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クレイジーケンバンド・小野瀬雅生が語る~プログレッシヴ・ロックの誘惑~
3月にはソフト・マシーン・レガシー、4月にはキング・クリムゾンのトニー・レヴィン率いるスティック・メン、そして5月には元キャラバンのデイヴ・シンクレアがクラムボンと共演(東京公演のみ)と、プログレッシヴ・ロック・ファン垂涎のレジェンドが[ビルボードライブ]のステージに降り立ちます。
70年代に全盛を極め、今なお聴かれ続けるプログレの奥深い魅力について、クレイジーケンバンドのギタリスト、小野瀬雅生さんに語っていただきました。
◎Strange Days presents 奥深きプログレッシヴ・ロックの世界
◎「奥深きプログレッシヴ・ロックの世界」CDショップ編
◎「奥深きプログレッシヴ・ロックの世界」トニー・レヴィン( Stick Men )来日記念インタビュー
人生が変わった!? プログレ体験
プログレッシヴ・ロックとの遭遇は、中学1年のときに聴いたピンク・フロイドですね。アルバム『炎~あなたがここにいてほしい』からのシングル「葉巻はいかが」で興味を持ったのが最初ですが、そのときはプログレとは意識せずに聴いていました。当時、隣に住んでいた幼なじみがプログレの代表的なアルバムをひと通り持っていたので、彼に借りて聴くようになると、その抗いがたい魅力に一気に惹かれていきました。それまではビートルズ大好き少年だったのですが、プログレの洗礼を受けたことで趣味や指向性が変化し、ある意味「人生を誤った」と言っても過言ではありません(笑)。
いちばん聞き込んだプログレのアルバムは、キング・クリムゾンのファースト『クリムゾン・キングの宮殿』ですね。いまだにリマスター盤が出るたびに買い求めているので、家には何枚の「宮殿」があるのやら(笑)。クリムゾンはメンバーが激しく入れ替わり、音楽性も多様な変遷を辿りましたが、『クリムゾン・キングの宮殿』は僕のプログレ感を決定づけたメロトロンという楽器を使用した記念碑的な作品。あの恐ろしい顔の絵のジャケットのインパクトもアナログ時代は強烈でした。
イエスなら代表作『こわれもの』や『危機』もロック・ヒストリーに残る名盤ですが、私が好きなアルバムは、初のライブ・アルバムで発売当時はLP3枚組だった『イエス・ソングス』。アルバムの成功でバンドとして勢いに乗っていた頃の、若々しく瑞々しいプレイは今聴いても素晴らしい。イエスの世界観を幻想的なイラストで表現したロジャー・ディーンのアート・ワークも重要でした。プログレッシヴ・ロックの深遠な音楽性がグラフィック・イメージと結びついた傑作といえば、イギリスのデザイン・チーム、ヒプノシスが手がけたピンク・フロイドの『原子心母』。レコード・ジャケットをアートの域にまで高めた彼らのおかげで、リスナーは大いにイマジネーションを刺激され、謎解きのようにアルバムを聞き込む楽しみを知ったような気がします。
事実、「プログレの名盤のジャケットにハズレなし!」ともいわれているので、初心者はジャケ買いから入門するのも良いかもしれません。
斬新な音世界への異様な意欲
語弊はあるかもしれませんが、プログレは大まかにはカンタベリー系などのジャズ寄り、エマーソン・レイク・アンド・パーマー(ELP)などのクラシック寄り、サイケデリック・ロックから進化したピンク・フロイドなどのグループに分けられると思います。イタリア、ドイツ、フランスなどユーロ圏のプログレもまた奥が深くてマニアックな世界なんですが、プログレは劇伴に近いところがあるので、クラシックやオペラが根付いているヨーロッパで発展していったんでしょうね。『展覧会の絵』でムソルグスキーやチャイコフスキーの「くるみ割り人形」を取り上げたELPしかり。
ELP、キング・クリムゾン、ピンク・フロイド、イエスにジェネシスを加えたプログレッシヴ・ロック5大バンドが全盛を極めた60年代終わりから70年代にかけての録音は、今聴いても鮮烈で時代のマジックがいっぱい詰まっています。「聴いたことがない斬新な音を完璧に創りたい!」という当時の彼らの異様なまでの意欲がみなぎっているし、コンセプトもサウンドもそれぞれ異なり、聴いていて飽きないのも根強く支持され続ける理由だと思います。
僕自身はその後、ジャズ・ロック寄りのマハヴィシュヌ・オーケストラとかアメリカン・ハード系のラッシュ、フォーカスやジェフ・ベックあたりにのめり込んでいくんですが、70年代後半からはリスナーもプレイヤーもフュージョン方面に流れる派、ジャズ寄りに進む派に分かれていきましたね。僕もプログレの複雑なコード、変拍子を追求するあまり、ついには17拍子のトルコの民族音楽までいってしまった(笑)。そこまで行くとポップのフィールドではないなと思い直し、今に至るわけでございます。
プログレに耽溺しつつも、同時にビートルズのメンバーのソロやウイングスを聴き、ハードロックやドゥービーブラザースのコピーバンドもやる。そんな風にあらゆるロックを吸収しながら、ギターの鍛錬を重ねてきたことが今の自分を形成していったんだと思います。実はクレイジーケンバンドに入ってからも、クリムゾンの「レッド」を演奏したことがありまして、ごく一部のファンの間では伝説化しているようです(笑)。僕のそういう変化球でこれからもお客さんに楽しんでいただけるバンドでありたいですね。
Text: 小野瀬雅生 / Photo: ryuji asamoto
小野瀬雅生 最新アルバム『Spark Plug』をリリースしたクレイジーケンバンドのリード・ギタリスト。作詞・作曲・アレンジでも活躍。自身のバンド=小野瀬雅生ショウ、安斎肇とのバンド=フーレンズ、廣石恵一+洞口信也とのバンド=Gozo Roppでも活動中。B級グルメや野球にも造詣が深い。
来日公演情報
ソフト・マシーン・レガシー
with special guest キース・ティペット
ビルボードライブ大阪:2015/3/24(火)
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ビルボードライブ東京:2015/3/26(木)~3/27(金)
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INFO: www.billboard-live.com
BAND MEMBERS
ジョン・エサリッジ / John Etheridge (Guitar)
セオ・トラビス / Theo Travis (Saxophone, Flute)
ロイ・バビントン / Roy Babbington (Bass Guitar)
ゲイリー・ハズバンド / Gary Husband (Drums)
[Special Guest]
キース・ティペット / Keith Tippett(Piano)
スティック・メン
(トニー・レヴィン、マーカス・ロイター、パット・マステロット)
with special guest デイヴィッド・クロス
ビルボードライブ大阪:2015/4/9(木)
>>公演詳細はこちら
ビルボードライブ東京:2015/4/10(金)
>>公演詳細はこちら
INFO: www.billboard-live.com
BAND MEMBERS
トニー・レヴィン / Tony Levin(Stick)
マーカス・ロイター / Markus Reuter(Stick)
パット・マステロット / Pat Mastelotto(Drums)
デイヴィッド・クロス / David Cross(Violin)
クラムボン meets デイヴ・シンクレア
~The Canterbury Tales Japan Tour 2015 special show~
ビルボードライブ東京:2015/5/12(火)
>>公演詳細はこちら
INFO: www.billboard-live.com
BAND MEMBERS
clammbon
原田郁子
伊藤大助
ミト
Dave Sinclair (Keyboards)
Jimmy Hastings (Flute, Saxophone)
浦 千鶴子 (Vocals)
冨永 ちひろ (Drums/Percussion)
※本公演は1ステージに2アーティストが出演するツーマンライブとなります。1アーティストの公演時間は約40分前後を予定しております。
クレイジーケンバンドのィ夜ジャズ Compiled by Tatsuo Sunaga
2015/01/01 RELEASE
UMCK-1504 ¥ 3,080(税込)
Disc01
- 01.黒いオートバイ
- 02.涙のイタリアン・ツイスト
- 03.シャンタン
- 04.ガールフレンド
- 05.シフト・チェンジ
- 06.女のグランプリ
- 07.夜のヴィブラート
- 08.ロドリゲス兄弟
- 09.福富町ブーガルー
- 10.TIKI TIKI TROPICAL KINGDOM
- 11.本牧は午前零時
- 12.血の色のスパイダー
- 13.満漢全席 一楼
- 14.中華街大作戦
- 15.プレイボーイ革命
- 16.山の音 -そうだ、京都に行こう。 REMIX-
- 17.コロ
- 18.BIBIMBOP
- 19.Eye catch / あなたとわたしのCKB
- 20.レッドライト・ヨコハマ
- 21.あ、やるときゃやらなきゃダメなのよ。 ~Sunaga t Experience’s du bop remix~
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