Special
Do As Infinity 『黄昏』インタビュー
新作『黄昏』については勿論、3.11以降どんな心境の中でツアーを敢行し、自らの音楽やファンの姿に何を感じたのか。7年ぶりの野音ライブでなぜ亮さんは大暴れだったのか。2人は互いをどう思っているのか等々、全て本音で語って頂きました。
3.11以降、改めて知った“音楽を届ける理由
--アルバム『EIGHT』を引っ提げた【Do As Infinity LIVE TOUR2011~EIGHT~】は、ふたりの中でどんな印象のツアーになりましたか?
大渡 亮:また今年もツアーができたということは喜ばしいことで。なかなかCDが売れない時代の中で、音楽を演奏する為に全国各地へ行く。それは体力的にしんどい時ももちろんあるんですけど、ミュージシャン冥利に尽きますね。
伴 都美子:お客さんとの距離感が近いライブハウスでたくさんライブができたのは、嬉しかった。個人的にも好きな空間なので、楽しかったです。
--ただ、今回のツアー直前には東日本大震災がありました。3.11直後はどんな心境だったんでしょう?
伴 都美子:すごく複雑な心境の中で『誓い』のレコーディングを強行したんだよね。各々感じることはあったと思うんですけど。
大渡 亮:今年を振り返るときにあの出来事が衝撃的すぎて、いつもなら上手に記憶が折り重なっていっているはずなのに、バグが入ってしまったような感じで「あれ? 何やっていたんだっけ?」って思い出すのが至難だったりする。当時は何にもする気が起きなくなっちゃって、愕然としていましたよ。
伴 都美子:私も“バグる”っていう感じでしたね。自分たちは音楽をやっている訳だけど、スタジオにいざ入ってもノリ切れないこともあったり、だからって止まっていても……ねぇ?って思ったし。いろいろ考えましたし、考えさせられたました。音楽に向かう姿勢だったりを。
--そこからどのようにして気持ちを前へ持っていったの?
大渡 亮:やっぱりね、塞ぎ込んでいても何も始まらない、ということだったと思うんですよ。当たり前だと思っていることが当たり前じゃなくなっていった1,2週間があったんじゃないかなぁ~? 例えば、テレビのコマーシャルではACしかどのチャンネルも流れないとか。40年生きてきてそんなことはなかったし、空前絶後の大衝撃だったと思うんですよ。でも「スケジュールがここしかないからやるしかない」みたいなことで、自分を奮い立たせていたというか、それを繰り返していくことで冷静に物事を解釈したり、見たり聞いたり感じたりできるようになった気がします。被害こそ受けていないけど、精神的なものを取り戻すにはそういうことに頼るしかなかったのかもしれませんね。
--伴ちゃんは?
伴 都美子:私も直接大きな被害に遭った訳じゃないですし、現地の人に比べたら私のショックなんて全然全然……。普段はひとりでいることが多いんですけど、親しい仲の友達と会って話して前向きになれたりしたし。あとは余計な情報を入れないとか。そして、やっぱりスケジュールをこなしていく内にいつもの感覚を取り戻せたのかなぁ。
--ツアーの開催についてはどんなことを考え、最終的に開催を決断したんでしょうか?
大渡 亮:それは自分たちで決めるというよりは、所属している会社の判断に任せようと思っていて。で、会社も随分いろいろと考えたとは思うんですけど、結果としてツアーを廻ることができてよかったと思っているし、そのときの決断は間違いじゃなかったんじゃないかなって。自粛し続けて何かが生まれる訳でもないし。そういうときに怖いのは、大衆の目や声だけだと思うんですよね。それをどう解釈するか。何もかも自粛してお金も回らなくなって、どうにもならなくなってしまったら、復興支援ができないどころか、自分たちのメンタリティもやられてしまい、動けなくなってしまう。それは逆に本末転倒な気もするし。そういう音楽家として云々の前の部分について見つめ直す機会だったと思いますね。
--それからどんなモードで毎回ライブへ臨んでいたんですか?
伴 都美子:私は友達と集まってフリーマーケットをやって、その売上金で物資を現地へ届けに行って、直にそこの光景を見たり、現地の人と喋ったりしていたんですけど、気仙沼かな? 高台にある神社みたいなところで、その地域の人たちが何かを歌っていたんですよ。その姿を見て「音楽っていうのは気持ちを潤すものなんだなぁ」とか、改めて考えさせられて。そういうこともあって、ツアーが決まって思ったことは……音楽で元気を届けたい。私はどこかでずっと信じているところがあるから。音楽で元気になったり、勇気をもらえたりすることを。だから絶望の中にいたとしても、ちょっとでも希望みたいなものを1ミリでも感じてもらえたら……いいなぁと。あと、あのような状況でも遠方から来てくれる人がいたり、1日の中の2時間、3時間を自分たちに使ってくれることが、今回のツアーは特に貴重に思えましたね。
--Do As Infinityが継続……一度は解散しましたけど、10年以上にわたって活動してきて、多くの人をその音楽で力づけてきて。その2人があのタイミングでツアーをやって、今一度、日本中の人と笑ったり泣いたり歌ったりはしゃいだり出来たことには、すごく意味があったと思うんですよね。
大渡 亮:みんながうわぁぁぁ!ってなっている姿を見ると「やっぱり開催してよかったな」って思いますよ。
伴 都美子:自分たちの曲って“絆”や“希望”をテーマにしたものが結構多いと感じていて。そういう曲を届けてお客さんが喜んでくれるのは、単純に、純粋に「嬉しいな」って思います。
--そういう意味では、実際にみんなと会えたことで、逆に2人が元気やパワーをもらえたところもあったんじゃないですか?
伴 都美子:それはもう毎回あります。
大渡 亮:演奏しながらもみんなの表情が見えるんですけど、凄いピュアネスに出会うんですよね。お金を払って彼らは観に来ていて、今このときを本当に楽しんでいるんだなって感じた瞬間、言葉にできないような、光のようなものを受け取れるんですよ。今回もやっぱりそれはありました。すごく胸が熱くなりましたね。
Interviewer:平賀哲雄
伴 都美子と大渡 亮 今語る“お互いの評価”
--あと、同ツアーの最終公演は被災地である仙台でしたが、実際に現地でライブしてみてどんなことを感じたんでしょう?
伴 都美子:「行けてよかったなぁ」と思いました。
--集まったオーディエンスは、元気ではあったんですか?
伴 都美子:元気でした。逞しいですよ、本当に。自分たちにできるのは、音楽を届けていくことだけで。そこで何かを感じてもらえたらなと思うだけなんですけど……非常に感慨深い仙台公演でした。やってよかった。
--あと、ライブと言えば、10月2日 日比谷野外大音楽堂での7年ぶりとなるワンマンライブ【Do As Infinity 12th Anniversary~FREE SOUL! FREE SPIRITS!~Vol.3~】が開催されました。あの日、亮さんはなぜおかしくなってしまったんでしょう?
大渡 亮:(笑)。やっぱり周年ライブってコアな人たちが観に来るし、お祭りムードなんですよね。あと、お客さんから頂く差し入れに「おめでとう」って書いてあるんですよ。僕らにその感覚はなかったんだけど、みんなが「おめでとう」って思ってくれるような日なんだなって思って。だから坦々と演奏しているよりは、お祭りらしく、そっちの方のスウィッチを入れようと。まぁDo Asとそういう歌舞伎モノは共存できるのかと考えることもあるんだけど(笑)。
--伴ちゃん、笑って歌えなくなっちゃうし。若手だったら完全に怒られてますよ!
伴 都美子:怒られてますね(笑)。
--更には「キテレツ大百科」オープニングテーマ『お料理行進曲』の大合唱ですよ。おそらく野音史上初。
大渡 亮:そうですね(笑)。あれはコーラスのYUKAさんの曲だったのでやることになったんだけど、そのあり得ない感じ、違和感たっぷりなのも逆に良いのかなと思いまして。
--そんな今のDo Asならではの展開もあった野音公演ですが、7年前と比べていかがでした?
大渡 亮:Do As Infinityとしての7年分の想いがいろいろあって「また野音に立ってるんだなぁ……」というところでエキサイティングした感じでしたね。Do As Infinityが一度解散した後、良き思い出として2004年の流れっていうのはすごく色濃く残っていて。アメリカへ行ってみんなで弾けたエネルギーをそのまま持ち込んで5周年ライブができた。その場所にもう一度立てるっていうのは感慨深いものがありました。
伴 都美子:ステージ立つ前に亮くんとも話したんですけど、野音は武道館と同じぐらい緊張するというか、背筋が伸びるような場所で。またそこに立てたことは嬉しかったですね~。お客さんもすっごいギシギシでしたし。気持ちも開放的になるし、またライブしたい会場のひとつですね。
--その野音でも聴かせてくれたニューシングル『黄昏』ですが、この楽曲には自分たちの中でどんな印象、感想を持たれていますか?
大渡 亮:「本当に良い曲だなぁ」って最初に思いました。大西(克巳/『黄昏』の作曲者)くん、凄いなって。また定番のバラードが1曲生まれたなって強く思いましたね。
伴 都美子:Do Asの楽曲に相応しいバラードだなって。
--この手の憂いのあるロックバラードは、今やDo As Infinityにとって真骨頂のひとつ。得意とするところだと思うんですが。
大渡 亮:そうですね。Do AsがDo As好きの為にやるような曲。僕はDo Asの他にもグループをやっているんですけど、そちらのライブでお客さんが「今回のDo Asの曲は久しぶりに超ハマりました。これがDo Asだと思いました!」って言って頂いて・・・。だったら「500枚買ってください」って。
--(笑)
大渡 亮:こういう曲が望まれているんだなって思いましたね。すごく熱く語ってましたから。
--こういうしっかりとドラマティックなギターソロがあるバラードって最近少ないじゃないですか。というか、最近の若いバンドってあんまりギターソロ弾かないじゃないですか。寂しいと思いませんか?
大渡 亮:僕は無くてもいいんですけど、伴ちゃんと2人で活動するようになってからのDo Asとしては、キャラクターを際立たせる意味でもギターソロはあった方がいいんだと思います。アレンジする亀田誠治さんからしても。まぁソロがない曲ももちろんあるんですけどね、こういうAマイナーのバラードに対してはギターソロがないとダメだと思いますね。何故かと言うと、古くからAマイナーのロックバラードはたくさんありますけど、そこにはやっぱり情熱のチョーキングが入っている訳です。なので、この曲もご多分に漏れずギターソロだろと。仮に弾けなくても弾かなきゃいけないタイプだと思うな。
--これだけインタビューしてきてこれまで質問してこなかったんですが、亮さんが描く理想のギタリスト像を教えてもらえますか?
大渡 亮:Do As Infinityにとってギターは彩りを与えるセクションだと思っているので、リズムを感じさせつつ、自分の感情も投影しつつ、彩りを与えていく。あと、とにかくDo Asの音楽は振れ幅が広いので、曲の個性をちゃんと受け止めてフレキシブルに対応できるギタリストでありたいなと、常日頃から思っています。
--ちなみに伴ちゃんにとって、ミュージシャンとしての亮さんはどんな風に映っているんでしょう?
伴 都美子:オタク。
一同:(爆笑)
伴 都美子:よく言えば、職人? ライブのとき、亮くんの足元にはいろんなものが並んでるんですよ。何が何なのか、さっぱり私には分からないんですけど(笑)。やっぱり職人ですよ。
Interviewer:平賀哲雄
2人の生き様~再結成後3枚目のアルバムについて
--では、亮さんにとって、ミュージシャンとしての伴ちゃんはどんな風に映っているんでしょう?
大渡 亮:良い意味でも悪い意味でも軸がブレない。フレキシビティが云々じゃなくて、伴ちゃんは伴ちゃん。例えば、ボーカルからスタートする曲はガイドがないと歌いづらいと思うんだけど、伴ちゃんは逆にガイドがあると歌いづらいみたいで(笑)。ガイドなしでビタっと正しいキーで歌い始めるんで、凄いなと思いますね。相対的な強い音感を持っている。それは素晴らしいスキルだと思います。
--と、言われてどんな気分ですか?
伴 都美子:へぇ~、そうなんだ~(笑)。
--そんなボーカリスト 伴 都美子にとって、今回の『黄昏』は歌っていてどんな想いが湧き上がるバラードですか?
伴 都美子:歌うのは非常に難しい曲なんですけど、後半に向けて熱いものが込み上げてくる。静かな熱というか、内に秘めた熱い想いみたいなものを感じますね。
--「戦国BASARA3 宴」エンディングテーマとしてそのゲームの世界観も考慮しているとは思うんですが、この歌詞は伴 都美子のキャラクターに合っていると思いました。例えば「我が身を燃やして生きて」とか、伴ちゃんの生き様っぽいし、さすがは“火の国の女”と思わせます。
伴 都美子:ハハハ!
--自分ではどう思います?
伴 都美子:そうですねぇ~、私の生き様ってどんな感じなのか分かんないですけど(笑)「戦国BASARA3 宴」のタイアップもあり、自然と当時の武士魂みたいなものは出てきますね。「どういう気持ちで戦っていたのかな?」とか、妄想劇が始まるんです。「御国の為にぃぃ!」みたいな。……質問、なんでしたっけ?
--(笑)。『黄昏』が伴ちゃんの生き様っぽいという話です。真夜中のツイートとか見ていると「もっともっと熱く生きたい人なんだろうな」と思うので。
伴 都美子:確かに。この曲、歌っていると自分を鼓舞するような感覚になりますし。
--実際のところ、伴ちゃんはどんな風に生きていきたい人なんでしょう?
伴 都美子:えーっと、楽しく生きたい。
--(笑)
伴 都美子:まぁ相変わらず、いろいろチャレンジしていって、また自分を発見して、面食らって、少しずつ逞しくなっていけたらなと思いますね。
--亮さんは?
大渡 亮:理想の形を目指しているんだけど、程遠いので、まだまだそこへ向かって進んでいくんでしょうね。音楽的なことですけど、何かを手にすると届かないところに理想が生まれたりして、それがもっと近くなるように。多分ずーっと遠いところにそれはあると思うんだけど、近くなるように生きたいですね。知識もそうですし、感覚もそうですし。まだまだ修行です。
--そんなDo As Infinityによるニューシングル『黄昏』、どんな風に世に響いてほしいと思いますか?
大渡 亮:「戦国BASARA3 宴」のエンディングテーマとしても楽しんでもらいたいんだけど、その世界から飛び出していってほしいとも思いますね。もっとみんなに聴いてもらえる機会が増えるといいなぁと思うな。一般に浸透すべきポピュラリティだったり、叙情性を持っているので、羽ばたいていってほしい。
伴 都美子:そうですね。広く長く聴いてもらえるような曲になってほしい。
--あと、今作のリリースの先にはきっとアルバムが待っていると思うんですけど、現時点ではどんなアルバムになればいいなと思っていますか?
大渡 亮:再結成してから3枚目になるアルバムですし、もうさすがに解散前の流れから離れて独自に進化してきていると感じるので、3枚目にしてより“今のDo As Infinity”としてクオリティの高いレコードにしたい。というか、なると思いますね。自分たちを知り、そして新しい自分たちを提示できるアルバムになると思います。……上手いこと言うなぁ。
--では、きっとそのアルバムが発表されるであろう2012年はどんな1年にしたいですか?
大渡 亮:来年のことは……鬼が笑うと言うので、差し控えさせて頂きます。
伴 都美子:(笑)
--何も考えていない訳ではないですよね?
大渡 亮:いや、何も考えてない。
一同:(爆笑)
--伴ちゃん、お願いします。
伴 都美子:え~~!? えーっと……今、作っているアルバムの感触がすごく良いんですよ。だからまた良い1年になるといいなって。ツアーもあるでしょうし、素敵な年にしたい。
Interviewer:平賀哲雄
関連商品