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オリンピック・スタジアムで行われた伝説的ライヴ6選
2020年東京オリンピック・パラリンピックのメイン会場となる新国立競技場の建設に向け、先日、国立競技場の解体が終了したことがニュースとなった。歴史の1ページに刻まれるであろう新たな“聖地”への期待は高まるばかりだが、オリンピック・スタジアムで生まれる伝説は必ずしもスポーツだけとは限らない。アスリートと同じように、数々のアーティストたちもこれまでにスタジアムを舞台に多くの感動を生み出してきた。
ここでは、イギリス、アメリカ、ブラジル、そして、オリンピック発祥の地ギリシャのオリンピック・スタジアムと、そこで行われた伝説的コンサートを映像とともに紹介したい。
TOP Photos: Redferns
■ウェンブリー・スタジアム(イギリス・ロンドン)■
1948年の夏季オリンピックのメイン競技場として使用されたウェンブリー・スタジアムは、音楽ファンにとって最もなじみのあるオリンピック・スタジアムかもしれない。1985年に行われたアフリカ難民救済コンサート『ライヴ・エイド』のほか、ローリング・ストーンズ、ザ・フー、クイーンなど英国を代表するロック・バンドによるコンサートが数多く行われてきた。1922年完成の初代ウェンブリー・スタジアムはオリンピックのみならず、サッカーFIFAワールドカップ(1966年)やUEFA欧州選手権(1996年)などにも使用されてきたが、老朽化により2000年に一度取り壊され、2007年にリニューアルオープン。リニューアル直後には、ダイアナ元皇太子妃の生誕46周年&没後10年の追悼コンサート『コンサート・フォー・ダイアナ』が行われ、その後もミューズ、マドンナ、オアシス、フーファイターズ、U2、コールドプレイ、ワン・ワンダイレクションなどが同会場でコンサートを行っている。ちなみに、2016年は、コールドプレイとリアーナのコンサートがすでに決定している。
Live At Wembley Stadiumクイーン史上最大規模にして最高のパフォーマンスと賞賛される1986年7月のウェンブリー・スタジアム公演。この直後にフレディ・マーキュリーのエイズの病状が悪化したため、フレディーにとっては最後のツアーとなっている。2日間で15万人を動員したこのコンサートは『クイーン・ライヴ!!ウェンブリー1986』としてパッケージ化もされており、スタジアムを埋め尽くす観客の大きなうねりのなかで繰り広げられるドラッマチックで壮大な「ボヘミアン・ラプソディ」は、まさに伝説そのもの。
▲ 「All the Young Dudes」 / Mott the Hoople & David Bowie
続いてはフレディ・マーキュリーの死後、1992年にウェンブリー・スタジアムで行われた追悼コンサートにてデヴィッド・ボウイがモット・ザ・フープルに提供した名曲「すべての若き野郎ども」を、彼らとともにパフォーマンスしている貴重な映像。バックを務めているのはもちろんクイーンの3人。エメラルド・グリーンのスーツに身を包んだ麗しきボウイはもちろん、今は亡き盟友ミック・ロンソンの姿が涙を誘う。ボウイはこのコンサートにて、クイーンとの共演曲「アンダー・プレッシャー」と自身の楽曲「ヒーローズ」もパフォーマンスしている。
■マラカナン・スタジアム(ブラジル・リオデジャネイロ)■
かつては20万人の収容人数を誇った世界最大規模のサッカー専用スタジアム。1950年のW杯決勝にてブラジル代表がこの地でウルグアイに敗れ優勝を逃した“マラカナンの悲劇”は、サッカーファンなら耳にしたことがあるだろう。過去2回の大規模修繕を経て、2014年W杯決勝でも使用され、来年8月に開催されるオリンピックではサッカーはもちろん開会式・閉会式がおこなわれる予定。つねにブラジルサッカー史の舞台となってきた同スタジアムだが、30周年を記念した1980年のフランク・シナトラ公演を皮切りに、キッス、スティング、ティナ・ターナー、ポール・マッカートニーらが単独公演を行っている。また、南米最大規模のロック・フェスとして知られる『ロック・イン・リオ』の第2回が1991年に同スタジアムで開催され、観客の数は20万とも25万人ともいわれている。しかし、『ロック・イン・リオll』開催翌年の1992年にスタンド落下事故が発生、これを受け現在の収容人数は8万人まで削減されている。
Live At Estádio do Maracanã
▲ 「Sweet Child O' Mine」 / Guns N' Roses
『ロック・イン・リオll』で2日間にわたりヘッドライナーを務めたのが、全盛期を迎えていたガンズ・アンド・ローゼズ。スラッシュによる「スウィート・チャイルド・オブ・マイン」の印象的なギター・リフが会場に響き渡った際の割れんばかりの歓声、アクセルの歌声をかき消すほどの大合唱…当時の熱狂が映像からも存分に伝わってくる。『ロック・イン・リオll』でのパフォーマンスはガンズ時代の最高の思い出だと元メンバーのイジー・ストラドリンもインタビューで語っている。来年夏のフェス出演に向け、当時のメンバーでの再結成が噂される彼らだが…真相はいかに。
こちらも『ロック・イン・リオll』よりノルウェー出身のポップ・グループA-haによる代表曲「テイク・オン・ミー」のパフォーマンス。いわゆるスタジアム・ロック勢とは一線を画す存在でありながら、タオルを回して熱狂する観客の姿やパフォーマンス後に響きわたるA-haコールから、当時のブラジルでの彼らの人気をうかがい知ることができる。ちなみにフェス初開催から30周年を迎えた今年のロック・イン・リオのためにA-haは再結成、パフォーマンスを行っている。
■ロサンゼルス・メモリアル・コロシアム(アメリカ・ロサンゼルス)■
1932年と1984年の2度、夏季オリンピックのメイン会場として使用されたのがロサンゼルス・メモリアル・コロシアム。ここは、名門レーベル、スタックスによるソウル・ミュージックの祭典、『ワッツタックス』(1972年)の会場となった場所だ。当時の政治的背景を受け、アフリカ系アメリカ人のために開催されたこのイベントの入場料は誰でも入場できるようにと1ドルに設定され、当日は10万人以上のアフリカ系アメリカ人が詰めかけたという。“黒いウッドストック”とも称される歴史的祭典にはには、同レーベルの看板アーティストが揃って出演し、開催翌年には映像化もされている。『ワッツタックス』のほか、ストーンズの『スティール・ホイールズ』ツアーなどパッケージ化された同スタジアムでのコンサートは数知れず。またレア音源として1982年のザ・フーのコンサートの前座として登場したクラッシュのライブなども存在している。
Live At Los Angeles Memorial Coliseum
▲ 「Breakdown & Funky Chicken」 / Rufus Thomas
観客11万人とのコール&レスポンスではじまるルーファス・トーマスの『ワッツタックス』でのパフォーマンス。全身ショッキング・ピンクの衣装で軽快なステップを踏むその姿はあまりにエネルギッシュ。拳をふり上げるのではなくダンスでその興奮を表現する観客の姿はまさに“黒いウッドストック”ならではの光景だ。ルーファスのほか、カーラ・トーマス、バーケイズ、ステイプル・シンガーズ、アイザック・ヘイズらが出演している。
■パナシナイコ・スタジアム(ギリシャ・アテネ)■
これまでに紹介したスタジアムに比べ、映像や音源が残されているコンサートは少ないが、オリンピック発祥の地、ギリシャのアテネにあるパナシナイコ・スタジアムも最後に紹介しておきたい。第一回オリンピックに使用されたこのスタジアムは1周330mで直線が非常に長く、現在のトラックと比べ、楕円がよりつぶれた細長い形をしている。そのため、2004年に再びアテネで行われたオリンピックの際には、陸上トラック競技ではなく、マラソンのゴール地点やアーチェリーの会場に使われた。
Live At Panathinaiko Stadium
▲ 「(Don't Go Back To) Rockville」 / R.E.M.
オリンピック発祥の地で2008年にコンサートを行ったのは、米・オルタナ界の重鎮R.E.M.。スタジアムいっぱいに埋め尽くされたファンを映し出したシーンやステージ上空・後方からの映像でこのスタジアムならではの細長いトラックが確認できるだろう。また、後半に映し出されるすぐ近くの建造物などは古代都市アテネならではのロケーションにも思わずうっとり。
Text: 多田 愛子
ガンズ・アンド・ローゼズ/グレイテスト・ヒッツ
2018/12/05 RELEASE
UICY-76309 ¥ 1,528(税込)
Disc01
- 01.ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル
- 02.スウィート・チャイルド・オブ・マイン
- 03.ペイシェンス
- 04.パラダイス・シティ
- 05.ノッキン・オン・ヘヴンズ・ドア
- 06.シヴィル・ウォー
- 07.ユー・クッド・ビー・マイン
- 08.ドント・クライ (オリジナル・ヴァージョン)
- 09.ノーヴェンバー・レイン
- 10.リヴ・アンド・レット・ダイ
- 11.イエスタデイズ
- 12.エイント・イット・ファン
- 13.シンス・アイ・ドント・ハヴ・ユー
- 14.悪魔を憐れむ歌
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