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ブラー 『ザ・マジック・ウィップ』インタビュー~デーモン&グレアムが語る新作、美味しいカエルの選び方?
1991年のデビュー以降、数々の名盤を世に送り出してきたイギリスを代表する4人組ロック・バンド、ブラー。1999年の『13』リリース後、ギタリストのグレアム・コクソンがバンドを脱退。3ピース・バンドとして2003年に『シンク・タンク』を発表すると活動休止に。2009年に再結成すると、再び精力的にライブ活動を行い、ロンドン・オリンピックの閉会式にも出演した。
そして2015年4月、全世界待望のニュー・アルバム『ザ・マジック・ウィップ』が遂にリリースとなった。ツアーの合間に香港で行われた5日間に及ぶ“ジャム”セッションが発端となり生まれた今作について、フロントマンのデーモンとグレアムが語ってくれた。
要するにジャムってた、ってことさ
??バンドが再結成すると…。
デーモン・アルバーン:厄介だよね。
??疑念が付きまとうことが多いですよね。
デーモン:再結成当初はその通りだったと思う…俺は何もやりたくないという姿勢をガンとして貫いていたから。でもある時、まぁやってみてもいいじゃないか、って思ったんだ―プレッシャーもなかったし、遠く離れた香港にいたし。小さなスタジオだったし、楽しめるかな、と思って。だから文字どおり、プレッシャーはなかった。5日間演奏に打ち込めるのも悪くない。アルバムを作ってるって、感じじゃなかったんだ―とにかく俺の頭の中では―アイディアを元にふざけてただけ。どれも完結されたアイディアじゃなかった。それが20~30分間で広がっていっただけのことで、遊び感覚だった。“ジャム”って言葉を使うのには抵抗がある。あんまりいい意味合いがないから、もっと適した言葉があれば、って思うけど。要するにジャムってた、ってことさ。
??その5日間以外にどれぐらいの期間を香港で過ごしたのですか?
デーモン:その5日間のみだよ。俺はゴリラズの時に何度も行ったことがあったんだ。決断は、俺たちがコラボしてたトニー・ハンって奴と下した。俺のアーティストとしての強情さが、ブラーの作品を彷彿させる欠片もないようなものにしたらいいんじゃないか、って思わせたんだ。
??香港でレコーディングしたことが、サウンドにどのような影響を与えたか教えてもらえますか?
デーモン:これまで短期間で何枚かのアルバムを作ったことがある―主にアフリカ、それとツアー中。その場所に行った時に湧き上がってくるものに惹かれるんだ。自分がどこへ行くかもランダムだし。音世界を創る上では、どんな小さなものにも意味があるんだ。俺はiPadを持ち歩いて、よく色んなものをサンプリングしてる。そういったものが必然的になってくる。スタジオもすごくベーシックなもので、俺たちが持ち込んだ楽器と電源が上手く噛み合ってなかった。そういう妙なこともある。
??これまでもユーモアを巧く扱ってきましたが、抽象的な、香港特有のものってありましたか?
グレアム・コクソン:どうだろう、多分あったと思う。でも、それは自分がNYに行っても同じように感じるようなものじゃないかな。ただただ違うんだよ。自分がNYで感じたものの方が香港に比べてメロウだけど、どちらも新鮮で、未知のものだった。僕は未知のものに対して、うまく応対することができない。妙に慎重になっちゃうんだ。アルバムを作るって決めた時、とりあえず5日間スタジオに入ると決断した時、多少物事が核心に近づいた気がした。色んな人にあったりとかして。
デーモン:俺はまったく正反対だな。音楽を作る時、未知のものがある方が好きだ。最高だよ。
??外国語とか…
デーモン:すべてさ。自分の枠から一歩踏み出すことを可能にする。どういうストーリーを語りたいか模索するために香港に戻った時…当初香港で書いたもの中にヒントが見え隠れしていたけど、ぼんやりとしたアイディアばかりだった。ただ「小さな家に住んでる人々が多すぎる。」って書き留めてて、それだけ。そんなんじゃ足らない。なぜ小さな家がたくさんあるか説明しなきゃならない。とは言え、今になってもちゃんと説明してないかもな。俺はいつだって物事をきちんと説明しないから。
??小さな家?
デーモン:そう、でも小さな家と言っても人口のことだけじゃない。インターネットを揶揄してて、家をパソコンのウィンドウに見立て、何もかもシェアする現代社会のあり方についてでもある。それって俺が中国を旅してた時に、すごく惹かれたことなんだ。中国には何度も行ってる―(ミュージカルの)『Monkey: Journey to the West』を書いてる時に5回訪れて、ガイドも口が立つ人ばかりだった。『Monkey~』を一緒に作った監督チェン・シーシャンは文化革命の最中に生まれたんだ。彼は革命を逃れ、再び祖国へ戻ってきていた。一緒に中国を旅しながら、革命中の中国で幼少期を過ごすのがどんな感じだったか、直接聞くことができた。不可欠な見識さ。
もうちょっと遊び心のある話をすると、翻訳された言葉も好きだし、香港民主化デモのアイディアも。再び訪れた時に見逃したけど、デモが行われたっていうのはちゃんと認識してる。ハッピーバレーで行われたんだ。こういったアイディアはソングライターとしてどんな方向に持っていくこともできる。デモとデモが起こなわれた場所の名前が対立しあい、緊張感が生まれてるから…それにイギリス人として、強い繋がりを感じているから。
??昔、植民地だったからですよね?
デーモン:そう、歴史に詳しければ、アヘンのような酷いものが香港にいたイギリス人によって作られたことを知ってるはず。ある意味、最古のドラッグ・ディーラーだよね。本当に興味深い場所さ。それに島々も!フェリーに乗って45分もすれば、島に辿り着いて、漁村にいけるんだから…映画『ブレイド・ランナー』的な大都市のイメージにすごく近いんだ。
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大事なのは、あまり愛着を持たないこと
▲ 「My Terracotta Heart」 (Live)
??ブラー流の香港の楽しみ方について少し訊きたいのですが、よく食べたものはありますか?
デーモン:俺はとにかく何でも食べたよ。“中華料理”って言っても、種類がたくさんあるから、それじゃ全然説明にならないんだ。
??では、一番変わった食べ物は?
デーモン:思いのほか美味かったのは、道徳的に正しくないけど(とは言え“中華料理”ってほぼそんな感じだから)、蜂だね。
??蜂ですか?蜂ってどうやって食べるんですか?
デーモン:俺は揚げた蜂を食べたけど、美味かったよ。
??さっき一瞬“犬”って言うんじゃないかと思って、ドキッとしました。
デーモン:犬は食べたことないよ。カエルは食べたことがあるけど、すごくアンオーソドックスに振る舞われたんだ。新鮮さとこれから何を食べるか、っていうのが重視されてた感じ。まず、生きたカエルが出てきた。因みに、カエル料理専門のレストランだ。で、生きたカエルを見せてくれて、俺が「このカエルがいい。」って選んだ。イギリス出身の人間は、動物が食べ物になるプロセスについてかなり神経質(否認してる部分もある)なんだけど、むこうではもっとリラックスした、自然なプロセスだという見解なんだ。
??美味しいカエルはどうやって見分けるのですか?
デーモン:知らないよ!大事なのは、あまり愛着を持たないことかな。
??名前はつけちゃダメ。それがコツ。
デーモン:そう、名前は絶対につけちゃだめだ。
??地下鉄で移動する時のアドバイスはありますか?
デーモン:素晴らしいシステムだよ思う、きちんと管理されているし、時間も正確で、案内も分かりやすい。あまり戸惑うことはないね。セントラルからジョーダン(Jordan)駅へ向ってて、ジョーダンは詞の中でもよく使ってる。ジョーダンと言えばヨルダン川だな。ボビー・ウーマックと仕事をした時に、よくヨルダン(Jordan)川について歌ってたから、彼のことを思い出す。結局のところ…自分が作ったタペストリーってのは、説明するのがすごく難しい。さっきグレアムが言ったように、すべて抽象的だ、そうだろ?
??アイスクリームのジャケットと「Ice Cream Man」と題された曲について伺いたいのですが。
デーモン:あぁ、白い手袋をした卑劣なアイスクリーム・マンね(笑)。彼はデモ抗議の文脈で加えたんだ。彼は警察官で、鞭が国家管理なんだ。でも、アイスクリーム・マンはとても卑劣…。
グレアム:僕が子供の頃、アイスクリーム・トラックのおじさんは子供が好きなんだ、って思ってた。年を重ねて、改めて考えてみると、子供なんて好きじゃなくて、ただ仕事をしてるだけなんじゃないか、って気もする。それを極端に解釈すると、彼はそれを通り越した卑劣な人間かもしれない、ってこと。
Q&A by Kristen Yoonsoo Kim / 2015年6月3日 Billboard.com掲載
The Magic Whip: Made in Hong Kong
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ザ・マジック・ウィップ
2015/04/29 RELEASE
WPCR-16444 ¥ 2,703(税込)
Disc01
- 01.ロンサム・ストリート
- 02.ニュー・ワールド・タワーズ
- 03.ゴー・アウト
- 04.アイスクリーム・マン
- 05.ソート・アイ・ワズ・ア・スペースマン
- 06.アイ・ブロードキャスト
- 07.マイ・テラコッタ・ハート
- 08.ゼア・アー・トゥー・メニー・オブ・アス
- 09.ゴースト・シップ
- 10.ピョンヤン
- 11.オン・オン
- 12.ミラーボール
- 13.ヤオール・ドゥームド (日本盤のみボーナス・トラック)
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