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レディー・ガガ 米ビルボード誌最新インタビュー 「たとえそれが何であれ、私はやってのける」
トニー・ベネットとのコラボレーションでシンガーとして新境地を切り開き、人気米TVシリーズ『アメリカン・ホラー・ストーリー』へ出演するなど、アーティストとしてさらなる魅力を開花させ、今年度の【米ビルボード・ウーマン・オブ・ザ・イヤー】に選出されたレディー・ガガ。そしてキャリアを通して、多くの社会貢献活動に取り組んできた彼女がミュージシャンによる社会奉仕とテーマとした最新の米ビルボード誌の表紙をエルトン・ジョンとともに飾った。
彼女のファンであった当時14歳のジェイミー・ロードマイヤーがいじめにより自殺を図ったことに心を痛め、いじめ撲滅のために自身の母親とともに<ボーン・ディス・ウェイ財団>を2011年に立ち上げ、全米の大学キャンパスで多発する性的暴行に関するドキュメンタリー『ザ・ハンティング・グラウンド』へ提供した新曲「Til It Happens to You」では自身の経験を赤裸々に綴るなど、若者が抱える様々な問題も多く取り上げたきた彼女が、いじめや現代社会のあり方へ物申す。
世の中の無関心さの犠牲になったのではなく、彼らの死から学ぶきっかけにしたかった
−−<ボーン・ディス・ウェイ財団>を設立した理由は?
レディー・ガガ:ここ数年間、ファンの成長を見守ってきたことから、この財団は生まれた。多くの子たちはとても若く、11~17歳ぐらいで、波乱の人生を送っている。私に自分のことを話してくれるのだけれど、とてもダークな内容が多かった。そんな彼らのことを気に掛けるようになり、まるで自分のことのように思えた。自分が一人ではない、と彼らに気づかせるために、何かアクションを起こさなければならないと感じたの。孤独だ、と感じることが、自殺に結びつくから。
−−ジェイミー・ロードマイヤーの死もきっかけとなりましたか?
レディー・ガガ:もちろんよ。ジェイミーの死を含む、『ボーン・ディス・ウェイ』がリリースされた頃に浮き彫りになったティーンによる自殺の問題。あのアルバムがリリースされた時、ジェイミーは何曲が聴いて、それについて何度かネットに投稿していたけれど、残念ながら深い心の闇に既に飲み込まれてしまっていた。彼らのように人と違うからという理由で、命を絶ってしまう若者たち―世の中の無関心さの犠牲になったのではなく、彼らの死から学ぶきっかけにしたかった。
−−この財団を通じて、様々な人々に出会ったと思いますが、特に印象に残っている人物はいますか?
レディー・ガガ:数えきれないほどいるわ。その中でも、特に仲良くなったのはエマという女の子。脳性麻痺を患っていて、車いすで生活をしている。(2013年の)【Born This Way Ball Tour】に同行していた<Born Brave Bus>で出会って、彼女の苦しみを深く分かち合った。周りにはたくさんの人々がいて―カメラマンやジャーナリストなどがその瞬間を捉えようとしていたけれど、私は「2人にしてくれない?」と言ったわ。2人だけになって、彼女が大丈夫か訊きたかったから。前のめりながら車いすに座っていたけれど、とても勇敢な笑みを浮かべていた。本当に素晴らしい人に出会うことができたと確信した。こういう瞬間に立ち会えると、「この人からは学ぶことがたくさんある―逆境を通して自分に力を与えることの意味、自分が心が折れそうな時でも、この人は強くあることの意味を理解している。」という風に思うの。
−−こういったティーンの話を聞いた時、根本的な問題はどこにあると感じますか?
レディー・ガガ:主に鬱と不安が共通していると思う。現在の私たちのあり方に子供たちは孤独を感じている。スマホによって人付き合いや人と何かの瞬間を共有をすることをしなくなった。そしてネット上には憎しみに満ちた言葉が溢れている。インターネットはトイレと同じ。昔はとても有効な資源だった。価値のあるものに辿り着くにはクソみたいものをより分けねばならないけど。
ロボットのように感じている彼らは、人間だということをただ感じたいだけ。なぜ自分が悲しいか理解できないでいる。一日中スマホを眺めていれば悲しくなるという、研究による科学的な理由も明らかになっている。
私はずっと鬱や不安に苦しまされてきて、それは今でも日常茶飯事。私はただ彼らに人間として深く感じるのは当たり前のことだと分かって欲しい。それは生まれながらのもの。今の世の中の、浅薄で、何とも繋がりを感じられない現状には、まったく人間味がない。
▲ 「Born This Way Foundation Launch Event」
−−<ボーン・ディス・ウェイ財団>のどこが最も誇らしいですか?
レディー・ガガ:子供たちが育んだ友情を目の当たりにすること。摂食障害を持つ子、末期疾患の子と性同一性障害を乗り越えようとしている子が集まる光景を見ると、これまで誰もやったことがないことをやっている、という気がする。この財団は私の人生に目的を与え、このために私は生まれたんだ、と思わせてくれる。
−−アーティストとしての社会的責任は、どこから始まり、終わると感じますか?
レディー・ガガ:それはずっと変わっていないこと。私のパフォーマーとしての姿とは裏腹に、何でもやるってわけじゃない。中には、ショッキングな作品もあるけれど、裏には必ずメッセージがあるの。
−−最近ではイメージがトラディショナルになりつつありますが、アウトサイダーたちの代弁しつつも、外見が…
レディー・ガガ:グラマラス(笑)?自分の中でいつだって“対立”がある。もしイッちゃった恰好をしていたら、それは心の中で自分を卑下しているから。レディーのような恰好をしている場合は、とてもワイルドで、自信を持っていることが多い。変だと思うかもしれないけど、ブロンドでもやることはやるわ。私は変わってない。それにもうすぐ30歳になるから、社会的にきちんと振る舞う方法を身につけているの。
−−そうすることで、いかにもルールに従っているように演じている?
レディー・ガガ:それはないわ。私が何かワイルドなことをするのを誰もが期待している。でも、私は自分がやりたいことを、やりたい時にしかやらない。今は、子供たちが集まり、友情を育めるような場所を作りたいと思ってる。大統領の気を引かなくてはならないことでも…たとえそれが何であれ、私はやってのける。
−−2011年には学校においてのいじめについて話すためにオバマ大統領に会いましたが、その時に学んだのは?
レディー・ガガ:彼が、心から気に掛けているということ。(ホワイト・ハウスのシニア・アドヴァイザーの)ヴァレリー・ジャレットとはよく話しているわ。「Til It Happens to You」を発表した時もヴァレリーは、「ビデオを観るのが辛かったけど、過激な(アプローチだった)のが良かった。」と言ってくれた。これは<ボーン・ディス・ウェイ財団>として取り組んでいるもう一つのこと。レイプや暴力を受けた人々も受け入れていて、数多くの性的虐待を受けた子供たちに会ってきた。
−−「Til It Happens to You」をレコーディングした際の個人的な利害とは?
レディー・ガガ:あの曲を聴くのも、ビデオを見るのも辛い。ダイアン(・ウォーレン)には本当に助けられた。「ダイアン、私はこれまで様々なことをやってきたけれど、これはできるしら?」と言ったら、彼女は「あなたならできるわ。」と言ってくれた。自分はもちろん、みんな孤独ではない―お互いがいるというのに気づくことで、とても気持ちが楽になった。レイプ被害者のみならず、酷いことされ、静かに苦しんでいる人々はたくさん存在する。
私にとって一番難しかったのは、起こった出来事を自分なりに受け入れること。「自分にこんなにも酷いことが起きた上に、どうしたらいいかわからない。」ということを、自分が認めることができない。そして誰も自分の気持ちを理解してくれない。私は(性的暴力を受けたことを)何年間も誰にも言わなかった。それは、自分自身にも言い聞かせることが出来なかったから。そして私の魂は消えてしまうまで燃え尽きてしまった。でも、自分が苦しんでいたこと、そしてある意味自分の一部が死んでしまったことを認めながらも、それを生き返らせる力が自分にはあること、そしてそれを手助けしてくれる人がいることに気づかなければならない。
−−レコーディング中に、泣きだしてしまったことが何度もあったそうですね。
レディー・ガガ:ずっとよ。ダイアンと二人三脚という感じね。あの曲のヴォーカルは、私がずっと泣いているものよ。他の女性とシェアした一生忘れられない瞬間ね。
−−あなたとエルトン・ジョンは親友ですが、彼がこの財団に与えた影響は?
レディー・ガガ:彼には本当に様々な面においてインスパイアされている―きちんと例を挙げれないほどに。彼は親友であり、親のような存在。私のことを気に掛けてくれていて、人生で一番辛かった時にもそばにいてくれた。私が大丈夫か目を配り、鬱状態に陥らないように見守ってくれている。これまでエイズやLGBTコミュニティーのために彼が貢献してきたこと。彼はすべて―一緒にいると、彼の世界を救うための聡明なプランを手伝いたいという気持ちでいっぱいになるわ。
Q&A by Camille Dodero / 2015年10月15日 Billboard.com掲載
「Til It Happens To You」Music Video
リリース情報
関連リンク
ボーン・ディス・ウェイ
2013/11/06 RELEASE
UICS-9144 ¥ 1,865(税込)
Disc01
- 01.マリー・ザ・ナイト
- 02.ボーン・ディス・ウェイ
- 03.ガバメント・フッカー
- 04.ジューダス
- 05.アメリカーノ
- 06.ヘアー
- 07.シャイセ
- 08.ブラッディー・マリー
- 09.バッド・キッズ
- 10.ハイウェイ・ユニコーン(ロード・トゥ・ラヴ)
- 11.ヘヴィー・メタル・ラヴァー
- 12.エレクトリック・チャペル
- 13.ユー・アンド・アイ
- 14.ジ・エッジ・オブ・グローリー
- 15.ボーン・ディス・ウェイ -ヨスト&ナーフ・リミックス (インターナショナル・ボーナス・トラック)
- 16.ボーン・ディス・ウェイ -LLG vs GLG ラジオ・ミックス (日本ボーナス・トラック)
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