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しなまゆ『まえならえ』インタビュー
今の音楽シーンで愛される勝算、新人から見たバンドシーン、すでにライブではキラーチューンの「チャイニーカンフーセンセーション!」誕生秘話等フック満載のアルバム『まえならえ』について、走り続ける覚悟など、モリユイ(vo)/タクマ(g)/ウエノハラ(b)揃い踏みで語る。
チャットモンチーの衝撃「目指すはグラスステージ」
--メジャーデビューしてからの日々にはどんな変化を感じてますか?
モリユイ:そんなに変わったかな? あ、でも以前はアマチュア感覚があったんですけど、メジャーデビューしてからは「プロになってしまったんだ! 何事も真剣に臨まなきゃいけないんだな!」みたいなことはヒシヒシ感じています。ライブをやっていく上でも以前は良くても悪くてもそんなに気にならなかったんですけど、プロになったら悪い日があっちゃダメなんですよね。そういう意識は出てきたかもしれない。「そんな日もあるよね」じゃなく「何がダメだったと思う?」って追求するようになった。 タクマ:社会的に「これはやっちゃイカンだろうな」ってことをすごく察するようになりました。例えば、呑みに行っても呑み過ぎないようにする。電車とかで騒がないようにする。 一同:(笑) モリユイ:子供じゃん! タクマ:そういうことすると、メンバーが凄く怒ってくるんですよ。「しっかりしなさい」って(笑)。それで「あ、なるほど。これはやっちゃいけないのか」と気をつけてます。--メジャーデビューしたことによって他のアーティストやバンド、もしくは世間を賑わせているヒット曲とか今まで以上に気になったりします?
モリユイ:「どういう意図でやってるんだろう?」って探るというか、自分たちには何が吸収できるかとか考えるようにはなりましたね。--そんな3人に今の音楽シーンはどんな風に映ってる?
モリユイ:若い人の力がないって前は思っていた気がするんですけど、今は「意外と勢いあるのかなぁ」って思ったりもしてます。自分たちがそのシーンにいるから感じるのかもしれないですけど、そんなに悲観的にならなくてもいいのかなって。いざメジャーの世界に入ってみたら、実際はまだまだ熱があるんだなって。「音楽に元気がなくなっちゃった」ってみんな言うけど、それは真実なんだろうかとは思っていたんですよ。でもみんな「頑張ろう!」みたいな気持ちは絶対的にあって。--今年の夏には【ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2014】へ行かれてましたけど、いろんなバンドを観てきてどんなことを感じました?
モリユイ:うーん…………良いなぁ!と思った(笑)。 タクマ:「出てぇ!」って。 モリユイ:それが何より一番思ったかも。今年初めてフェスに行ったんですよ。私、バンドに目覚めたのも早くなかったし、誰かのライブを観に行く習慣もあんまりなくて。初めて行ったの、小学生のときのTOKIOみたいな。でもいざフェスに行ってみるといろんな人のライブが観れるじゃないですか。で、ライブで触れると全然違うんだなと思って。そういうところでもまだまだ熱量はあるんだなって確認できた。 ウエノハラ:私は「人ってこんなに集まるんだな」って思いました。ひとつのバンドのライブに凄い数の人が詰め掛けてたり、それでお客さんもアーティストもグッてなるし、夏フェスってめっちゃ良いなって。雨降ってても楽しいし、それがもう演出のひとつになってたりして。 タクマ:あと、最後にASIAN KUNG-FU GENERATIONを観たんですけど、変わらぬバンドの良さというか、重鎮としてひとつを突き通しているバンドのライブを観たときに「あの場所に立ちたい」って思いました。 モリユイ:私はチャットモンチーのライブを観てそれを感じました。私、高校時代はチャットモンチーばっかり聴いてたんですよ。それでみんなでコピーしたりしていたから、そんな彼女たちが「復活だ!」って言って出てきて、昔から好きだった曲とかも演奏しているのを聴いて、もうなんかザバーン!って洗い流されるぐらいの気持ちになって。それで「格好良い!」とか「好きだ!」とかより「ありがとう!いてくれて!」みたいな気持ちになるんですよ。そういうライブをやれるようになりたい。--そんないろんなライブを観てきた中で、しなまゆはどんな立ち位置のバンドになっていけたらと思ってる?
モリユイ:目指すはグラスステージでしょ! 一同:(笑) モリユイ:なんだろうな? 私たちはすごく人間的に出来てるとかもでないし、楽器が超絶巧い訳でもないし、じゃあ、何があるかと言ったら「やるぞぉ!」みたいな生命力を発することに対してはすごく自信がある。いつでも「やるぞぉ!」って思える。それをたくさんの人に分かってもらうというか、認めてもらった上で大きなステージに立ちたいなって思いますね。 タクマ:そういう生命力って感じると観ている側も元気になるというか、自信のある人たちのステージ観るとこっちも何かしら自信がついてくる。だから聴いてもらって元気になれるようなステージができたら一番素敵かなって。--思いっきりポップスが出来てるバンドって今少ないから、逆にバンドシーンにおいてはしなまゆってカウンターになるのかなって思います。これから目立っていけるバンドなのかなと。自分たちではどう思いますか?
【オリジナルPV】しなまゆ『ストロベリーフィールズ』Short Ver.
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Interviewer:平賀哲雄|Photo:内山直也
「ニャカニャカニャンニャンニャンニャンニャン♪」
--あと、しなまゆの曲はちゃんと重心低いというか、ただお気楽なポップスやってる訳じゃない。モリユイの歌声の影響も大だと思いますけど、どうやっても変にチャラくはならないですよね。どう思います?
モリユイ:それは元々ポップスを作ろうと思って作ってる訳じゃないからだと思う。まず題材として「こういう曲を作りたい」というものがあって、それを自分たちで組んでいって、さらにプロデューサーさんの手が加わって初めてポップスに昇華されているから。元からポップスを狙ってる訳じゃなくて「こんなことやったら楽しいよね」「こんなことやったらライブでも盛り上がりそうじゃない?」と思って作り出してるから、ある意味バランスが取れてるんだと思う。ポップスに対して考えすぎてないというか。--そういう意味では、まだメジャーデビューしたばかりですけど、知名度的にはまだまだこれからのバンドですけど、勝算はあると感じてるんじゃないですか? 世間に愛される存在になる。
モリユイ:そうですね。必要とされるものが一番だと思っているので。自分たちが譲れないところもあるんだけど、そこだけちゃんとしていれば他はどうにでもしたいし、してほしい。どうにでもなっていけるんですよ。そういう部分では「こういうのが今必要だよ」って言われたら素直に取り入れていける。だから勝算は……勝算ある!--その可能性を大いに感たのが、今回のメジャー1stアルバム『まえならえ』なんですけれども、自分たちでは仕上がりにどんな印象を?
モリユイ:もうぐっちゃぐちゃ(笑)。作りたい曲作ったら全部入っちゃった!って感じだったんで。だから全部が全部押し曲なんですよ、自分たちの中で。全部が全部決めにいってる。で、とりあえず今のしなまゆにある全部のレパートリーが出てる気がするんですよ。こんなことも出来るし、こんなこともやってみたいし、こんなこともしてみたんですよ。いかがでしょう?みたいな。だから好きなように聴いてもらえれば。ただ、1~11曲目まで聴いて、その後の2周目が面白いんです。11曲目「夢みたいだな」だけ異色なんですけど、それを経た後にもう1回頭から聴くと全く別のアルバムみたいになる。その聴き方はオススメ! ウエノハラ:あと、入れるはずのなかった掛け声とかも入っていたりするんで、サビだけ聴くんじゃなくて全部聴いてほしい。よく聴くと「なぜかタクマが喋ってる!」とかいろんな発見があるんで。--良い意味でのガチャガチャ感みたいな。
モリユイ:本当にうるさいアルバムですよ。うるさい! タクマ:だからビックリすると思います(笑)。--フックもよく考えてますよね。分かり易いのは「イエティ」の冒頭部分「あ、また間違えちゃった、もう一回おねが……」というモリユイの声。あれは何なの(笑)?
モリユイ:録音されてたんですよ! で、プロデューサーが気付いたら冒頭に入れてて! 全然知らされてなかったんですよ。だから私もビックリしています(笑)。なので、このアルバムはマジメなところはマジメにやってるんですけど、ふざけてるところはふざけてて。その場にいる女の子たち連れてきて「声入れてよ」って急に言い出したり。そもそも曲自体には自信があるので、それプラスどんな遊びを加えるか考えられてるアルバムなのかなって。--リード曲「チャイニーカンフーセンセーション!」は初めてしなまゆのライブ観て「この曲は武器にするべきキラーチューン」だと思ったんですけど、まずタイトルからしてナメてるじゃないですか(笑)。なんでこのタイトルにしたの?
しなまゆ/チャイニーカンフーセンセーション!(Short Ver.) 2014/12/17発売1stALBUM『まえならえ』
--これ、何とかしてASIAN KUNG-FU GENERATIONに聴いてほしいよね。
モリユイ:そうなんですよ! でも怒られないですかね? ツイッターとかで凄い怒られたらどうしよう?--きっと寛容だから大丈夫(笑)。でも真剣に遊んでる曲ですよね。「ニャカニャカニャンニャンニャンニャンニャン♪」って本来ボーカルじゃなくてギターとかシンセで鳴らすところじゃないですか。でもあれを歌っちゃうという発想に「面白い遊びができるバンドだな」って思いました。
モリユイ:あれも自然な流れだったんですよ。「ニャカニャカニャンニャンニャンニャンニャン♪」ってなるべくしてなってる。セッションの中で出てきたからそのまま使ってるっていう。--このアルバム好きでしょ?
タクマ:はい! モリユイ:むしろアルバムにならなくてもいい。11曲のシングルが入ってるイメージなんで、これはもうベストアルバムです(笑)。リリース情報
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Interviewer:平賀哲雄|Photo:内山直也
アジカンと競演して「チャイニーカンフーセンセーション!」を
--あと、今作には「1つだけ」というしなまゆ作詞作曲じゃないバラードも収められていますが、これまためちゃくちゃ良い曲で。どういう経緯でレコーディング/収録することになったんですか?
モリユイ:最初は制作ディレクターからお話を頂いて、同じレーベルにいた「Annというアーティストがいるんだぞ」というところから入ったんですけど、最初はカバーの経験も少ないことから不安もあったんですけど、曲を聴いてみて、Annさんがすごく自由に歌っていることに感動して「私も自分の思うままに歌おう!歌いたい!」って思って、そこからカバー曲としてではなく、“しなまゆ”としていい曲に仕上げようってなりました。で、いざレコーディングしてみたら、普段歌ってるキーより低いから「あ、私ってこんな声が出るんだ?」って発見もあったりして。でも「自分の歌になった。ちゃんとしなまゆの曲になってる」って思いました。--今作のラストを飾る「夢みたいだな」はどんな背景やきっかけがあって生まれた曲なの?
モリユイ:「アルバムの為にもう1曲作って」って言われたんですけど、短い期間で他の収録曲とは画期的に違うものを作るには、今までと違う作り方をするのが多分良いんだろうなと思って、タクマの家で弾けないピアノに触ってみたんです。で、白鍵だけ使って適当に弾いてたら「あ、これ良いな。これ可愛いな」みたいな。それでだんだんイメージが浮かんできて、「あ、これは「夢みたいだな」って言葉が合いそうだな」と思って歌ってみたら「あ、これは良い。良いものになる!」ってタクマに言ったんだよね。そしたら全然ピンと来てなくて! タクマ:「は?」「いいから聴け!」みたいな。 モリユイ:「こうなんだ。こんな感じになるんだ!」みたいな。私だけ盛り上がっちゃってて。 タクマ:ディズニーのミュージカル始めそうなテンションで語り出しちゃって。でもそしたらだんだんイメージが伝わってきて、ボイスメモを録ったんです。それを夜寝る前に延々リピートして聴いてたら、なんとなく彼女がやりたいことが分かってきて「夢みたいだな」って言葉が物凄く合うことに気付けて。それで「これはすげぇ良い曲にしたい」と思って一切手を抜かずごちゃごちゃにしちゃったら再現できない曲になっちゃいました(笑)。--歌詞にはどんな想いを込めているんでしょう?
モリユイ:「夢みたいに幸せ」とか全然そういうことじゃなくて。例えば、匂いを嗅げるのって実際なんでか分かんないらしいんですよ。で、水が何なのかとかも分かってないらしくて。てか、そう考えると全部訳わかんないし、今、自分がこうして生活していることも何だかよく分からなくて。そうなってくると、現実ってものがどこにあるのかも分からないし。でもそういう状態の中で普通に生きているのって「夢みたいだな」と思って。この世界そのものを改めて考えたときに「いや、嘘でしょ?」みたいなことだらけだから、そういうのも全部含めて「夢みたいだな」と思ったんです。で、それを考えているうちにだんだん眠くなってきて寝ちゃえばいいと。それで子守唄みたいな曲にしたんです(笑)。--そんなメジャー1stアルバム『まえならえ』、どんな風に世に響いていってほしいなと思っていますか?
モリユイ:私たちのことを知らない人が全国にゴマンといる訳じゃないですか。そういう人たちにどの曲でもいいから、しなまゆを知るきっかけにどの曲かがなればそれでいい。で、1曲聴いたら全部好きになる気がする。そういう引っ掛かりになったらいいなと思っていて。で、これまで聴いてくれていた人は「あ、なるほどね」「たしかにこれだよね」ってなると思う。まぁすごく大きく言えばたくさんの人に聴いてほしいアルバムですね。--ところで、なんでアルバムタイトルを『まえならえ』にしたんでしょう?
モリユイ:あまりにもごちゃごちゃなアルバムなんで、整理整頓の意味も込めて『まえならえ』。でも基本的に思いつきです。「まえならえ、しなまゆにすごく合いそう!」みたいな。めちゃくちゃ感覚的です。--その『まえならえ』を携えたワンマンライブ【第2回 チームあわてんぼうプレゼンツ サキドリ!!】が12/26原宿アストロホールにて開催されます。まず聞きたいんですが、チームあわてんぼうって何なんですか?
モリユイ:チームあわてんぼうは私たちです。で、12/26ってクリスマスの次の日じゃないですか。でもクリスマスに遅れた訳じゃなくて、364日先取っているんです。そういう意味での【サキドリ!!】。2015年分のクリスマスを12/26にやっちゃおう!っていう。「どんだけあわてんぼうなんだ、このサンタクロースは!」みたいな。--どんなライブにしたいと思ってます?
モリユイ:アルバム制作で曲がグレードアップしたことによってライブの輪郭もハッキリするだろうなって、もうすでに想像できていて。で、そういうのを遺憾なく発揮する1時間半になるといいなって思ってます。アルバムが出たことを一緒にお祝いしたい気持ちもあるし、ここで改めてしなまゆというものを再確認してほしい。--このワンマンライブで2014年を締め括り、来年はどんな年にできたらいいなと思いますか?
モリユイ:今は慣れないことが多くて「ん、なんだ?」「ん、なんだ?」って確認作業に使う時間が長いんですけど、そこを短縮したらもっと凄いことになる。そこさえ突き詰められれば。その“もっと凄い”が出来上がったときの飛躍みたいなものを感じたいし、感じてほしい。ダテじゃねーぞ、2015みたいな。あと、フェス出たいです。アジカンと競演して「チャイニーカンフーセンセーション!」3回ぐらい演りたい(笑)。 Interviewer:平賀哲雄Photo:内山直也
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Interviewer:平賀哲雄|Photo:内山直也
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