソドックス・ジュークボックス』にも計4曲に共同プロデューサーとして参加している。そのうちの1曲である先行シングル「ロックド・アウト・オブ・ヘヴン」は、バスカーとともにマーク・ロンソンもプロデューサーを務め、これが「アップタウン・ファンク」での共演のきっかけになったという。同曲はブルーノにとって4曲目の全米ビルボードNo.1ソングで、アルバムも当然のように全米No.1を獲得。2013年のグラミー賞では「最優秀男性ポップ・ヴォーカル・アルバム」を受賞している。
Mark Ronson ft. Bruno Mars
(2014年)
2014年、プロデューサーとしても第一線で活躍するマーク・ロンソンが久々に自身の新作に取りかかるにあたり、同業者であるバスカーに全面的に共同プロデュースを依頼。約18か月にわたりロンドン、メンフィス、ロサンゼルス、ニューヨークのスタジオで多彩なゲストを招いて『アップタウン・スペシャル』を制作した。歴代2位タイとなる全米ビルボード14週連続No.1の快挙を達成した「アップタウン・ファンク」は、同アルバムの先行シングルであり、ブルーノ・マーズからの「アルバムに参加したい」という逆オファーにより実現したコラボレーションとのこと。稀代のエンターテナーであるブルーノの魅力を100%引き出すファンキーでノリの良いダンス・チューンは、これまでにもエイミー・ワインハウスやリリー・アレン、Q-TIPなど、数々のアーティストをフィーチャーしてきたロンソンにとっても最大のヒット曲となり、今年2月におこなわれたグラミー賞にて主要部門である「最優秀レコード賞」を受賞した。
Text: 多田 愛子