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BOOM BOOM SATELLITES 『TO THE LOVELESS』インタビュー
シーンの衰退にポップミュージックの弱体化、リスナーの想像力を掻き立てることを目的としない流行歌の蔓延等々。そのすべてに寂しさを感じながらも、BOOM BOOM SATELLITESは自らの経験とスキル、全身全霊のすべてを要して新次元の音楽の創造へ臨んだ。そのアルバムの名は『TO THE LOVELESS』。音楽の価値どころか、愛の価値をも落とし続ける世界へのアンチテーゼ、そして臭い言葉で言えば、未来への希望とも言える今作について、中野雅之と川島道行が語ってくれた。
責任感を持たずにはいられないような状況だった
--ニューアルバム『TO THE LOVELESS』聴かせて頂きました。いつにも増して何かに寄ったり似たりしていない、それを過去のBOOM BOOM SATELLITESの作品に対しても言えてしまう、新次元の音楽が誕生したなと僕は感じています。今回こうしたアルバムを形にすることになった経緯を教えてもらえますか?
中野雅之:『FULL OF ELEVATING PLEASURES』『ON』『EXPOSED』と3作連続で1年置きにオリジナルアルバムを出してきて。リリースのタイミングも含めて勢いに乗せて作ってきていて、セールス的にも結果を残せて、その一連の流れに一段落付いたんです。それで自分達のやって来たことを振り返ったり、すべてを総括してみたときに、また新たな気持ちで音楽制作に向き合っていこうと。ただ、そのときもうすでにアメリカとかでは配信が主流になっていて、アーティストによってもちろんバラつきはあるんですけど、ポップミュージックのクオリティが全体的に落ちてきていて。アメリカではそういうことが昔はなかった。どんなに水っぽいポップスでも音楽的なクオリティが保たれていたんだけど、それが失われてきているなと。--なるほど。
中野雅之:それで「かつての良い時代のように」とは言わないですけれども、それぐらい志の高いモノを作っていくということを誰かがしないといけないなって。--レベルが下がってきていると顕著に感じ始めたのって、具体的にはいつ頃だったりしますか?
中野雅之:ヒップホップのレコードの曲数がやたら多くなってきた頃かな。25曲とか入っていたりして、大体10曲過ぎあたりから「これ、さっきも聴かなかったかな?」と感じさせる。それで「R&Bとかヒップホップのプロダクションがどういう意図でこういう風になっているんだろう」って考えたんですけど、iTunesに乗っけるときに1曲の単価が1ドルだとしたら、25曲あれば25ドルになる。それによってCDアルバムを15ドルで買った方が得って思わせる。みたいなことなのかなって勘ぐっちゃったりとかするようになって。最初にティンバランドが出てきたときは音響的にもすごく優れたモノが多くてリファレンスのCDにしていたぐらいなんですけど、見る見るうちにその手の音楽のレベルが落ちてきて。オーディオクオリティとかも物凄く落ちてるし、しかもそれが結構売れてるモノだったりするんですよ。ポップスターをプロデュースしたモノとか。今も揃ってオートチューンだし、とても個性を感じられないし、人の息遣いも感じられない。--ロックはどうですか?
中野雅之:まぁロックもプロトゥールスが出てきたことで音質的な部分は変わってきているし、その良し悪しは一概には言えないんですけど、まぁここ3年ぐらいは顕著に落ちてますよね。アメリカに今行くとレコード屋がないし、凄く寂しい気持ちになる。--では、今回のアルバム『TO THE LOVELESS』に2年以上の歳月を掛けたのも、そうしたシーンの状況に対しての想いがあって?
中野雅之:もちろん自分たちの音楽的な部分での志が基本的にあっての話なんですけど、やっぱり責任感を持たずにはいられないような状況だった。今、日本って一番CDが売れている国なんですよ。世界的に見たときにまだファンがフィジカルなモノを手にとってそれを大事にしている、っていう状況が残っている。そういう気持ちっていうのを僕は大事にしたいし、なのでパッケージも丁寧に作っているし。それはファンに対しての最低限の責任。音楽ファンに対してもそうだし、BOOM BOOM SATELLITESのファンに対してもそうだし。--あと、2009年7月発表の『BACK ON MY FEET』で人間の日々の営みすらをも匂わせる音楽というのを打ち出していた訳ですが、当時は次のアルバムについて「まだ何とも言えない」と中野さんは仰っていて。でも結果として『BACK ON MY FEET』以降も方向性がブレなかったことにより、このアルバムは出来たのかなと思うんですが、そこはどうなんでしょう?
中野雅之:全くもってその通りです。この13曲が出来上がっていくまですごく長い時間を掛けたにも関わらず、ブレずにゴールできたっていうのは自分でも「奇跡的なことだな」って感じる。--そのアルバムのタイトルを『TO THE LOVELESS』にしようと思ったのは?
川島道行:このアルバムを作っているときに、すごく触発されるようなミュージックシーンだとかアーティストというモノの存在を感じていなくて。なおかつ、インターネットによってすごく情報を得られるスピードが速くなってきて、普通にいろんなモノがタダ同然で手に入ったりとか、情報が押し寄せてくる。その中で受け取る側の方もマヒしちゃってきていて。ひとつひとつの物事の向こう側に人がいるっていうことを感じられなくなっている。でもそれは送り手に一部の大きな責任があると思っていて、僕らはそこに挑もうと思ったんですよね。音楽としてもパッケージとしてもすごく情念の込めたモノを届けたかった。で、その届かせようとしている場所、状況をリアルに際立たせる言葉として“LOVELESS”という単語が出てきたんです。--僕はこのタイトルを最初に見た瞬間に、川島さんが“その想像力の無さを他者のせいにする人”や“軽々しく死を利用するメディア”について、以前のインタビューで物申していたことを思い出したんですが、そうした世の状況が相変わらず変わりそうにないことに対するアンチテーゼでもありますか? このタイトル、そしてこのアルバムは。
川島道行:そうですね。もちろん見たまま聞いたままで終わらないモノもあるのはよく知っているし、僕自身も感動したり影響を受けたりはしていますけれども、実に表面的で分かり易すぎる、その裏を自分から超えて想像しようとさせないモノが多いので。そういうモノにはあまり愛を感じない。その意味では『TO THE LOVELESS』は聴いてくれる人への愛が込められている、と思っています。リリース情報
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Interviewer:平賀哲雄
自分達と向き合って曲を作っていくしかない
--お2人がイメージする今作における“愛”とは具体的にどんなモノなんでしょう?
川島道行:“人を好きになった”とか“優しくしてくれる”とか“誰かと一緒”とか、そういうことではないんですよね。僕がこのアルバムを聴いて感じるのは、すごく個人的な力強さを手に入れることができる。暴力的な程の歪んだ音とか、強いビートとか、言葉とかによって。そこで他者との関係をもう一度築くことができればいいなという、そういう“LOVE”。それはずっと僕らの曲には込められているモノだと思う。 中野雅之:日本のポップスにおける“愛”の扱われ方はすごく単純。友達が大事だとか、恋人が大事だとか、その表現の単純さって、僕が子供の頃のポップスにはなかった類のモノで。そんなことを大人に言ってもらわないといけないのか、そんな感性しか持ち合わせていないのか、想像力がないのか……って思う。それが売れたりするのを見るととても悲しい気持ちになるというか、そんなことはお父さんやお母さんに子供の頃に教えてもらうべきことで。で、さっきも川島が言ったけれども、ネットワークが発達することでひとつの情報の価値がどんどん軽くなっていったりとか、発信者もプロフェッショナルじゃなかったりするから情報自体の質が落ちていく。今はプロとしての責任を持ってやっているモノと無責任に普通の人が発信する情報とがごちゃ混ぜになってるから。それは音楽に関してもそうだし、結果として全体の価値が落ちる。--それはあらゆることに対して言えますよね。
中野雅之:押し並べて全体的に落ちてる。コミュニケーションの質も落ちてるし、そこにえも言われぬ寂しさを感じるし。正直「どうなっていっちゃうんだろう?」っていう不安を感じるぐらい、個人的にはすごくヤバイなって。ただ、物書きだったら物を書くことで、音楽を作る仕事だったら音楽でそこと向き合っていくしかないので、情熱とか労力とかを注いでひとつを作り上げる、1枚のアルバムを作り上げる。それを今回はやれたんじゃないかなと。--BOOM BOOM SATELLITESって毎回アルバムのテーマを「今これを俺たちがやったら絶対的に新しいし、面白いものになる」という俯瞰的な視点で見つけていくのか、2人が日々の生活の中でいろんな出来事や感情の動きがある中で「今、俺たちはこれを訴えたいから、これを音楽化していこう」という感情的な理由で決めるのか、どっちが多いんでしょう?
中野雅之:今回のアルバムに関しては主観でもって物事を決めていくことが多かったと思うんですよ。今までのアルバムに比べると圧倒的に。より作家性が強いというか。元々DJカルチャーの一部としてデビューしたバンドで、レコードをセレクトしていくDJの客観的な発想っていうのをロックバンドにも持ち込んでいく、っていうところがあったと思うんですよ。で、常にシーンを見ていくことで自分達を刺激したり、リスナーを刺激したり。それをずっとやってきたんですけど、インターネットを媒介にして音楽のシーンが作られていくようになると、トレンドの切り替わるスピードはすごく速くなるから。流通のスピードは圧倒的にフィジカルなモノより速いから、火が付いて消えるまでの速度も上がるんです。だからシーンは成熟しないし、アーティストがすごく大きい存在になることも難しくなる。そうなると、カウンターにしろ、寄り添うにしろ、その対象になるシーンっていうのは生まれてこない。--なるほど。
中野雅之:そういうこともあって、もう自分達と向き合って曲を作っていくしかないし、音楽を聴いてくれる人たちっていう漠然とした対象に向けての制作になっていったんですよね。ただ、それでもちゃんとやれる自信がどこかにあって。やっぱり重ねてきた経験とそれによって手にしたスキルがあるので、そんなに不安になることはなかった。いくらかエゴイスティックに作ることに対しての恐怖心がなかったというか。逆に自由な、よりクリエイティブな発想になれたと思うし。--そんな2010年現在のBOOM BOOM SATELLITESを堪能できる『TO THE LOVELESS』なんですが、まず自身たちでは仕上がりを聴いたときにどんな印象や感想を持たれましたか?
川島道行:止まらない、止められない感じがしましたね。それは聴いた人がみんなそうなるんじゃないかなって思ったんだけど、ひとつひとつが聴き逃せない。その音でできる感情とか目の前で展開されるストーリーが次へ次へと運んでいってくれるんじゃないかなって。きっとアルバム単位で音楽を聴くことを知らない人たちも、ひとつの曲の余韻に浸っている間にまた次の曲の衝撃がやってくる、そんな体験ができると思います。--そのアルバムのオープニングを『BACK ON MY FEET』で飾ろうと思ったのは?
中野雅之:あのシングル(2009年7月発表『BACK ON MY FEET』)が4曲とは言えストーリー性があって、作品としてはとても完成度の高いシングルだったので、そこで『BACK ON MY FEET』で幕を明ける流れを刷り込まれた部分もあって。いろいろ組み合わせていくんだけれども、どうしてもアルバムの途中に入れるのが難しかったんです。で、リード曲が1曲目のアルバムっていうのもすごく潔いかなと思ったし、2曲目以降、シングルとは違う表情を見せていくので「それもアリだな」と。あとは最後を締め括る『HOUNDS』という曲から頭に戻って再生するときの繋がり、ストーリーも良かったので。--そこへ畳み掛けられる『DRAIN』。混沌に藻掻きながらも自らを鼓舞させていくストーリーが見えるナンバーだったんですが、実際にはどんなイメージのもとに形になっていった曲なんでしょう?
中野雅之:随分早い段階からスタートした曲だったんだけれど、出来上がったのは結局最後の方で、ほぼ2年にわたって制作し続けた曲。で、作り出す時点で『THE HARDER THEY COME,THE HARDER THEY FALL』とかヘヴィな曲はすでにあったので、比較的ポップでキャッチーなモノを目指して、もっとシンプルな『Kick It Out』的なことをやらなきゃダメかなと思ってスタートしたのに、やっぱりアルバム全体のムードに引っ張られていったというか。キャッチーなリフとかはイントロで顔を出すんだけれども、結局はヘヴィネスだったり混沌としたムードだったり、ビートを畳み掛けて折り重ねていく。というところで曲を仕上げていこうとするんだなって。今はそういうことなんだなって、すべて作り終えて振り返ってみたときに思いましたね。--続く『LOCK ME OUT』も「You gotta lock me out You gotta shut down(しめ出せ、閉ざせ)」とめちゃくちゃネガティブなことを叫びながら、最後には「Keep your fire growing deep inside(オマエの心の奥底で湧き上がる炎は憶えておけ)」とメッセージする、闇と光が同居したナンバーです。
川島道行:まず自分が悪の存在であるという自覚。この世の中において、社会にとって、自分の本性というモノは基本的に悪である。そこから相反する気持ち「そこから始めよう」ということを表現した破壊と再生のストーリーなので、グランジとかオルタナティブのリリックにある、誰しもが持っている光と闇を分かり易く書けたかなって。リリース情報
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Interviewer:平賀哲雄
誰もが行き着けなかったところに行けたら
--あと、個人的に前半戦で最も衝撃的だったのが『UNDERTAKER』。リーディングから始まり、サビで「Your undertaker(オマエの葬儀屋)」の連呼。様々なサウンドが入り乱れながらも実にメロディックで、女性ボーカルで涙も誘うという。どんな思考回路をしていたらこんな曲ができるんでしょう?
中野雅之:イントロのリズムとかは00年代入ってからのバウンスビートにちょっと影響を受けたような感じで、比較的新しいヒップホップっていう発想から始めていて。そこからどうやってああいう展開になったのか、確かに不思議な曲ではあります。リーディングまではR&Bとかヒップホップの発想で来てるんだけど、例えばスマッシング・パンプキンズのサビでドン!って開いた瞬間のメロディで泣けたり、ディストーションギターで埋まっている空間を縫ってくるようにメロディが歌われていく感じが昔から好きなんですけど、この曲もリーディングからそこへ一気に突入していく。それが面白いなというか、感動的だなと思って。ただ、曲が出来てから完成までに10ヶ月以上掛かっていて。混沌としたところから一気にサビのメロディとコードに突き抜けていく感じを演出するのに膨大な量の作業をしているんですよね。その結果、より感動が深まる曲にすることができた。--そしてこのアルバムのタイトルにもなっている、7曲目『TO THE LOVELESS』以降、本当に言語化するのが難しい、その分、聴き手の想像力を限界まで掻き立てるナンバーが畳み掛けられます。これは意識した上での配列なんですか?
中野雅之:そうですね。アルバムの後半へ進むに従ってどんどんその曲調も音像も広く深くなっていく作りになっています。それがストーリー的にも一番上手くいって。リズミックでパワフルな曲が後半に出てきてもちょっとしらけてしまうし、逆にすごくディープな曲を前半に持ってきたところで別にアルバムの深みはそれほど出てこなくて。ありとあらゆる聴かれ方を想定して幾つも試した中で、この形がベストだった。比較的ビートとロック的なカタルシスでもって聴いていくところから、『UNDERTAKER』のサビあたりを機にどんどん世界をこじ開けていく、そういうストーリーになっていると思います。--その中においても『STAY』はBOOM BOOM SATELLITESを知る全ての人が驚くんじゃないかなと。この宇宙的なスケールを持ったバラード、自分達ではどんな評価をされていますか?
中野雅之:作っているときは夢中なので「良い曲が出来たな」っていうことでしかなかったんだけど、今までずっと聴いてくれている周りの人たちに驚かれることで「あ~そういう曲が出来たのか」って。この曲は良いことが重なったんですよ。それに巡り会う運に恵まれて。演奏の優れたストリングスプレイヤーが集まってくれてたのもそうだし。振り返ってみると、ボーカルレコーディングだったり、作曲の時点だったり、ストリングスのダビングだったり、ひとつひとつに感動的な瞬間があって、それを邪魔する要素が何もなくてゴールまで行けたことによって、良い曲が生まれたなって。--歌入れに関しても、今までのどの曲とも違う感覚や想いで臨めたんじゃないですか?
川島道行:そうですね。まぁ体調管理も含めてどの曲も苦労はしたんですけど、この曲は涙が出るような感動がある曲なので、全力で歌いましたね。それは歌い上げるということとはまた違った次元で。 中野雅之:こういう曲を上手く歌おうとしていて鼻に付いちゃうボーカリストっていると思うんだけど、演出されたエモーショナルじゃなくて、ありのままの人を録音できればいいなと思って。『STAY』みたいな曲はそこを間違えると演出臭いモノになってしまうんだけど、川島はそこを器用にやろうとするタイプではないので、それが良い形で出てるなと思いますね。人となりが。--ラストの『HOUNDS』はどのようなイメージがあって、この形になったんでしょうか?
中野雅之:これも結構早い段階で出来た曲だから、こうやって日の目を見るまでに2年ぐらいかかっていて。で、結構早い段階で出来てる曲を聴くと、発想がグランジっぽくあったのかなって思うんです。クラブミュージックとの関わりとか接点っていうのを完全に絶とうとしている。純粋なコンポーズをしようとしていたのかなって。で、この曲は空調のノイズとか、スタジオの床を歩く足音とか、ギターを構えるところから始まる感じとか、そういうプレイヤー自体のストーリーを色濃く出していて。この作られた音楽というのは人が演奏していて、それはもうただ等身大の、みんなと変わらない人で。そういうものを皮膚感覚で感じてくれたらいいなと思った。それでリスナーと強くコミュニケーションを取ることで、距離の近さを感じてもらいたかったんです。--あと、今回のジャケット撮影は2人でお互いを撮り合ったと、ツイッターにおける川島さんのツイートで知ったんですけど、そこまで自らの手でやろうと思ったのは何故なんでしょう?
中野雅之:シングル『BACK ON MY FEET』のアートワークとその前のアーティスト写真の撮影からそれは始めたんだけど、何故自分達でやろうと思ったかと言うと、初めましてのカメラマンの前で良い表情が作れなかったからで(笑)。まぁ撮られるのが下手だっていうことなんですけど「これって俺じゃないんだよな」っていう違和感があって。で、2人で撮ることにしたら面白いし「しっくり来るな」って思えたんです。その延長でジャケットのアートワークの為の写真も自分達でやろうってなって。それもグラフィックデザイナーから提示されてくるデザインにいつも違和感を抱くというか、その人その人の解釈で作ってくるから自分の意志と一致しない。あたりまえなんだけど。じゃあ、自分達でやったらそれは解消されるのかなと思って始めたんだけれども、自分が好きなモノになっていったんですよね。--さて、そんなアートワークの面でも注目してもらいたい『TO THE LOVELESS』ですが、このアルバムがどんな風に世に響いていってほしいですか?
中野雅之:単純な答えになってしまうかもしれないけど、たくさんの人に聴いてもらえたらいいなと思います。で、じっくり音楽と向き合う時間というのが良いものなんだっていう部分にもう一度気が付いてほしい。70分のボリュームがあって、それを最初から最後まで聴く時間を取るというのは、今の時代の価値観で言ったらとてもとても贅沢なことで。おいそれとそういう時間を作れない人がとても多いと思うんだけど、それに見合った価値がこのアルバムにはあると思うし、すべてを聴き終えて日常に戻るときに何か小さな革命みたいなモノがあればいいなと願っています。あと、多分またすぐにアルバムを出すことはないと思うから、長く楽しんでほしい。で、ゆっくりと浸透していってほしい。--また、6月からは札幌から沖縄まで廻る初のライブハウスツアーも盛り込んだロングツアー【BOOM BOOM SATELLITES TOUR 2010】が待っています。今回、これだけの規模のツアーをやろうと思った理由は何なんでしょうか?
中野雅之:そこに来てくれと望んでいる人がいるのであれば、行かなければならない。そういう気持ち。逆になんで今までやらなかったんだろうな?って思うぐらいなんですけど。で、多分すべてのライブをやりきったときにまたいろんなモノが見えてくるんじゃないかな、っていう期待もあります。 川島道行:10年以上バンドを続けてきて、戦友なる他のアーティストも数少なくなってきている中で、普通のロックバンドであれば通過してきているであろうことに僕らが今初めて挑戦するということで、その先に行ける気がしているんですよ。誰もが行き着けなかったところにこのツアーで行けたらいいなと期待しているし、骨を太くする為に敢えて骨折しに行くような、武者修行のような気持ちで挑もうと思ってる。もう一度ここから新しい何かを手に入れるんだという決意は持っているつもりです。--では、最後になるんですが、これからのシーンやリスナー、BOOM BOOM SATELLITESに対してでもいいんですが、音楽のある世界に期待、希望することがあれば聞かせてください。
中野雅之:自分が理想としている形って頭の中にあるんだけど、今ことごとくそれとは違う状況があって、どんどん良くない方向に日々進んでいっている。だから“期待をする”っていうよりも“抗う”っていうところでこの『TO THE LOVELESS』を作ったので、このアルバムがその答えというか、このアルバムに望みを繋いでいる。それをどう聴かれるのかを楽しみにしているし、そこに期待しています。リリース情報
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Interviewer:平賀哲雄
TO THE LOVELESS
2010/05/26 RELEASE
SRCP-425/6 ¥ 3,666(税込)
Disc01
- 01.BACK ON MY FEET
- 02.DRAIN
- 03.LOCK ME OUT
- 04.THE HARDER THEY COME,THE HARDER THEY FALL
- 05.UNDERTAKER
- 06.ALL IN A DAY
- 07.TO THE LOVELESS
- 08.VAPOUR
- 09.SPELLBOUND
- 10.STAY
- 11.CAUGHT IN THE SUN
- 12.FRAGMENT OF SANITY
- 13.HOUNDS
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