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「自分らしくある自由と、自分が作りたい音楽を作る自由」― メアリー・J.ブライジ 最新インタビュー
全世界アルバム・トータル・セールス5000万枚以上を誇る、言わずと知れたR&B/ソウル界のクィーン、メアリー・J.ブライジ。常にシーンの最前線で活躍し続けていた彼女にとって大きな革新となったのが、2014年12月にリリースされた13枚目のスタジオ・アルバム『ザ・ロンドン・セッションズ』だ。ディスクロージャーを通じて出会ったUKの若き才能たち=サム・スミス、エミリー・サンデー、エッグ・ホワイト、ジミー・ネイプス、ノーティ・ボーイなどとコラボレーションし、メアリー自身も「これは私にとって美しい変化であり、自分が成し遂げたことを誇りに思う。」と語る意欲作に仕上がっている。
そして今作のレコーディング・セッション中に撮影されたドキュメンタリー作品『Mary J. Blige-The London Sessions』が、米ニューヨークで開催された国際映画祭【トライベッカ映画祭】にて現地時間4月16日に公開された。当日はメアリーも出席、アルバムからの楽曲を生でパフォーマンスし、集まった観客をその圧巻の歌声で唸らせた。彼女はなぜこの作品を作ったのか?そして今作が彼女に及ぼした変化とは?―メアリー本人が語ってくれた。
売れるからといって若作りしなくていい、
メアリー・J.ブライジでいることの自由
▲ 「Right Now (From The London Sessions)」
??完成したドキュメンタリーを観客とシェアしてみていかがですか?
メアリー・J.ブライジ:とても嬉しかった。このドキュメンタリーは、とにかく人々に観てもらいたかった作品だから。アルバムと繋がりを持つ作品で、ファンにアルバムに対しての理解をより深めてもらえると思ったの。トライベッカ映画祭で上映されるなんて嘘みたい。みんながあのような反応をしてくれて、夢が叶ったような気分だわ。そして、実際に曲を演奏することができて…他になんて言葉にしたらいいのかわからない。嬉しくてしょうがなかった。このドキュメンタリーは私にとってとても大切。このアルバムをどのように作って、なぜ作ろうと思ったか、というプロセスをファンに知ってもらうことが重要だったから。ここ15~20年間、彼らは私とともに“旅”をしてきて、私がどのような道を歩むか、必ず分かち合ってきた。でも、今作は今までの作品とまったく違った。だから、どうしてこの作品を作ったか、理解してもらう必要があったの。
??実際にアルバムのレコーディングに入る際、「これを捉えなきゃ。これを映画にしたい。」と思わせたものは何だったのでしょうか?
メアリー:私のアイディアではなかったの―“偉い人”たちが提案してきたアイディアだった。でも、「わかったわ。やってみようじゃないの。」って言ったのは私のアイディア。今までやったことがないことで、この初めての経験を一緒に見届けてくれる人々が必要だったのね。
??このアルバムでは賭けにでて、ファンにも予想できないような方向性に進んだこともあり、いつもと全く違う作品に仕上がっています。彼らがこの“旅”に加わってくれることを望みつつ、なんと自分自身に言い聞かせ、作業にあたったのですか?
メアリー:その瞬間は、クリエイティヴ面において自分がアーティストとして、これまでと同じではなく、新たなことに挑戦しなければならない、と悟った時に訪れた。私にとってすべてが退屈で、代わり映えしなくなっていた―同じことの繰り返し。そこで「この判断を評価してくれることを願う。きっと、そうしてくれると思う。これは彼らですら必要だと気付いていなかった変化だから。」って自分に言い聞かせた。自分のために、このリスクを冒さなければなからなかった。もう今までのように行き詰ることは出来なかったから。
▲ 「F For You ft. Mary J. Blige」MV / Disclosure
??『ザ・ロンドン・セッションズ』の本当の始まりは、2014年1月にNYのTerminal 5にて行われたディスクロージャーのライブにスペシャル・ゲストとして参加したことですよね。彼らと出会ったきっかけは?
メアリー:ある日、夫(ケンドゥ・アイザックス)とVevoを観ていたの。彼は、既にそのビデオを観たことがあったんだけど、私に見せたかったみたいなの―私はスクリーンすら見ていなかったんだけど、「F For You」が聴こえてきた瞬間に、「これは誰?」って冷静さをすっかり失ってしまって。「これはいったい誰なの?」って(笑)。私たちが聴いて育った音楽を彷彿させた。彼らは「当時5歳ぐらいだったはずなのに、どうやって知ったの?」って思うほどよ。そして、この曲に携わりたいと言ったの、とにかく気に入っちゃったから。そこで私のマネージャーでもある夫が、私のレーベルに連絡すると、レーベルメイトだということが発覚したから、彼らのマネージメントに話してみたの。私が曲に参加したいと言うと、みんなとても喜んで、その週にレコーディングしたのよ。その何週間か後にUKでリリースされて、大ヒットとなって、後はご存じの通り。
??今、旦那様の名前があがりましたが、彼は公私においての重要なパートナーですよね。ドキュメンタリーの中で、レコーディングに立ち会っていましたが、具体的にどの程度アルバムに携わっていたかは描かれていませんでしたね。
メアリー:彼のアイディアがあまり見受けられないのは、プロジェクトが完成すると、そこには曲しかなくて、一体感がないの。でもその“一体感”を生むことが彼の担当している部分なの。一緒に家に帰って、アルバムを形どっていく―どの曲を最初にして、その曲を次にして、という具合に。彼は以前プロデューサーでもあったから、その部分は彼の担当なの。彼が周りから作品をプロデュースしていき、一つの作品にする。実際そこは2人で一緒にやってるわね。
??レーベルに関してですが、今作を<キャピトル・レコーズ>からリリースしました。彼らと契約しようと思った理由は?
メアリー:私の心を掴んだのは、<キャピトル・レコーズ>の会長(スティーヴ・バーネット)との会話ね。まるで昔のアップタウンのような感じで話をしてきたの。自分らしくある自由と、自分が作りたい音楽を作る自由。売れるからといって若作りしなくていい、メアリー・J.ブライジでいることの自由。それを必要としてたの、誰かにそう言ってもらうことを。「クレイジーなことをしても大丈夫、メアリー・J.ブライジらしくあれば。」って。ここ数年間、みんなに制圧されて、「いや、ダメだよ、こうしなきゃ。こうすると売れるんだから。」って言われてきた。そんな風に言われると、思考回路が停止して、もうやりたくなってくるのよね。
??今は、誰もがDJマスタードが携わった曲をリリースしていますが、現代のR&Bシーンについてどのように考えていますか?
メアリー:いいものもあると思うから、すべてを否定することはできないけど、今はみんなが自分らしいやり方で自分を表現していると思う。それが現状ね。サム・スミスのような人や彼のアルバム。そしてアデルのアルバムも素晴らしい。いいものもたくさんあるけれど、同時に同じようなものもたくさんある。
??最近よく小さな会場でパフォーマンスしているのも、これまでとは違いますよね。
メアリー:そういうのが大好きなの―とてもインティメイトで、距離が近くて、パーソナルで。自分のことをまったく知らない人々にも私を知ってもらい、観てもらえるいい機会だから。マディソン・スクエア・ガーデン級になると、人の波という感じ。ここまで距離が近いと最高だわ。たとえば、昨晩もとてもインティメイトだった。そうすると、私がユーモアに富んだ人間だ、というのも分かってもらえるし、ちゃんと内面も見てもらえるから。
??これまでなかったほど、自分の殻にしっくり嵌っているようですし、それは音楽からも感じ取れます。新たな自信を得ることができたと感じますか?
メアリー:人生、そしてメアリー・J.ブライジが何者か、ということに関して、新たな自信を得ることが出来たと感じる。そのおかげで、すべてがいい方向に進んでる。音楽に変化を及ぼし、音楽が良くなった、人生にも変化を及ぼし、人生も上手くいくようになった、服装も…服に喰われているのではなく、着こなしている。わかる?すべての面で自信がついたの。
Q&A by Steven J. Horowitz / 2015年4月17日 Billboard.com掲載
"The London Sessions" (Trailer)
リリース情報
関連リンク
ザ・ロンドン・セッションズ
2014/12/03 RELEASE
UICC-10011 ¥ 2,695(税込)
Disc01
- 01.セラピー
- 02.ダウト
- 03.ノット・ラヴィング・ユー
- 04.ホエン・ユーアー・ゴーン
- 05.ライト・ナウ
- 06.マイ・ラヴィング
- 07.ロング・ハード・ルック
- 08.ホール・ダム・イヤー
- 09.ノーバディ・バット・ユー
- 10.ピック・ミー・アップ
- 11.フォロー
- 12.ワース・マイ・タイム
- 13.ライト・ナウ (SHADOW CHILD REMIX) (日本盤ボーナス・トラック)
- 14.ライト・ナウ (ZED BIAS REMIX) (日本盤ボーナス・トラック)
- 15.セラピー (REDLIGHT REMIX) (日本盤ボーナス・トラック)
- 16.セラピー (HENRIK SCHWARZ REMIX) (日本盤ボーナス・トラック)
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