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ライオネル・リッチー 最新インタビュー~マイケル、シナトラ、ストーンズを語る
全世界でのアルバム・セールスは1億枚超え、これまで米ビルボード・シングル・チャートで5度の1位に輝き、10曲のトップ10ヒットを放ったライオネル・リッチー。1968年にザ・コモドアーズのメンバーとしてデビューしてから50年近いキャリアを誇り、2012年には自身のヒット・ナンバーをカントリー界のスターたちとともに再構築した『ベスト・デュエット~タスキーギ』で、米ビルボード・アルバム・チャートにて見事1位に輝く。また、今年3月には27年ぶりの来日公演も行い、【ボナルー】、【エッセンス・フェスティヴァル】など米主要音楽フェスへ出演するなと、精力的にライブ活動を続けている彼が、米ビルボードが主催する【2014 Billboard Touring Awards】にて『Legend of Live』賞を受賞することに。11月20日に行われる授賞式に先駆け、ライオネルにインタビューを試みた。
ステージ・パフォーマンスこそがすべて―
ステージ上で生き、そして死んでゆく
??レコード会社から初めて貰ったギャラは、何に使いましたか?
ライオネル・リッチー:ヤマハのピアノを買ったよ、偶然にも今隣の部屋にある。それまでに書かれた曲は、隅にピアノがある大学のキャンパス内の“シアター・シャック”と呼ばれていた場所へ足を運んで書かれたものだ。夜をそこで過ごし、その足で聖歌隊がリハーサルをしていた場所へ出向き、そこのピアノを演奏した。だが、次第にピアノを手に入れなければと思い始めたんだ。同時に、シルバーのダットサン280Z 2+2も購入した。ちなみに、その車も未だに所有している。購入した時には、発売から既に1年経っていたんだ。値段交渉にかなり時間を費やしたから。挙句の果てには、新たなモデルの車が入荷し、ディーラーに「ライオネル、車を買ってくれ。どっちにしろ送り返さねばならないんだ。値段も君の提示しているものでいいよ。」って。
??1stソロ・アルバムのジャケットで来ていた緑のセーターもまだ所有しているのですか?
ライオネル:もちろんだ。「Hello」のセーターも持っているよ。「Hello」の(ミュージック・ビデオに登場する)彫刻については唯一考えていなかった―あれはとにかく酷くて、出来るだけ距離を置きたかったから。だが、衣類はすべてまだ残っている―『Dancing on the Ceiling』、オリンピック(1984年の閉会式)のもの。将来的には、どこかのライオネル・リッチー博物館に所蔵されると思う。保管可能なものは、出来る限り残してある。ザ・コモドアーズ時代の衣装は少ないが―バンドを去る時に、「ユニフォームを貰えるか?」なんて言えないからね。その場から即座に離れようとする。離婚と同じさ。妻の家を訪れ、「そのランプを貰ってもいい?いや、ダメだよね。OKわかった。」って具合に。
??ザ・コモドアーズとは泥沼に?
ライオネル:結婚、そしてバンドについても同じことを言うが、みんな最後の4か月ばかりを憶えていて、その前の15年間のことはすっかり忘れちまう。みじめだったから、その場に留まらなかった。でも、その前は絶好調だった。自分がバンドをやるのが好きなのには、2つの理由がある。1つ目は、人生で最高に楽しい時間を過ごせる、バックステージに戻ると、内輪で盛り上がれる。でも、一番大切なのは何か上手くいかなくても、他人のせいにできるということだ。
??オープニング・アクトを務める際に、ジャクソン5とザ・ローリング・ストーンズでは、どちらのグループの方がハードでしたか?
ライオネル:本当にそれ聞いちゃう?ザ・ジャクソンズ。いや、ストーンズだな。マイケル、ティト、ジャーメインを観に来ていたのは、子供が多かったが、幸運なことに中には母親や父親もいた。だから、彼らをトップ40のヒット曲で楽しませればよかった。ストーンズの場合は、あ~、なんというか、ステージに上がると火あぶりにされながら、実力を試されているようだった。観客の半分は、完全に酔っていて、残りの半分もそこそこ酔ってる。スティーヴィー(・ワンダー)がオープニングを務めた時は、ブーイングされながらステージを後にした。プリンスもそうだ、誰だと容赦なしさ。自分を観に来たのではないから。僕らは無事生還した。そして遂にザ・コモドアーズが、マディソン・スクエア・ガーデンでライブをやった日には、ミック(・ジャガー)がやってきて、サウンドボードからライブを観ていた。
自分たちが仲間に値すると証明しなければならなかった。すべて我慢し、やるのみ。ステージ・パフォーマンスこそがすべて―ステージで生き、そして死んでゆく。アルバムに収録したというのは関係ないことで、それを生で演奏できるかというのが醍醐味なんだ。
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僕にとって業界での成功は、2つの点に基づいていた―
それはレコード・セールスと集客率だ
??マイケル・ジャクソンと「We Are the World」を一緒に書いた時の思い出を教えてください。
ライオネル:マイケルのベッドルームの床に座り、彼はベッドをもっていなかったんだと思う、床で寝ていたんだ。壁にはいくつかアルバムが飾ってあり、カーペットと小さなベンチがあった。最初のヴァース―「There comes a time」―を書いていると、肩のところで音がする。見るとパイソンがいるんだ。ボア、パイソン、どっちでも構わない。とてつもなくデカくて、醜い蛇だった。僕はアラバマ州出身で、もし蛇を見つけたら、警察を呼んで、そいつを撃つ。大声で叫んだね。するとマイケルは、「よかった、ライオネル、見つかったよ。アルバムの後ろに隠れていたんだね。この部屋にいることはわかっていたけれど、どこにいるかわからなかったんだ。」と言うから、「正気かよ。」と思ったよ。自分を落ち着けるまでに2時間ぐらいかかって、「他に放し飼いになっている動物はいないか?」と聞いたね。クインシー(・ジョーンズ)、マイケル、スティーヴィーと話し合って、1か月かからないでメンバーを集めた。クレイジーだよね。でも、記憶に残っているのは、詞を書く時に耐えなければならなかった、くだらない出来事さ。
??ラウドな騒々しい音楽で、一番好きなものは?
ライオネル:メタリカ。演奏が凄まじく、洗練されたラウドネスだ。フー・ファイターズも素晴らしいね。
▲ 「You Are ft. Blake Shelton」 MV
??『ベスト・デュエット~タスキーギ』を制作する上で、学んだことは?
ライオネル:僕は南部で生まれ育った。だから、「ライオネル・リッチーがカントリーをやりだした。」と言われた時には、「いいや、違う。僕はずっとカントリーとともに生きてきた。」と答えたよ。決してビバリーヒルズ的ではない―今はここに住んでいるけれど、カントリーらしさを拭うことは出来ない。一番難しかったのは、ゲストたちのスケジューリング。カントリー・ミュージック界に、家で電話が鳴るのを待っているような人間はいないんだ。時間はかかったが、待つ価値はあったね。
ナッシュヴィルに戻ると、音楽が自然とフィットしているとみんなに言われた。まさにその場で書いたからね。ニューヨークで書いたんじゃない―これは、僕のジュリアード音楽院時代のものとは違うんだ。あるショーではルチアーノ・パヴァロッティと共演、次はナッシュヴィル、【エッセンス・フェスティヴァル】、そして【ボナルー】でポップショーを行えたら、成し遂げたいことをすべてやり尽くしたような気がする。音楽に境目がない領域へ達した。境目を作り出したのは、音楽業界だ。レコード会社で働いている人間にとっては、上出来だと思う。ラジオ局も一緒だ。私たちは、アダルト・コンテンポラリーしかかけない、とか。ヒットの話?それはヒット・レコードと呼ぶんだよ、若造、という具合に(笑)。
??また試みたことがないことで、やりたいことはありますか?
ライオネル:引き続きやり続ける。近年は、新たな単語も生まれている。“ブランディング”だ。なぜなら、他のことが上手くいかないからだ(笑)。「今、ブランディングに凝っている。」と言われると、じゃあアルバムを売ろうとしてるんじゃないんだ、と思うね。
でも、今はそれが業界の現状だ―これらのヒドイ言葉を使い、昔とは違いを補っているんだ。残念なことさ、僕にとって業界での成功は、2つの点に基づいていた―それはレコード・セールスと集客率だ。
??意外とも思えるショービズ界での交友関係は?
ライオネル:フランク・シナトラ。僕がこの業界に入った時、彼は聖域だった。フランクと同じ部屋に入るなんて以ての外。自分にセキュリティーがついてると思ったら大間違い。フランクを取り巻いているのこそがセキュリティーだ。そんな中、1991年頃に1本の電話をもらった。フランクがハリウッド・ボウルで、最後のショーをやるから、ゲストとして彼のバスに招きたいと。バスには、ジャック・ニコルソンやウォーレン・ベイティもいた。そしてバックステージで、彼は僕にこう言った「この業界は、偽りに満ちている。」、僕が「イエス、サー。」と答えると、「この業界で、運よくも何度も何度も歌ってくれと懇願されるような、世界中に知れたヒットが1曲あれば、それだけでキャリアの出来上がりだ。おまえには、それが1曲以上あるし、全部作曲してる。」って言われたよ。
Q&A by Gavin Edwards / 2014年11月14日 Billboard.com掲載
「All Night Long (All Night)」 MV
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ライオネル・リッチー
2013/11/20 RELEASE
UICY-75862 ¥ 1,047(税込)
Disc01
- 01.別れのフォルム
- 02.彷徨のストレンジャー
- 03.装われた悲しみ
- 04.マイ・ラヴ
- 05.ラウンド・アンド・ラウンド
- 06.トゥルーリー(愛と測りあえるほどに)
- 07.ユー・アー
- 08.無言歌
- 09.愛を奏でられたら
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