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MINMI 『THE HEART SONG COLLECTION』インタビュー

MINMI  『THE HEART SONG COLLECTION』 インタビュー

MINMI、約2年ぶりのインタビュー&特集掲載決定。好きになれなかったボブ・マーリィを歌うことになった経緯、桑田佳祐、ユーミン、THE BLUE HEARTS、THE BOOM等にまつわるエピソード、そして失ってしまった人々へ向けた『レクイエム』について。初披露の話満載なので、ぜひご覧下さい!

地震が起こる前から、日本に対して危機感はあった

--最近は“カリスマ・ママアーティスト”と称されることも多いMINMIさんですが、そう呼ばれることにどんな想いを抱かれていますか?

MINMI:恐縮ですが、全然嬉しいですね!

--ママになる前となってからでは価値観も変わってますか?

MINMI:変わってます。1人目が生まれてからと2人目を妊娠してからでも変わってますね。1人目のときは、私はアーティストであるから「“ママ”というところじゃない部分で見てほしい」みたいな想いがまだあって。でも2人目を妊娠してアルバムを出すときには『MOTHER』ってタイトルを付けちゃって「こんな母を目指したい。憧れている」というものをバン!って出すことが出来たんですよ。それで周囲からの見られ方も変わったと思いますね。お母さんやママになりたい人たちとの距離が近付きましたし。

--音楽を続けていくことと、子供を育てていくこと。このふたつに共通点があったら教えて下さい。

MINMI:共通点は分からないんですけど、私の場合は子供がいることで音楽にすごくプラスになってる。子供って固定観念がないから、純粋に音に乗るじゃないですか。そういう音に純粋な人と一緒にいると、自分も忘れていた純粋な感性がまた開かれる。いつの間にか「こういう曲だから好き、凄い」っていう感覚が蓄積されていきますけど、そういうのを子供って破壊しますよね。「こんな曲でこんなノリノリになるんだ?」とか。テレビから鳴ってる「ガンガンガンガン!」っていう工事の音でノってたりするので(笑)。だから私も裸になって、子供の気持ちになって音楽を楽しめるようになっています。楽しめる音楽の幅を広げてもらっている気がしますね。

--子供によって音楽観が変わりまくっていると。

MINMI:そうですね。でもその代わりにクラブへ行けなくなりました。クラブのサウンドや世界観を楽しんでいる人を見ては「羨ましいなぁ」と思う。それは子供が小さいうちだけなんでしょうけど、今は夜9時消灯みたいな感じなので(笑)。

--また、家族ができたことと【LOVE FOR HAITI】【LOVE FOR NIPPON】などの活動に精力的になったことは、実は大きな繋がりがあるんじゃないかと感じています。実際のところはいかがですか?

MINMI:2006年のアルバム『Natural』から『MOTHER』にかけて、もっと自分の自然体を探すようになっていったから、アーティストとして生きている部分だけじゃなくて、人としても、母としても、ちょっとずつ等身大で生きられるようになってきていて。昔から「社会に対して」とか「地球に対して」とかそういう想いはあったんですよ。表立って行動に移す勇気が今ひとつないタイプだったので。でもいつの間にか表立って声を出すようになっていました。それは子供が出来たからというよりは、等身大で生きられるようになった結果だと思います。

--ハイチに続き、日本でも未曾有の大震災が起きてしまいました。5ヶ月以上の歳月が流れた今、MINMI個人としてはどのように生きていきたいと思っていますか?

MINMI:すごく難しい話ですよね。でもしっかり耳を開いて、積極的に情報を掴んで、自分のスタンスも自分で決めていくこと。それがより一層必要だなって思います。あと、今回の地震が起こる前から、日本に対してどこか危機感はあったんですよ。それは日本が好きだし、将来的にみんなが「良い国だ。すごく幸せだ」ってなってほしいからこそ「今のままで大丈夫かな?」っていう気持ちがあったからで。きっとそういう風に考えている人はたくさんいるから、これからも希望は持っていたいなと思うし、出来るだけ他人任せにならないようにしたい。ミュージシャンだけど、そこは一日本人として、一社会人として積極的でありたいなと思います。

--被災地の子供たちへ“本の読み聞かせ”を録音して贈るプログラム「J-WAVE SPECIAL LOVE FOR NIPPON ~MOTHER RADIO~」に参加。こちらを体験してみて思ったこと、感じたことを教えてください。

MINMI:今はツイッターとかブログがあるから、被災地の方の声をリアルタイムで聞くことができて「良かったな」と思っていて。小さなアクションなんですけど「届いたよ」っていう人がいてくれて「続けよう」っていう気持ちになれたんですよね。今回のアルバムももちろん日本中の人に聴いてほしいけど、被災地の人からも「楽しみにしているよ」って言ってもらえると、私も「繋がってる」「聴いてくれる」「届く」といった気持ちを絶やさないように持ち続けられるし、出来ることをやっていきたいなと思います。

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--3.11直後は“音楽を続けていくこと”に悩んだこともありましたか?

MINMI:全くないです。音楽のあるところってパワーがすごく溢れてくるし、気持ちの持ち方も音楽によってすごく変わるし、自分もライブをした後には「音楽が気付かせてくれた」みたいな気持ちにすごくなるし、音楽にはすごく力があるなって思ってるんです。社会活動の横に音楽を鳴らしているだけで、みんなのモチベーションが保たれる。そういう燃料やエンジンみたいな効力があるんですよね。きっと無音だったら「みんなで頑張ろう」ってなってもどこかでしんどくなってしまうから、音楽は在っていいなと思っています。

--そんなMINMIが優しさに満ちたアルバムを完成させました。ここには“今、MINMIに響かせてほしい声”がたくさん詰まっていると思います。実際のところ、今作『THE HEART SONG COLLECTION』を制作していく上で特別に意識したことはありましたか?

MINMI:作っている途中で震災があったことによって「心が温まるようなアルバムにしたい」という想いはどんどん強くなっていきましたね。振り切っちゃおうと。それで当初は入れる予定じゃなかった『想い出がいっぱい』や『レクイエム』『ピンク帽子の“ドレミファソ”』も収録することになったり。

--そのアルバム収録曲について触れていきたいのですが、まずH2Oの『想い出がいっぱい』。この曲をカバーしようと思ったのは?

MINMI:自分が子供の頃に聴いていたような曲を、同世代やちょっと上の世代の人たちに聴かせたくて。鳴った瞬間にあの頃が蘇る感じ、心の扉が開かれる感じを味わってもらいたかったんですよね。震災後、被災地で昔の曲が鳴っているときに私はその感覚がすごくあって。ふと『想い出がいっぱい』を聴いて「この曲を入れなきゃ」と思ったんです。で、そのカバーを若い人には新しい感覚で聴いてもらいたいなと。名曲ってどの世代が聴いても大好きになってくれるものだと思うんですよ。ただ、自分が手掛けることで“2011年の『想い出がいっぱい』”にはしたかったんですよ。2011年から80年代にタイムスリップするような、歌詞にある「大人の階段のぼる」のように時代を跨ぐ感じを音にも出したくて。

--数多くのサザンオールスターズの名曲から『慕情』を選んだのは?

MINMI:桑田さんのバラードに憧れがあって、その中でもメロディで泣かす『慕情』は特に歌いたかった曲なんです。それで、ご本人にカバーする旨を伝えようと思ったんですけど、桑田さんが活動休止されて闘病生活をするという発表があって。だからこの曲は“入れられないだろう”という前提で制作だけ進めてたんですね。それでレコーディングも終わって、ご本人が大変なときに「この曲、入れていいですか?」って聞くに聞けない状況だったんですけど、カバーしていいって連絡があったんですよ。それがすごく嬉しくて。実際に「桑田さん、早く元気になってほしいなぁ」って想いながら作っていたので。この曲の歌詞じゃないですけど、予測のできない旅みたいなストーリーがあって収録できた曲です。

--続いて、中島みゆき『糸』。MINMIが歌っているのを聴いて、この優しくも気高さを感じさせる歌詞が実にMINMI的だなと思いました。自分では仕上がりにどんな印象を?

MINMI:ウチのマネージャーの女の子たちが辞める事になったとき、この曲がちょうど出来たのでプレゼントしたんですけど、今の自分と周りの人たちとのテーマかもしれないと思いましたね。出逢うことは偶然だけど、それによって出来上がるものが誰かに何かを与えるかもしれない、と教えてくれるこの『糸』を私たちのテーマ曲にしたいなって。Bank Bandのカバーから知ったんですけど、今年偶然にも【ap bank fes '11 Fund for Japan】へ呼んで頂けたので、Mr.Childrenの桜井さんや小林武史さんに「この曲に出逢わせてもらって、私もカバーさせてもらいました」って報告しました。

--徳永英明『レイニーブルー』。こちらは歌ってみていかがでした? ボーカル面でのアレンジをかなり楽しんでいるように感じましたが。

MINMI:この曲は、1980年代のカラオケ定番曲という感じで、自分もその時代の思い出とすごく重なるんですけど、今の私が歌うということでR&Bっぽさ、私らしさを出したいなと思って。あと、今回のカバーはどれも何にも考えずにボーカルブースに入り、事前にボーカルアレンジをせず「ライブでこれを歌うんだったら、どうするか?」ってイメージしながら歌ったんですよ。その結果『レイニーブルー』も私流みたいな歌い方になっているんです。失恋したときの記憶と重ねたので、その溢れ出す悲しさが出てるんじゃないかなと思います。

--あと、尾崎豊『OH MY LITTLE GIRL』がこんなにも温かい曲になるとは想定外でした。冬が夏になったぐらい、大きく変化したなって。こういうアレンジにしようと思ったのは?

MINMI:今回はニューヨークでたくさん音の部分を制作したんですけど、良い意味でニューヨークのミュージシャンは原曲を知らないから「新しいアレンジにしよう」って言ったときに、想像以上の方向に進んでいったりして。私も音的にも温かいものにしたかったから、すごく昔のレコードを聴いたときのような音の温かさを出したいと伝えていたんですけど、いざそれに見合った機材とスタジオとメンバーで録ってみたら、原曲とは全然違うものになっていったので「楽しいなぁ」と思いましたね。この曲は10代のときに聴いた好きな曲で、今回は男性のカバーを多くやった方が面白いと思ったので、この曲も歌わせてもらいました。

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やっぱり亡くなった人の人生を否定したくない

--THE BOOM『星のラブレター feat. PETER MAN』。THE BOOMのトリビュート盤にも収録されていたナンバーですが、昔から敬愛しているバンドだったんですか?

MINMI:はい!この前、MIYA(宮沢和史)さんにも「大阪で『星のラブレター』やTHE BOOM自体に火を付けたのは私です」「少なくとも友達に広めたのは私です」って言ったんですけど(笑)。で、MIYAさんも「あの曲は、実は大阪から流行ったんですよ」って言っていて! 私は夜中の天気予報の裏で『星のラブレター』が流れているのを聴いて、みんなに「すごく良いよ」って広めていって。でもまさか自分もミュージシャンになってTHE BOOMの曲を歌わせてもらうとは思ってもいなかったんです。だからTHE BOOMの大阪城野音ライブを外への音漏れで聴いていた頃の自分に「将来、夢のようなことが起こる」って教えてあげたい。あと、この曲はカバーが楽しいと思えたり、周りにも「いいね」って言ってもらえるようになったきっかけでもあるんです。

--荒井由実も数多くの名曲を持っていますが、この『ひこうき雲』を選んだのは?

MINMI:ユーミンも好きな曲はたくさんあるんですけど、この曲が特に衝撃的だったんですよんね。“死”がテーマになっていて、鮮烈だった。で、今回「ユーミンのどの曲を?」ってなったとき、荒井由実時代のユーミンを知らないかもしれない世代にヤバイ曲を紹介したいと思ったんです。私は“生きる”をテーマとして掲げているから、こういう“死に様”的なところを書く視点がないんですよね。だから私自身も凄い曲だと感じるし、このカバーを通して知る人にも新しく感じるものがあるんじゃないかと思います。

--Bob Marley『Three Little Birds』。やはりMINMIにとってもBob Marleyは神様的存在なの?

MINMI:その感覚がすごく嫌で。レゲエ=Bob Marleyっていうありきたりな感じが、私にはずっと理解できなかったんですよ。しかも私はルーツレゲエじゃなくダンスホールレゲエが好きなので、彼の偉大さとかカリスマ性とか全然分からなくて。でも初めてジャマイカへ行ったらラジオでBob Marleyばっかり流れていて、気付いたらその魅力に取り憑かれていたというか。空気感にすごく取り憑かれて、その中でもこの曲の「すべては上手く行くから大丈夫」みたいな歌詞がおまじないのように聞こえてきて、私自身も「大丈夫に決まってるよ」って思えちゃったんですよね。それでカバーしてみることにしました。

--続いて、THE BLUE HEARTS『君のため』。こちらの音源だけまだ聴けていないのですが、どんなカバーになっているんですか?

MINMI:これはもう言葉は要らないです。聴いてください。カバーした理由ですか? THE BLUE HEARTS好きだし、この曲は特に好きなんです。すごくシンプルで、男っぽい感じも潔い感じも好きで。私のオリジナルにはない感じ。その分、ハードルは高かったですね。私の曲ってわりと逆で、きめ細かく作り込まれていたり、あの手この手で構築していくものが多いから『君のため』みたいな曲は慣れていないんですよね。それに男性が歌ってるからこそ格好良いと感じていたので。だからこれはもう「振り切るしかない!」と思って歌いました! ぜひ聴いてみてください。

--また、今作には2曲のオリジナル曲が収録されています。まず『レクイエム』。どんな想いを込めて生み出したナンバーなんでしょうか?

MINMI:震災があって、亡くなってしまった人、失われてしまった街、最初はそこに対して悲しさや虚しさがあったんだけど、そういう気持ちだけでいるのが申し訳ないと思うようになっていったんですよね。生きていたこと、生きていることの素晴らしさを見つけたいって。あと、私は生死について考えるときに、自分の父親が亡くなっているので「父親は生まれたことを後悔していたのかな? どういう風に思っていたんだろう? 自分はこの先どういう風に生きていこうか?」って思うんです。でもやっぱり亡くなった人の人生を否定したくなくて。その人が遺したこと、生きていたことはすごく素敵なことだったと思いたいし、ずっと忘れたくないんですよね。『レクイエム』にはそういう想いを込めました。

--そして今作を締め括る『ピンク帽子の“ドレミファソ”』。幼稚園や保育園のお遊戯で歌ってもらいたいナンバーだと思うんですが、そもそもこういう曲を作ろうと思ったのは?

MINMI:自分の子供の保育園で卒園のお別れ会が予定されていて、その為に作った曲なんです。でも作った次の日に地震が起こってしまって。それでファンの人とか被災地の人とやり取りをしている中で「元気になりたいです」という声があったので「卒園も入園も何もなくなっちゃったと思うんですけど、この時期って子供達が初めて保育園とか幼稚園とか行って、親とは別の世界で頑張ったり、育てられたり、愛されたり、いろんなことを覚えたりする。だからそれを讃えたいです」ってこの曲を発表したんですよ。そしたら「聴いてよかった」「すごく癒されますね」って言ってもらえたので、元々は個人的な曲だったけどこのアルバムの最後に入れることで、希望みたいなものを感じてほしいなって思って。

--このハートフルなコンセプトアルバムがどんな風に世に響いていってくれたらいいなと思いますか?

MINMI:今までのオリジナルアルバムとは違って、わりと同世代や上の世代に心をホッとさせるアルバムとして聴いてほしいなって思うんですけど、リスナーの中にはもちろん若い人もたくさんいるじゃないですか。ダンサブルな曲で夏をパーって盛り上げてほしいファンがいる中で、これはある意味裏切ったアルバムだと思うので。そこにどう響くのかは、気になるところですね。

--今作の収録曲も生で聴けると思われる、約5年ぶりとなる全国ツアーの開催も決定しています。前半戦だけでも33か所。これだけの会場を廻りたいと思ったのは?

MINMI:約5年ぶりなので、すっごい楽しみ。間違いなく5年前よりもミュージシャンとして進化していると思っていますので……とか言って「前の方が良かったじゃん」って言われたらどうしよう?

--大丈夫です(笑)。進化してます。

MINMI:はい、進化してますので、ぜひそれを楽しんでもらいたいです。あと、ライブハウスをこれだけ細かく廻るのは初めてなので、すごく嬉しい。ずっと「私たちの街にも来てほしい」って言ってもらえるところへは行きたかったし、近い距離でのライブもしたかったんですよね。だから33か所ありますけど、1か所1か所濃いものになると思います。それぞれ「全然違う」って思ってもらえるライブにしたいですね。

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