Billboard JAPAN


Special

【#BJMA】2014年ビルボードジャパン・チャート解析/伊藤涼

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【BJMA】特集


揺るぎないTrustで世界は繋がるか?
~新しいチャートから見える、音楽の今と未来~


 Billboard Japanのサイトがリニューアルされるということで、こうしてコラムを書くことになったわけだが、何を書いていいものか?きっと、カッコいいことを書こうとしても上手い事いかなそうなんで、自然体で思うがままに書いてみたいと思う。
 ジャニーズ・エンターテイメントでプロデューサーをしていたこともあって、やはりジャニーズのアーティスト動向は気になっているし、ほどほどにチェックもしている。そんなとき、シングルCDの売り上げがメーンのサブジェクトになってくるので、オリコンのウィークリー・チャートをチェックすることになる。日本のMost Trusted Music Chartといえばオリコンだ。だけど、CDを買うことだけが音楽を聴くきっかけでなくなった今、CDの売り上げだけでは“聴かれている音楽”を計れなくなったというわけ。だからこそ、こうしてBJMAのような新しいミュージックチャートのサイトが生まれてくることは音楽業界にとってもユーザーにとってもハッピーなことだ。ってことで早速、BJMAの“Chart”を触ってみた。

 今まではオリコンのチャートをメーンに、配信を重ねて見る時はiTunesや着うたのチャートを、音楽について語られているサイトのスレで縦にスクロールしながら見ていた情報が一目瞭然なのは便利だし、アーティストをクリックすれば折れ線グラフを交えた形でCDの情報がみれるのも分かり易い。ただ、これだと音楽業界にいる人間にとっては、レーベルの会議室で配られる資料って感じもしないこともない。貴重な資料を簡単にネットで観れるのは素晴らしいけど、やっぱりB to Bを意識した感じがする。

 例えば、年間順位44位のNEWS「ONE-for the win」の情報(チャート解析結果1:右)をみると、アイドルらしいなぁと思う。折れ線が束となりマッターホルンのようなシルエットを作る。タイアップ、テレビCM、音楽番組出演という一体型のプロモーションがあり、それと同時にネット上でもバズが起こりCDが買われる。ちなみに、途中でグラフが終わっているのは、HOT100(5指標を合算した結果)が、ランク圏外になった為らしいが、もう少し親切な見せ方が出来ると思うなぁ・・・。

 もう1つ、去年のグラミー賞で最優秀楽曲賞を獲って年間順位92位のLordeのデビューシングル「Royals」の情報(チャート解析結果2:右)を見てみると、長い山脈のような形をしている。海外との距離を感じるし、売り上げとバズも決してリンクしているとはいえない。すべてのメディアにバラつきとタイムラグがあることがよく分かる。まぁこんな感じで分析するには役に立つが、一般のユーザーにとって楽しむツールになるかは??。 コレいいなぁ~と思ったのは、チャートをみながら直ぐにMusic Videoを観て、音楽とアーティストをチェックできるところ(残念ながらジャニーズのMVは観ることができないが、汗)。今となっては当たり前なことだけど、音楽と映像がリンクしている、むしろ映像のほうがメーンな楽しみ方(これも世界標準だ!)になってきている今、それをチャートにも反映したってことはスバラシイ。今まで知らなかったアーティストとの出逢い、セレンディピティも生まれるかもしれないしね。これは B to Cを意識した、親切なサービス。

 “アイドルがヨーロッパでも大人気”とか“いまブラジルでアニソンがアツイ!”とか“日本人アーティストがUSツアー大成功”とか、テレビやネットを通してよく入ってくるんだけど。でもこれって、「一部のコアな人たちが騒いでいるだけなんでしょ!」とか、「相変わらず音楽業界の宣伝ツールで、スゲぇ盛ってるんでしょ?」と思われている。むかしで云う所の、バンドのNYレコーディングみたいに(笑)。実際に、日本の音楽も世界に馴染んできているとは思うけど、ユーザーにとってはそこにリアリティがない(過去の音楽業界の嘘のせい?)。だけど、もしBillboard Japanから世界中のBillboardサイトにリンクして、チャートという共通言語をもってリアリティを感じられるとしたら、それは大きな価値があると思う。もちろん。世界から日本のリアリティある音楽事情も知ることが出来るわけだし。

 今回、このサイトを使ってみて思ったのは、ユーザーに隠すことなく真実を伝えることでリアリティを持ってもらえるようになり、それがTrust(信頼)を生む。ユーザーのTrustは音楽業界のTrustになり、そして世界のTrustに繋がるということ。Billboardという揺るぎないブランドをもったココが、決意と責任を持ってBJMAをスタートすること、その前傾姿勢に心から期待したい!

BJMA2014


プロフィール写真

伊藤涼 音楽プロデューサー。Berklee College of Music卒業。2001年にJohnny's Entertainmentに入社し、近藤真彦・少年隊・KinKi Kidsの音楽プロデューサーを努め、2004年にはNEWSのプロデューサーに着任、修二と彰、山下智久のソロ、テゴマスの海外デビューなども手掛ける。2009年に株式会社マゴノダイマデ・プロダクションを設立後は作詞研究室リリックラボ(http://www.mago-dai.com/?p=778)などの音楽に関する企画運営をしながらフリーのプロデューサー/作家としても活動。山口ゼミの副塾長、コライティングファーム(CWF)のヘッドディレクターも務める。

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