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バーナード・パーディー 来日記念特集
60年代より数々の歴史的名盤にその名を刻んだレジェンド・ドラマー、バーナード・パーディーが2015年8月に来日公演を行う。
シーン随一の仕事量を誇るグルーヴ・マスター
1939年6月11日、アメリカ・メリーランド州エルクトン生まれ。1961年にニューヨークに拠点を移しセッション・ドラマーとしてのキャリアをスタートさせたバーナード“プリティ”パーディー。50年代から活躍していたR&B/ソウル・デュオのミッキー&シルヴィアやサックス奏者キング・カーティスのサポートを務め、カーティスとともにアレサ・フランクリンなど数々のライブや作品に参加しセッション・ドラマーとしての名を上げていった。
▲ The Purdie Shuffle (FULL DRUM LESSON)
お得意のフィル“ダチーチ”、軽快かつダイナミックなハーフタイム・シャッフル=別名“パーディー・シャッフル”などの奏法は今でも多くのドラマーにとって憧れであり、彼らにとってパーディーはまさに生きる教則本のような存在。そして、彼が数々の作品に刻み込んだグルーヴはクラブ・ミュージック界においてもサンプリング・ソースとして重宝されている。
「これまでに参加したアルバムは4000以上」と自称するパーディー。「初期ビートルズ21曲でドラムを叩いたのは自分だ。」など、珍言?迷言?が多いことでも知られるだけにその数字の真偽は不明だが、1969年~71年にかけては毎年10枚以上、それ以降も毎年5枚前後の作品にクレジットされており、その仕事量はシーン随一であることは確か。時にジャンルをも飛び越えセッションを繰り広げる“仕事人”パーディーの名演が刻み込まれた、その代表作の一部を紹介したい。
『シングス・ザ・ブルース』
ニーナ・シモン
(1967年)
まずはパーディー初期の仕事から。ニーナ・シモンによるブルース・カバーとオリジナル曲で構成された『シングス・ザ・ブルース』では全曲ドラムを担当。個性的な歌声を引き立てるタイトな演奏が光る。同作のギターは“ギターの神様”とも称されるエリック・ゲイルが担当するなど、バックも聴きどころ満載の一枚。
『パーディー・グッド!』
バーナード・パーディー
(1971年)
ジェームス・ブラウンの「コースド・スウェット」から始まる、パーディーが1971年に発表した2ndソロ作。同曲の後半で繰り広げる“ダチーチ”は必聴。ジャズ・ファンク、レアグルーヴのクラシック作品として評価され、デビュー作『ソウル・ドラムス』と並び、サンプリング・ソースとして時代を超えて愛される名曲揃い。
『アレサ・ライヴ・アット・フィルモア・ウェスト』
アレサ・フランクリン
(1971年)
アレサが1971年に発表したライブ盤の金字塔。キング・カーティス率いる“キングピンズ”の一員としてコーネル・デュプリー、ジェリー・ジェモットらとともに参加。アレサの熱唱はもちろん、名手ぞろいのバンドが生み出すグルーヴ感が客席の歓声とともに当時の臨場感そのままに伝わる一枚。パーディーはアレサのスタジオ代表作『ヤング、ギフティッド・アンド・ブラック』にも参加。
『セカンド・ムーヴメント』
エディ・ハリス&レス・マッキャン
(1971年)
共演の模様を収録したライブ盤『スイス・ムーヴメント』で大成功を収めた、エディ・ハリス&レス・マッキャンの名コンビによるスタジオ作品。リリース当時よりもレア・グルーヴの流れで2000年代に入って高く評価された作品で、なかでも人気の高い「ショーティ・ライズ・アゲイン」に参加、無駄のないタイトなドラムを披露している。
『ピーセス・オブ・ア・マン』
ギル・スコット・ヘロン
(1971年)
“黒いディラン”と称されるヘロンの代表作にヒューバート・ロウズ、ロン・カーターとともに参加。「ザ・レボリューション・ウィル・ノット・ビー・テレヴァイズド」での名演は革命的。イントロからうねるグルーヴと、その上に乗せられたヘロンの鋭利なポエトリー・リーディングはヒップホップの先駆けとも言われている。
『アバンダンド・ランチョネット』
ダリル・ホール&ジョン・オーツ
(1973年)
ホール&オーツの2ndアルバム。白人デュオらしからぬソウルフルなサウンドでブルー・アイド・ソウルと称される彼らの屋台骨をスタッフのゴードン・エドワーズ(b)とともにがっちりと支えている。タイトル曲のプレイは必聴。
『彩(エイジャ)』
スティーリー・ダン
(1977年)
スティーリー・ダン最高傑作であり、パーディーの代表的な仕事としても知られる同作には「ディーコン・ブルース」「安らぎの家」の2曲も参加。なかでも「安らぎの家 / Home at Last」で演じたパーディー・シャッフルは絶品。
このほかにもジェームス・ブラウン、マイルス・デイヴィス、B.B.キング、アル・クーパー、ジョー・コッカー、トッド・ラングレンなど、パーディーが参加したレコーディングのその錚々たる顔ぶれを挙げればきりがない。
継承されるパーディー・シャッフルを間近で
パーディ・シャッフルを継承するドラマーとその楽曲として、最も有名なのがレッド・ツェッペリンの「フール・イン・ザ・レイン」。この曲でのジョン・ボーナムのプレイもまた、多くのドラマーにとって憧れの演奏となっており、YouTube上にも世界中のドラマーがによる無数のカバー映像が存在している。また、パーディーを心の師と公言するTOTOのドラマー、ジェフ・ポーカロがこの系譜にアレンジを加えて演奏したのが名曲「ロザーナ」である。また、パーディーによる楽曲はサンプリング・ソースとしても重宝され、ジュラシック5やDJシャドウ、また、ケミカル・ブラザーズ、マッシヴ・アタック、プロディジーなど、幅広いジャンルのナンバーに使用されている。
古くはジェフ・ベックのバンド・メンバーとして来日したこともあり、また、近年では盟友チャック・レイニーとの共演など、コンスタントに来日公演を行っているパーディー。今回の来日公演は「バーナード・パーディー&フレンズ~ALL ABOUT PURDIE SHUFFLE~」と題し、オルガン奏者のウィル・ブラデス、偉大なジャズ・ギタリストを父に持つグラント・グリーンJr.、ともにソロ作をリリースするベテラン・プレイヤーとのトリオでオンステージ予定。時代を超えて継承されていく伝説のドラミング?パーディー・シャッフルと唯一無二のグルーヴをこの夏、ぜひ間近で体感したい。
ドラム・マガジン編集部からコメントが到着!
2012年に“バーナード・パーディ&フレンズ”で来日した際に、幸運にもパーディの取材をできるチャンスに恵まれました。あのファンキーなドラミングと、教則作品などでのノリノリな語り口から陽気な人柄を勝手にイメージしていたのですが、とても穏やかで紳士的。こちらの質問に対して、深く考え、1つ1つ丁寧に答えてくれる姿が印象的でした。当時73歳、足の調子も悪かったようで、杖を使っており、大変失礼ながら“年齢も年齢だし、大丈夫かなぁ?”なんて思ってしまったのですが、ステージに立ち、ドラムに叩き出した瞬間に、そんな不安は吹っ飛びました。エネルギッシュなプレイと、極上のサウンド、何よりあの超ご機嫌なグルーヴにノック・アウト! 本当に圧巻でした。特に彼の代名詞であり、世界中のドラマーが憧れる“パーディ・シャッフル”の気持ち良さは格別でした。普段はクールに音楽、そしてドラムのことを考えているからこそ、ステージ上であれほどの熱を放つことができるんだなと感じました。そんなパーディが今週末、再び来日するということで、これは絶対に見逃せません! ぜひ生で”パーディ・シャッフル”を体感してみてください!!(ドラム・マガジン編集部)
来日公演情報
Bernard Purdie & FRIENDS
~ALL ABOUT PURDIE SHUFFLE~
ビルボードライブ大阪:2015年8月22日(土)
>>公演詳細はこちら
ビルボードライブ東京:2015年8月23日(日)
>>公演詳細はこちら
INFO: www.billboard-live.com
BAND MEMBERS
バーナード‘プリティ’パーディー / Bernard ‘Pretty’ Purdie(Drums)
ウィル・ブラデス / Wil Blades(Organ)
グラント・グリーンJr. / Grant Green Jr.(Guitar)
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Text: 多田 愛子
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