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マキシ・プリースト 来日記念特集~ジャンルを超えて愛される“キング・オブ・ラヴァーズ・ロック”の魅力に迫る
レゲエというとジャマイカ発祥の音楽であることは誰もが承知だろうが、実際には世界各地にレゲエのアーティストは存在する。カリブ周辺にとどまらず、北米も南米もヨーロッパも盛んだし、最近だとアフリカのレゲエも注目されている。当然、日本にはジャパレゲと呼ばれる独自のレゲエ文化があるのは周知の通り。しかし、ジャマイカ以外で多数の世界的ヒットを出している国といえば、なんといってもUKだ。アスワド、UB40、スティール・パルスなど数多くのレゲエ・ミュージシャンが登場したが、その頂点といってもいい存在がマキシ・プリースト。ソウルやR&B要素を取り入れたソフトなポップ・レゲエは“キング・オブ・ラヴァーズ・ロック”と呼ばれ、90年代初頭に世界を席巻した。ここでは、間もなく来日公演を行う彼のヒストリーを追っておこう。
マキシ・プリーストの本名は、マックス・アルフレッド・エリオット。1961年に英国のロンドンで生まれた。彼の両親はジャマイカ移民で、幼い頃からレゲエはもちろん、リズム&ブルースやゴスペルといったブラック・ミュージックに親しみながら育ったという。歌うことを好きになってからも、デニス・ブラウンやグレゴリー・アイザックスといったレゲエ・シンガーだけでなく、マーヴィン・ゲイやアル・グリーン、そしてビートルズからフランク・シナトラにいたるまで様々なミュージシャンから大きな影響を受けた。10代にしてすでにサウンドシステムで歌うことを覚え、80年代を代表するサウンドシステムのサクソン・スタジオ・インターナショナルにも参加している。
1985年には、ルーツ・レゲエからラヴァーズ・ロックまでを取り入れた初のソロ・アルバム『You're Safe / ユーアー・セーフ』を発表。続いて、1986年には2作目となる『Intentions / インテンションズ』をリリース。持ち前のソウルフルなヴォーカル・スタイルで、英国では話題になった。そして、1988年には初のメジャー作品となるサード・アルバム『Maxi / マキシ』を発表。英国ではチャート上位に食い込み、米国のビルボードでも初めてチャートインを果たした。また、キャット・スティーヴンスの「Wild World / ワイルド・ワールド」を取り上げたことで、ジャンルを超えてメッセージ性を持つレゲエ・シンガーとして英国では確固たる地位を築く。
そして、世界的に大ブレイクすることになったのは、1990年のこと。プログラミングされたビートがクールな「Close To You / クロース・トゥ・ユー」が全世界で大ヒットを記録。米国ではビルボードチャートのHot100で見事1位を獲得し、90年代を代表するレゲエ・アーティストとして華々しくその存在をアピールした。この曲を含む4作目のアルバム『Bonafide / ボナファイド』も英国で11位、米国でも47位と健闘。「Peace Throughout The World / ピース・スルーアウト・ザ・ワールド」や「Just A Little Bit Longer / ジャスト・ア・リトル・ビット・ロンガー」などもシングル・カットされ、彼の初期を代表する傑作としてUKレゲエ・シーンに大きな指標を打ち立てた。この後、ロバータ・フラックからのラブコールで共演した「Set The Night To Music / ナイト・トゥ・ミュージック」がビルボードチャートのHot100で6位となり、レゲエ・シーン以外のファンにも大きく認知されることになる。
1992年には、5作目のアルバム『Fe Real / フェ・リアル』を発表。UKエイジアンとして一世を風靡したアパッチ・インディアンとの共演曲「Just Wanna Know / ジャスト・ワナ・ノウ」で話題を呼ぶ。また、1996年にはシャギーとデュエットした「That Girl / ザット・ガール」が大ヒット。ザ・ポリス「Message In The Bottle / 孤独のメッセージ」のカヴァーも披露した6作目『Man With The Fun / マン・ウィズ・ザ・ファン』も大きな評価を得た。その後も、スティーヴィー・ワンダーのカヴァーも収めた『CombiNation / コンビネイション』(1999年)、ショーン・ポールの参加も話題を呼んだ『2 The Max / 2 ザ・マックス』(2005年)、これまで未発表だった名曲を集めた『Refused』(2007年)、ホリデイ・アルバムに挑戦した『Time Of The Year』(2011年)と、寡作ながらも力作を発表し続けている。
マキシ・プリースト広く愛される理由は、その懐の深さだろう。シャギーやシャバ・ランクスといったレゲエ・シーンの先鋭たちからリスペクトを受けて共演しているのはもちろんのこと、2008年にはUB40のヴォーカリストに就任するというフットワークの軽さも見せた。また、ジャンルを超えた共演も積極的に行っており、例えばジャズ・フュージョン系のベテラン・ギタリストであるリー・リトナーのアルバム『Wes Bound / ウェス・バウンド』(1993年)では非常に重要なシンガーとしてフィーチャーされていたのもファンにはおなじみだろう。そしてわが国では、織田裕二のヒット・チューン「Love Somebody」(1997年)を共作とデュエットしたことで、お茶の間でも彼の歌声は聞かれることとなった。そして、どんなジャンルでも、そのソウルフルな歌声が不変であることもさすがだ。
今のところ、彼の最新作は2014年に発表された『Easy To Love』。べレス・ハモンドの参加でも話題を呼んだ本作は、ビルボードのレゲエ・アルバム・チャートで2位を獲得。まだまだ、音楽シーンにおいての現役であることが証明されている。そして、ライヴのクオリティも衰えることはないだろう。その存在感は、ぜひ2016年のビルボードライブで味わってもらいたい。
"Holiday" Music Video
公演情報
Maxi Priest
Billboard Live Japan Tour 2016
ビルボードライブ東京:2016年1月31日(日)~2月1日(月)
>>公演詳細はこちら
ビルボードライブ大阪:2016年2月2日(火)
>>公演詳細はこちら
INFO: www.billboard-live.com
BAND MEMBERS
マキシ・プリースト / Maxi Priest (Vocals)
ジャレッド・ジェイコブス / Jared Jacobs (Keyboards)
ジョー・サンサベリノ / Joe Sansaverino (Guitar)
タディー・ピー / Taddy P [Othniel Campbell] (Bass)
ポール・キャスティック / Paul Kastick (Drums)
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Text: 栗本斉
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